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やよい「お姉ちゃん、ってよびたいなーって」貴音「……」


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クリスタ「え?もう出ちゃったの?」シコシコ








15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 13:35:52.81 ID:0xOa1ZbX0


貴音「故あって、宿無しの身となってしまいました」

P「は?」

貴音「帰る家がないのです」

P「な、なんでそんな急に」

貴音「理由は……話せません」

P「……どうしても、か?」

貴音「どうしてもと言うのなら……けれど、出来れば」

P「そう、か。分かった、それなら今日は事務所に泊まれ。音無さんにも俺から話しておくから」

貴音「まこと、感謝いたします」


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 13:45:22.46 ID:0xOa1ZbX0


P「でも……どうするんだ?」

貴音「どうする、とは」

P「言いたくないけど、いつまでもここに住まわせる訳にはいかない……例え大事なアイドルでもだ。いや、大事なアイドルだからこそか」

貴音「……」

P「体面とか噂は、すぐに人気に響く。ましてや売れっ子の貴音なら、そこを叩きたい人間は大勢いると思っていい」

貴音「……はい」

P「実力以外の部分で評価が変わるのは俺は納得がいかない、貴音にもそんな目にあって欲しくない」

貴音「言わんとすることは分かりました。早急に、暮らせる場所を見つけた方が良い、と」

P「そういうことだ……ごめんな、何も力になってやれなくて」

貴音「いいえ、当面の雨風をしのげるだけでもありがたい話しです。このご恩は必ず」


20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 13:58:08.82 ID:0xOa1ZbX0


真っ先に考えたのは、一人暮らしでした

ー雑踏ー

貴音「なんと、家賃とはこのような……」

世間という大海に一人漕ぎ出し、わたくしは何も知らないのだと気付かされました

貴音「敷金、礼金? 広さは一体どの程度あれば……?」

困った時には人に聞くーー助けを借りることは恥でなく、手を差し伸べられないことが恥と教わった事を思い出していました

不動産屋「そうだねえ、君位の年の娘なら多少値は張ってもこれ位の広さはいるよね」

貴音「なんと」

地獄に仏とはこのこと、助言のままに賃料12万円の部屋を借りる運びになりました


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 14:09:16.47 ID:0xOa1ZbX0


貴音「!? これは、一体……」

一人暮らしを始めて一週間が過ぎた頃
ようやく家具も揃いだし、日々の食材の買い出しにも慣れた頃でした

貴音「っ、とにかく、警察を呼ばなければ」

空き巣に入られた部屋は、乱れに乱れていました

貴音「……なにも、ない」

通帳・印鑑はもとより、衣服や下着の類まで、盗人の好みそうなものは全てなくなっていました
銀行に伝えた使用停止はあまりにも遅く、少ない残高は全て引き出された後でした


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 14:18:53.08 ID:0xOa1ZbX0


ー765プロ 事務所ー

響「なんていうか……大変だったな」

貴音「……」

響「うう、そう暗い顔するな! 生きてれば良いことあるよ、なんくるないさー!」

貴音「しかし、宿無しに逆戻り……いいえ、一文なしにまでなってしまってこの先どうすればいいのか」

響「なんだそんなことか、部屋ならうちに来ればいい、お金は……うん、そんなにはないけど貴音には世話になってるからね!」

貴音「響……」

響「だからそんなに思い詰めた顔しないで、ほら」

貴音「……はい」

響「うん、いい感じだぞ! なんくるないさー!」

貴音「ふふ、なんくるないさぁ」

持つべきものは友でした


25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 14:35:30.86 ID:0xOa1ZbX0


響「うう、ごめんよ」

貴音「いえ、響は何も悪くありません。謝るようなことなど、何も……」

そこはぺっと可、るぅむしぇあ不可なる面妖な借家でした

響「で、でもどうにか交渉して、一ヶ月だけなら良いって言ってもらえたぞ!」

貴音「ええ、月末にはお給料が入ります。そうすれば、どうにか当て所も見つけられましょう……」

響「うんうん! あ、お金の事も気にしなくて良いぞ? ある時払いの催促なしってやつさー、粋でしょ?」

貴音「ふふ。ええ、まこと……しかし、必ず返します」

響「もー、貴音は変な所で頑固で仕方ないな」

貴音「ええ、仕方ないのです」


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 14:37:25.46 ID:0xOa1ZbX0


それから一ヶ月、響に一人暮らしの要点を教えてもらい、事務所の仲間たちにも幾度となく助けられました

貴音「響、この一ヶ月、大変世話になりました」

響「えへへ、いいっていいって! でも、
寂しくなるなー」

貴音「何を、これからも毎日顔を合わせるではありませんか」

響「一緒に暮らした家族が出て行くのはやっぱり寂しいよ。なんて言っても仕方ないか、しっかり一人暮らしするんだぞ!」

貴音「家族……はい、響に教わった数々、
無駄にはいたしません」

再び、一人暮らしを始めました


27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 14:48:47.75 ID:0xOa1ZbX0


やよい「へー、じゃあ貴音さんは今また一人暮らししてるんですか!」

貴音「はい、やよいも遊びに来ますか?」

やよい「うっうー! 行ってみたいですー!」

貴音「ふふ、やよいならいつでも歓迎です」

ー貴音宅ー

貴音「なんと」

やよい「あうー……ごめんなさい」

雨の日、連絡もなく訪れたやよいの後ろには隠れるように彼女の弟妹達が並んでいました

貴音「どうぞ、上がってください。お風呂は自由に使って構いません。やよい、訳は話してもらえますか?」

やよい「はい……あのー、お父さんとお母さんが初めて見るような大ゲンカして、それで」

貴音「止める事もできず、かと言って弟達が怖い思いをするのも、ですか」

やよい「あう、はい……急に大勢で押しかけてごめんなさい……」

貴音「困った時はお互い様、ということばがあります。やよいも、わたくしが困っていた時には助けてくれたではありませんか、謝ることなどないのです」

やよい「っ、貴音さん、ぐす、ありがどうございまず!」


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 15:05:29.83 ID:0xOa1ZbX0


貴音「よく、眠っていますね」

やよい「はい、これまであんなケンカはうちではなかったから……疲れたんだと思います」

貴音「ふふ、不思議なものですね」

やよい「? 何がですか?」

貴音「わたくしより随分と小さいやよいが、長介たちの事を話す時にはとても大きく見えます」

やよい「はわっ、ぜ、全然そんなことないですよー! 」

貴音「いいえ、ひょっとすると765ぷろの誰よりも大人かも知れません」

やよい「あうぅ……」


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 15:20:49.48 ID:0xOa1ZbX0


やよい「……ほんとに、全然そんなことないんです。私がちゃんとしてればあのケンカだって」

貴音「……」

やよい「貴音さんの方がずっとしっかりしてて。私も、貴音さんみたいになりたくて」

貴音「……わたくしは、しっかりなど」

浩司「んん~、といれぇ……」

やよい「ええ! と、といれ!? 貴音さん、トイレどこですか!?」

貴音「やよい! こちらです! 暗いので足元に」

やよい「きゃ!? あうぅ……あ! 貴音さんは早く浩司をトイレに!」

浩司「もれるぅ~」

貴音「浩司、こちらです!」

浩司「あうぅ」






31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 15:24:30.47 ID:0xOa1ZbX0


浩司「すぅ……くぅ……」

貴音「やよい、痛みますか?」

やよい「ちょっとくじいただけだから大丈夫です」

貴音「くじいたなら大丈夫ではありません、足をこちらに。湿布を貼ります」

やよい「……やっぱり貴音さんはしっかりしてます」

貴音「そうでしょうか」

やよい「はい、そうです。あの、貴音さん、貴音さんのこと」

貴音「はい」

やよい「お姉ちゃん、ってよびたいなーって」

貴音「……」


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 15:34:49.88 ID:0xOa1ZbX0


やよい「だめ、ですか?」

貴音「そんな目をしながらそんなことを言うやよいは、いけずですね」

やよい「はわっ、ご、ごめんなさい!」

貴音「でも、駄目です。やよいは長介たちのお姉ちゃんですから」

やよい「うぅ、やっぱりですか」

貴音「けれど」

やよい「?」

貴音「家族にはなれます。なれると、わたくしの恩人が教えてくれました」

やよい「……?」

貴音「困った時はお互い様、です。甘えたくなったら、甘えてもいいのですよ」

やよい「う、うぅ……ぐす」


35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 15:40:07.95 ID:0xOa1ZbX0


貴音「帰る、ですか」

やよい「はい、もうすっかり青空ですし!」

貴音「しかし……」

やよい「大丈夫です、まだケンカしてても止めてみせます。長介たちのお姉ちゃんですから!」

貴音「ふふ、余計な心配だったようですね。頑張ってください」

やよい「でも、ちょっと勇気を分けて欲しいかなーって」

貴音「はて?……なるほど、分かりました」

やよい「うっうー!はい、たーっ……」

貴音「ち!」


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 15:49:14.45 ID:0xOa1ZbX0


やよい「うっうー! ばっちりでした!」

貴音「ふふ、それは重畳です」

やよい「貴音さんのおかげで頑張れました! 私、貴音さんが困ってる時には絶対力になりますからね!」

貴音「何よりも心強い言葉です、やよい」

やよい「……あのー、貴音さん」

貴音「はい」

やよい「一人暮らしを始めた理由は、
やっぱり秘密ですか?」

貴音「いいえ、やよいにだけ、お教えしましょう。実は……」

やよい「……ええー!?」


39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 16:04:41.98 ID:0xOa1ZbX0


古くからのしきたりにより、四条家の人間は一人で世間の荒波に揉まれなければならない
例えば、家賃の高い部屋を勧める不動産屋の悪意
例えば、下卑た欲望のまま金品を奪う盗人の悪意

貴音「先日、やよい達を見送ってすぐに連絡がありました。試練の時は終わったと、これまでの事は四条家の者の仕業であったと」

やよい「あうぅ、貴音さんの家って一体……」

貴音「ふふ。とっぷしーくれっと、です」

そうした悪意に立ち向かう強さは、仲間との絆
これに他ならないと、そう気づかされました
あなた様、響、やよい、他の皆……困った時に迷わず手を差し伸べてくれる、困っていたら迷わず手を差し伸べられる
まこと、わたくしは良い仲間に恵まれました


40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 16:10:37.12 ID:0xOa1ZbX0


やよい「じゃあ」

貴音「ええ、一人暮らしはもう終わりです」

響「お? 二人とも何の話をしてるんだー?」

貴音「響。響にも随分と助けられました、借りていた黄白はここに」

響「あー、あれか。ほんとに気にしなくっていいんだぞー? まだこの先一人暮らしは続くんだし……」

貴音「一人暮らしは終わりです、何も心配はいりません」

響「? それってどういう」


41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 16:15:10.62 ID:0xOa1ZbX0


響「うーん、よく分からないけど分かったよ!」

P「響ー、そろそろ出るぞー」

響「はーい、今行くぞー! じゃあな貴音、やよい!」

やよい「行ってらっしゃーい!」

貴音「お気をつけて」

響「行ってきまーす!」

P「ああ、行って来ます!」

貴音「あなた様」

P「ん?」

貴音「感謝しております、行ってらっしゃいまし」

P「? お、おう、行ってきます」

響「プロデューサー! 早くー!」


42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 16:22:40.63 ID:0xOa1ZbX0


やよい「……貴音さん?」

貴音「なんでしょう、やよい」

やよい「貴音さんの家に遊びに行かせてもらっちゃいましたし、今度はうちに招待したいかなーって」

貴音「そうですね……実はわたくし、もやし祭り、というのが以前より気になっていました」

やよい「! はい、とびっきりのもやし祭りで待ってます!」

貴音「ふふ。妹の手料理、今から楽しみです」

やよい「え、妹って」

貴音「やよいにはとても大切な事を教えてもらいました、今日だけは特別です」

やよい「じゃあ!」

貴音「構いません」

やよい「うっうー! お姉ちゃん、大好きですー!」

おわり


43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 16:25:58.16 ID:1PQHegQG0


乙、やよいはかわいいなあ!



44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 16:26:49.02 ID:KZZGSjQa0


やよいはかわいいなぁ!
お姫ちんもかわいいなぁ!



49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/21(金) 16:42:42.14 ID:o8Jjb28r0












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あかり「安価でごらく部やめたい」