【モバマスSS】「ミラクルテレパシー」
※堀裕子メインのSSです
※オリジナル設定が多分に含まれておりますが、二次創作ということでご容赦ください
「おとーさん、おとーさん! ね、ね! みてみて!」
「みてって…なにをだい?」
「テレビだよ、テレビ! この人、すごいんだよ! 帽子からハトさんを出すの」
「おー、そうか。…今は特番でこういうのばっかりだな」
「ね、すごいよね!」
「お父さんもできるぞ」
「え!? ほんとう!? おとーさんも、ハトさん、出せるの!? …でもおとーさん帽子持ってない」
「ハトは出せない」
「え? じゃあ、なになら出せる?」
「そういうのじゃない。ちょっと待ってろ…よっ、と。ここに、スプーンがあるだろ?」
「うん」
「これを、曲げる」
「えー、うっそだあ! スプーンはね、かたいんだよ」
「でもお父さんなら曲げられる。いいか、見てろよ…むむむむ…」
「ぜったい、できっこないよ」
「むむむ…むん!」
「! まがった!? さ、さわらせて!」
「いいぞ。ほら」
「すごーい! ね、おとーさん。これどうやったの?」
「実はな、お父さんは…超能力者なんだ」
「ちょうにょう、りょくしゃ?…ってなに?」
「超能力者、な。簡単に言えば、普通の人にはできないことをやってしまう人たちのことだ。たとえば、スプーンを曲げたり」
「じゃあ、ほかにもできる!?」
「今日は無理だ。力を使い果たしちゃったからな」
「えー」
「そうだな…今度色々買ってくる…じゃない。今度、お父さんの真のハンドパワーを見せてやるよ」
「今度って、いつ?」
「今度は、今度だよ」
「おとーさん、あんまりお家にいないからなあ…」
「う…それはすまん。だけど約束はしよう」
「ほんとに? やくそくだよ?」
「ああ。約束だ」
--
事務所
堀裕子「きてます」
渋谷凛「なにが?」
裕子「サイキックな…パワー的な何かが、ですよ。私のこの右手の近くにむんむんと」
凛「また適当なこと言って…」
裕子「いえ、今日こそ私の超能力がお見せできるはずです! プロデューサー!」
P「何だ?」
裕子「スプーンをください!」
凛「そんな都合よく持ってるはずが…」
P「ほら」ヒョイ
凛「あるの!?」
P「こういうことがよくあるからな…一応常に持ち歩いてるんだ」
凛「よくあるんだ…だったら裕子がいつも持ってればいいんじゃない?」
裕子「昔は持ち歩いてたんですけどね。ただ、自分で持ってるスプーンを曲げても、『なにか細工でもしてあるのかな?』なんて思われるじゃないですか! 曲げるのは他人のスプーンに限りますよ!」
凛(迷惑な話だ…)
裕子「そんなことより、見てください。今プロデューサーから貰ったこのスプーンを…むむむ…」
凛(あれっていつものスプーン曲げだよね)ヒソヒソ
P(だろうな。厳密にいえばスプーンは曲げられないんだけど)ヒソヒソ
裕子「むむむむむ…うおおおおおおお……」
凛「す…すごい。なんだか今日はいつもと違う感じがする」
P「これはひょっとしたらひょっとするぞ! 通算999回の失敗もこの日のためにあったのか!」
裕子「うおおおおおおお…わああああああ!」
P「わあああああああ!」
凛「プロデューサー、うるさい」
裕子「ムンッ!」
P「す…スプーンは!?」
スプーン「」マッスグー
P「だよな。解散」
凛「あ、私レッスンの時間だ。いってきます」
P「おう気をつけてな。1000回目…っと」カキカキ
千川ちひろ「プロデューサーさん、遊んでないで仕事してくださいよ…」
P「すみません」
裕子「曲がらない…いやまさかそんな…さてはプロデューサー、このスプーンが曲がらないように細工しましたね!?」
P「どんな言いがかりだよ!」
P「あのな、世間でスプーン曲げだなんだってやってる人たちはもれなく、あらかじめ準備をしてるんだよ。本当にタネも仕掛けもなくやるやつがあるか!」
裕子「それは、手品師やマジシャンと呼ばれる人たちでしょう! 私はさいきっくアイドル、エスパーユッコですよ!? タネも仕掛けも必要ありませんよ!」
P「必要大ありだよ! 手帳の正の字増えてく一方だよ!」
裕子「むー……」
ちひろ「ちょうどその手品師さんがテレビに出てますよ。ほら」
P「あ、ほんとだ」
裕子「! 違いますよ! この人は手品師なんかじゃありません! 立派な超能力者です!」
P「この人が? やってることは手品と変わらないけど…今やってるのは…トランプの柄当て、か?」
裕子「自分で言ってました! 超能力者って!」
P「そ、そんな理由で」
裕子「まあ自分では喋らないんですけどね。司会の人が紹介するんですけど。とにかくこの人は凄いんですよ! クリアボヤンス、テレパシー、テレポート、なんでもござれ、です! 最近テレビ出演が多いんですよねー。わああ、私もこんな超能力…欲しい…っ」
P「なんかベネチアの仮面舞踏会で見るようなマスクつけてるな…」
ちひろ「表情は見えませんけど、お年は結構召してそうですね…というかプロデューサーさん、時間大丈夫ですか?」
P「ああ、ちょうどいいくらいの時間です。裕子、行くぞ」
裕子「ふっふっふっ…稀代のサイキッカー、エスパーユッコの実力をまざまざと見せつける時がついにきましたか…!」
P「このあとの収録もそういう感じでやってくれれば大丈夫だから」
--
裕子「どうでした?」
P「どうでしたって、何が?」
裕子「さっきの収録ですよ! プロデューサーから見てどんな感じでした?」
P「ああ……まあ、ややウケだったよな」
裕子「ふふふ…! 私のサイキックパワーにかかれば、ややウケなんてお手の物ですよ」
P「ややウケでいいのか…」
裕子「…あれ? ない…ない!」
P「? どうした」
裕子「プロデューサー! 今すぐさっきのスタジオに戻ってください!」
P「ええ…もう事務所すぐそこなんだけど…どうしたんだ」
裕子「忘れ物…いえ、サイキック忘れ物です!」
P「ただの忘れ物だろ」
裕子「ええい、こうなったら私のサイキックテレポートでひとっとびです! いきますよー…」
P「おおい! 走行中の車のドアを開けようとするな!」
裕子「だってここでテレポートしたら、天井に頭ぶつけちゃいますよ」
P「ルーラかよ…すぐ戻るからおとなしく座っててくれ」
--
裕子「いやーすみませんでした! 控え室に置いてありました!」
P「あったのなら良かったけど…それ、なんだ?」
裕子「これはですね…いや、わかりました。今、お伝えします」
P「随分と勿体ぶるな」
裕子「ムムムン! …ということです」
P「いや、どや顔で誇られてるところ悪いけど、全然わからない」
裕子「えー!? 今テレパシーで送りましたよ!」
P「俺、というか一般的な人はテレパシーなんて使えないんだ」
裕子「私のプロデューサーなら、超能力の一つや二つ、使えて当然ですよ!」
P「裕子だって使えないだろうが! …じゃなくて! だから、その手に持ってるのはなんなんだよ」
裕子「むー…これはですね…私のお守り、ですね」
P「お守り?」
裕子「はい。あの…私のお母さんとお父さんの話はしましたよね?」
P「ああ…」
P(裕子が事務所に所属するのが決まったとき、俺は裕子と一緒に、裕子の母親の元へあいさつに行った)
P(その帰り道、裕子から聞いた。裕子のご両親は数年前に離婚をし、裕子は母親に引き取られ二人で暮らしていたのだという。そしてアイドルになった現在では、母の元を離れ、こっちで暮らすようになった)
裕子「お父さんは仕事が忙しくて、あまり家にはいませんでした。パソコンを使う仕事だったみたいなんですけど…」
P「パソコンを使う仕事、とはまた曖昧だな」
裕子「それでもたまに家にいるときには私と遊んでくれました。お父さんは色々な超能力を見せてくれたんです!」
P「そういうことか」
裕子「え?」
P「いや、なんでもない」
P(多分、今の裕子があるのは、そのお父さんの影響が大きいのだろう。娘を喜ばせるために、マジックの小道具を買い、披露していたのではないだろうか)
P「それで、お守りはどう関係してくるんだ?」
裕子「えっとですね…お父さんの超能力の一つに、トランプを当てるというものがありました」
裕子「私が一枚のトランプを選んで、それを戻そうとしたとき…お父さんの職場から電話がかかってきたんですよね」
P「ふむ」
裕子「それで、お父さんは急遽、職場に行くことになりました。『帰ってきたら続きをやるから』といって」
P「そういうことはよくあったのか?」
裕子「そうですね…電話がくることはよくありました。それで、お父さんが帰ってくるのは私が寝ているような時間でした。次の日には急遽決まったという出張で家を出て行って…トランプのことはうやむやになってしまいました」
P「それはまた運が悪いな」
裕子「私もすっかり忘れてたんですけどね! 私がアイドルになるって決まったとき、部屋の掃除をしてたら、一枚のトランプが出てきたんです。初めはなんで一枚だけなんだろう、って思ったんですけど、そのときのことを思い出しました」
P「なるほどな。つまりそのお守りの中身は、そのトランプってわけか」
裕子「さすがプロデューサー! 察しがいいですね!」
P「お父さんとは、もう会ってないのか?」
裕子「会ってないですねえ。それに、お母さんは、私とお父さんが会うのを望んでないんじゃないかな」
P「どうしてそう思うんだ?」
裕子「それは…さいきっくエア・リーディングです!」
P「お、おう」
P(言い方はふざけているようにも思えるが…裕子は裕子なりに、母親の複雑な思いを敏感に察知しているのかもしれない)
裕子「ただ、ほんのちょっぴりだけど…思ったりもするんです」
裕子「お父さんに、会えたらなあ、って」
--
P「家庭の事情に首を突っ込むのって、どう思います?」
ちひろ「あまり、いいことではないんじゃないですか?」
P「ですよね」
ちひろ「少し休憩しますか。私、コーヒー入れてきますね」
P「ああ、ありがとうございます。いくらですか?」
ちひろ「お金なんて取りませんよ!」
P「ええ!? ちひろさん正気ですか!?」
ちひろ「いや、そ
コメント一覧
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- 2014年12月17日 23:58
- なんていうか...ユッコって人に元気をくれるよね
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