サンタ「おーい童貞!プレゼントだぞ~♪」
- 2014年12月22日 23:10
- SS、神話・民話・不思議な話
- 4 コメント
- Tweet
サンタ「いえっ、これも仕事っスから」
J( 'ー`)し「あらあら、若いのに偉いわぁ」
サンタ「いえいえ♪ところで、タカシ君います?」
J( 'ー`)し「ごめんなさいねぇ。実は今日いないのよ」
サンタ「えっ、クリスマスなのに?」
J( 'ー`)し「そうなのよ。なんか用事があるから帰って
これないって」
サンタ「そうっすか…」シュン
くれないかしら?」
サンタ「見て来るって……タカシ君をですか?」
J( 'ー`)し「ええ。もしかしてあの子道に迷ってるかもしれないし」
サンタ「うーん…」
J( 'ー`)し「お願いっ♪」
サンタ「むー、他ならぬカーチャンさんの頼みなら仕方ないっすね」
J( 'ー`)し「ありがと♪」
J( 'ー`)し「待って。今地図を渡すから……はいコレ」ガサッ
サンタ「どもっ」
J( 'ー`)し「じゃ、あの子よろしくね?」
サンタ「はいっ!ちゃんとプレゼント渡して家まで連れて帰ってきます」
J( 'ー`)し「期待してるわ♪」
サンタ「あいっ」
トコトコトコ
サンタ「えーっと場所は……と」ガサッ
サンタ「げっ、意外と遠い?」
サンタ「タカシの奴いったいこんなトコまで何しに…」
サンタ「まさか彼女とクリスマスパーティーを!?」
サンタ「……いや、ない。ないって!」
サンタ「あの根暗で引き籠りなタカシに彼女なんか…」
サンタ「…………でも」
サンタ「どんな顔してプレゼント渡せば良いんだろ…」
サンタ「……」
サンタ「だ~~~!だからないって!」
サンタ「そうそう!あんなの好きになる奴なんてこの世であたしくら……」
サンタ「ちっ、ちがうもん!別に好きなんかじゃ!」
サンタ「むぅぅぅぅぅぅ!」
サンタ「どうせ見苦しい童貞どもと闇鍋でも囲んで泣きながら『うめえ、うめえ』
って頬張ってんのよ!」
サンタ「そうに決まってるもん!」
ヒソヒソ ネーアノオネエチャン サッキカラヒトリゴト シッ ミチャイケマセン
サンタ「あ……」
サンタ「~~~!!!」
サンタ「ふんっ!タカシの馬鹿っ!」
サンタ「え~っと、ここであってるよね?」
ガサッ
サンタ「うん、間違いない」
サンタ「でもここってどう見ても……」
シャランラーン♪
サンタ「ラブホ、なんですけど…」
サンタ「なんかこの地図、よく見たら部屋番号が書いてある?」
サンタ「0721号室…」
サンタ「ココにタカシが!?」
サンタ「ど、どうしよう…」
サンタ「もし彼女と性なる夜を過ごしていたら…」
サンタ「……」
サンタ「考えても仕方ないか」
サンタ「突撃あるのみっ!」
途中フロントの係員に止められたが、「あたしはサンタだから!」
と、大きな声で自己紹介したら意外にもすんなり通してくれた。
便利だね、サンタって。
とにかく、彼女はもう止められない。
エレベーターに颯爽と駆け込む姿はまさしく、世紀の大泥棒
ルパンを彷彿とさせる身のこなしだった。
そしてついに!
彼女はタカシの待つであろう0721号室に辿り着く。
「ちーっす。お届けものでーっす」
彼女は部屋の中を窺いながらノックした。
ポップな、しかしどこか沈んだ声のトーンのまま。
彼女の沈んだ声のトーンからも、その表情からもそれを読み取る
ことはたやすい。タカシの事が気になって仕方ないのだ。
無理もない。
彼女とタカシは幼稚園に入る前からのご近所付き合い、所謂
「幼馴染」という奴だった。
しかし、幼馴染とは言っても彼女たちのそれは漫画やゲームに
出て来るような腐れ縁の友達付き合いなんかでは決してなく、
ただ毎年、クリスマスに彼女がタカシにプレゼントを渡しに行く
だけというシンプルなものだった。
それ以外の関係は一切なかった。
今までこんな気持ちにならなかったのは。
だからなのだろう。
いつしかサンタとプレゼントを待つだけの子供という間柄で
満足してしまったのは。
しかし、だからと言ってそのことで彼女を責めるのは酷である。
なぜなら……。
なぜなら、プレゼントは子供にしか渡せない。
もしタカシと彼女が恋に落ち、関係を持ってしまったら!?
もう彼女はタカシの前に姿を現す事が出来ない。
タカシが『子供』じゃなくなるから!!!
出来なかったのだ。
「…………」
しかし、それもこうなってしまってはいよいよ同じか。
ラブホテルの一室にタカシが居るという時点で答えは出ている
ようなものだ。
もう、彼は子供じゃないのかもしれない。
「ねえ、タカシ。聞こえる?あたしの声」
彼女はドアに向かって声を掛ける。
これが最後かもしれないから。
これでもうサヨナラかもしれないから。だから……。
「ずっとずっと、ず~~~っと大好きだった」
「あんたは知らないかもしれないけどさ。あたしが初めてあんたに
プレゼント渡しに行った時からずっと……」
「でも、もうサヨナラだね。タカシ」
彼女は言った。
頬には涙が伝っている。
「タカシ……あたし、あんたを好きになって良かった」
そうして、彼女は部屋のドアを開けた。
タカシに最後のプレゼントを渡しに行く為に。
しかし、彼女の目に飛び込んできたのはさっきまで自分が想像、
いや妄想していたものとはまるで違う光景だった。
タカシは縛られて……縛られて、一人悶え苦しんでいた。
「ちょ?あんた何やってんの?」
慌てて駆け寄るサンタ。
「ぷはっ!?はー、はー、はー?」
口を塞いでいるガムテープを外してやると、タカシは大きく
息を吐いた。
「し、死ぬかと思ったぁぁぁぁ……」
半泣きである。
「あ、あんがとなぁ。マジでもうダメかと思ったよ」
何が何だか分からない。
「ちょっと聞いて良いかな?」
「おう、なんでもどうぞ。でも出来たら縄を解いてからにして
ほしかったり」
「黙れ」
「あ、はい……」
「はぁぁぁぁぁぁ……」
彼女は思いっきり溜息を吐いて、それから
「ここで何してたの?」
と、聞いた。
「あ、あぁ実は俺もよく分からないんだ。家で漫画読んでたと
思ったら気ぃ失って気が付いたらココに……」
といった、良く分からないものだった。
「本当?」
「信じてくれよぅ。俺だって被害者だぜ?」
サンタは顎に手を当て、考える仕草を見せる。
「となると、考えられるのは……あっ!」
だが考えるまでもなかった。
「もしかして、カーチャンさんが仕組んだの、コレ!?」
答えは初めから分かり切っていた。こんなの手の込んだ誘拐、
実行するのはあいつしかいない。
そこまで考えが及んだ所でサンタは理解に苦しんだ。
カーチャンはタカシが子供じゃなくなったら、あたしとはもう
会えなくなるのも分かっている筈。
だったらなんで?
もしかしてあたしがタカシにとって邪魔だったから?
いや、いくらなんでも……。
「ああ、うん。あんたのお母さんから地図貰ったから……」
「ふーん。あっ、それよりさ。今日は……」
「分かってる。だからあたしがいるんでしょ?」
「へへっ」
サンタは取りあえずこの事は一旦胸にしまって置くことにした。
後で考えよう。
それよりも、こうして今年もタカシにプレゼントを渡せた事だし、
来年もまだ渡せそうなのは間違いない。
彼女にとってはそれだけで十分だった。
この袋、実に便利な構造になっており、プレゼントを渡そうとする
相手が欲しいものを、どこからともなく届けてくれるという優れもの
なのだ。
「えーっと」
「わくわく」
タカシは目を輝かせている。
先程まで死にかけて、現在もまだ縛られていて、しかもここはまだ
ラブホテルの一室だというのにプレゼントをせがむという、何とも
楽天的な男である。
「あれ?」
「どしたの?」
「なんか、届かない」
「え~~~?」
「おかしいな~」
「そんな、楽しみにしてたのに……」
それはあたしも同じよとサンタは言いたかった。
毎年この為だけに存在していると言っても過言ではないのだ。
しかも彼と会えるのはプレゼントを渡すこの瞬間のみ。
コメント一覧
-
- 2014年12月22日 23:18
- ケツを気を付けないとな
-
- 2014年12月22日 23:33
- 嘘は最低。作者は輪廻いっぺん廻った方がいい
-
- 2014年12月22日 23:40
- これは見事な叙述トリックだ!まんまと騙されたぜ(適当)
-
- 2014年12月22日 23:52
- なんだ……ホモか…(安心)