東京電力福島第一原発が引き起こした事故をめぐり、裁判外での解決を目指す公的な
紛争解決機関「原子力損害賠償紛争解決センター」と事故後に収益が減収した
バス会社15社との間で和解協議が成り立たず、うち1社が倒産に追い込まれていたことが、
わかりました。
画像:【原子力損害賠償紛争解決センター】
http://www.mext.go.jp/a_menu/genshi_baisho/jiko_baisho/detail/adr-center.htm
23日に「毎日新聞」で報じられたもので、同センターはバス会社15社に詳細な資料を提出するよう要求
していましたが、全社とも準備ができず、賠償を断念。
うち1社が倒産となっていたとのこと。
倒産したのは1974年に設立された東京・多摩地区の中堅バス会社で、原発事故後、ツアーや小中学校
の遠足、老人会の旅行、ゴルフ大会の送迎などのイベント予約が次々とキャンセルされたとのこと。
創業者で同社社長の父親は当時の状況を
「かかってくる電話はキャンセルばかり。電話を取るのが怖かった」
と話しています。
事故のあった2011年に売り上げが半減。
他社も同様に売り上げが落ち込み、加盟する「東京バス協会」の呼びかけで東電に賠償を請求するため、
16社が集団で東電側に申し立てを行いました。
「原子力損害賠償紛争解決センター」の弁護士は
「キャンセル1件ごとに、原発事故が理由かどうか分かる資料を出してほしい」
とバス会社側に求めましたが、キャンセルされる度に客側に理由を聞き、記録していたのはわずか1社。
ほかの15社は資料を用意できませんでした。
この間にも多摩地区の中堅バス会社の経営は悪化。
2013年3月に2回目の不渡りを出し、倒産となりました。
社長の父親は
「(準備に手間がかからず)センターが早く解決してくれれば、倒産しなくてすんだ」
と悔しさを声にしています。
原発補償の手続き上、証拠は必要ですが、事故後の対応に追われ、そこまで踏み込めなかった多くの
バス会社が不利益をこうむる形となっています。