モバP「藤原肇とかいう地上に舞い降りた天女」
P「――これがデビュー当時の写真ですね」
ちひろ「わあ、懐かしいですね。この作務衣姿」
P「これが桜祭りの写真で、こっちは一緒に釣りに行ったときのやつですね」
ちひろ「ほうほう……」
P「そして、こないだライブの写真です」
ちひろ「おおー」
P「こうして並べると、いろいろやってたんだなって思いますね」
ちひろ「いやあ、それにしても」
ちひろ「肇ちゃん、綺麗になりましたねえ」
P「そうですね。こうして比べてみると見違えるようだ」
P「肇、だいぶ変わりましたね」
ちひろ「最初は笑顔もぎこちない感じでしたけど」
ちひろ「今は優しい顔するようになって、これなんか本当に天女みたいですよ」
P「天女、ですか」
ちひろ「ええ、これもPさんのプロデュースの賜物じゃないですか?」
P「いや、俺は別にそんな……」
P「肇が自分で努力して、成長していっただけです」
ちひろ「あら、珍しく謙遜するんですね」
P「まあ、肇は最初から目指すアイドル像をしっかり持っていましたから」
P「俺はその後押しをしていただけですよ」
P「ほとんど何もしてないです」
ちひろ「ふうん?」
ちひろ「そうですかねえ……」
P「ところで、さっきの写真、天女みたいだって言いましたよね」
ちひろ「え、あ、はい。これですね」
P「カメラマンも俺も、何にも注文つけていないんですよ。それ」
ちひろ「え?」
P「どういうポーズで、どんな表情でとかって、なんにも言ってないんです」
P「肇の好きなようにやらせたんですよ、全部」
ちひろ「へええ、それでこの出来ですか?」
ちひろ「凄いですね、肇ちゃん」
P「肇の中で、確固としたイメージができてるんですよ。きっと」
P「だから、こっちで口出しするようなことは何一つありませんでした」
ちひろ「はー、そこまで……」
P「実際、肇は驚くほど成長していますから」
P「俺のほうがついていけてないくらいで」
ちひろ「ふふっ、文字通り雲の上の存在になってしまいそうですね。肇ちゃん」
P「雲の上の……」
ちひろ「天女だけに、ですよっ」
P「……」
ちひろ「あ、あれ?」
P「そうですね」
P「遠くに行ってしまいそうな感じがしますね」
ちひろ「……Pさん?」
P「いや、なんでもないです」
P「そろそろ仕事に戻りましょうか。写真整理も終わらせないと」
ちひろ「えっ、まだ仕事されるつもりなんですか?」
ちひろ「私はそろそろお暇しようかと思っていたんですが……」
P「あ、ちひろさんはいいですよ。俺はもうちょっとやっていきます」
ちひろ「相変わらず熱心ですねえ」
ちひろ「では、そんな熱心なPさんには差し入れを置いておきましょう」
P「おっ、ドリンクですか?」
ちひろ「いえ」
ちひろ「熱ーいお茶を、いれておいてあげますよ」
P「なんだ……」ガッカリ
――
――――
カタカタ…
カタカタ…ッターン
P「ふー」
P「こんなところか」
P「資料、これで全部かな……あっ」
P「そうだ、ポスター。ポスターどこ置いたっけ」
P「確かあっちの机に……」ガサゴソ
P「お、あった」
ガツッ
P「ん?」
ガシャン!
P「え」
P「あ、湯呑が落ちて……」
P「あー、やっちまった」
P「大丈夫かな。割れてたり――」
P「」
P「これ、肇からもらった……」
――翌日――
――
ちひろ「いやあ、やめておいたほうがいいんじゃないですかね」
P「そうでしょうかね。まだ使えますよ」
ちひろ「だってほら、ここのところなんて……」
肇「おはようございます。Pさん、ちひろさん」
P「うわっ」バッ
P「は、肇か。お、おはよう」
ちひろ「もう、Pさん。隠しても仕方がないじゃないですか」
ちひろ「肇ちゃんだって、こんな状態の使ってほしくないですよ。きっと」
肇「……? どうかなさったんですか?」
P「いや、その」
ちひろ「これですよ。これ」
肇「あ、この湯呑……」
肇「まだ使ってくださっていたんですね。ありがとうございます」
肇「ふふっ、なんだか懐かしいですね」
ちひろ「これ、肇ちゃんが作ったものなんですよね?」
肇「はい」
肇「デビューしてまだ間もないころ、Pさんにお贈りしたものです」
肇「都会に来たばかりで、右も左もわからなかった私に」
肇「Pさんすごく良くしてくれて……」
肇「だから、少しでも感謝の気持ちが伝われば、と思って」
P「……」
肇「でも、今見ると焼きが甘いですね。色もちょっと――」
肇「あっ」
肇「これ、欠けてる……?」
P「すまん、肇!」
P「実は昨日、俺の不注意で落としてしまって」
P「そのときに、多分……」
肇「……」
肇「ひびも、入っていますね」
肇「これは、補修は厳しいかもしれません」
P「う」
P「申し訳ない……」
肇「あ、いえ、そんな、謝らないでください」
肇「でも、そうですか、ひびが……」
肇「やっぱり、まだ未熟だったということでしょうね」
P「?」
ちひろ「どういうこと? 肇ちゃん」
肇「いえ、普通はそんなに割れたりしないものなんです」
肇「結構丈夫なんですよ。備前の焼き物は」
肇「投げても割れないなんて、言われるくらいなんです」
ちひろ「へー、そうなんですね」
肇「だから多分、これは私の腕の問題なんです」
肇「もっときちんとイメージを形にできるよう精進しないといけませんね」
肇「Pさん、すみませんでした。お怪我はありませんでしたか?」
P「いや、そんな……。どう見てもこれは俺の瑕疵だよ」
P「せっかくプレゼントしてくれたのに、すまない」
肇「いいんです」
肇「形あるもの…って言うじゃないですか」
肇「きっとこれが、この陶器の運命だったんですよ」
P「……」
肇「だから、そんな悲しそうな顔しないでください」
肇「私にとっては、そっちのほうが何倍も辛いですから」
P「……」
ちひろ「ほら、Pさんっ」
P「うん」
P「そうだな。ありがとう、肇」
肇「はいっ」
ちひろ「じゃあ、元気に仕事にもどりましょうか!」
P「ああ、肇はインタビューが入ってたよな。一人で行けるか?」
肇「はい、いつものところですよね? ちょっと準備してきますね」
タタタ…
ちひろ「よかったですね。Pさん」
P「ええ」
ちひろ「ところで、どうしますか? この湯呑」
P「うーん……」
P「ちょっと、捨てないで取っておいてもらえませんか」
――――
――
P「……」
ちひろ「Pさん、私はそろそろ帰りますが……」
ちひろ「何やってんです? 湯呑とにらめっこなんかして」
P「いえ」
P「流石に未練がましすぎますかね」
P「これじゃ肇に嫌われそうだ」
――
P「……」
ちひろ「Pさん、私はそろそろ帰りますが……」
ちひろ「何やってんです? 湯呑とにらめっこなんかして」
P「いえ」
P「流石に未練がましすぎますかね」
P「これじゃ肇に嫌われそうだ」
ちひろ「あらら、まだ引きずっていたとは……」
ちひろ「よほど思い入れがあるんですね」
P「まあ、そうかもしれません」
P「ちょっと色々、考えていたんです」
ちひろ「……私でよければ、お聞きしますよ」
P「え?」
ちひろ「この湯呑にまつわるエピソード、なにかあるんでしょう?」
P「別に、そんな面白い話じゃないですよ」
ちひろ「それでも構いませんよ。ここで吐き出しておいてください」
P「吐き出す?」
ちひろ「はい。それですっぱり忘れましょう」
ちひろ「このままうだうだ引き摺られたら、業務に支障をきたしちゃいますから」
ちひろ「そしたら私も迷惑しちゃいますもんね」
P「……ちひろさんは厳しいなあ」
ちひろ「ふふっ、よく言われます」
――
P「……前に、仕事の都合で肇の実家にお邪魔したことがあったんです」
ちひろ「肇ちゃんの実家って、岡山のですか?」
P「はい。そこで肇の祖父にお会いしまして」
P「そのときにこの湯呑について話したんです」
P「それを思い出してました」
ちひろ「噂のおじいちゃんですか」
ちひろ「頑固な方だとは聞いていますが……」
P「そうですね、寡黙な方でほとんど話はしませんでした」
P「多分、会話らしい会話はそのときだけだっ
コメント一覧
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- 2014年11月16日 22:25
- あ~、可愛いんじゃ~
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- 2014年11月16日 22:27
- イイネ・
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- 2014年11月16日 22:28
- タイトル見て褒め殺していくSSかと思ったら違った
-
- 2014年11月16日 22:34
- 苺が似合うあの子の方が天女ですよ
-
- 2014年11月16日 22:44
- イズルPかと思って速攻※欄飛んだけど大丈夫そうかな?
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- 2014年11月16日 22:45
- この雰囲気好きなんじゃ〜
-
- 2014年11月16日 22:52
- プロデューサーの湯飲みとかしぶりんの唾液でベタベタしてそう
-
- 2014年11月16日 23:03
- 苺「このいちごパスタに私の想いが込められています。」
紅「…ウンメイノー赤い糸…」
蒼「私の思いを込めた花を贈らなきゃ…」
未亡人っぽいアイドル「が、がおー(想いが伝わるかしら…)」
-
- 2014年11月16日 23:04
- (芳乃と茄子から祈祷により力を授かる音)
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- 2014年11月16日 23:20
- 湯飲みの代わりに眼鏡どうぞ。
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- 2014年11月16日 23:20
- 地の文じゃなければ安全だから、安心して読めるよ
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- 2014年11月16日 23:25
- 肇も周子もなぜ声がつかない!!総選挙上位常連なのに!!(血涙)
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- 2014年11月16日 23:25
- 警戒しといてよかったぜ
-
- 2014年11月16日 23:30
- 湯呑みを叩き割る音
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- 2014年11月16日 23:35
- このPは人体と健康に支障がない程度で爆ぜるべきですねぇ
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- 2014年11月16日 23:40
- ※12
逆に考えるんだ
配役を吟味してるから時間かかってるんだと
-
- 2014年11月16日 23:41
-
うおおおおお…素晴らしい!
-
- 2014年11月16日 23:49
- や肇天
-
- 2014年11月16日 23:51
- そうだよこういうのでいいんだよ
謎鬱展開はいらないんだよ
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- 2014年11月16日 23:54
- 肇ちゃんは天女だが無課金には優しくない
あとフェスS全一さんのせいで不憫なイメージに拍車がかかった
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- 2014年11月16日 23:59
- 良いぞ~
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