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実際に自分、もしくは身内がそんな境遇になった場合でもなければ詳しく調べることはないであろう臓器移植問題。だが今、この瞬間も臓器移植を待っている人がたくさんいる。しかし、その大半の人々は臓器移植のチャンスにさえ巡り会えていないのが現状だ。
誰もが当事者になりうる問題であるにもかかわらず、無関心な人はことのほか多い。だが一部の研究者たちは、日々研究をつづけ、多くの人を救うために全力を尽くしている。ここでは、普段あまり知ることのない臓器移植に関する10の事実をみていくことにしよう。
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10. 腎臓移植をしても機能していない腎臓は体内に残される
通常臓器移植をする場合、古い臓器は体外へ摘出されるが腎臓の場合は人体に残される事がある。つまり腎臓移植を行った人の体内には機能している腎臓と、していない腎臓の両方が存在するのだ。これは腎臓という臓器が背中の後ろにある為、医者は必要でなければ不要となった腎臓を摘出する事はないそうだ。
新しい腎臓は古い腎臓と同じ場所ではなく、腸骨窩(ちょうこっか)という骨盤と無名骨に近い場所に移植される。これは本来、腎臓がある位置よりも随分下なのだ。
さて、ここで不思議なのは、実は移植をせずとも3つ以上の腎臓を生まれつき持っている人が存在するという事だ。3つ以上腎臓を生まれつき持っている人は非常に稀で、100万人に1人、しっかりと機能する3つめの腎臓を持つ人の場合、この確率は更に下がるという。
9. 組織適合性(クロスマッチング)で100%の安全は図れない
テレビドラマ等でよく見るシーンで「クロスマッチングで調べた結果、組織適合性が無いため、移植が出来ない!」というプロットがある。クロスマッチングによって組織適合性が認められれば移植をして、全てがスムーズに行ってハッピーエンドだと思われがちだが、実際はそうではないようだ。
マッチングが無かった時代、多くの患者には新しい臓器に対する拒否反応が見られ、多くの患者の命が失われた。マッチングにより、確かに適合する確率は高くなったものの、100%を保障するものではない。現在のマッチングは決して完璧などではなく、日々医師たちは新しい抗体やマッチングの際に重要な役割を担う因子を発見しているのだ。
8. 臓器移植をすると糖尿病になりやすくなる
臓器移植の際に多くの患者は免疫抑制剤を長期間投与される。これは新しい臓器に対して、人体が引き起こす免疫反応を抑えるための物だ。こういった薬は臓器移植患者にとって大抵の場合必要不可欠であるが、風邪をひきやすくなったり、ウイルス性の病気にかかりやすくなったりするなどの副作用がある。この中でも特に問題なのが糖尿病だ。
免疫反応を抑制すると人体は糖尿病になりやすくなるのだ。理論上、投薬を止めた場合糖尿病は回復すると言われているが、臓器移植患者は免疫抑制剤なしでは生きてゆけないのだ。
7. レッド・マーケット(人体部分産業)
ジャーナリスト、スコット・カーニーは「レッド・マーケット」という人体部分産業について詳しく調べている。こういった事業は違法であるため、多くの情報は闇の中だが、少なくとも数十億ドルのビジネスである事は間違いないそうだ。例えば、健康な一人の人間を完全に分して売ると25万ドル(3000万円)前後で取引されるそうだ。
ちなみにレッド・マーケットというと「飲みすぎたあなたがある朝目覚めるとバスタブに横たわっていて、知らない間に臓器を取られていた」という様なストーリーを想像しがちだが、実際はしっかりとした手続きのある違法ビジネスなのだ。
例えば2004年のインドでの津波の直後、カーニーはキドニーバリー(腎臓坂)という場所についての情報を入手した。津波直後の人々の生活は酷かった為、これは付け入るチャンスがあると思ったのか、人体部分産業の人々は挙って被災者たちへ声をかけ始めた。
そこで彼等は被災者たちに向けて「お金の為に臓器を売りませんか」と持ち掛けたのだった。間もなくして、そこには長蛇の列が出来上がっていたと言う。
6. 宗教的問題点
イスラムの宗教家団体の幾つかは臓器移植を容認しているが、全体的な思想の統合には時間がかかるだろうと言われている。特に問題視されているのが死体に対して施術を行う点で、これを回避する為にイランでは生きている内に臓器を取り出してから患者の余命を全うさせようという動きがある。
キリスト教は基本的に臓器移植には肯定的ではあるものの、全てがそうである訳ではない。ユダヤ教では心臓移植が大きな問題となっている。ユダヤ教では人間の死は全臓器の停止によってはじめて成り立つ物であり、脳が停止を終えた後も、心臓がしっかりと動きを止め、静止した状態でなければ死亡しているとは認められない。つまり、生きたままの心臓を必要とする心臓移植手術はユダヤ教徒にとっては容認できない施術なのである。
5. 臓器移植技術はたった60年で急速に発展した
臓器移植技術は歴史が浅いが、急速に進んでいる研究分野である。世界初の臓器移植はたったの60年ほど前、1950年に成功した。世界初の臓器移植は腎臓であり、しかも最後の手段だったようだ。この患者は当初回復傾向を見せていたが、急速に衰弱し、死亡した。その後も多くの医者が同じような施術を行ったが、多くの患者が同様に死亡していった。
ピーター・メダワーという皮膚移植を専門としていた軍医はある時を境に、皮膚移植に拒否反応がみられた患者のデータを集めた。そして遂に拒否反応が免疫反応によるものである事を発見したのだ。
この研究が発表された同時期に、ある双子の患者がやってきて、片方がもう片方に腎臓を移植してやりたいと言う依頼がやってきた。メダワーの予想通り、一卵性双生児であった彼等の間に拒否反応が起こることは無く、無事移植手術が成功したのだった。このメダワーの理論が正しい事が証明されると、彼は後にノーベル医学賞を受賞した。
4. 臓器移植は確実に寿命を縮める
ドラマや映画の世界では、臓器移植を受けた患者が元気に歩き回って、何もかもが幸せそうに見えてハッピーエンドという流れが定番となっているが、移植を受けた患者の寿命は確かに縮まっている。
科学者らはこの問題が恐らく臓器移植に対する拒否反応によって引き起こされるものだと考えている。完全なクロスマッチングによって移植された臓器だろうと、あなたの身体はそれを拒否しようと免疫反応を示す。その結果、あなたの寿命は確実にではあるが短くなっているのだ。
3. 移植の順番待ちリストの悪用
臓器移植の順番待ちリストの何番目に記載されているかで患者の生死が決まると言っていい。そこには大勢の人間がいて、特に重病な患者から臓器移植が行われる。だが悲しいことに、こういった順番をしっかりと守る、モラルを重んじる医者もいれば、ろくでなしの医者がいる事も事実だ。
2013年、ドイツである臓器移植にまつわるスキャンダルが発覚した。およそ100件以上の人々が重病でないにも関わらず、ドイツのある医師の手により、臓器移植の順番待ちリストの上位に乗るように改ざんされていたのだ。こういったテーブルの下での賄賂の受け渡しによって引き起こされる不公平は後を絶たず、ドイツではいま大きな問題となっている。
2. お互いに臓器を提供しあう「ペア・エクスチェンジ」
臓器移植の際に良く問題になる不適合性という問題を解決する為に、医者は日々新しい臓器提供者を患者の為に探し回っているが、もしあなたの親戚に「(あなたとは適合性が無いが)臓器を提供してもいい」という人が居る場合、大きな希望の光となるかも知れない。
そこへもう一人別の臓器移植を待ち望んでいる、同じ境遇の患者が居た場合、あなたの親戚がもう一人の患者へ臓器を提供し、代わりにもう一人の患者の親戚があなたに臓器を提供するという事が可能になる。これを「ペア・エクスチェンジ」と言い、時には数人規模で行われる事もある。
どちらか片方が臓器移植を先に受けなければならないため、残された側は少々の不安を感じるかも知れないが、このシステムが臓器移植を待つ人々にとって希望の光なのは言うまでもない。
ペア・エクスチェンジによって臓器提供を受けた患者に臓器提供主の情報を渡す事は禁じられており、患者は臓器移植を終えて初めて彼等と会う事が許可されるのだ。これは患者同士が互いに急かす事や、精神的・身体的暴力などを引き起こさないために施された手段である。勿論、患者側が望めばお互いの詳細を匿名のまま人生を引き続き生きていく事も可能だ。
1. 3Dプリンターが安全な臓器移植を急速に発展させる可能性
3Dプリンターの出現により、私達は道具と材料さえあれば、なでも好きな物が作れるようになった。医師らもまた、3Dプリンターを使い医学の道を大きく開拓しようとしている。
彼等の将来の目標は3Dプリンターで臓器を一から作り上げる事だ。その時に生まれる新しい臓器は免疫抑制剤を必要としないと考えられている。なぜならこの新しい臓器は患者の一つの細胞から産みだされるからだ。
近年行われたシドニー大学とハーバード大学が合同で行った研究で、研究者らはある大きな医学的問題を乗り越えた。これまで3Dプリンターで作られた臓器は血管の細部を作り上げる事が非常に困難だったのだが、彼らが作り上げた新しい臓器は血管の細部まで精密に作られている。
この研究を行ったグループのリーダーであるルイズ・ベッタソーニ博士は「まだ舞い上がって喜ぶ段階ではありません、この臓器は未完成です。しかし、今後数十年でそういった完璧な臓器が出来上がる日が来るでしょう」と語った。
via:listverse・原文翻訳:riki7119
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コメント
1. 匿名処理班
クローン臓器で自家移植の時代はそう遠くないだろう
脳がない自分の体をシリンダーの向こう側からながめることがあるかもしれない
2.
3. 匿名処理班14
臓器て、それぞれ脳も(細胞レベルで)あって感情があるもんね。
4.
5. 匿名処理班
※1
いまんとこ臓器だけをクローニングする技術はないから、クローン臓器を作ろうと思ったら人間そのものを作らなきゃならない
臓器提供するだけの肉人形にするには、途中過程でその肉人形の人格を無くす訳だからどっかのタイミングで脳死させなきゃいかん
いまの倫理観じゃそれを是とはしないだろうなぁ
6. 匿名処理班
吸収されるはずの縫合糸で創部が化膿炎症を起こし、抗生物質で薬疹が出た人間って、提供者にも被提供者にもなれないってことだよね・・・
7. 匿名処理班
最後二つはまだ明るい情報でほっとした
自前のクローン臓器早く作れるようになるといいのにね
8. 匿名処理班
「脳死は不可逆」という最大の怪しいポイント
9. 匿名処理班
※1
最後のがまさにそれの発展系だね、必要な時に必要な”自分の”臓器を作り出す
SF小説が予測する臓器移植の段階を現実は一つ飛ばしてしまってた
10. 匿名処理班
移植が成功しても予後のリスクは抱えたまんまなんだ・・・。
やはりここは3Dプリンターの技術発展を待ち望むべきかな。
11. 匿名処理班
やっぱこうなるとIPS細胞に期待が、かかるわけだ
臓器移植の問題自体が消える可能性もあるわけだしな
下手したら糖尿病や腎臓病も再生できるわけだしね
あと
>3つ以上の腎臓を生まれつき持っている人が存在する
これ初耳でしたパルモたん
びっくりしちゃったよ(OOO)
12. 匿名処理班
臓器移植は寿命を縮めると言うが、逆に寿命が長くなるという事は起きないのだろうか?
13. 匿名処理班
※3
心臓は第2の脳と呼ばれているけどね
心臓には記憶が宿っていると言われているから
14. 匿名処理班
「わたしの中のあなた」って映画観たことある?あれ泣いちゃうよね
15. 匿名処理班
医療関係者の殆どがドナーカードを所持していない点から推して知るべし。
この人体実験が早く終わりますように。