真紅、自分を売る。

987 ：桜田ジュンの部屋：2014/10/21(火) 14:00:04 ID:1tjje0vk0: ジュン「突然ですが、桜田家は財政難です」

真紅「へぇー」

翠星石「ほほう」

雛苺「ザイセーナンって何ぃ？」

真紅「太陽系方面軍司令官のことよ」

雛苺「みょわわっ！　すごいの！　ついにローゼンメイデンも宇宙の時代なのよね！」

ジュン「それはゼゼーナンだ」

翠星石「そうです。ウソついちゃいけねーですよ真紅。
　　　　　ザイセーナンとはウバメガシ（姥目樫）を材料に作られ、黒いダイヤとも…」

ジュン「それは備長炭」

翠星石「むむっ!?」

ジュン「…ひととおりボケて満足したか、みんな？」

真紅「一応は」

ジュン「よし。じゃあ、もう一度言うがウチは財政難に陥っている。原因も分かるよな？」

真紅「えー？　原因んん？　何それぇ？　全然分かんなーい」

翠星石「プーですよねぇ～」

雛苺「うぃー！　ヒナ達は何も分からない哀れなオミクジなのー」

ジュン「オミクジじゃなくてコヒツジ（子羊）な。ともかく胸に手を当ててちゃんと考えろ」

真紅「仕方ないわね。それじゃあ、ちょっと深く思い出してみるわ」

雛苺「にゅにゅぅ…、そう言われても何も思いつかないのー」

翠星石「ああっ！　た、大変ですぅ！」

ジュン「お、翠星石はしっかり思い出せたようだな」

翠星石「そうじゃねーですチビ人間！　今、胸に手を当ててみたら心臓が！　翠星石の心臓が動いてないのです！」

ジュン「……」

真紅「あらやだ！　私もだわ！」

雛苺「ヒナも！　ヒナも全然ドッキンドッキンしてないのー！　このままじゃヒナ達死んじゃうのよー！」

ジュン「もういい」

翠星石「はぁ!?　もういいとは、どういうことですか！」

ジュン「くだらない茶番を繰り返して自分達への責任追及をかわすつもりだろうが、そうはいかん」

真紅「！」

ジュン「この際はっきり言ってやる。ウチの家計のメイデン係数がひどいことになっている」

雛苺「めいでんケイスウ？」

ジュン「エンゲル係数やエンジェル係数のローゼンメイデン版だよ」

真紅「そんな馬鹿な！　私達だって遠慮して生きてるわよ！」

翠星石「そうですそうです！　ご飯だっておかわりは3杯までで我慢しているです！」

雛苺「ヒナだってうにゅーを1日1個しか食べてないのー！」

ジュン「食費だけの問題じゃあない。他にも色々と勝手にお金使ってるだろ」

真紅「な、何のこと？」

ジュン「今年の夏にローゼン感謝祭をやるからとか言って、ウチワを大量に発注しておきながら祭を実施してない」

真紅「うっ!?」

翠星石「そ、それは…」

雛苺「だ、だってぇ」

ジュン「だってもへちまも無い！　物置部屋に100枚以上のウチワが埃をかぶってんだぞ！」

真紅「ジュン、それには理由があるのよ！」

ジュン「ほお？　言ってみろ？　聞いてやる」

真紅「よく言うでしょ？　祭は本番よりも準備の方が楽しい…と」

ジュン「……」

翠星石「そうです！　そうですぅ！」

雛苺「うぃー！　ヒナ達は準備だけで、とっても楽しかったのよー！」

ジュン「お前ら楽しくてもウチはカツカツなの！　それを分かるんだよ！　準備だけでウチワを発注するな！」

真紅「はいはい、すいませんでしたー」

ジュン「ケンカ売ってんのか、お前は」
988 ：桜田ジュンの部屋：2014/10/21(火) 14:03:38 ID:1tjje0vk0: 真紅「そもそもジュンはマイスターローゼンでしょ！　二代目お父様でしょ！」

雛苺「うぃー！　ジュンがお父様なのー！」

翠星石「そうです！　つまりチビ人間には翠星石達を養う義務があるのですぅ！」

ジュン「だとしても、このままじゃ桜田家の財政は破綻する」

真紅「破綻してもいいじゃない、二次元だもの」

ジュン「よくない。これ以上問答していても埒が明かん。とりあえずお前ら働け」

翠星石「は、働け…ですとぉー!?」

雛苺「そんなの無理なの！」

ジュン「外に出て働けとまでは言わん。ジェルキャンドル作りの内職でも何でもいいから家計を助けろ」

翠星石「いや、ジェルキャンドルはちょっと…」

ジュン「方法は問わない。とにかく金を稼げ。さもなきゃ今晩からメシ抜きだからな」

真紅「ええーっ!?」

ジュン「僕も今からネットオークションで出品するドレスを作る」

真紅「そ、それは禁じ手じゃないの！？　ジュン！」

ジュン「そこまでヤバイってことなんだよ」

翠星石「ぬうう…っ」

真紅「…こうなったら、アレをやるしかないようね」

ジュン「あれ？」

真紅「秘儀、ローゼンブーメランを」

翠星石「ローゼン!?」

雛苺「ブーメラン!?」

ジュン「なんじゃそりゃ？」

真紅「これまで私が渡り歩いてきた歴代マスターに金銭的危機が訪れた時の究極の金策よ」

ジュン「ほう？」

翠星石「や、やっちゃうのですか真紅！」

雛苺「危険なのよ！　ローゼンブーメランは！」

真紅「ジュン、ローゼンブーメランにはあなたの協力が不可欠。手伝ってくれるわよね」

ジュン「そりゃまあ、金になるのであれば」

真紅「ふっ、その意気や良しだわ。では説明しましょう、ローゼンブーメランを」

ジュン「……」

真紅「先ずジュンが私達を適当な質屋にアンティークドールとして売る（※1）」

ジュン「……」

真紅「そして隙を見て、私達が質屋を脱走して桜田家に帰還する（※2）」

翠星石「この※1と※2を繰り返すのがローゼンブーメランです」

ジュン「犯罪じゃねーか」

真紅「ノー、これは犯罪ではない」

雛苺「みんなが善意の第三者なのー」

真紅「さあ、翠星石に雛苺あなた達も覚悟を決めなさい」

翠星石「そ、そのことなんですが真紅…」

雛苺「ヒナと翠星石は自分の取扱説明書を失くしちゃってるの」

ジュン「取扱説明書？」

真紅「なんですって!?　取説がなくちゃ買取額も大幅ダウンなのよ！」

翠星石「す、すまんですぅ！」

真紅「むむむ、では仕方がない。ローゼンブーメランは私だけがやるとして…」

ジュン「……」

真紅「雛苺と翠星石は在庫のウチワを売ってきなさい」

翠星石「えええっ!?　これからの季節にウチワなんか何の役にも立たんですよ！」

雛苺「無茶苦茶なのー」

真紅「あのね、私はこれから自分を売る覚悟よ。それに比べてウチワを売るくらい何？」

翠星石「ぐっ…」

真紅「さあジュン、私の意志が鈍らないうちに早く質屋へ」

ジュン「ほ、本当にいいんだな？」

真紅「当然よ。もしあなたが協力しなくても翠星石と雛苺に私を質屋へ運ばせるわ」

ジュン「そこまでして家計を助けてくれるなんて！　お前、本当はいいやつだったんだな真紅」

真紅「その代わり、見事に質屋を脱出した暁には晩御飯を二重花丸ハンバーグでね」

ジュン「あ、ああ…！」
989 ：数時間後・街頭：2014/10/21(火) 14:06:56 ID:1tjje0vk0: 翠星石「ウチワは要りませんかー？」

雛苺「とってもよく出来たウチワなのー！」

翠星石「可愛い可愛い薔薇乙女がそれぞれプリンティングされたウチワですよー！」

雛苺「うぃー！　コレクションにも大敵なのー！」

翠星石「大敵じゃなくて最適ですよチビ苺。まあ…、全部で絵柄が七種類もあるウチワを
　　　　　コンプリートしようとするなら、ある意味はコレクションにも大敵と言えるですが」

雛苺「…うみゅみゅ、それにしても全然売れないのよね」

翠星石「やっぱり一枚500円ってのが、物売るってレベルの値段設定じゃねーですからねぇ」

雛苺「確かにお客さんを舐めきった価格なのよね。下手したらタダで配られてもおかしくないウチワだし」

翠星石「それでも何故か水銀燈がプリントされたウチワだけ少し売れたです。なんかムカつくです」

雛苺「ヒナ達このままじゃマッチ売りの少女みたいになっちゃうの」

翠星石「マッチ売ってるなら、まだマシですよ。冬前にウチワ売れとかハードモードにもほどがあるです」

雛苺「…真紅、今頃は質屋のウィンドウに並べられちゃっているのかなぁ」

翠星石「多分…」
990 ：その夜の桜田家の食卓：2014/10/21(火) 14:08:47 ID:1tjje0vk0: ジュン「…むしゃむしゃ」

翠星石「おかずはタクワンだけですか」

のり「ご、ごめんねー。明日は翠星石ちゃん達のウチワと、真紅ちゃんを売ってできたお金で…」

ジュン「いや、駄目だ。少しは蓄えておくんだ姉ちゃん。親からの仕送りが来る来月まで」

のり「……」

雛苺「ヒナは白いご飯が食べれるだけで嬉しいのよ、のり！」

のり「ヒナちゃん…！」

翠星石「それはそうと真紅は質屋から逃げ帰って来てないのですか？」

ジュン「ああ…」

雛苺「夕飯までには絶対にプリズンブレイクするって言ってたのに」

のり「心配よねぇ」

ジュン「…ちょっと質屋に電話入れて状況を探ってみるか」

翠星石「あんまり不審な聞き方すると怪しまれるですよ」

ジュン「大丈夫、その辺は気をつけて聞いてみるから」

―――　10分経過　―――

ジュン「た、大変だ！　みんな！」

翠星石「どうしたですチビ人間？」

ジュン「真紅な…、ソッコーで売れたらしい」

のり「ええええっ!?」

翠星石「なんですとー!?」

雛苺「だ、誰が買ったのよ!?」

ジュン「そこまでは教えてくれなかった…」

翠星石「あわわわわわ、これはブーメランロストですよ！」

ジュン「ロスト？」

雛苺「まれによくあるブーメラン失敗なのー！」

のり「失敗するとどうなるの？」

翠星石「そりゃもう、他所の子になっちゃうということですぅ」

ジュン「そんな…、真紅！　ぼ、僕のせいだ！　僕が安易に真紅の策に乗っかったせいで！」

のり「ジュン君…」

ジュン「真紅の言う事なんて穴だらけの論理のはずだったんだ！　それなのに僕は！　お金に目がくらんで」

翠星石「じ、自分を責めるなですよチビ人間！　真紅が帰ってこないと決まったわけじゃあ…」

雛苺「それにそれに！　真紅だって新しいお家でそれなりにエンジョイしてるかもなのー！」
991 ：その頃・とある女性のマンション：2014/10/21(火) 14:10:25 ID:1tjje0vk0: 女性「え～？　本当に真紅さんってローゼンメイデンなんだー？　あ、はい紅茶のお代わりをどうぞ」

真紅「ええ、まあね。うだつの上がらないマスターのためにこうして体を売るはめになったのよ」グビグビ

女性「何て献身的なドールなの真紅さん！　是非こちらのお菓子も食べてください」

真紅「これぐらい伝説のドールとしては当然のこと。悪いのは全てこの貧困の時代」ムシャムシャ

女性「でも、それじゃあ真紅さんは私の家も出て行っちゃうのよね」

真紅「あなたに損はさせないわ。あなたも私を適当な質屋に売ればいいの」

女性「あ、そうか！　なるほど～」

真紅「買った時より高い金額で売れば儲けることにもなるのだわ」

女性「真紅さん、頭いい～」
992 ：それから数日後・街頭：2014/10/21(火) 14:12:04 ID:1tjje0vk0: 翠星石「ウチワは要らないですか～」

雛苺「可愛いヒナ達がプリントされた、とってもお得なウチワなのー」

翠星石「今なら税込み470円ですぅ～」

雛苺「…翠聖石ぃ、値段を下げたのにまだウチワが全然売れないのよ」

翠星石「おかしいですね。税込み云々を語れば、消費税増税前の特需が見込めるはずでしたのに」

雛苺「うゆゆ、相変わらず水銀燈の人と、あと蒼星石と薔薇水晶のウチワは少しだけ売れたけど」

翠星石「それも何かムカつくですが…、ともかくもっと思いきった値下げをし�

戻る

このページは以下ＵＲＬのキャッシュです
http://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-5813.html

SLPY

真紅、自分を売る。

コメント

コメントの投稿

最近の記事＋コメント

ユーザータグ＋リンク

ランダムジャンプ

戻るこのページは以下ＵＲＬのキャッシュですhttp://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-5813.html

SLPY

真紅、自分を売る。

コメント

コメントの投稿

最近の記事＋コメント

ユーザータグ＋リンク

ランダムジャンプ

戻る

このページは以下ＵＲＬのキャッシュです
http://slpy.blog65.fc2.com/blog-entry-5813.html