魔女「不死者を拾いました」
恋愛中心のスイーツ()ストーリーになる予定です。
あまり長くならないようにしたいと思います。
森の奥深くに入ってはいけません。
何故なら、森の奥には魔女がいるからです。
魔女は人を惑わし、人の心臓を食べてしまうのです。
子供「どうして魔女はそんな事をするの?」
牛が草を食べ、鳥が虫を食べるのと同じ事――魔女にとっては、それが当たり前の事だから。
人と似ていても、魔女は人とは違うのです。
子供「そうなんだ…」
子供「だけど、人にも色んな人がいるように」
子供「魔女にも、怖くない魔女がいるんじゃないのかな」
狩人「ヒッ」
魔女「…」
森で薬草を摘んでいると、たまたま人に遭遇した。
だけれどその人は私を見た途端、恐ろしいものに遭遇したかのように逃げ出していった。
魔女(あの格好は狩人さんかな…猛獣や魔物を狩るのが仕事なんだよね)
それなら私は、猛獣や魔物より恐ろしい存在ということか。
魔女(私、何か悪い事したっけ…)
思い返す。
人に危害を加えた事はないし、勿論心臓を食べた事なんて無い。
とはいえ、魔女が人を惑わし、人に危害を加えてきた歴史があるのも事実。
魔女(結局の所)
魔女だから――それが唯一で、絶対に崩す事ができない人間との壁。
不老不死である魔女は「気が向けば」別の物に転生できる。
最後の知り合いが転生してから何年、いや何十年間、ずっと私は孤独。人々から嫌われ、森の奥で隠れるように魔術の研究に没頭する日々を送る。
いっそ私も――そう思う事もあるが、私はまだこの世に未練を残している。
森にはよく落し物が落ちている。その落し物の中にある、本を読むのが私の楽しみでもあった。
その中でも私は、特に恋愛小説を好んだ。
王子と姫、幼馴染の男女、身分違いの恋、波乱万丈な恋――空想の人物の恋愛模様に、胸を躍らせていた。
そして思う。私を嫌う人間達はこうも感情豊かで、様々な生き方をしているのだと。
勿論それは人間の御伽噺。魔女である私が体験できるものではない。
だけれど物語に憧れを抱きながら、変わらない毎日を過ごすのも、悪くはなかった。
魔女「あぁ、そう言えば」
そろそろ研究に必要な花が咲いている頃だろうか。
私は支度をし、花の咲く滝の麓へと向かうことにした。
道中には魔物がいる。魔物は人を襲うが、魔女は襲わない。
魔女(今日はいい天気だなぁ)
人間では恐ろしくて歩けないであろう、魔物の徘徊する道を散歩気分で歩く。
こういう道ではたまに、魔物に襲われたであろう人間の死体が落ちている事もある。人間の死体の一部も、使おうと思えば研究素材になる。
だけど人間の体の一部で開発される魔術とは人を呪う物だったり、不幸を呼び起こすような物騒なものばかりで、私とは縁が無いものなのだ。
よって、死体が落ちていた時は大人しく手を合わせるだけにしておく。もっとも、魔女に手を合わされても迷惑なだけかもしれないが。
しかし今日は、そうではなく…
ガラガラッ
魔女「ん?」
ドザザーッ
魔女「…!?」
男「つっ…」
崖から瀕死の人間が落ちてくるなんてレアな体験だ。前例が無いせいで、どうすればいいのか本当に困った。
魔女(放っておいたら死んじゃうよね…)
魔女は人間に嫌われている。だからと言って見捨てるのは良心が痛む。
私はボロボロの彼に駆け寄った。
魔女「大丈――えっ!?」
そして、ありえないものを見た。
男「…」
彼の首は喉元をすっぱりと切られていた。
それは人間なら即死する筈の傷で、にも関わらず彼は脂汗を滲ませて苦しそうに喘いでいる。つまり――
魔女「貴方はもしかして――不死者?」
>つい先刻…
勇者「遂に追い詰めたぞ…!」
不死者「…ふん」
不死者「昔俺と戦った時と違い、お前はもう魔王と戦えるレベルになったんだろう?」
不死者「そんな勇者様が俺ごときにご執心とは、どうかしてるな」
勇者「黙れ!お前に敗北の屈辱を味わわせてやる!」
不死者「そんな事して何になる?それにわかっているだろう、俺に剣を突き刺した所で――」
勇者「黙れって言ってんだよ――ッ!!」
不死者「…ッ!!」
不死者「ふぅ、ふぅ…」
魔女(首の傷口が塞がっていく…)
喉が塞がってようやく呼吸できるようになったのか、彼は思い切り酸素を吸っていた。
人間から不死者になった者の特徴は外見的にはわからない。傷が塞がれば、只の人間の戦士に見える。
魔女(で、でももう大丈夫って事よね…私がやる事は特に)
不死者「ふ、ふふふ…ははははは!はーっはっはっは!!」
魔女「!?」ビクゥ
不死者「何回何十回何百回痛みを与えられても死ぬ事ができない!!あとどれ位死ぬような痛みを与えられながら生き地獄を味わわねばならんのだ、魔王オオォォ!!」
彼は盛大に笑いながら、憎しみの言葉を発していた。
その形相は狂気に満ちており…。
不死者「ふはっ、はははは…」
魔女「…ぃ、ぇぅ…」ブルブル
不死者「…ん?」
魔女「怖いよおぉ~」
もう泣くしかなかった。
私は長年1人でいたせいで人間慣れしていないけれど、特に男性慣れしていなかった。
その上この不死者さん、ちょっと目つきが怖い。
不死者「怖がらせて悪かったって…だからもう泣くな、な?」
しばらくなだめられた後、不死者さんは私の頭をポンポンと叩く。
それで私は少し落ち着いた。
不死者「そりゃ仕方ないよな…不死者なんて怖いよな」
そう言いながらも、不死者さんはとても気にしている様子。
魔女「い、いえ、不死者自体は初見でもないし、怖くないんですけれど…」
不死者「は?そりゃ変わったお嬢ちゃんだな」
魔女「えぇ、魔女ですから…」
不死者「魔女ォ!?」
魔女「」ビクッ
不死者「そうか…その額の刻印、魔女の刻印だったのか…!魔女の力なら…これでようやく…フ、フフフフ…!!」
不死者さんは私の刻印を見ながらニヤニヤ笑いを浮かべている。
不死者「頼みがある!!」ガシッ
魔女「!?」ビクッ
不死者「俺を殺してくれッ!!」カッ
魔女「怖いよ~」
またもや泣くしかなかった。
不死者「悪い…つい興奮しちまって」
魔女「いえ…こっちも不慣れなので」グスッ
不死者「こんな体になって10年、俺はいい加減死にたくなってきた。魔女なら何とかできるんじゃないのか」
魔女「えぇ~と…方法が無いわけじゃあありませんが…貴方を蘇らせた方に言う方が確実かと…」
不死者「…絶対死なせてくれん。あいつは俺の痛覚を残し、言うことを聞かなければ拷問にかける程性格が悪いんだ」
魔女「それ、性格が悪いって範疇を超えてますよ~…」
でも気の毒だ。そりゃあ、さっきのような凄い顔(思い出すだけで怖い)になるのも無理はない。
不死者「頼む。もううんざりだ」
不死者さんはそう言うと頭を深々下げてきた。
そんな事されるのは初めてなので、私は慌てる。
魔女「殺すと言うか…肉体を浄化させる方法は存在しますが」
不死者「本当か!」ガバッ
魔女「」ビクッ
魔女「で、でもそれは薬を調合する必要があるんです…。その材料を集めないと」
不死者「材料集めくらいなら手伝うから」
魔女(この人と材料集めするの…?)
正直この人は苦手だ。だけど私に救いを求めているなら、助けてあげたい。
魔女「そ、それじゃあ…今から行きましょうか」
不死者「あぁ…どこまで?」
魔女「すぐ近くの滝の麓です」
丁度いい所だった。
魔女「そこに咲いている花が、材料の1つです」
その後不死者さんと一緒に花を摘んで帰った。
この花は地面に強く根付き、摘むのに力がいるので、男の人の手があって助かった。
不死者「早くも材料1つ手に入れたな」
魔女「まだまだ集める物は沢山ありますよ~。でも、これで浄化の薬に必要な保存液が作れます」
不死者「その壺でやるのか?魔女、って感じだな」
魔女「えーと保存液の作り方は何ページだったかな…あった!」
不死者「難易度『低』か…」
魔女「あのぅ…恥ずかしいので、調合中はお隣のお部屋で待ってて頂けますか…」
不死者「あぁ」
不死者(調合ってどんな風にやるんだろうな…見てみたいが恥ずかしいんじゃ仕方ないな)
不死者(しかし、低難易度のものを作るのにわざわざ本を開くのか…)
不死者(まぁ真面目そうなお嬢ちゃんだし、きっと基本に忠実に…)
ズドゴオオォォォン
不死者「!?」
不死者(調合部屋から煙が…)
魔女「コホコホ」
不死者「おい、大丈夫か!?うわ、何だこの匂い!?」
魔女「あ、不死者さん」
不死者「まさか失敗したか…」
魔女「いえ、成功ですよ!」
不死者「…なぁ、それは」
魔女「え、保存液ですよ」
保存液「ヌメヌメ~」
不死者「…」
不死者「そんな新種のアメーバみたいな保存液があるかああああぁぁ!!」
魔女「ひゃあああぁぁぁ」ビクウウゥゥッ
魔女「グスッ実は私調合グスッ下手なんですシクシク」
不死者「怒ってない、怒ってないから泣くな、な?」
不死者さんは私の頭をポンポン叩く。
不死者「でも保存液作り直し必要なんじゃないのか?」
魔女「あ、汁だけを抽出すれば保存液として問題なく使えますよ」
保存液「ヌメヌメ~」
不死者「…何かいい気分じゃないな」
魔女「あ、こう見えてこの保存液は魂が宿っていないので、命を奪ってしまう心配はいりませんよ」
不死者「そうじゃなくて気持ち悪いってことでな…あぁ、まぁいいや、もう」
魔女「次の材料も近い所にあるので、今から…」
不死者「…風呂入ってこい」
魔女「え?」
不死者「爆発で汚れてる。その姿で外出できないだろ」
魔女「あ、はい」
魔女(確かに派手な爆発だったけど、私汚れてるかなぁ?)ジー
魔女(…)クンクン
魔女(…クサい)
魔女(いやあああぁぁ!!汚れてるなんて言ってたけど、私がクサいからだ!!もうイヤアアアァァァ!!)
お風呂場にはしばらく、私のすすり泣く声が響いた。
魔女「すみません長引いちゃっ…あら?」
不死者「おうお帰り」
調合部屋はさっきより片付いていた。
今度は不死者さんが汚れている。
魔女「お、お掃除して頂いちゃって!すみません、すみません!」ペコペコ
不死者「まぁ掃除は趣味みたいなもんだから。それより俺も汚れたんで風呂借りていいか」
魔女「えぇどうぞ!こちらです、ごゆっくり!」
彼をお風呂場へ案内し、調合部屋へと戻る。
本当に綺麗になった。爆発前も汚くはなかったけれど、もっと綺麗になった。
適当に
スポンサードリンク
ウイークリーランキング
最新記事
アンテナサイト
新着コメント
QRコード
スポンサードリンク