「Call of Duty」に学習能力の向上効果 ―PNAS
テレビゲームをプレイすることによって人間の認知機能にポジティブな作用がもたらされることは、これまでにも多くの研究によって実証されてきていますが、このたび英ロチェスター大学の研究グループによって、一人称視点かつアクションが豊富なゲームをプレイすることで学習能力が向上するとした研究結果が報告されています。
人間の脳は、普段の生活の中で絶えず、時には無意識的に、様々な予測を行っています。例えば、音楽を聴いている時には「そろそろあのメロディーが流れてくるな」といったこと、あるいは車を運転している時には「向こうから近づいてくる車と何秒後にすれ違うな」といったような感じです。
我々の脳には、そうした予測の下地となる「知覚的テンプレート(perceptual template)」の情報が保存されており、新たな体験に触れるたびにそのデータにフィードバックがかけられることで、周囲の環境変化に応じた臨機的な行動を可能にしていると考えられています。
近年の研究により、こうした知覚的テンプレートの精度が向上するほど学習能力も改善されることが示されていますが、今回の研究では、特定のゲームを一定期間にわたってプレイすると、このテンプレートの精度が向上することを実証することに成功しています。
一人称、かつアクションベースのゲームで有意な効果
研究グループはまず、「Call of Duty」のようなアクションゲームを日常的にプレイしている被験者と、アクションを伴わない「The Sims」のようなゲームを好む被験者を集め、それぞれのグループにパターン識別課題(pattern discriminal task)に取り組んでもらっています。
その結果、アクションゲームを好むグループでは、非アクションのゲームを好むグループに比べて視覚情報の処理に優れていることが判明。また、神経モデリングを用いた数理解析の結果として、アクションゲームのグループでは知覚的テンプレートの精度が高いレベルにあることも明らかになったとのことです。
▼Call of Dutyの画面例。プレイヤーは一人称視点でゲーム空間内を行動する。(©Activision)
未経験でもトレーニングによって持続的効果
続く実験では、ゲームをほとんどしたことのない被験者のグループを二つに分け、一方のグループには前述したようなアクションゲームを、もう一方のグループには非アクションのゲームを、9週間のトレーニング期間中にのべ50時間にわたってプレイしてもらっています。
トレーニング期間終了後、それぞれのグループに先ほどと同様のパターン識別課題を行ってもらったところ、アクションゲームのグループでは非アクションのグループに比べて知覚テンプレートの精度が有意に向上されていた、と報告しています。
さらに、こうした改善効果は一過性のものではなく、トレーニング終了から数ヶ月〜1年ほど後に同様の課題テストを行っても、向上したテンプレート精度は保持されていたとのことです。
研究を行ったDaphne Bavelier氏によると、現時点では、アクションゲームに含まれるどの要素が学習能力の向上に寄与しているのかは定かではないため、今後の研究でそういった要素解析に着目してゆきたいとしています。
もちろん、学習能力が向上するからといって、ゲームばかりやっていては「宝の持ち腐れ」ということになってしまいますが、勉強の合間の息抜き程度にちょっとゲームをプレイする程度であれば、あるいは合理的な学習法と言えるのかもしれませんね。
[PNAS via Medicalpress] [University of Rochester]
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著者
企業の研究所でR&D業務に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。Techinityはソース明示のポイントを押さえた解説を、Cul-Onはちょっとした小ネタ紹介的な内容にしていければと思っております。
ゲームをしながら「まだ俺は本気を出していないだけ…」とか言うんだろ?
働きたくないでござる!働きたくないでござる!
教育目的のゲームにアクション要素を取り入れれば、ゲームが既存の学習塾を凌駕する時も来るかもしれない。
× 耐えず
○ 絶えず
ありがとうございます!修正致しました。
お疲れさまです。