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律「はぁ? 打ち上げっつったら酒だろ?」 澪「ダメったらダメだ!」



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ミカサ「正妻力を高める」

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 18:53:42.20


部室に声が響く。
ギターのチューニングをしていた梓が体をビクリと反応させ、
恐る恐る声のした方を振り向くと、
眉根を寄せた律の顔が目に入った。

「文化祭ライブ成功の、いわばお祝いだぞ?
 酒も無くてどうするんだよ」

律が肩を竦めながら言葉を投げかけた先では、
澪が怒りに体を震わせていた。


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 18:56:33.29


「高校生が、酒なんて飲んでいいわけないだろ!」

澪が怒鳴りつけると、律がさらに顔をしかめた。
そして、呆れたようにため息を吐く。

「……酒くらい、みんな飲んでるけどな」

椅子の背もたれに身を預け、部室を見渡した。

「なぁ? みんな」


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 18:59:25.49


「そんなわけ……」

「うん。そうだよね、律ちゃん。みんなも普通に飲むよね?」

澪が口を開きかけると、突然声が上がった。
自然にそちらへとみんなの視線が集まる。
そう言ったのは、ソファの上で膝立ちをして、
背もたれに両手を乗せている唯だった。

「クラスの子とも、よくやるよ。飲み会」

無邪気な顔で、そう続けた。


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:02:53.45


「何を言ってるんだ!
 そんなことしちゃ、ダメに決まってるだろう!」

唯の発言に、驚きのあまり数秒黙り込んでいた澪が、突然叫ぶ。

「ダメったらダメなんだ! そういう決まりなんだ!」

真っ直ぐにおろした腕の先で拳を握りしめ、
固く目を閉じ声を張り上げた。

「澪ちゃん……」

憐れんだような目で紬が声をかける。
俯いた澪は肩で息をしていて、
その瞳にうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。


12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:05:40.01


高校生の時こういう集まりの時に飲まずに帰って通報したらハブられたのはいい思い出



23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:19:51.01


>>12
そいつら捕まった?





13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:06:01.84


「あー。私、分かっちゃったぁ」

そう言って律が立ち上がると、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、
未だ俯いたままの澪の方へと近づいていく。

「今まで飲み会に誘われてなかったから、拗ねちゃってるんでしょお?
 みおちゅわんは子供だねぇ」

目の前まで来ると、律が顔を下から覗き込むようにして言う。
瞬間、澪が弾かれたように顔を上げ、大きく左腕を振りかぶった。
その瞳には、怒りの炎を宿している。

「この……っ! 馬鹿律っ!!!」


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:09:46.81


乾いた音が響いた。
律の頭が左を向いている。
澪が、律の頬を平手で張ったのだった。
数秒間、部室の時間が止まる。

「……何、してんだよ」

首を左に向けたまま、律が口を開いた。
大きく目を見開き、ゆっくりと正面へと向き直る。
澪が視界に入ると、激しくその顔が歪んだ。

「何をしてんだよッ!!! このぉ!!!」

律が澪に飛びかかった。


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:13:06.60


「律ちゃん!」

「やめなさい!」

唯と紬がほぼ同時に声を上げると、
駆け寄り、必死に二人を引きはがす。
梓も少し遅れて、それに慌てて加わった。

「てめぇ! 何しやがるっ!?」

律はなおも暴れていた。
唯と梓が二人がかりでなんとか抑えつけている。
澪は紬に肩を抱かれながら、
睨み付けるような目で涙をこぼしていた。


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:15:54.02


SSはけいおんが一番面白いかもしれん。
久しぶりに見たからかもだけど。



30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:26:32.88


「くそっ!」

律が、空になったグラスをテーブルに叩きつけると、
ふちに残っていた泡が、飛沫となってあたりに散った。
手元に瓶ビールを引き寄せ、手酌でグラスに注ぐ。

「律ちゃん……。飲み過ぎだよぉ」

唯は心配そうな表情を浮かべていた。
声のした方をジロリと一瞥すると、律はまた一気にグラスをあおった。

「なんなんだよ……、あいつは……!」

再び、泡の飛沫が散った。


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:29:09.57


「律ちゃん、お休みなの?」

紬が不安げに問うと、唯は無理に笑顔を作った。

「昨日。うちで飲みすぎちゃってねぇ。
 ただの二日酔いだから、平気だよぉ」

「そう……」

会話はそこで終わってしまった。
昨日の一件が原因なのは明白だったので、
気まずい空気が場を支配する。

「ま、まぁ。つらいことがあったら、
 飲んでパーッと忘れちゃったほうがいいんだよ」

無理に明るい声を作って、唯がそう言った。


38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:32:11.78


「何の話をしてるんだ?」

後ろから声がする。
ギクリとして、唯は振り返った。

「み、澪ちゃん。おはよう」

ぎこちない笑顔で、唯が挨拶をする。
「おはよう」と紬もそれに続いた。

「……ああ。それで」無表情で澪が。

「飲む、とか聞こえたんだが。まだそんなことを言ってるのか?」


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:35:46.79


「ああ、えっと……。ううん。ちょっとね」

唯が慌てて場を取り繕おうとしたが、
うまく言葉が出てこず、横に目線を送り紬に助けを求めた。

「別にお酒の話じゃないのよ?」

それを受けて助け舟を出すが、そんな嘘はバレバレだった。
澪がわざとらしくため息を吐く。

「まぁ、いいよ。この件は先生に伝えておくからな」

そう言って、教室を出て行った。




48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:39:19.41


放課後。
唯を含め五名の生徒が、生徒指導室に呼び出されていた。

「あなたたちが飲酒しているっていう、
 匿名の情報が寄せられたんだけど。
 それって本当なの?」

教師の問いに、全員が俯いた。
短く息を吐き、教師は続ける。

「うちの学校が厳しいのは、もちろん知っているわよね?
 今回は証拠もないから厳重注意で済ませるけれど、
 ばれたら当然退学だから。努々忘れないように」


50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:43:06.25


「ちっ! 誰だよ、ちくりやがったのは!」

生徒の一人がゴミ箱を蹴り飛ばすと、
廊下に紙屑が舞った。
唯は色を失った顔で、その後ろに立ち竦んでいる。

「私、聞いたよ」

その声に、全員が注目した。

「秋山さんが、朝何か言ってたの。
 ねぇ、唯ちゃん。そうだよね?」

唯が、呆然と床に送っていた視線を、ゆっくりと上げた。


51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:45:53.78


「おめーだろ! ちくったのは!」

「何の話だ!? 私じゃない!」

校舎裏に、数人の女生徒の言い争う声が響いている。
一人は壁を背にして、体を震わせながら叫んでいた。

「ほら。唯ちゃん。そうだよね?」

女生徒の一人にそう促され、唯が青ざめた顔を上げる。
同様に青ざめた顔をしている澪と、目が合った。

「み、澪ちゃんが朝、先生に言ってやる、って。
 言ってた、よ」


52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:48:30.97


「ほら! やっぱりお前じゃねーか!」

「痛いっ!」

女生徒の一人が長い黒髪を引っ張ると、澪がその顔を歪めた。

「ち、違う! あの時はそう言っただけで……っ!」

言いかけた澪の下腹部に、
別の女生徒が斜め上から振り下ろした金属バットがめり込む。
大きく目を見開き、口の端からよだれをたらしながら、
ゆっくりと澪が地面に膝をついた。

「うええっ! げほっ!」

そのまま突っ伏し、激しく咳き込み始めた。


56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:53:04.24


「やめよう! やめようよ! ねぇ!」

必死に縋り付き、唯が止めようとするが、
始まってしまったリンチは止まらなかった。

「お前のせいで私の評価に傷がついたんだよ!
 どうしてくれるんだ!」

「ちくりぼっちが! ふざけんじゃねぇぞ!」

各々が、手に持った金属バットや竹刀を、
振りかぶっては叩き下ろしている。
その中心では体を丸めた澪が、
小さな呻き声を上げ続けていた。


58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:56:34.86


「死んじゃう! 澪ちゃんが死んじゃうよぉ!」

とうとう唯が泣き叫び始めると、
女生徒たちは疲労のせいもあって、その手を止めた。

「おい……。思い知ったかよ……」

肩で息をしながら、一人が言う。
澪からは何の反応もない。

「なあ。聞いてんのか。……おい!」

地面に倒れたまま動かない澪の背中に、
思い切りつま先をめり込ませると、
呻くような小さな反応があった。

「あはは。これに懲りたら二度とすんなよ」


61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 19:59:53.58


4日後。

「うわああああ……。ごめんねぇ……!
 澪ちゃああん…………! ごめええん……」

唯が、自室で一人、嗚咽を漏らしていた。
あのあとすぐに救急車を呼んだが、
治療の甲斐もむなしく、澪は死んでしまった。

「澪ちゃああん……!」

机に突っ伏す唯のかたわらには、
琥珀色の液体がなみなみと入ったグラスが置かれていた。




64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 20:03:40.80


「くそっ!」

律がテーブルに空のグラスを叩きつける。
隅に置いてあった焼酎の瓶を危なげに手繰り寄せると、
蓋を開け、瓶に直接口をつけて胃袋へと流し込んだ。

「ああはぁ……っ! なんで死んじまったんだよぉ……っ!」

涙声を漏らしながら律がテーブルに崩れると、瓶が倒れ、
中身を吐き出しながら音を立て転がる。
数秒後にそれが床に叩きつけられると、室内に鈍い音が響いた。


67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 20:06:27.57


10年後。

「あきやまみおぉ……? 誰だっけぇ、それぇ」

「昔のアルバム見てたらいたんだよなぁ」

「あはは。高校時代の私だ。若いー。かわいいー」

「なー。あの頃は良かったなぁ」

顔色が土気色になった二人の周りには、
数えきれないほどの空の酒瓶が転がっていた。

「内臓も丈夫だったしねぇ」

「そうだなぁ。戻りたいなぁ」


70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 20:10:20.61


「高校生が酒なんて飲んでいいわけないだろ!」

澪の怒鳴り声が部室に響くと、律は一瞬顔をしかめたが、
諦めたように息を吐くと笑顔を作る。

「しゃーねーなぁ。
 良い子のみおちゅわんに従いますよー」

「……このぉ! 馬鹿律!」

澪が叫ぶと、部室が笑いに包まれた。

終わり

唯「お酒は二十歳になってから!」


71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 20:13:51.36


読んでくれた方、レスくれた方、ありがとうございました。


85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 20:31:24.91


乙。



86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/09/26(金) 20:33:34.21


おつ




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