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人間は死後、4時間から12時間の間に筋肉の硬直が始まる。それは首から始まり、四肢がありえない方向に曲がったりする。頭が硬直すると、まるで生きている人間が鳥肌がたつかのように、毛が逆立っていく。
その後全身の細胞が最後の仕事を成し遂げ、体のメカニズムが徐々に停止する。遺体はこれ以上年をとることはないのだ。
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デンマークのオルフス大学病院の病理学協会の礼拝堂では、死者を受け入れている。服を着せ、髪をとかして、棺の中に彼らを安置すると、残された者は逝ってしまった人に最後の別れを告げることができる。
ここでは老若男女の区別なく、皆、氷の上に横たわっている。もう彼らは気にすることもない。不運だったかもしれないが、そのときが来たから、ここにいる。この女性は自宅で亡くなっているのが発見された。解剖され、犯罪の被害者ではないことが確認されると、まもなく服を着せられ、棺の中に安置される。
これら写真の死者たちは、あえて匿名にされている。デンマークの写真家、キャサリン・エルトマンの写真集 『死ぬことについて』 は、死者それぞれの物語ではなく、死は至るところにあるということを示そうとしている。それがこの一連の写真がとても心を打つ所以だ。
それぞれが歩んできた人生の物語も含めて、ここまで死者に寄り添い、すべてを赤裸々に写真を撮ることで、エルトマンは、観察者、そして横たわる死者としての見る者にモルグでの居場所をつくる。
縫合された胸、握り締める途中で止まった手、しみの浮いた頬に、自分を投影しない者がいるだろうか? 遺体袋に入れられ、最後には火葬場で炎に包まれることを考えない者がいるだろうか? 死を見つめずに、わたしたちはどうやって生をまっとうすることができるというのだろう?
このプロジェクトは、わたしたちがめったに目にすることのできないものをあえて見せることによってタブーを打ち破ろうとしている。確かに死は直視しがたいものだが、同時に女性が出産で新しい命をこの世に送り出すときのように美しいものでもある。どうにも理解できない命の終わりという現実となんとか折り合いをつけ、この世界でわたしたちが生きている時間がとても貴重であること、生きている間の本当の問題を、見る人に思い出してもらいたいのだ。
エルトマンとジャーナリストのリサ・ホーナングがこのプロジェクトを進めることができたのは、オルフス大学病院が写真撮影を許可したからだ。
この世で絶対的に確実なことは、わたしたちは皆いつか死ぬということだ。まぎれもない事実だし、最大の疑問でもある。それは、死後になにが起こるのか誰もはっきり言えないからだ。だから、死について語ることは難しく、遺体をシーツの下に隠し、病院の地下の冷たい廊下の先にある、専用の霊安室に押し込めて、ひと目にふれないようにするのだろう。自分自身の目で見たら、どう思うだろう? 遺体はすぐに腐敗し始めるため、バラバラになりやすい。まずは冷たく硬くなり、腐り始め、しまいには生きている間にお世話になっていた骨組みだけとなる。
火葬場で棺が燃やされる。花は取り除かれ、カードや写真などはそのまま一緒に巨大な窯の中で850℃で焼かれる。約1時間半ほどで遺体は灰になる。骨のかけらが焼け残っていたら、砕いて細かくされ、壺の中におさめられる。この骨壺は地中に埋められるが、灰は海に散骨されたりすることもある。
ひとりの母親が、家族に見守られながら棺におさめられる。小さな礼拝堂で儀式が執り行われ、ここではあらゆる宗教がオーケーだ。キリスト教もイスラム教もヒンズー教も皆それぞれ独自の儀式があり、最善の方法で故人に別れを告げる。
壁にかかっている垂れ幕にはラテン語で“ここで死者は生者を助ける”と書かれている。遺体が解剖に回され、医師が死因となった病気を特定するとき、この言葉は運搬人たちにその仕事の重要性を思い出させてくれる。解剖は死者が生前に許可を与えていなければ、遺族の同意を得て行われる。
遺体の体には青や赤茶の死斑が出る。細胞がその役目を終えた証拠で、全身を流れなくなった血液が体の下になっているほうにたまってしみになるのだ。
爪先につけられたラベルは、死者の重要な基本情報がしるされている。ラベルがオレンジ色なら、この遺体は救急カンパニーのファルクによって搬送されてきたことを意味し、グリーンならば、病院から運ばれてきたことを示している。いつ死亡したのか、解剖が必要かどうか、氏名と社会保障ナンバーがわかるようになっている。
棺に入るときに身に着けたい服の希望がある場合もあるが、たいていは遺族が決める。なにも決まっていない場合は、礼拝堂が経帷子を提供する。腕の後ろの背中がカットされていて、横たわる死者に簡単に着せることができる。生まれたままの姿でという希望もある。
遺体には毛布がかけられ、死後6時間以内に医師が、呼吸や心臓が完全に止まっているか、死斑や硬直といった臨床的な死のしるしを調べる。オルフスの礼拝堂では、赤い紐は使われることはないが、かつてはあった。万が一、死者が目覚めたら、毛布の下から助けを呼べるからだ。
解剖のとき、死者は恥骨から喉までメスを入れられる。胸や腹の大きなうつろからあらゆる臓器が切り取られて調べられ、脳も頭蓋から取り出されて同様に調べられる。
解剖が行われると、台や床はホースの水と洗剤できれいに洗浄される。髪を整えてもらう男性。これからシャツを着せられ、髭を剃られて棺の中に安置される。親戚にその姿を見られなくても、棺の蓋がしっかりとねじ止めされるまでは、びしっと決めておかなくなくてはならない。
チャペルで儀式を指示するマイケル・ピーターセンは、本来ならばまだ死ぬべきではない、あまりにも若い人が棺に横たわるのを見るのは忍びないという。まだまだたくさんのことが経験できたはずだし、幼い子どもを残して旅立ったのかもしれない。だが、生まれてくるのと同じように、死はごく自然なことで、見ないふりをして素通りするわけにはいかないのだ。
via:beautifuldecay・原文翻訳:konohazuku
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コメント
1. 匿名処理班
まさしく「memento mori」だな
2. 匿名処理班
どうしてもう動かないってだけで人形みたいに見えるんだろうか…
3. 匿名処理班
前日、葬式で遺体みたけど、生前と大違いだったな、あんなに老けて小さくなってるとは、遺影とあまりに違うんだよ。
4. 匿名処理班
日本の解剖率の低さが異常な事思い出した。警察のさじ加減で有り得ない判断下すのやめてほしいわ
5. 匿名処理班
因みに死後硬直からさらに時間がたつと
自前の消化酵素で肉が溶けて緩解、液化する
自己融解っていうんだよ!豆知識!
まあ今回の記事とあんま関係ないけど☆
6. 匿名処理班
この前、婆ちゃん見たからもう良いや。
7. 匿名処理班
死者に触れることをお勤めにされている人のことは、
個人的にだがとても尊敬している。
「もはや動かない人間」というだけで、
とてもじゃないが自分はもう触れることができない。
死者に対して失礼なのは重々承知なのだけど……
だからそれを常々している人には頭が上がらない。
8. 匿名処理班
連続して身内を亡くしたが2回もやると遺体も慣れてしまう
それでも骨になったときにはショックがきつかったな
9. 匿名処理班
パルモたんのテキストが胸に響く。とても練られた、心に迫る真摯な文章。
カラパイアやザイーガがこれだけ支持されるのは、奇天烈なネタがたくさん網羅されているというのみに非ず。それをきちんと読者に届けようとするまっすぐな意志と、パルモたんの文才に拠るところも大きいと私は思う。
今年も更新お疲れ様でした。
私の毎日の楽しみになっています。
この記事、いろいろ考えさせられました。
パルモたんよいお年を!!
10. 匿名処理班
死体が怖いって思うのは動かないはずの人形やぬいぐるみが動いたら怖いッて思うように
動いてたはずの人間が動かなくなったから怖いって思うのかもしれない、と
自分は結論づけてる
11. 匿名処理班
亡くなった父の体に触った時が一番死を実感したかな
もう動かないからリアリティがないってのもあるけど、遺体ってここにも書いてるとおり結構綺麗にしてくれてるんだよ
けど火葬場で最後に棺の中の父の顔に触れた時、硬さとか冷たさとか文字通り「生気のなさ」をまざまざと実感して、ああ本当に死んじゃったんだなって一気に我慢できなくなった
お墓参りってそれまで退屈な時間だったけど、1人の人間が死んで、燃えて灰になって、ちっちゃい骨壷に収まって埋められてるのがお墓なんだって本当の意味で気づいた
12. 匿名処理班
>>10
俺も身近な人が亡くなるまではそう思ってたけど親父の亡骸を見たとき悲しい気持ちとは別になぜだか怖く思えることがあったんだ
たぶん自分にもいつか来る死への恐怖感が生物として本能的に働いたんじゃないだろうかと考えてる
登場人物の死に様で怖がらせるホラー映画がまさにその表れだと思う
13. 匿名処理班
死んだじいちゃんを思い出す
もっと孝行しておけばよかった
14.
15. 匿名処理班
じいちゃんが亡くなった時、その手に触れて、あんまり冷たくて硬いからビックリした。金属みたいだった。
もうじいちゃんはヒトじゃなくてモノなんだ、って悲しくなっちゃったの思い出した。
16.
17. 匿名処理班
産まれたからにはいつか死ななければならない
いつも目を反らして居るがものすごい恐怖だ
常に考えていたら壊れてしまいそうだ