勇者「死神のご加護がありますように」【後半】
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戦士「はあああああああああああああ!!」ズバッ
龍「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ズドーン!!
戦士「はぁ…はぁ…やったか?」
魔法使い「……みたいですね」
僧侶「うぅ……やっと倒せました……」
戦士「僧侶ちゃん本当に助かったよ……。君のおかげで大分戦いが楽になった……」
魔法使い「とは言ってもかなり長期戦になりましたけどね……」
僧侶「はい……。私ももう魔力がありません……」
戦士「本当にお疲れ。いい活躍だったよ」
魔法使い「そうですね。薬草買わなくていいんでお金もかからないですしね・・・」
僧侶「皆様のお役に立てているなら光栄です」
魔法使い「ええ!! 素晴らしい活躍ですよ!! ……それに比べて」
勇者「ん? 終わったのか?」スパー
魔法使い「あなたは何をしてるんですかあああああ!!」
勇者「いやだって鱗硬いじゃん。俺のナイフが通るわけないじゃん。移動魔法で飛ばすのも勿体ないじゃん」
魔法使い「だからってもうちょっと何かあるじゃないですか!! なんであなた一人煙草吸ってるんですか!!」
勇者「手持ち無沙汰で」
魔法使い「あぁ…私たちの頑張ってる中この人は……」
勇者「いいじゃねえか、倒せたんだし。結果オーライ」
戦士「君は全く…。本当に掴みどころがない男だな…」
勇者「下に掴むところはあるけどな」
戦士「掴んでいいのか?」
勇者「遠慮しときます」
僧侶「ま、まあまあ。今まで勇者様に助けて頂いてばかりだったのでたまにはいいじゃないですか」
勇者「おぉ。僧侶。お前だけだ、俺をわかってくれるのは」
戦士「はぁ…。しかしこれだけ長い間居るのに勇者のことを全然知らないな。私たちは」
魔法使い「…………」
勇者「まっ、お疲れさん。今日はさっさと宿屋行ってゆっくり休もうぜ。なんたってもうすぐ魔王城だからな」
戦士「そうだな…。気づけばそんなところまで来たのだな…」
魔法使い「長かったような…短かったような感じですね…」
僧侶「そうですね…」
勇者「なんにせよお前らと旅するのも明日で最後だな」
魔法使い「……あ」
戦士「……そうだな。そうなるのか」
僧侶「……なんだか寂しいですね」
勇者「おいおい、何湿気た面してんだよ。もうこんな辛い思いしなくて良いんだぜ。あとは寝て起きるだけで生活が保証されんだ。そんないいことはねえだろ」
魔法使い「それはそうですけど……」
勇者「もう硬いベットやテントで寝ないで済むんだ。これ以上ない幸せだぜ?」
戦士「……それはそうだが」
勇者「だったらいいじゃねえか。ほら帰んぞ。掴まれ、お前ら」
魔法使い「……はい」
勇者「うっし。んじゃ帰んぞ。移動魔法」ヒュン
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勇者「はい、到着。便利だね、こりゃ」ヒュン
僧侶「本当ですね。他の冒険者さん達はさっきの道を引返していたのかと思うと相当苦労なさったのでしょうね」
勇者「本当にな」
戦士「…良し。それじゃぁ必要な物を揃えて宿屋に行こう」
勇者「そうだな。さっさと買い物済ませようぜ。煙草もねえしな」
戦士「やれやれ、本当に君は。もうすぐ魔王城だというのに緊張感のないやつだ」
勇者「今更気取ったって仕方ねえだろ。俺は俺なの。俺らしく生きるの」
戦士「はいはい」
魔法使い「…………」
勇者「あん? なんだガキ? 元気ねえじゃねえか?」
魔法使い「……あ、いえ。何でもないです」
僧侶「お疲れなのでしょう。沢山歩きましたしね」
勇者「やれやれ、体力のないガキだな」
戦士「今日何もしてない君には言われたくないだろうさ」
勇者「うるせえな。向き不向きがあるだろ。今日は偶々相手が悪かったんだよ」
僧侶「まあまあ。ほらっ、買い物に行きましょう。お店閉まっちゃいますよ」
勇者「そうだな。おい、ガキ。ちっとは根性見せな。買い物くらいできんだろ」
魔法使い「……はい。そうですね。行きましょう」
勇者「うっし。じゃあ俺は煙草買ってくっからお前ら他の物頼んだぞ」
戦士「全く君は…」
僧侶「まあまあ。ほら、行きましょう。魔法使いちゃん」
魔法使い「…はい」
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勇者「おう、お前ら買い物は終わったか?」
戦士「あぁ。ちゃんと勇者用の装備も買っておいたぞ。流石に防具無しで魔王に挑むのはマズイと思ってな」
勇者「それはお優しいこった」
僧侶「そうですよ。むしろ今まで防具無しでよくここまで来れましたね」
勇者「いや、一回買ったんだけどな。重くて売ったんだよ」
僧侶「そ、そうなんですか…」
戦士「全く、君は…」
勇者「ほら、買い物終わったんだったらさっさと宿屋で寝んぞ。明日ははええからな」
僧侶「そうですね。そうしましょう」
戦士「そうだな」
勇者「おい、行くぞお前ら。ガキ、行くぞ」
魔法使い「………はい」
戦士「……魔法使いちゃん?」
勇者「おい、親父。部屋は空いてっか?」
宿屋「はい。全部屋空いておりますよ」
勇者「それはありがてえな。そっちはどうか知らんがな」
宿屋「ははは、全くです」
勇者「だったら一人一部屋貸してくれ」
宿屋「ありがとうございます」
戦士「おい、勇者。こっちはもうほとんど金を使い切ってしまったぞ。そんな余裕…」
勇者「心配すんな。俺が持ってる」ジャラッ
戦士「なっ。珍しいな、お前が金を残すなんて…」
勇者「まっ、あと1日だけだからな。一箱ありゃ十分だと思ってな」
戦士「…そうか」
勇者「そういうこと。今日はゆっくり寝て疲れでもとんな。ちゃんと風呂入れよ。歯磨けよ。じゃあな」
戦士「…じゃっ、勇者の好意に甘えて今日はゆっくり寝るか」
僧侶「そうですね。それがいいと思います」
魔法使い「…………」
勇者「……うっし、準備完了。あとは寝るだけだな」
勇者「煙草は……まあいいか。あいつも寝てんだろ」
コンコンッ
勇者「…あん? 誰だ?」
ガチャッ
魔法使い「……失礼します」
勇者「ナイスタイミング!!」
魔法使い「……え?」
勇者「いやぁ、丁度お前を呼びに行こうと思ってたんだよ」
魔法使い「え、えっ、そ、それって////」
勇者「いやぁ、煙草吸いたくて仕方なかったんだよ。何、お前、エスパー?」
魔法使い「……ですよね。そんなことだろうと思ってましたよー」
勇者「何いじけてんだよ、お前」
魔法使い「…別に期待なんかしてませんでしたよ。はぁ」
勇者「とりあえず火つけてくれよ。ほらっ」
魔法使い「…はいはい、わかりましたよー。火術」ボッ
勇者「ん。サンキュー。はぁ……旨えな」スパー
魔法使い「……そんなに美味しいんですか?」
勇者「あぁ。酒はこの世から無くなってもいいが煙草はダメだな」
魔法使い「……一口ください」
勇者「は?」
魔法使い「一口吸わせてください」
勇者「お前未成ね…いや、いいか。ほらよっ」
魔法使い「ありがとうございます」
勇者「間接キスだな」
魔法使い「なっ/// ど、どうでもいいじゃないですか、そんなことっ////」
勇者「いいからさっさと吸って返せよ」
魔法使い「うぅ、わかりましたよ。すぅ……っ!? ゴホッゴホッ!!」
勇者「まあ最初はそうなるわな」
魔法使い「ゲホッゲホッ!! なんですかこれ!!」
勇者「煙草だよ。平和の象徴だ。ちなみにタールは21な」
魔法使い「知ってますよ!! うぅ…まずい。よくこんなもの吸えますね」
勇者「ガキにはわかんねえよ。ほら、返せ」
魔法使い「言われなくても返しますよ…。うぅ…喉がイガイガする…」
勇者「まあ煙草なんか吸ってもイイ事ねえからな。百害あって一利なしだ。吸わないに越したことはないね」
魔法使い「だったらなんで吸うんですか……」
勇者「……まあいいじゃねえか。紳士の嗜みだ」スパー
魔法使い「……よくわかんないです」
勇者「良いんだよ、ガキにはわからなくて」
魔法使い「またそうやって……」
勇者「それより何しに来たんだよ。まさか煙草に火をつけに来たわけじゃねえだろ」
魔法使い「……それは」
勇者「まさか一人で寝るのが怖いのか。怖い夢でも見たのか」
魔法使い「そ、そうじゃ…ないとも言えませんけど」
勇者「だったら戦士か僧侶と一緒に寝ろよ。俺は一人で寝たいんだよ」
魔法使い「……そう……ですけど」
勇者「じゃっ、そういうことだ。さっさと寝ろよ」
魔法使い「…………」
勇者「……はぁ。わかったわかった。一緒に寝てやる」
魔法使い「……え?」
勇者「二度は言わねえよ。嫌ならさっさと出てきな」
魔法使い「い、いえ、そんなことはないです!! ありがとうございます!!」
勇者「大人しく寝ろよ。…ふぅ、ご馳走さん。ほら、さっさと寝るぞ」
魔法使い「…はいっ」
勇者「ちゃんと寝る前にトイレ行っとけよ。漏らすんじゃねえぞ」
魔法使い「そ、そんなことしませんよっ!!」
勇者「だったら明かり消すぞ」
魔法使い「あ、はいっ」
魔法使い「……おやすみなさい、勇者様」
勇者「あぁ」
魔法使い「…………」
勇者「…………」
魔法使い「……寝ちゃいました? 勇者様」
勇者「お前は10秒も黙ってらんねえのかよ」
魔法使い「……勇者様私思ったんです」
勇者「黙って寝ろよ。何語りだしてんだよ」
魔法使い「私こんなに長い間勇者様と一緒に居るのに勇者様のことなにも知らないな…って」
勇者「話聞けよ。いいだろ、そんなこと。どうせ明日までの付き合いだ。気にすんな」
魔法使い「……だからこそですよ」
勇者「あん?」
魔法使い「だからこそ聞くなら今しかないかなって思ったんです…。このままだともう聞く機会も無い様な気がして…」
勇者「はぁ……」
勇者「何お前? ヤケにテンション低いと思ったらそんなこと考えてたのかよ」
魔法使い「そ、そんなことってなんですか!!」
勇者「あのなぁ、忘れてるかもしれないけど俺は犯罪人なの