写真×プロジェクションマッピング。リコーのプロジェクターを使った「Light & Nature」
幻想的すぎる。
12月10日(水)〜12月22日(月)の間、リコーイメージングスクエア新宿で開催されている「Light & Nature 〜Photography and the Art of Projection」。これは写真家の金城真喜子さんと、NAKED Inc.代表の村松亮太郎さんのコラボレーションで実現しています。NAKEDといえば、東京駅のプロジェクションマッピングや新江ノ島水族館のナイトアクアリウムを手がけるクリエイティヴ企業。昨今のプロジェクションマッピングブームの火付け役と言える存在です。
ただ、以前から「プロジェクションマッピングは、映像をフレームから出す手段。何かをフレーミングしてしまうのではなく、そこを越えていくような表現がしたい」と語っていた村松さん。今回は、写真に光と映像で彩りをさらに与え、息を吹き込んでいます。
また、同時に空間をデザインすることも手がけるNAKED。写真とマッピングだけでなく、植栽を施してあるので、影、揺らぎまでをも表現対象になっています。このような細部にわたる演出によって、より強い「生命」の力を宿しているように感じられますよ。
今回主に使われているのはオフィスで使うような一般的なプロジェクターです。普通、プロジェクターと聞くとPCの画面を投影するイメージが強いと思うのですが、こんな使い方もできてしまうんですね。
また、Light & Natureではリコーの新技術「円筒プロジェクションマッピング」が初公開されています。
これは1枚の大きな映像を、複数台の超短焦点プロジェクターを使って円筒に投影する技術です。円筒ですから360度の映像体験をもたらすことができ、見る者に迫力と没入感をもってしてアプローチすることが可能です。一般的にプロジェクションマッピングというと、建物、壁面といったものが主流ですが、今後の表現の幅を広げる新技術となりそうです。
さて、本イヴェントのテーマは「記憶の変容」です。金城さんは「Aという事実は、いつの日かβという虚構に変わることだろう」とすら述べているほど。とはいえ、写真というメディアは記憶をとどめておくイメージがありました。そこで、ご本人にお話を伺ってきました。
金城さん:写真は確かにその瞬間を切り取るツールです。でも見る者…つまり人の記憶自体は一定のものではありませんよね。今だってもう次の瞬間にはもう過去になってしまうわけです。写真自体は、確かに「過去の一瞬」ではあるものの、私たちの記憶はその過去を変えてしまうんです。写真は、Aという事実にたくさんの想いを結晶のようにかざりつけたβを作り出すトリガーのようなものだと思っています。
今回、NAKEDさんと一緒に展示をさせていただくことで、私の写真がまた変わりました。私がAという答えを、写真を介して提示したところにA'の解答が返ってくるようでは、なんだかつまらないでしょう? NAKEDさんは映像をして、Aの答えにβで返答してくれたんです。作り手として自分の作品の新たな可能性、それも予測しなかった化学反応のようなものがあると、とても嬉しいですね。
たとえば、この花はとても和のテイストが強く、私の作品ではあまり登場しないものです。でも、この花を見ていると昔学んだ古文を思い出すようで…そんなことをNAKEDさんにはお話していたんです。それがこのような形で徒然草の言葉とともに表現されるなんて思ってもいませんでした。
こうやって私の記憶もまた新しいものに変わっていくのが面白く感じます。それに、写真自体だって物体として劣化していくもの。つまりは変容しているんです。記憶の変化とは時間軸が異なりますが、どんなものだって変わりゆく。そういうことも表現できたらなと思っています。
アーティスト同士が、コラボレーションすることで写真・映像という各々のフレームが曖昧になったこの展示。記憶だって常に変化し、曖昧なものです。しかし、どうしてひとつの記憶を「これが自分の過去」というフレームに押し込みたくなってしまうのでしょうか。
2つの表現がフレームを超える時、それに対峙する自分の感覚すらも曖昧だと気付かされます。どこか緊張感がありながらも、その美しさに心地よさを覚える空間。不思議な体験です。
期間:2014年12月10日(水)〜2014年12月22日(月) ※休館日を除く
場所:リコーイメージングスクエア新宿
東京都新宿区西新宿1-25-1新宿センタービルMB
営 業 時 間:10:30〜18:30 (最終日は16:00まで)
入場料:無料
source: Light & Nature ~Photography and the Art of Projection, リコー
(嘉島唯)