八幡「ラブレター?」
- 2014年12月15日 23:10
- SS、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
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結局葉山の一人勝ちのような茶番のマラソン大会も終わり、今はもう2月だ。
まだまだ冷たい潮風はチャリ通には厳しい。いやん、ほんと、髪の毛が潮風で痛んじゃう……。
朝、いつものように登校し、何の変哲もない下駄箱を見やると
そこにあるブツが鎮座ましましていらっしゃった。
……きたな、久しぶりに。
高校初だが流石にこの程度で動揺なぞしていられない。何よりゴミよりマシだ。
俺は、さて今回はどんな悪戯だ? と興味半分、うんざり半分、
もしかしたら……という期待半分、頼む、本物であってくれ! 神様!! が全部まである。
しかし神はそこにおわさず、あったのはラブレターらしきものと一枚のメモ紙だった。
だが俺の予想は半分正解、半分外れていた。
それは正しくラブレターだった。
戸塚彩加宛ての。
× × ×
奉仕部 比企谷八幡様
こんな形で依頼してすいません……。
あなたのクラスメイトで、友達の戸塚彩加君へ、
同梱の手紙を渡してほしいんです。
勝手なお願いをして本当にごめんなさい。
× × ×
由比ヶ浜「 ヒッキー? 何してるの? 」
八幡「 っ!! 」
かろうじて大声をあげずにすんだ。心臓が刺し穿たれたかと思ったぜ……。
明らかに幸運B以下な俺は間違いなく死んでる。
妙な予想の外れ方に、思わず呆然としていたらしい。ore/stay 下駄箱。
即、この危険物を鞄に仕舞おうとしたのが間違いだったか、
鞄の口が開いてないことがスッポリ頭から抜けていた。
由比ヶ浜「 え、もしかして、ヒッキー今のって……? 」
慌てて制服のポケットに突っ込んだが、由比ヶ浜にしっかりブツを見咎められたらしい
八幡「 あー、いや、違う。お前が今想像しているようなものじゃ、ない 」
由比ヶ浜「 違うの……? あっ! いや、ごめんね! こんな変に問い詰めるみたいに!あはは…… 」
そう言いつつ、由比ヶ浜の目は未練がましく俺のポケットをチラチラと追っていた。
でもコイツは優しい子だ。手紙を書いた人のこともちゃんと想像出来るのだろう。
今も何か聞きたそうにお団子クシクシしたり、マフラーの先をいじったりしながらも、
いざ口を開こうとすると目を伏せ、下唇を噛み耐えている。
……あー、もうめんどくせーなー、これ。
いっそここで全部ぶちまけたい気持ちに駆られるが、ことは戸塚がらみである。
これが葉山や戸部、もしくは、万が一あの材木座宛のラブレターらしきものなら、
余裕でゲロっちまうんだが……。戸塚のことで適当は許されない。
とりあえず、二人してここで突っ立てても遅刻しちまうだけだ。
八幡「 んんっ……。教室行くぞ 」
由比ヶ浜「 え? あ、うん、そうだね……。ごめんね? ヒッキー 」
由比ヶ浜を先行させ、俺達はまんじりと階段を上っていった。
こんなに長い階段は久しぶりだった。
× × ×
教室につくと、由比ヶ浜はチラッとこちらを見て何か言いたげにした後、
三浦達のそばへ朝の挨拶をしながら駆け寄っていった。
周りの生徒がそんな彼女の朗らかな様子に目を奪われている隙に、
にょろりと数歩遅れて俺も教室に侵入する。
まさか、いの一番に見られたくない奴の片割れに見られちまうとは……。
例のメモには奉仕部名義を使っているのに、頼るのは俺だけ。
まあ、なんとなく察する。
高校生にもなれば、恋愛のリスクを最小限にと考えるのは自然だろう。
恋は、成就すればバンバンザイ! だが失敗すればこれほど惨めなこともない。
その事実を知る奴は少なければ少ないほどいい。
その唯一に、戸塚の友達で奉仕部の俺に白羽の矢を立てたと。
だからもしこれが本物なら、
依頼主的に由比ヶ浜や雪ノ下に知られるのは本意じゃないんだろう。
由比ヶ浜には悪いが、状況がきっちり終わってから説明するとしよう。
……しかし、俺ってちゃんと戸塚の友達に見えてたんだな。
まず手紙の差出人にそのことについて盛大に感謝したい。ありがとう!!
でもなー、戸塚の友人関係を完全に把握しているわけではないが、
俺より親しい奴なんて結構いると思うぞ?
そもそもなんで俺を経由させる意味があるんだ?
何? 俺は西船橋駅なの? ラブレターも乗り換えする時代なの?
普通に戸塚の下駄箱にIN! ではいかんのだろうか?
友人、この場合俺だが、俺が何か依頼人のことを戸塚に良く伝える効果を狙うにも、
無記名だからそもそもフォローのしようがない。
考えれば考えるほど意味がわからない……。そんな意味のわからんものの為に、
由比ヶ浜とあんな気詰まりな状態をいつまでも続けるのは御免被りたい。
なのでとっととこんな手紙は手放したいんだが……。
朝練をしていたのだろう戸塚は、結局ホームルーム直前まで教室に現れることはなかった。
× × ×
八幡「 ……ううむ 」
俺は今まで、教室の中での戸塚にそこまで意識を割いてなかったが、
まさかこんなに色々な人と親しげに話したり移動したりしているとは……。
よく考えれば俺にすら話しかけてくれる天使だもんな……。
俺が戸塚と教室で話す時は、いつだって天使降臨から始まる。
俺から戸塚に話しかけることは皆無だ。
今、そのハードルの高さが仇になっている。
こんなもん、休み時間にちょっと戸塚に人気のないところに来てもらって、
軽く事情を説明しつつパパパッと渡して終わり!だと思ってたんだが。
戸塚って女子にひっぱりだこなんだな……。
女子A「 うっわ! 戸塚君って腰細すぎ! 」
女子B「 ね! 脱がせてみたいよねー! 」
戸塚の背後から腰を抱きしめていた女子が、
片腕だけ外し戸塚から離れた。
そのまま片腕で戸塚のウエストを維持しつつ、
いたずらっぽく隣にいた別の女子に抱きつこうとしている。
女子A「 くらえ! 」
女子B「 ちょっとやめてよ!? 」
戸塚「 あはは、やっぱり運動してると違うのかな? 」
あれ? おかしいな……。戸塚は男の子なのに違和感がない。
むしろ戸塚が女子からラブレターを貰ったという事実の方に違和感を覚えてしまう。
これ男子からのラブレターなんじゃないの?
メモの文字もどっちとも取れるし。もしくは百合女子。
そっちのほうが余程しっくりくる光景が休み時間の度に展開される。
正直俺が割り込む隙間なし。
そう、すでにもう三時間目の後の休み時間なのである。
失敗した……。とっとと誰か使って戸塚を呼んでもらえばよかった……。
しかし、人選がなー。
俺が何か頼んで動いてくれそうな奴、大体トップカーストなんだよな……。
なるべく由比ヶ浜に接触したくないのに、頼めるのがだいたいその周辺。
ここは素直に昼休みに隙を見て渡す方がいいか……。
しかしあの戸塚にラブレターか……。
俺は戸塚がどんな返事をするのか、少しだけ気になった。
× × ×
四時間目の授業が終わると、俺は例のブツを懐に忍ばせ、まずは食堂へ足を運ぶ。
そこで適当な惣菜パン二個と、ホットのマックスコーヒーを買ってから、
テニス部の練習を眺めることが出来るいつもの場所へと移動する。
そして歩きながらも今回の一件について思案する。
戸塚は可愛い、が、それは決して男性として魅力がないというわけではない。
容姿は中性的だが、王子様タイプが好きな人にはそれがいいだろうし、
この学校に入学できた時点で頭も悪くないだろう。
テニス部の部長で、人望も十分ある。
本人も部をまとめる傍らスクールに通うなど努力も欠かさない。
性格は言うまでもなく天使。
そんな戸塚を好きな人がいても、全然不思議はない。
だが、俺は何やらモヤモヤしたものを持て余していた。
正直嫉妬がないとは言えない。いや、かなりある。
……嘘です、めちゃくちゃ嫉妬してます。
いやいや、そうじゃない、戸塚は男だ、落ち着け俺。
このモヤモヤの源泉は、今の戸塚に誰かさんを重ねて見ている、
そんな益体もない自分の妄想からで……っと何か今危険な思考をしてたな……。
一瞬、つい最近まで耳にしていた嫌な噂話や、
今朝の彼女の我慢する表情がフラッシュバックしてくる。
俺は目を閉じ、一回深呼吸、まだイラッとしてるな、もう一回深呼吸……。よし。
もう大丈夫、余計なこと考えずとっとと飯食ってやることやってしまおう。
しかし、いつもの場所にはすでに先客がいた。
× × ×
まだまだ外で食事するには寒い時期にもかかわらず、
弁当持参で駐輪場そばの階段に腰掛けているのは見知らぬ女子だ。
慌てず焦らず、先客の女子の視界に入らないよう駐輪場の影に移動して、
遠巻きにベストプレイスを眺める。ぼっち勢なのかしらん?
だが軽く観察するだけでも、
彼女が確たる目的意識を持ってあそこで食事しているのがわかる。
その女子はわざわざ簡易な敷物を用意し、下半身はクリーム色のひざ掛け、
上は紺をベースに、白兎のアクセントをあしらったケープを羽織り完全防寒。
その視線は熱心にテニス部の練習を眺めていた。
あっちゃー……。まさかこれ本人とバッティングしちゃってますか?
ラブレター書いた女の子が見てる前で、
見られていることを知りながらそのラブレターを想い人へ渡す……。
しかも渡す相手は女の子みたいな男の子、これもうわかんねぇな。
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コメント一覧
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- 2014年12月15日 23:16
- 由比ヶ浜 is GODDESS
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- 2014年12月15日 23:17
- 最後は雪ノ下と由比ヶ浜の手紙ってことしかわからなかった……
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- 2014年12月15日 23:19
- 流し読みしすぎてファーーwwwwって感じだったけど好きな奴は他の部員だったってことでFA
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- 2014年12月15日 23:30
- くっそつまんね
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- 2014年12月15日 23:32
- なんだろうこの頭の中にあるアイデアを出し切れていない消化不良感
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- 2014年12月15日 23:42
- ぐ…ぬ…情報が足りない…
結局手紙の内容は何だったんだ?
テニス部員が好きな下級生→誰かに仲を取り持って欲しい→テニス部部長の戸塚に頼みたい
→でもいきなり戸塚には頼めない→奉仕部ってのがあるらしい→奉仕部の比企谷ってのが友達らしい
→比企谷って人に頼もう→下駄箱に手紙
と穿った見方が出来なくはないけど、最初から戸塚の下駄箱に投書しろよになるし…
情報が足りんよ…
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- 2014年12月15日 23:42
- まあでも正妻は静ちゃん
BAD ENDがTRUE END
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- 2014年12月15日 23:44
- 俺の読解力じゃこの謎は解けない
誰か解説してくれ
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- 2014年12月15日 23:47
- 戸塚きゅんがラブレター入れたんだろ
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- 2014年12月15日 23:59
- ホットのマックスコーヒーに違和感が....
作中ではホットのマックスコーヒーのことをよくマッ缶と呼んでいた気が、最新刊でも雪ノ下から温かいマッ缶を貰うって言うシーンがありましたし
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