ついに日本発売したChromebook。今回の使い勝手編ではデルの「Chromebook 11」をベースに、よりChromebookを便利に使いこなすための設定やWebサービス、Chromeの拡張機能などを紹介します。なお前回のハードウェア編はこちらです。
多彩なキーボードショートカットとトラックパッド操作を活用
まずは基本的なキーボードの使い方から。ハードウェア編でも触れたとおり、Chromebook 11のキーボードにはファンクションキーがありませんが、これは検索キーと数字を組み合わせると同等の機能を果たします。ファンクションキーをメインで使いたい場合は、設定から上部の機能キーをファンクションキーに入れ替えられます。ファンクションキーへの入れ替えが可能
キーボードの各種ショートカットも設定から確認可能。基本的なキー割り当てはWindowsと変わりませんが、スクリーンショットとディスプレイ切り替えは他のOSとは異なるのでチェックしておきましょう。
キーボードショートカットは設定から確認できる
ブラウザのズームも「+」ではなく「−」の右隣にある「^」。これはUSキーボードで割り当てられている「+」の位置ですが、日本語キーボードの印字とは異なるので要注意です。
キーボードショートカットのズームは「−」の右隣
トラックパッドは2本指で上下左右スクロールが可能ですが、初期設定では指を動かした方向へ画面が進みます。指を上に動かしたら画面が下にスクロール、いわゆるOS X Lion以前のスクロール操作を望む場合はこれも設定の「トラックパッドの設定」から変更できます。
トラックパッドの設定
さらに指3本のスクロールは画面上部のタブを切り替え可能。指3本でトラックパッドを横方向にスクロールし始めるとタブが白く光り、任意のタブで指を離すことでタブを選択。慣れると機敏にタブを切り替えられます。
3本指スクロールでタブを移動
拡張機能+Webサービスで「できるだけ」Windowsに近づける
ハードウェア的な操作はかなりPCに近い感覚で使えるChromebookですが、最大の課題はやはりアプリケーション。ブラウザこそPCと同じChromeが使えますが、アプリケーションのインストールができないChromebookは実際に使うとやはりWindowsには劣ります。とはいえいくつかのWebサービスやChromeの拡張機能を組み合わせることで、完全に同じとは言えないまでもWindowsに近い感覚で使うことが可能です。ここからはWindows感覚で使うために必要なサービスや拡張機能を紹介します。
OfficeはOneDriveを活用、CloudHQを組み合わせて更に便利に
Windowsユーザーが求める最大のキラーアプリケーションといえばやはりMicrosoft Officeでしょう。完全な再現はできませんが、OneDrive を活用すればChromeブラウザでWord、Excel、PowerPointを使えます。一部に機能制限があるものの、マイクロソフト公式サービスだけにファイルの互換性をきちんと担保できることに加え、Excelに関しては関数なども利用可能などブラウザ上でも多機能です。OneDriveでWordを表示
続いてExcelを表示したところ
こちらはPowerPoint
ただし新規作成であればいいものの、既存のファイルを編集するのに毎回OneDriveにアップロードするのはそれなりに面倒です。ここは異なるクラウドストレージを同期できる cloudHQ を使いましょう。
cloudHQは異なるクラウドストレージの特定フォルダを同期できるため、OneDriveとGoogle ドライブのフォルダを同期しておくことで「ChromebookでダウンロードしたファイルをOneDriveへアップロードする」という流れを自動で処理できます。
異なるオンラインストレージを同期できる「cloudHQ」
無料版では1フォルダかつ50ファイルまでしか同期できませんが、そのフォルダは作業場所として認識しておき、時間のある時にフォルダ内を整理すれば50ファイルは十分。より便利に使いたいという人は月額9.9ドルから利用できる有料版を検討してください。
さらに組み合わせたいのが Cloudy for Gmail 。こちらはクラウドストレージに保存したファイルを直接Gmailに添付できるサービスです。このサービスを連携しておけば、OneDriveで編集・保存したファイルをGmailから直接添付して送信できるため、余計な手間をさらに簡略化できます。
オンラインストレージのファイルをGmailに直接添付できる「Cloudy for Gmail」
PDFの閲覧はブラウザ、変換はWebサービスを活用
Officeに並んで重要なビジネスドキュメントであるPDFは、Chromeのブラウザが標準で対応しているため閲覧/保存ともに問題ありません。一方、OfficeファイルをPDF形式で保存する機能はOneDriveでは非対応。Chromeの印刷機能からPDFに変換する機能はありますが、ExcelをPDFに変換したところデザインが異なって保存されてしまうためあまり使い勝手はよくありません。標準の印刷機能を利用してExcelから変換したPDF
PDF変換が重要という場合は、smallpdf.com というサービスが便利です。Excelに限らずWordやPowerPoint、JPEGなどのファイルもPDFにに変換でき、ファイルの容量制限などもありません。Chromeの印刷機能より再現性も高く、ほぼExcelのデザインのままPDFに保存できます。
smallpdf.comで変換したPDF。デザインをそのまま反映できた
オンラインサービスということでセキュリティが心配になるかもしれませんが、重要度の低い書類だけ使うなど使い分けるのもアリだと思います。
ファイルはGoogle ドライブのほかローカル保存も可能
ブラウザベースの端末であるChromebookですが、ファイルをローカルにダウンロードして保存することも可能。といってもといっても端末内でアクセスできるのは「ダウンロード」フォルダのみで、すべてのファイルはここにダウンロードするか、Google ドライブへ直接保存することになります。なお容量16GBのChromebook 11の場合、初期設定の状態で残り容量は9GB程度です。「ダウンロード」フォルダに保存したファイルは拡張機能である「ファイル」からアクセス可能。圧縮したZIPファイルも展開することなく中身のファイルにアクセスできます。保存したい場合は別途名前をつけて「ダウンロード」フォルダに保存しましょう。
拡張機能「ファイル」からダウンロードファイルにアクセス
画像ファイルに関しては編集機能も搭載。トリミングや輝度、画像回転など利用できる機能はさほど多くはありませんが必要にして十分。また、フォルダ内の複数画像をまとめて表示するモザイクモードやスライドショーといった機能も備えています。
画像のトリミングや回転といった最低限の編集が可能
テキストエディタは利用目的に応じて使い分け
文章を執筆する職業方面に愛されているテキストエディタは、Chromeの拡張機能に Writebox があります。フォントサイズの調整などはできずひたすら文字を書くだけのシンプルなエディタですが、オフラインでも利用できるため、いつでもどこでもメモを取りたい、文章を書きたいという人には便利。オフラインでも利用できるテキストエディタ「Writebox」
一方、Writeboxは常に1画面しか表示できず、複数のテキストを書きたいときは1度片方のテキストを保存して別のテキストを作成する必要があるなど、使い勝手には若干の課題があります。
オンラインが前提とはなりますが、筆者のお勧めはWebサービスの Simplenote 。テキストに特化したWebサービスで動作が非常に軽く、書いたテキストはすぐに保存されるので他の端末で開くのにも重宝します。
インターネット接続が必要だが動作が軽快で使いやすい「Simplenote」
また、テキストではなくメモを取りたいという場合はGoogle公式の Google Keep もシンプルで使いやすいアプリ。こちらもオフラインに対応しているので、いつでもどこでもメモを取ることができます。
Google公式のメモ機能「Google Keep」
オフライン対応の拡張機能でネットがない場所でも作業が可能に
Chromeというブラウザがベースのため、基本的にはインターネット接続環境が前提となるChromebookですが、そうはいってもネット接続環境がないところでどうしても使いたいというシーンもあるもの。そうしたオフライン用の機能もChromeではいくつか用意しています。前述のWriteboxやGoogle Keepといったテキスト系はもちろん、Googleドキュメントもオフライン利用が可能。オフラインで利用するためには端末にデータを同期しておく必要があるため、1度はGoogleドキュメントをChromeで開き、そのままの状態で同期させておきましょう。以降はオフラインでもGoogleドキュメントの閲覧・編集が可能になります。
オフラインで利用できるGoogle ドキュメント。事前に端末への同期が必要
Gmailではオフライン専用の オフラインGmail という拡張機能を用意しています。利用の際には事前設定が必要なので、あらかじめインターネットに接続できる環境でオフラインGmailの利用設定をオンにしておきましょう。これでネット接続環境がない場所でもメールの下書きを作成できるようになります。
インターネット接続環境がない場所でメールを閲覧・作成できる「オフラインGmail」
他の端末との連携で印刷も、PCもChromebookからリモート操作
拡張機能やWebサービスの活用でかなりPCに近づけることができましたが、どうしてもChrome単体で解決できないのがプリンタ。ドライバをインストールする仕組みのないChromeではそもそもプリンタに直接接続できないのですが、これも他のPCの助けを借りることで間接的に解決できます。そのサービスはGoogleが提供する Google クラウド プリント 。すでにプリンタ設定済みのPCを経由することで、Chromebookのデータをプリンタで印刷できるという機能です。利用するPCにもChromeをインストールし、Google クラウド プリントの設定をおこなっておく必要があるほか、利用時はPCが起動していなければいけないという条件はあるものの、オフィスなどで常時起動しているPCがある場合や、Chromebookとは別にメインマシンを利用している場合などは便利な機能です。
Google クラウド プリントでWindowsを介して印刷
なお、最近ではプリンタそのものがGoogle クラウド プリントに対応している場合もあります。こうした機器であればWindowsなど別のPCを使わずに直接プリンタへ印刷できるのでさらに便利になります。冬のシーズンでプリンタ購入を考えている場合、Google クラウド プリントに対応しているかもチェックしておくといいでしょう。
またセブン-イレブンのプリントサービス ネットプリント を使えば、ほかにPCがなくても印刷したいデータをオンラインに保存し、セブン- イレブンで印刷できます。ただしネットプリントはドキュメントが1ファイル2MB以下、画像が1ファイル4MB以下という制限があるため、容量が大きすぎるファイルは印刷できないことはあらかじめ覚えておきましょう。
セブン-イレブンで印刷できる「ネットプリント」
PCの力を借りるという意味でもう1つ覚えておきたいのが Chrome リモート デスクトップ。こちらはGoogle クラウド プリントよりも強力な機能で、ChromeをインストールしたPCをChromebookからリモートで操作できるという機能です。
Google クラウド プリントと同様に接続先のPCが起動している必要がありますが、リモート環境からPC機能をフルに利用できるため、Chromebookではできないこともリモート デスクトップでほぼまかなうことができます。
Chrome リモート デスクトップでWindowsをリモート操作
高速かつ安定した回線があれば、目の前で見比べても遅延はわずかしか感じないレベル。PCの解像度がChromebookのディスプレイより高い場合はやや潰れて表示されますが、視認性は十分。何よりChromeではどうしても使えないソフトやサービスを使えるのが最大のメリットです。
普段からブラウザで作業している人には価格以上の価値
以上、2回に渡ってChromebookの使い方を紹介しました。筆者はレビュー目的も込めてほどんどの作業をChromebookで行なっていますが、もともとブラウザで済む業務ばかりだったこともあり、Chromebookだけでも実用的に使いこなせました。最も不安だったOffice周りも、回線速度さえ安定していれば十分にOneDriveで代用できます。とはいえこれはあくまで利用形態次第。どうしてもPCでなければ使えないソフトやサービスが必要な人にはChromebookは向かないと思いますが、日頃の利用形態がブラウザ中心であればこれで十分な人も多いでしょう。低価格ながら非常にパフォーマンスも高く、セカンドマシンとして最適な1台です。
Google Chromebookレビュー
- デル Chromebook 11のハードウェア編
- 使いこなし編(この記事)