女「何、このメール……」
タイトル:天気の話
差出人:明日の世界
受取人:女
本文
天気の話は会話のきっかけに丁度良い。
会話のとっかかりになるし、生活に大きく関与する部分だから、誰にだって通じる。
インドアな読書家でも、本の湿気を気にしたり、雨の音をBGMにしたりする。
どんな人にだって天気の話は通じるし、あなたの好きな人にだって例外じゃない。
だから会話に困ったときや、話したい相手がいるときは、何だって話してみるのがいい。
天気の話は、あくまでとっかかりに過ぎない。
女「変なメール……」
女(天気の話?でも、言われてみれば確かに切っ掛けにはいいよね)
女「明日、やってみようかなー」
母「まだ起きてるの?明日日直で早いんでしょ?早く寝なさーい」
女「あ、はぁーい」
翌日
放課後、教室にて
女「終わったー……」
男「……女さん?何してんの?」
女「へ?」
男「あ、日直?」
女「あ、男くん。……男くん!?」
男「え、うん。どうしたの?」
女「えとえーと何もないよていうかどうしたの?もう学校終わりだよ帰らなくていいの?」
男「あ、うん。忘れ物しちゃって」
女「わわわすれもの?ノートか何か?」
男「えーとね、本なんだ」
女「本?」
男「そう、これ」
女「日本の政治思想……ムズカシソー」
男「そんなことないよ。ただ読むだけなら誰でも出来るし」
女「ヘェー……」
男「うん……」
女(会話途切れちゃった……きっかけ……きっかけ……きっかけ?そういえば昨日のメール……)
天気の話は会話きっかけに丁度良い。
女「い、いい天気だね!」
男「もう夕方だけどね。そういえば、女さんはどうして残ってるの?日直の仕事は終わったみたいだけど……」
女「あ、えーと、日誌。先生にとどけないとだから」
男「なるほど。俺も先生に鍵返しに行くし、一緒に行こうか」
女「え、うん。行く行く」
女(あのメール、すごく助かった……。変なメールとか言ってごめん)
男・女「失礼しました」
女「図書室行ってたんだね。何か借りたの?」
男「いや、借りたい本はなかった。でもちょっと立ち読みしちゃって」
女「何かおもしろかったの?」
男「えっとね……開いちゃうと読んじゃうんだ。あらすじだけのつもりだったんだけどね」
女「それでこんな時間まで?」
男「字があると読んじゃうんだ。ついつい、ね」
女「ふふ、本、好きなんだね」
夜
女の部屋
女「たくさん男くんと話せたなー……」ニヤニヤ
ピロリーン
女「メール……まただ……」
タイトル:本の話
差出人:明日の世界
受取人:女
本文
ヴェネツィアを泳ぐ魚や、アルジェンティーノ広場の猫。
カルピ村のマンブレッティ氏の車。
30と30は同じ数なのに、車なら多くて髪なら少ない。
アントニオをやめたおじいさんや、魚になったトーダロさん。
不思議な話はお好きかしら?
彼はきっと好きですよ。
翌日
学校・図書室
男「あ……」
女「あ……」
男「こんにちは。放課後にどうしたの?」
女「なんとなく……。昨日話したから、ここにいるのかなーって」
男「うん。基本的には毎日いるよ」
女「何してるの?」
男「図書室でやることはひとつ」
女「本?何読んでるの?」
男「見た目が変われば受け取られ方も変わるって話を読んでた」
女「んんん?」
男「家族から冷たくされたおじいさんがね、猫になったら可愛がられるんだ」
女「ねこ……」
男「猫は好き?」
女「うん、好きだよ、猫」ニャー
男「俺も好きだな。かわいいし」
女「私は、うん。私もそう思う」
男「何か他に理由があるの?」
女「好きなときに好きなこと出来て、羨ましいから……」
男「あー。なるほど。わかるよ。俺もそういうこと考えたことがあるし」
女「……そのおじいさん、もしかしてアントニオさん?」
男「知ってるんだね。こんなマイナーな作品」
女「ううん。聞いたことがあるだけだよ。なんていう作品なの?」
男「短編集なんだけどね。こういう名前」
女「猫とともに去りぬ?」
男「そう。よかったら貸してあげるよ」
女「え?どうして?」
男「なんだか楽しくてね。あんまりこういう話してくれる人が友達にはいないから」
女「私がそういう人になってくれればいい?」
男「そういうわけじゃないけど、好きな作品のことを知っていてくれたから、嬉しくて」
女「じゃあ……うん。借りるね」
男「ありがとう」
夜
女の部屋
女「ふふ。髪が30本なんだ……ハゲだ……でも車は30台も持ってるんだ……」
ピロリーン
女「メール?そういえばまたあのメールに助けられたな……明日の世界さん……」
タイトル:勉強の話
差出人:明日の世界
受取人:女
本文
猫の話はできた?
本を読むと少しは賢くなれた気がするよね。
賢いといえば、期末テストがもうすぐだけど大丈夫?
しっかり勉強しないとね。彼に本を返すついでに勉強しちゃうといいんじゃない?
翌日放課後
図書室
女「本、ありがとう」
男「もう読んだの?早かったね」
女「すごく不思議で、気付いたら引き込まれてた」
男「どの話が面白かった?」
女「やっぱり、社長と会計係かな。髪の話とか笑っちゃった」
男「確かに面白いね。マンブレッティが出てくるのは笑えるよ」
女「あ、そうだ、勉強しなきゃ。ごめんね、今日はちょっと勉強して帰るよ」
男「あ、テスト勉強?そうだな、俺もやってくよ。どうせ誰も来ないから、二人でやろうか」
女「へ?いいの?」
男「お互いわからない部分教えあえるしいいと思うよ」
女「ありがとう。じゃあ早速始めよっか……!」
約3ヶ月後
女「あ、またメール……」
タイトル:99回目のメールですね
差出人:明日の世界
受取人:女
本文
あなたが羨ましい。
私も幸せになりたい。
女「いつもと違う……」
タイトル:Re:99回目のメールですね
差出人:女
受取人:明日の世界
本文
いつも助けてくれてありがとうございます。
すごく助かってます。
おかげで男くんっていう男の子と仲良くなれそうです。
あなたが幸せになれるように、私にお手伝い出来ることはありますか?
翌日・放課後
図書室
女「えっと、男くん」
男「ん?どしたの」
女「今度の休みの日、暇?」
男「えっ、うん、ひま、だよ」
女「一緒に映画、行かない?友達と行く予定だったんだけどね、行けなくなっちゃってね、だから、ね」
男「え、うん、落ち着いて落ち着いて」
女「うん、落ち着いてるよ、だからね、デートとかじゃなくて、えーと、だからー」
男「行く行く。そういう誘い方するってことはチケットは取っちゃったんでしょ?」
女「え……うん。取っちゃった……」
男「なら付き合うよ。待ち合わせどうしようか?」
女「えっと……」
休みの日・昼
映画館近くの喫茶店
女「男くんまだかな……私変な格好してないよね……」ソワソワ
ピロリーン
女「メール……明日の世界さんだ」
タイトル:とうとう100回目ですね
差出人:明日の世界
受取人:女
本文
あなたが私の為に出来ることがあるとすれば、仲良くなってる男の子を邪険にすることくらいです。
だからお願い。どうかその男の子と距離を取って。
その子と仲良くされるのは辛いの。私だって仲良くしたいのに。
その男の子をちょうだい?
私も男くんのこと好きなの。
女「え……」
タイトル:Re:とうとう100回目ですね
差出人:女
受取人:明日の世界
本文
どういうことですか?
98回目までは仲良くするためのメールをくれたのに、99回目から明日の世界さんは何か変ですよ。
今日、男くんに告白しようと思ってます。
明日の世界さんが応援してくれたおかげでここまでこれました。
どうして今になってそんなことを言うんですか?
女「送信っと」ポチ
男「ごめん、ちょっと遅刻したね」ゼェゼェ
女「ううん。私も知り合いとメールしてたから。待ってないよ」
男「ごめんね、お詫びに昼食……にはもう遅いから、映画まで甘いものでも食べに行こう」
女「やったー!」
映画の後
帰り道
女「ホントに送ってもらってもいいの?」
男「うん。あ、ちょっと待ってて」
女「うん?」
男「飲み物買ってくるから」
女「うん、待ってる」
男(昼間の女ちゃんのメール……気になる。アドレスは覚えてるから、メールしてみるか?)
男「文字を読んじゃう癖、やめなきゃなー……」
男(明日の世界さん……。俺のことを好きって言ってくれたけど……何者だろうか)
タイトル:あなたは誰ですか?
差出人:男
受取人:明日の世界
本文
俺に話があるなら、こちらのメールアドレスに直接連絡してください。
女ちゃんに迷惑をかけないようにしてあげてください。
メールを見ているときの不安げな顔が忘れられません。
男「送信……。さて、冷えてきたし暖かい飲み物にしとくか……」
一方女
女(……帰ってきたら言う。好きって言う。言う!)
女「ハァー……寒くなってきたな……」
女(……好き好き好き好き好き……好き……よし、予行演習おわり!言うぞ……言うぞっ!)
コメント一覧
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- 2014年12月11日 20:59
- あん??
-
- 2014年12月11日 21:00
- ええやんけ
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- 2014年12月11日 21:01
- ご都合主義だったけどいいと思います
-
- 2014年12月11日 22:12
- ご都合主義だからこそ良いと思います
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- 2014年12月11日 22:51
- いいと思います!!
次回も期待してますね!
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