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オバマ大統領、ネット中立性保護をFCCに正式要請 : ギズモード・ジャパン

オバマ大統領、ネット中立性保護をFCCに正式要請

2014.11.11 20:00
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ネットを公共サービスと認めて、大企業も個人も平等に扱われ続けるように。

インターネットの中立性が失われるかも…と危惧していたみなさんに朗報です。バラク・オバマ大統領がついに立ち上がり、連邦通信委員会(FCC)に対してインターネットを公共サービスとして分類しなおすよう求めました。米国のインターネットプロバイダーが、通信容量を食っている動画サービス事業者にお金を払わせて、その分高速アクセスを認める…っていう有料高速レーンみたいなスキームを最近提案していたんですが、オバマ大統領はそれをバッサリ拒否したんです。どうなることかと心配してましたが、あるべき方向に一歩踏み出した感じです。



ただ今のところ、FCCがこれにどう対応するかはまだわかりません。通信業界出身のトム・ウィーラーFCC委員長とその仲間たちは、オバマ無視を決め込む可能性もあります。オバマ大統領が上の動画で言ってるように、「FCCは独立の機関であり、究極的には彼らの判断は彼らだけのもの」なんです。でも国の大将がここまではっきり意志表示していることは、政府機関もある程度その意志を尊重するんじゃないでしょうか。

我々の時代にある他のどんな発明よりも、インターネットは一時代前には妄想でしかなかった可能性を次々と開いてきました。これほどの成長とイノヴェーションが可能になったのは、理由があります。それは、ほとんどのプロバイダーがインターネットのトラフィックを平等に扱ってきたこと。それこそが「ネット中立性」と言えるでしょう。だからこそ、スタートアップ企業も大企業と同じチャンスを持てるんです。お金持ちの広告主を抱えた大企業の動画サイトを高速レーンにのせるために高校生のブログへのアクセスが遅くなる…なんてことは、今までありませんでしたよね。


大統領声明、4つのポイント


オバマ大統領はFCCに対して、インターネットを公共サービスとして分類し直すよう求めました。「公共サービス」とは、電気とか水道と同じ電気通信法上の「Title II」という分類になります。これには大きな意味がありますが、たとえばモノポリーで言えば、より良いマスを手に入れた感じです。任意に買ったり変えたり壊したりできる普通のマスと違って、Title IIに分類されるからには、インターネットも良い意味でいろいろと規制・保護を受けられるということです。

ホワイトハウスのブログはオバマ氏の声明に関して、この分類見直しは「インターネットプロバイダーがアメリカの家庭やビジネスに提供するサービスに関する基本的な認識」を表しているとしています。また、「ネットワークをひとつかふたつの会社のためだけでなく、確実にすべての人のために機能させるために必要な義務」だとも言っています。つまり、自由でオープンなツールであるべく作られたインターネットをそのまま守っていこうということです。

で、オバマ氏の言ったポイントは4つあります。

・ブロックなし
・速度調節なし
・透明性の強化
・有料の優先順位付けなし

「ブロックなし」、「速度調節なし」の意味はわかりやすいですが、「透明性」という表現は、ちょっと曖昧ですね。気になる点については後でご説明します。「有料の優先順位付け」は上に書いた高速レーンのことで、今年の夏にFCCがパブリックコメントを募集したので覚えている人もいるかと思います。この募集に対しては、400万人以上という記録的な数の人たちがコメントを提出しました。その声に大統領も賛同しているんです。でもだからって、これでネット中立性問題が完全解決というわけではありません。


気になる注釈


で、ちょっと細かいんですが、もしかしたらキモかもしれない部分を説明します。実はオバマ氏のプランには大きな注釈が付いていて、これがもしかしたら全体をフイにする可能性もある、と思っている人もいます。

オバマ氏が今回出した指示は、ほとんどがごく具体的でした。ブロックや速度調節や有料での優先順位付けについては、はっきりと禁止され、それらについては多くの人も同意見だったと思われます。FCCが総スカンを食らったのは、特に有料での優先順位付けみたいな具体的な行為を禁止しなかったからでもあります。

大統領は、1934年の電気通信法のTitle IIに分類されることの意味を非常にはっきりと説明しています。

ほぼ1世紀の間、我々の法律では、人を世界とつなげる企業には、家庭や企業を出入りするアクセスに関してその独占的地位を利用してはならないという特殊な義務があると認めてきました。だからある電話会社の顧客からの通話は別の会社の顧客に安定してつながってきたし、違う事業者のユーザに電話をしただけで追加料金が取られることもなかったのです。

電気通信法は1世紀ほども前にできた古い法律ですが、良い法律です。その条文では、消費者が日常生活に不可欠なサービスで搾取されないようにしようと試みています。1934年の時点では、そんなサービスとはは電話を意味していました。そして今オバマ氏は、そこにブロードバンドインターネットも含めるべきだと言っているんです。彼自身の言葉でいえば、それが「常識」です。

でもちょっと気になるのは、そのあとオバマ氏が下記のようにも発言している点。太字のところです。

ブロードバンドサービスには他の多くの生活上不可欠なサービスと同じ重要性があることを、FCCが認めるべきときが来ました。そのためには、料金規制やブロードバンドサービスにはふさわしくない条文に関しては控えつつ、FCCが消費者向けブロードバンドサービスを電気通信法のTitle IIに分類し直すべきだと私は考えます。

上の文書の「控える」(forbear)という表現がキーワードです。法的に言えば、「法的権利の執行差し控え」にあたります。この文脈では、電気通信法の一部、特に「料金規制やブロードバンドサービスにはふさわしくない条文」はブロードバンドインターネットの規制に適用されないことになります。なんだかインターネットプロバイダーに一歩譲るような、多少(もしかしたらたくさん)解釈の余地を与えているような感じにも読めますが、どういう意図なのかはわかりません。

この「差し控え」というのがネット中立性保護のカギだとも言われてきました。結局、政府自身がインターネットプロバイダーにならない限り、ブロードバンドはビジネスなんです。自由でオープンなインターネットを守るには、ビジネス側の利益のために多少の妥協が必要ってことなんでしょう。

オバマ氏がインターネットプロバイダーに対してTitle IIの条件の一部を「差し控える」と言ってるのは、トリックのようにも見えます。せっかくの良い話に、悪い不確定要素が入り込んでる感じです。たしかにオバマ氏は、高速レーンとか速度調節ははっきり禁止したんですが、同時にインターネットプロバイダーはいくつかの規制から外れてもいいと言っていて、その「いくつか」がわからないんです。「料金規制」は差し控えるべきと明言しているので、つまり規制機関はインターネットプロバイダーに対し料金を指示できないことになります。インターネットプロバイダーはもちろんこれを歓迎するでしょうが、規制機関ができないことが他にもあるんです。

というわけで、この差し控え問題に関しては引き続き要注意です。もしかしたら普通のユーザにとっても大問題の種になるかもしれません。でもそれは、FCCとそれを取り巻く企業たちに、ネット中立性に関するルールを飲んでもらうためには必要なトレードオフなのかもしれません


ほんとに意味あるの?


オバマ氏がネット中立性支持を宣言したこと自体は、素晴らしいニュースです。良いニュースにはいつも注意点があるものですが、基本的には喜んでいいはずです。ホワイトハウスの声明発表から約1時間後、ティム・ウー氏もこうツイートしました。



ホワイトハウスは、ネット中立性政策が100%ターゲット内だと発表した。


ティム・ウー氏はコロンビアロースクールの教授で、「ネット中立性」という言葉を編み出した人物です。だから彼がオバマ氏の政策を気に入ったなら、今日は良い日に違いありません。

FCCが大統領の喜ぶようなルールを実際作るかどうかはわかりません。でもFCCには、アメリカ一般国民からも彼らのルールに反対する声が届いています。FCC委員でさえ、既存のルールが良くないと認めている人たちが複数います。そして、FCCよりインターネットの仕組みをわかっているであろう人物が、オバマ氏のプランは「100%ターゲット内」だと太鼓判を押してます。

専門家の意見を聞いて、国民にとって最善を尽くすのがFCCの仕事です。我々の声、そして大統領の声に彼らがどう応えるのか、期待して待ちましょう。


source:The White House Blog

Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文
(miho)

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