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スノーデン氏の告発を描くドキュメンタリー「Citizenfour」、告発を最初に聞いた監督は何を思う : ギズモード・ジャパン

スノーデン氏の告発を描くドキュメンタリー「Citizenfour」、告発を最初に聞いた監督は何を思う

2014.11.07 21:00
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10月24日に米国のニューヨークやロサンゼルスで公開初日を終え、全米で公開が控えている映画「Citizenfour」をご存知でしょうか。問題作とも言える作品です。

本作は、アカデミー賞にもノミネートされた経験を持つ映画監督ローラ・ポイトラス氏、ジャーナリストのグレン・グリーンウォルド氏、そしてエドワード・スノーデン氏が香港で顔を合わせ、アメリカ国家安全保障局(NSA)による個人情報収集に対して告発する様子を映し出したドキュメンタリーです。ポイトラス監督は元々、監視社会に関する映画制作を進めており、2013年1月、スノーデン氏が監督にコンタクトしてきた時は、その制作準備にすでに2年ほど費やしていた頃でした。連絡をしてきた理由は他でもありません、彼女自身が長いこと政府の監視ターゲットの1人になっていたからです。この時、スノーデン氏が使った偽名が「CITIZENFOUR」です。

本作の日本での公開は現段階で未定です。では、監督であるポイトラス氏と直接話をした米Gizmodoの意見を聞いてみましょう。彼女は何を思い、スノーデン氏を世に送り出したのか…。



***


数日前、僕はマンハッタンのオフィスでローラ・ポイトラス監督が、彼女の新作ドキュメンタリー映画のポスターにサインしている様子を、人だかりの中で見ていた。サインされた映画ポスターのタイトルは「Citizenfour」、エドワード・スノーデンを題材にした作品だ。彼女は十分な時間がとれないと言ったが、関係者が強く勧めてくれたおかげで、僕は彼女と少し話をすることができた。時間がたって今思うと、あれは実にインパクトのある瞬間だったと思う。僕は、ポイトラス監督がこれからの不正告発者に対してどう考えているのかを垣間みた気がした。これ以上、彼らのような存在が世の中に出てこなければいいのに、と。

ポイトラス監督との会話がどのようなものになるのかさっぱり予想できなかった。しかし、それは彼女にとっても同じだっただろう。彼女が語ったことがどういう内容で記事になるのかわからないからだ。

何が語られるのだろうか。聡明な人間がアメリカ政府の黒い秘密を暴いたぞ! これで全てが変わるぞ! 愛国者法の名の下にある悪は退治した! やっほー! …もちろんそんな話ではない。彼女が世に送り出したのは、世界的にも最大級だと言える告発者だ。あまりにも大きな存在であり、これに続くニュースなんて、これ自体よりも大きくなるとは思えない。中には、彼に続いて告発者が多数現れると思った人もいるかもしれないが、彼の告発は1人で十分大きな意味をもっていた。一見シャイに見える彼、エドワード・スノーデンは全てを変える存在なのだ。


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オフィスを出て、ポイトラス監督と僕は、黒いベンツの後部シートに乗り込んだ。革の匂いがする、彼女は疲れているように見えた。無理も無い、公開初日なのだ。誰しもが監督である彼女と話をしたがった。彼女は監督であると同時に、スノーデン氏を見つけた存在でもあるのだ。

いや、正確に言えば、スノーデン氏が彼女を見つけ出したのだが。告発者は告発者らしく、コンタクトすべき相手を慎重に選んだ。選ばれた1人が、ジャーナリストのグレン・グリーンウォルド氏だ。ポイトラス監督もそれに続き、数ヶ月を香港のホテルの部屋で、スノーデン氏と、グリーンウォルド氏と、そしてガーディアンのユーウェン・マカスキル氏と共に過ごした。

「彼にあってまず驚いたわ。私もグレンも、もっと年が上の人を想像していたから」ポイトラス監督は、スノーデン氏の第一印象をそう語った。「でも、その後、私はもっともっと驚くことになったの、彼の決意と落ち着きぶりにね。彼は、なんと言うか、すでに決心していて、“僕はここだ、君たちが必要なものは何?”という状態にあった。あれは真実を持った人の感覚だったわ」

もちろん、彼のそんな様子は告発者らしいとも言える。真実を隠し持ち、自分の自由を侵してそれを公表する者の様子だ。元NSA職員で31歳のスノーデン氏は、彼が望むとも望まずとも、今や世界が知る「セレブリティ」であり、誰も信じることができない国外追放の身にある。

数ヶ月前のことだが、電子フロンティア財団がスノーデン氏を引き合いにだし、「世界はもっと告発者を必要としている」宣言した。僕はこれについて、ポイトラス監督の意見を尋ねた。「Citizenfour」の最後では(ネタバレ)、彼に続き告発者が現れ、アメリカ政府に関するレポートを提出するのだが、ポイトラス監督は、本作の影響でより多くの告発者が現れることを望んでいるのだろうか。

答えは、ノー。

「私が望むのは、この映画によって政府の秘密が減り、より透明化が進むこと。こんな強大なリスクを冒してまで、公にせねばならないようなことがないようにと願うわ」そう語った彼女が望むのは、つまり告発者の必要性がなくなることだ。忘れてはならないのは、スノーデン氏が逮捕され本国へと送還されれば、彼が生涯檻の中で暮らさざるを得ない可能性が非常に高いということだ。彼女は、こんな大問題に、国民が気楽な気持ちで首をつっこみやしないかと危惧しているわけだ。

彼女が語った点で、非常に理想的だが不可能と思われる話がある。アメリカのリーダー達(例えば、Ron Wyden上院議員)の恥ずべき点は、政府が行なっていた悪行を知りつつも、何も行動を起こさなかったところにあるというのだ。Wyden上院議員が、米国愛国者法の一部として国民をスパイしたいのならば、議会の場で法案を提出すべきだったのだ。しかし、もちろん彼はその道を選ばなかったのだが…。


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ポイトラス監督は語った。「映画がこれで終わりという形にはなって欲しくない。政府はまだ大量の秘密を抱えている、ポリシーは変わっていない。告発者への脅しは考えられないほど大きい」

僕は思う、ポスターにサインする彼女の頭に浮かぶのは世界的に有名なあの告発者の顔だと。ペンを走らせる彼女には、世界が変わって行くためにこれからまだまだやらなければいけないことがあるのだと。編集作業をする彼女が、このストーリーは永遠に終らないと改めて感じるのを。これから、やるべきことは山ほどある。彼女だけじゃない、それは僕たちも取り組まねばならない問題なのだ。


***


告発者なんて必要のない世界。それを実現するのは非常に大変なこと。スノーデン氏の告発はあまりに強大で、その大きさと比例して彼のリスクも高まります。ぜひ映画を見てみたいと思います。日本で公開されますように。映画を実際に見ないと感じられないことがあると思いますから。


Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(そうこ)

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