八幡「おかえり、静」 静「ただいま、八幡」
八幡「あんまり遅いから心配してたんだぞ。ほら、晩飯できてるぜ」
静「これは……ずいぶん手が込んでるじゃないか。何かあったのか?」
八幡「おいおい、今日は俺達が同棲一周年記念日だろ?」
静「あ……す、すまない、忙しくてすっかり忘れてしまっていた」
八幡「静のことだからそんな事だろうと思ってたよ。腹空いてるだろ? すぐに準備するよ」
静「八幡……」 ギュッ
八幡「どうしたんだよ?」
静「私は今幸せだ。八幡、結婚しよう」
八幡「そういうことは俺の方からさせてくれよ、平塚先生」
静「馬鹿、とっくにお前は私の生徒じゃないだろうが」
八幡「これから一生一緒にいるんだから似たようなもんだろ?」
静「八幡……」 チュッ
八幡「というSSモドキが俺の携帯に毎晩届くんだがどうすればいいんだこれ?」
由比ヶ浜「うわぁ……」
雪乃「由々しき問題ね……」
雪乃「由比ヶ浜さんがドン引きしてしまって言葉もないようだから私が尋ねるけれど」
八幡「ああ、むしろドンドン聞いてくれよ。正直重すぎて俺もう色々限界なんだわ」
雪乃「あなた平塚先生に一体何をしたの? 自首した方が罪は軽くなるわよ」
八幡「なんでいきなり犯罪者扱いなんだよ、何もしてねぇよ!」
結衣「そうだよゆきのん、ヒッキ―にそんな度胸なんてないってば!」
雪乃「言われてみればそれもそうね」
八幡「納得しちゃったよ」
雪乃「あなたのせいで無駄な時間を使ってしまったわ。そうね、今日の活動はこの辺にしておきましょうか」
八幡「まだ何も解決してないんですけど」
結衣「ゆきのん、このまま放っておいたらまずいと思うよ」
雪乃「……ふぅ、仕方ないわね。それで、一体どうしてそんな事になってるのかしら?」
八幡「俺にもよく分からないんだが……あれは、一ヶ月くらい前だったか」
八幡「その夜、俺がぼんやり過ごしていたら携帯にメールが届いたんだが、まあ、先生からのメールだった」
八幡「なんというか、たまにメールが来ると色々長くなるんで、俺はとりあえずスルーした」
八幡「ちょうど漫画も読みかけだったし、読み終わった後に返信すれば十分だろうと思ったんだが」
八幡「それからメールがガンガン来て、おまけに電話まで鳴り出した」
八幡「絶対これヤバいやつだわ、無視しとこうと思ったんだが、それが何分も鳴り続けて超怖ぇ」
八幡「やっと切れたと思ったら、今度は非通知で鳴り出したんだよ」
八幡「おそるおそる電話に出ると、そこには……」
結衣「いやいやいやいや、なんでホラー風なの!? 先生でしょ、先生なんだよね!?」
八幡「……なあ由比ヶ浜、夜中に自分の担任から電話が掛かってきて、出た途端に大声で『忘れろ! 忘れろ! 忘れてくれ!』って言われた俺の気持ち、わかるか?」
結衣「え」
八幡「こっちが何を言っても全然聞かずにだぞ? 訳も分からずに延々忘れろ連呼だぞ? 普通に怖いぞ、何の洗脳だよ」
結衣「それは……確かに、ちょっと怖いかも……」
八幡「気の迷いだったんだ、とか、あれはあくまで妄想であって本心ではないんだ、とか」
八幡「もうなんかどうしようもないから適当に相槌打って誤魔化しといたが、内心ドン引きもいいとこだよ」
八幡「とりあえず『人それぞれ』『逆に考えればアリ』『悪いのは先生じゃなく社会』『それもある種の才能』とか言っておいた」
八幡「そしたら徐々に先生も落ち着いてきて、なんか今度はテンション上がりすぎて逆にきもかったが」
雪乃「もう少しオブラートに言えないのかしら?」
八幡「……きしょかった」
雪乃「わかったわ、あなたでも誤魔化せないレベルの状態だったのね」
八幡「で、どうにかこうにか電話を切ることに成功したんだが、メールを確認したら……」
八幡「大半は電話の内容と似たような錯乱っぷりだったんだが、最初に一通がな……」
結衣「一通が?」
八幡「俺が先生に告白するSSモドキだった」
結衣「うわぁ……」
八幡「材木座のアレなラノベもいい加減読み慣れてたけどな、自分が登場人物にされてるってのはまた違うダメージがあるな……」
雪乃「考えたくはないわね」
結衣「んー、意外に面白いんじゃないかなー」
八幡「バカ、そんな考えの奴がメアリーさんな自作小説を書いて黒歴史を作っちまうんだぞ!」
雪乃「あなたの過去かしら、それは」
八幡「……それはそれとして、だ」
結衣「誤魔化した」
八幡「その翌日から毎晩平塚先生からSSが送られてくるようになったんだよ……」
結衣「うわぁ……うわぁ……」
八幡「おまけに感想を求められるんだよ……しかもSSの俺と先生の仲がどんどん進行してくんだよ……」
雪乃「……これは深刻ね」
八幡「誰も貰ってやらないからこんな事に……」
結衣「ね、ねえ、これってもしかして……先生からヒッキ―への告白なんじゃないかな?」
八幡「え」
結衣「ヒッキ―のことがこんなに好きなんだーって気持ちを、こう、遠回しに伝えようとしてるんじゃない?」
雪乃「由比ヶ浜さん、眼科に行った方がいいわ」
結衣「え、なんで?」
雪乃「平塚先生がこんな澱んだ瞳の人間を好きになるわけないでしょう」
結衣「そうかなぁ」
雪乃「そうよ」
結衣「んー、じゃあそういう事にしとくね」
八幡「雪ノ下に同意したくねえけど、俺もそう思うぞ。どっちかっつーと、独身拗らせて妄想にハマってるだけな気も……」
雪乃「周りの友人が結婚していく中、自分一人だけが独身……」
結衣「それで、自分に恋人がいたらこんな感じかなーって妄想しちゃったって事?」
八幡「……」 雪乃「……」 結衣「……」
八幡(どうすんだよこの空気……)
雪乃「ま、前向きに考えましょう。これで問題点はハッキリしたわ」
結衣「え、そうなの?」
雪乃「ええ。つまり平塚先生は男性との出会いがない事で、その、少し気が触れてしまっているだけなのだから」
八幡「おい」
雪乃「ごめんなさい……その……一時的な錯乱状態にあるだけなのだから、男性との出会いさえあれば正気に戻れるはずだわ」
結衣「そっか、先生に良い感じの人を紹介してあげればいいってことだね!」
八幡「そう言ってもよ、そんな都合の良い人間いるのか?」
雪乃「比企谷くん、この世界の半分は男性なのよ? 平塚先生の良さをわかってくれる人だっているはずよ」
八幡「おい雪ノ下」
雪乃「何かしら?」
八幡「自分の生徒にあんなメールを送ってくる平塚先生の良さをわかってくれる奴って、一体どんな奴なんだ?」
雪乃「……」
八幡「そこで黙るなよ」
結衣「私思うんだけど」
八幡「ん?」
結衣「恋愛って、どこがダメかよりも、どこが好きかが重要なんじゃないかな」
八幡「そうか? 人間なんて大体人の長所よりも短所の方が目に付くもんだろ?」
雪乃「あなたを人間のスタンダードに置いて話すなんて無謀な事をするわね」
結衣「ま、まあ、ヒッキ―の言う事も少しわかるけど、でも人を好きになるってそういう事じゃないと思うよ?」
八幡「む……」
結衣「平塚先生にだって良い所はたくさんあるんだし! 好きになってくれる人だってたくさんいるはずだよ!」
雪乃「比企谷くんの言葉を借りるわけではないのだけれど……やっぱり難しいんじゃないかしら?」
雪乃「平塚先生の年齢的に考えてみても、適齢期ではあるけれど世間的にはかなりギリギリじゃないかしら」
雪乃「それに結婚はできたとしても、その後に夫婦関係が上手くいく保証は私達にはできないわ」
雪乃「平塚先生は家事もあまり得意ではないそうだし、家庭に入るよりも社会で働き続けた方が向いているようにも思えるわ」
雪乃「実際、今の年齢になるまで結婚に至らなかったのだし、無理に私達が平塚先生をどうこうしようとしても傷付くだけではないかしら?」
静「もうやめろぉぉぉ!」 ガラッッ
雪乃「え?」 八幡「うわっ」 結衣「ひぇっ」
静「もうやめろ! やめてくれ! 私が何をしたって言うんだ!」
静「確かに比企谷に毎晩メールをした! 今思えば痛かったとは思う! だが!」
静「だからといって……だからといってこの仕打ちはあんまりだろう!」
静「雪ノ下ぁ!」
雪乃「は、はい……」
静「誰が年齢ギリギリだ!? 私はまだ若手だ、若手なんだ! 若手! 若手!!」
静「由比ヶ浜!」
結衣「は、はい!」
静「お前は何度うわぁと言った! 四回だ! 四回も言った! 生徒にドン引きされる気持ちがお前に分かるか!」
静「そして比企谷ぁ!」
八幡「はい」
静「きしょいは……きしょいは、ないだろう……そ、それに……私の良さを分かってくれる男だって……きっと……きっと……っ」
静「くっ……うぅ……うぅぅ……」 シクシクッ
八幡「どうすんだよこれ」 ヒソヒソッ
雪乃「元はと言えばあなたが原因でしょう、なんとかしなさい」 ヒソヒソッ
結衣「ていうか先生、もしかして最初から聞いてたの? ずっとドアの前で?」 ヒソヒソッ
八幡「バカ、みんな気付いてるけど触れなかった所を言うなよ」 ヒソヒソッ
静「クソ……私だってチャンスさえあれば……そうだ、運が悪かっただけなんだ……」 ボソボソッ
雪乃「……」 ジロッ
八幡「わかった、わかったっつーの……先生!」
静「……」
八幡「その、さっきは正直言いすぎました。すんません」
静「うるさい、あれがお前達の本音なんだろう。そうさ、どうせ私は行き遅れだよ」
八幡「それは、男の方に見る目がなかったんですよ」
静「適当にフォローしておけばいいと思ってるんだろう? 見え透いた慰めはいらん」
八幡「違いますよ。……さっきはああ言いましたけど、平塚先生にだって良い所たくさんあるじゃないですか」
静「……例えば?」
八幡「その、俺達の事を見てないようで、本当は誰よりも心配して見守ってくれてる所とか」
静「へ?」
八幡「今回みたいに変な感じに空回りする不器用な所とかも、見方によっては可愛いですし」
静「か、可愛い……」
八幡「美人でスタイルも良いのに気取ってない所とかも、魅力なんじゃないっすかね」
静「そ、そうか?」
八幡「それに家事なんて今の時代、夫の方がやる家庭だって多いんだし、必須ってわけでもないでしょ」
静「あ、ああ、そうだ! そうだよな!」
八幡「先生みたいに自分の生き方を持ってる大人って意外にいないっつーか、憧れますよ、普通に」
静「……っ」
八幡「ラーメン屋巡りだったりも一緒に楽しめる相手となら共通の趣味って事でいいんじゃないですか?」
静「そ、そうか。……ふむ、そうだな、そういう意見もあるよな? うん
コメント一覧
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- 2014年12月05日 19:20
- とりあえず静ちゃんは貰っていきますね
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- 2014年12月05日 19:27
- 平塚先生がssを書いているって本当ですか?
幻滅しました…陽乃さんのファンになります
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- 2014年12月05日 19:30
- 普通のSSでまあ面白かったよ
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- 2014年12月05日 19:32
- 久しぶりに救われた?な
-
- 2014年12月05日 19:33
- おはD
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- 2014年12月05日 19:36
- だろうねっ!と思ったら逆転サヨナラだた
-
- 2014年12月05日 19:39
- 無限ループって怖くね?
-
- 2014年12月05日 19:48
- やったぜ。
-
- 2014年12月05日 20:03
- ハッピーエンドじゃないかっ!
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- 2014年12月05日 20:25
- なかなか現実的な先生ルートSSじゃないか?
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- 2014年12月05日 20:26
- 何も間違ってないだろ!
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- 2014年12月05日 20:34
- 先生が幸せになって良かった
戸塚は俺が幸せにするし
なんの問題もないな
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- 2014年12月05日 20:35
- こんなものはまやかしよ
-
- 2014年12月05日 20:36
- なおここまでが先生の妄想SSの模様
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- 2014年12月05日 20:46
- カテゴリに俺ガイルが無い件について
そうか…先生メインSSは俺ガイルと見なされないのか(白目)
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- 2014年12月05日 20:55
- 応援しつつも体を与えちゃう、そんでずるずるとっていう昼ドラみたいなssが似合う筈
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- 2014年12月05日 20:55
- ※14
途中のdisも全部自虐ってことか…
強靭な精神ってレベルじゃねぇな
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- 2014年12月05日 22:00
- 静ちゃんはベットの中では乙女の様に可愛らしいんだぞ
本当だぞ
-
- 2014年12月05日 22:07
- 静
俺の股間のディバイディングドライバーはいつでもwelcomeだぜ(キリッ
-
- 2014年12月05日 22:09
- ※19
なら先に俺が頂こう(ズボッ
-
- 2014年12月05日 22:39
- ※20
お前ホモかよぉ!?
-
- 2014年12月05日 22:39
- ※14に先越されてた
-
- 2014年12月05日 22:42
- しずちゃんかわい〜
でも比企谷くんは雪乃ちゃんのものだよ
-
- 2014年12月05日 22:44
- ヒッキーの自己犠牲で何とか
-
- 2014年12月05日 22:47
- 静ちゃんが幸せならそれでいいんだよ
-
- 2014年12月05日 23:19
- うむ
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