1: ◇pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:17:40.45 ID:j8N3Fjo60


  「なぁ……エディ」

  「こりゃ、どういうことだ?」


エディ「オレに聞くなよ、トム」

エディ「こっちだって聞きたいぐらいだぜ」

エディ「だろ? ジム」


ジム「ハンッ、俺は気にしちゃいないよ」

ジム「なっちまったことをウジウジ考えるほど」

ジム「テメェみたいに、身長も肝っ玉も小さくないんでな」


エディ「あんだと?」

エディ「元はといえばお前のせいじゃねぇか!」


ジム「なんだぁ? 俺が悪いってのかよ」


エディ「ああ! そうだね」

エディ「オメェの謹慎処分を取り消してやろうと、校舎の掃除を手伝ってやったのに」

エディ「また、訳の分からねぇ世界に飛ばされちまったんだからな!」






20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) 2014/11/19(水) 00:48:44.53 ID:j8N3Fjo60

一応、続編

王様「そなたが伝説の勇者か……」アメフト選手「…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1395463816/

登場人物の紹介とかはWikiに載せておく
キャラが分からなくなったら、覗いてみることをオススメする




元スレ
学園長「ようこそ、王立魔導学園へ」 アメフト選手「またかよ……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416323850/


2: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:18:32.82 ID:j8N3Fjo60


ジム「お前らが勝手にやった事じゃねぇか」

ジム「俺から手伝ってくれなんて頼んでねぇよ」


エディ「なにっ! この……!」


トム「止めろ、エディ」


エディ「でも! トム」


トム「いいから、止めとけ」

トム「そいつを殴ったところで何の解決にもならねぇ」


エディ「チッ……分かったよ」

エディ「ジム、今日のところはトムに免じて許してやるからな」


ジム「フンッ、テメェの勝手な思い過ごしだ」

ジム「殴られるいわれはないね」


トム「ジェームズ、お前もだ」

トム「それ以上ちょっかいを出すな」


ジム「はいはい、分かってますって」





3: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:19:20.09 ID:j8N3Fjo60


学園長「さて、話し合いは終わったのかね?」


トム「ああ」

トム「悪かったな、見苦しいところを見せちまって」


学園長「いや、混乱するのもムリもない」

学園長「なんせ、お主たちを呼び出したのはワシらじゃからな」


ジム「ほれ見ろ、俺の所為じゃねぇ」

ジム「やっぱりお前の思い過ごしじゃねぇか」


エディ「うるせぇ! 黙ってろ」

エディ「それより爺さん」

エディ「どういう意味なんだよ? それ」


学園長「……どこから話していいのやら」

学園長「まず、お主たちを呼んでしまったのは事故じゃ」


エディ「事故?」

エディ「なんだそりゃ」





4: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:20:33.22 ID:j8N3Fjo60


学園長「うむ……1から説明すると長くなるのじゃが」

学園長「お主たち、魔法というものは知っておるかの?」


トム「魔法ねぇ……」

トム「ちょっと前の俺ならバカにするだろうけど」

トム「生憎と、よく知ってるぜ」


学園長「おお! それなら話は早い」

学園長「簡単にいえば、今回の事件は魔法の失敗じゃ」

学園長「とある生徒達が魔導実験に失敗しおってな」

学園長「あろうことか、異世界との穴を開けてしまったのじゃ」


トム「それで、運悪くその穴に俺達が落っこちまったと」

トム「全く……勘弁してほしいぜ」


学園長「本当に申し訳ない、校長のワシから謝ろう」


ジム「で、俺達は帰れるのかよ」

ジム「出来んならさっさと帰してくれ」

ジム「俺はともかく、そこの2人は早くしねぇとホームシックになっちまうんでな」





5: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:21:44.13 ID:j8N3Fjo60


学園長「すまないが、すぐには難しそうじゃ」


トム「何か問題でもあるのか?」


学園長「魔法というのは理論と呪文があってはじめて成立するものなのじゃ」

学園長「ところが、その生徒達は焦って適当な呪文を唱えたみたいでな」

学園長「一体どんな呪文を唱えて、どうして穴が開いてしまったのかも分からんのじゃよ」


エディ「じゃあ、オレ達は戻れないってのか!?」


学園長「今すぐには無理じゃ」

学園長「じゃが、ワシらも責任を持ってお主らを元の世界に戻すように努力する」

学園長「それで許してはくれないかね」


トム「まぁ……すぐに帰れないってなら仕方ない」

トム「でも、アンタらが何とかしてる間、俺達はどうすりゃいいんだ?」

トム「まさか、そこら辺で野宿でもしろってことはないよな」


学園長「それは、もちろんそうじゃが」

学園長「ちと問題があってな……」





6: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:23:07.92 ID:j8N3Fjo60


ジム「何だ? 肝っ玉の小せぇヤツは受け入れられねぇってか」


エディ「テメェ……」


ジム「冗談だ、冗談」

ジム「少しからかっただけじゃねぇか」

ジム「そんな顔するなよ、エディ」


エディ「いい加減にしねぇと、マジでぶん殴るからな」


トム「……それで、問題ってなんだ?」


学園長「今回の件、一部の者を除いて内密にしておるのじゃ」

学園長「当事者もお主らがこの学園に来たことを知らない」

学園長「じゃから、いきなりお主たちを学園に置くのはマズイのじゃよ」


エディ「じゃあ、どうすりゃいいんだよ」

エディ「ホントに野宿でもしろってか?」


学園長「そう言ってるわけではない」

学園長「確かに、いきなりお主らを学園に置くとこはできない」

学園長「じゃが……お主らが学園にいる理由があれば話は別じゃ」





7: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:24:11.82 ID:j8N3Fjo60


学園長「それで、丁度いいことに」

学園長「今、この学園は用務員を探しておってな」


トム「用務員を雇ったって名目で俺達をかくまうってのか?」


学園長「その通りじゃ」

学園長「ワシとしても悪い話じゃないと思うんじゃが、どうする?」


トム「……選択肢はあってないようなもんだと思うが」

トム「どうする? お前ら」


エディ「オレは賛成だぜ!」

エディ「ロクな説明もされずに変なとこへ飛ばされるよりは、よっぽどマシぜ」


トム「お前は?」


ジム「俺はどうだっていいぜ」

ジム「ホームシックになって泣きわめくなんてこともないしな」


トム「なら、決まりだな」

トム「よろしく頼む」





8: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:25:33.96 ID:j8N3Fjo60


学園長「よろしい」

学園長「今日からお主らは正式にこの学園の職員じゃ」

学園長「くれぐれも、自分たちの素性は内密にな」

学園長「異世界から来たなんて知れたら大事じゃ」


トム「分かってる」

トム「俺も面倒事は避けたい」


学園長「良い心がけじゃ」

学園長「それでは、部屋へ案内する前に紹介したい者がおる」

学園長「マーガレット」


家政婦長「はい、学園長先生」


学園長「こちらは、マーガレット」

学園長「この学園の家政婦長で、表向きにはお主らの上司じゃ」

学園長「彼女にはすべて話してある」

学園長「分からないことがあったら彼女に聞けば間違いない」


家政婦長「初めまして」

家政婦長「家政婦長のマーガレットと申します」





9: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:26:37.44 ID:j8N3Fjo60


トム「俺はトーマス」

トム「トムでいい」


エディ「オレはエドワードだ」

エディ「エディって呼んでくれ」

エディ「そんで、このムカつく顔してるがジェームズ」


ジム「お前が言うか?」

ジム「テメェの方がよっぽどムカつく顔だぜ」


エディ「なんだと? この木偶の棒が!」


ジム「俺が木偶の棒なら、お前は木偶の箸だな」


エディ「チクショウ、バカにしやがって!」


トム「……お前ら」

トム「イチャつくのは勝手だが、やるなら俺の居ないとこでやってくれ」

トム「いい加減に見飽きてきた」


家政婦長「あら? 私は見てて楽しいですよ」

家政婦長「ここでは男同士のケンカなんて滅多におきませんし」

家政婦長「言い争いなんて、ほとんど見たことありませんから」





10: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:28:13.44 ID:j8N3Fjo60


トム「そりゃ、結構」

トム「これから楽しい毎日を送れそうだな」


家政婦長「それは期待しておきますね」


トム「……あ、ああ」


学園長「では、マーガレット」

学園長「彼らを部屋へ案内してやっとくれ」

学園長「ついでに、ここのルールについてもな」


家政婦長「かしこまりました」

家政婦長「では皆さん、こちらへ」


トム「…」

トム(全く……また変なところに飛ばされちまった)

トム(今度は無事に帰れんのか?)





11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/11/19(水) 00:30:57.66 ID:xnZBpSo90

彼奴らが帰ってきた!歓喜乙




12: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:31:35.23 ID:j8N3Fjo60


<魔導学園 職員寮>


家政婦長「ここが職員が寝泊まりしている職員寮です」

家政婦長「外から通勤している先生もいますが」

家政婦長「ほとんどはこの学園内で生活しています」


トム「アンタもここに住んでるのか?」


家政婦長「いえ、私は学生寮の方に」

家政婦長「女性の職員は部屋数の関係上、ここに入りきらないのです」

家政婦長「ですから、教師でもない限り学生寮で寝泊まりしています」


ジム「俺達は学生寮じゃなくて良いのか?」

ジム「アンタらにとっては、外からやってきた厄介者だろ」


家政婦長「そもそも男性ですから」

家政婦長「学生寮に入れるという選択肢はありませんよ」

家政婦長「皆さんに使ってもらう部屋も元は倉庫ですし」

家政婦長「全く問題はありません」





13: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:32:38.50 ID:j8N3Fjo60


エディ「ちょっと待てよ」

エディ「男だから寮に入れないってのは、どうなってんだ?」

エディ「何か問題でもあんのかよ」


家政婦長「ええ、大問題です」

家政婦長「学生寮には女性しか居ませんから」

家政婦長「あなた方を入れるのは風紀の問題上あり得ません」


ジム「女しかいない?」

ジム「俺達はアマゾネスの集落にでも飛ばされちまったのかよ」


家政婦長「そういうことではありません」

家政婦長「この学校は圧倒的に女子生徒が多く、女性職員も多いので」

家政婦長「基本的に男性はこの教員寮、女性は学生寮に別れて住んでいるんです」

家政婦長「とはいっても、女性の方が数が多いので教員寮にも女性の教師がいますが」

家政婦長「原則、学生寮は男子禁制です」


トム「要するに、男子寮と女子寮に分かれいて」

トム「俺達が住むのは男子寮の方だと」


家政婦長「そうなりますね」





14: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:33:25.47 ID:j8N3Fjo60


エディ「マジかよ……」

エディ「男子寮とか聞いてないぜ」


ジム「どうした、お嬢ちゃん」

ジム「むさ苦しい男との共同生活は耐えられないってか?」


エディ「うるせぇ!」

エディ「オレの通ってた学校の寮は汚ねぇし、ボロいしで」

エディ「何も良いことなんか無かったんだよ!」


トム「落ち着け、エディ」

トム「俺達が行くのは学生の寮じゃない」

トム「教師も出入りしてるなら、それなりにキレイかもしれねぇぜ?」


エディ「ほ、ホントか!? それ!」


家政婦長「え、ええ……」

家政婦長「女性の教師も出入りしてますし、私達も掃除をしてますから」

家政婦長「あなたが思っているほど汚れてないと思います」





15: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:37:11.74 ID:j8N3Fjo60


エディ「よしゃあ!」

エディ「もう、あんなブタ小屋で寝泊まりはゴメンだぜ」


ジム「まるで、今のテメェの部屋がキレイだって言ってるみたいだな」

ジム「お前の部屋じゃあ、そのブタ小屋以下なんじゃねぇのか?」


エディ「ケッ……言ってろ」

エディ「これでも部屋はキレイに使う方なんだ」

エディ「オレの部屋を見てビックリするんじゃねぇぞ」


家政婦長「ですが、そうとは言っても」

家政婦長「男性の共同生活については知らないので確証はありませんが」


トム「知ったら幻滅するぞ」

トム「俺達の部室でさえ、ゴミ屋敷同然だからな」


家政婦長「それは……聞かなかったことにしておきます」

家政婦長「では、部屋まで案内します」

家政婦長「付いて来て下さい」





16: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:38:32.88 ID:j8N3Fjo60


<職員寮 倉庫>


家政婦長「ここが、皆さんの部屋になります」


エディ「おいおい……倉庫だとは聞いてたけど」

エディ「こりゃ、あんまりじゃねぇか」

エディ「イスだが棚だかが転がって、ホコリまみれ」

エディ「おまけに部屋の隅にはクモの巣が貼ってやがる」

エディ「こんなところで、一体どうやって生活しろってんだよ」


家政婦長「残念ながら、他の部屋はすべて埋まっていまして」

家政婦長「辛うじてこの部屋だけ空いてたぐらいですから」


エディ「って、事は……」


家政婦長「掃除して使ってもらうしかありませんね」

家政婦長「今はこんな状況ですが、間取りは他の部屋と一緒なので」

家政婦長「キレイにすれば見違えるようになると思います」


エディ「……マジかよ」

エディ「出来る気がしねぇぜ」





17: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:39:36.49 ID:j8N3Fjo60


家政婦長「こんなことで根を上げていると、明日から大変ですよ?」

家政婦長「学園はこの部屋なんて目じゃないぐらいに広いですから」


エディ「うへぇ……先が思いやられる」


ジム「良かったじゃねぇか、エディ」

ジム「俺の分まで掃除するほどキレイ好きなんだろ?」

ジム「当分、掃除する場所には困らないぜ」


トム「お前もだろ、ジェームズ」

トム「学校でバカやるたびに掃除させられて」

トム「俺はよっぽどの掃除好きだと思ってたけどな」


ジム「ハンッ、教師どもが勝手に言ったことだ」

ジム「俺は掃除なんて好きでも何でもないね」


トム「さぁ、どうだかな」


家政婦長「あの……そろそろ話を進めたいのですが」


エディ「ああ、悪い」

エディ「続きを話してくれ」





18: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:40:54.69 ID:j8N3Fjo60


家政婦長「掃除用具は向かいの倉庫にあるので好きに使ってください」

家政婦長「それと、使えない家具やゴミは一階のゴミ捨て場へ」

家政婦長「使える家具は向かいの倉庫にお願いします」

家政婦長「ランプや寝具などは後で私が持ってきます」

家政婦長「では、頑張ってください」

家政婦長「自分たちの寝る場所を作るのが今日のあなた達の仕事です」


トム「聞いたな、お前ら」

トム「さっさと終わらせて、とっと寝るぞ」


エディ「マジでやるのかよ」

エディ「……勘弁してくれって」


トム「俺達の部室を掃除するよりマシだ」

トム「それとも、野宿がしたいってのか?」


エディ「分かってるって、トム」

エディ「ちょっとボヤいただけだ」





19: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/19(水) 00:45:32.07 ID:j8N3Fjo60


ジム「まぁ、精々頑張れよ」

ジム「俺は外の様子でも……」


トム「何言ってやがる、お前もやるんだよ」

トム「さもなきゃバラしてまわるぞ?」

トム「お前が本気でヒーローなりたがったってた、ってな」


ジム「……チッ、分かったよ」

ジム「やりゃあ良いんだろ?」


エディ「そうだぜ、ジム」

エディ「最初から素直にそう言っておきゃあいいんだよ」


家政婦長「では、私は他の仕事があるので」

家政婦長「これで失礼します」

家政婦長「また様子を見に来ますので」

家政婦長「分からないことがあればその時に聞いてください」


トム「分かった」

トム「よし、ちゃちゃっと始めるぞ」





22: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:42:17.08 ID:1hHy85La0


<魔導学園 グラウンド>


家政婦長「ここが今日のあなた達の仕事場です」


エディ「仕事場って……」

エディ「オレにはだだっ広い広場にしか見えねぇけど」

エディ「一体、何をすりゃいいんだよ」


家政婦長「もちろん掃除ですよ」

家政婦長「用務員の仕事の基本です」


エディ「でもよ」

エディ「もっとこう……何か無いのかよ」

エディ「これじゃあ、ジムの野郎の社会奉仕活動と一緒だぜ」


ジム「良いじゃねぇか」

ジム「得意だろ? 掃除は」

ジム「なんたって、俺に付き合って毎回やってるからな」


エディ「ケッ……お前が問題を起こすからだろ」

エディ「オレだって、好きで掃除になんか付き合うかよ」





23: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:43:44.84 ID:1hHy85La0


トム「そのくらいにしておけ、エディ」

トム「ソイツに問題を起こすなって方が無茶だ」


エディ「分かってるよ」

エディ「で、マーガレットだっけ」

エディ「掃除って、一体どこからどこまでやりゃいいんだ?」


家政婦長「とりあえずは、見えるところ全部ですかね」

家政婦長「掃除用具はあそこの小屋にあるので、それを使ってください」

家政婦長「ゴミは校舎裏の集積場にある程度分別して捨ててください」


トム「本気で言ってるのか?」

トム「いくらなんでも、今日一日じゃ終わりそうにないぞ」


家政婦長「いえ、そんなに焦らなくても大丈夫ですよ」

家政婦長「私も一日で終わるとは思ってないので」

家政婦長「ただ……あんまり時間がかかると困ってしまいますが」


トム「だったら、心配いらないな」

トム「どこかの誰かのお陰で掃除は慣れてるからな」





24: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:45:05.37 ID:1hHy85La0


家政婦長「それでは……ああ!」

家政婦長「大事なことを言い忘れてました」

家政婦長「外で授業をやっているときは気を付けてくださいね」

家政婦長「今日は外での授業は無いみたいですが」

家政婦長「日によっては剣や魔法を使う授業もあるので、十分に注意してください」


トム「ああ、分かった」

トム「俺達も命は惜しいからな」

トム「下手な手出しはしないでおく」


家政婦長「では、私はこれで……」

家政婦長「また昼に様子を見に来ますので、それまで」


エディ「行っちまったか」

エディ「……にしても、剣に魔法ねぇ」

エディ「本格的に異世界に来ちまったみたいだ」





25: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:46:19.72 ID:1hHy85La0


トム「勇者やら魔王やら言われないだけマシだ」

トム「あんな体験は二度とゴメンだからな」


ジム「俺は面白かったぜ?」

ジム「上から下まで、国中の奴が全員俺に頭を下げる」

ジム「見せてやりたかったぜ、その光景をな」


トム「よせ、そんなの見せられたらお前を殴ってる」

トム「ただでさえムカつく顔してるからな」


ジム「なら、やるか?」

ジム「アンタに負けるほど弱くはねぇぜ、キャプテン」


トム「……くだらねぇ」

トム「さっさと仕事をするぞ」

トム「早くしないと日が暮れちまう」





26: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:47:34.25 ID:1hHy85La0


-数時間後-


  「ねぇ、アレ……」

        「ホントだ、いるいる」

    「でも、誰かしら?」



エディ「な、なぁ……トム」

エディ「俺達、さっきから見られてねぇか?」


トム「『見られてねぇか?』じゃなくて、見られてんだよ」

トム「その証拠に……」



   「あ!」
       
        「目が合った」
    
    「ほ、ほら……」


     スタスタスタスタ



トム「目を合わせたとたんに逃げやがる」





27: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:50:01.70 ID:1hHy85La0


エディ「……朝はこんなことなかったよな」

エディ「一体、何がどうなってんだよ」


トム「そんなこと俺に聞くな」


エディ「他に聞けそうな奴がいねぇんだよ」

エディ「ジムの野郎は……」


ジム「……何だよ、チビクロサンボ」

ジム「俺の顔に何か付いてるってのかよ」


エディ「んだと! 唐変木が」

エディ「妙な視線を不思議に思ってただけじゃねぇか!」


ジム「ハンッ、テメェの思い過ごしだろ」

ジム「んなことでいちいち俺に話しかけるな」


エディ「あんだと!」


トム「やめとけ、エディ」





28: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:51:40.94 ID:1hHy85La0


トム「コイツにつっかかっても何も出ない」

トム「返って面倒臭くなるだけだ」


エディ「でもなぁ……」


トム「アイツの性格は知ってるだろ?」

トム「どうせ……やりたくもない仕事をやらされた上に、周りにジロジロ見られるのが気に食わないだけだ」

トム「まだ真面目に仕事をやってるんだ、放っておけ」


エディ「……分かったよ」


  「皆さん、どうですか?」


トム「ん? アンタは……」

トム「どうかしたのか? マーガレット」


家政婦長「お昼になったので、呼びに来ました」

家政婦長「仕事はいったん止めにして休憩にしましょう」


エディ「それよりよ」

エディ「さっきから妙に視線を感じんだけど」

エディ「なんか心当たりはねぇのか?」

エディ「ほら、オレ達が違う世界から来たのがバレちまったとか」





29: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:53:30.65 ID:1hHy85La0


家政婦長「それはありませんよ」

家政婦長「私を含めて、関係者には箝口令が敷かれていますから」


トム「理由は分かるか?」

トム「こんな調子じゃ、ウチの問題児がまた騒ぎを起こしちまう」


家政婦長「おそらく……物珍しいからでしょう」

家政婦長「現在、学園の生徒はほとんどが女子生徒です」

家政婦長「一度入学すれば、滅多なことがなければ学園の外へは出ません」

家政婦長「ですから、見慣れない同年代の男性が気になるのでしょう」


トム「全く……勘弁してほしいね」

トム「見世物小屋のフリークじゃねぇんだから」


家政婦長「まぁ、すぐに収まりますよ」

家政婦長「しばらくは続くでしょうが……」

家政婦長「ガマンしてもらうしかありませんね」


トム「さて……アイツにそんな堪え性があるかね」

トム「ま、考えても始まらないか」

トム「さっさと片付けて、昼にしようぜ」





30: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:55:06.29 ID:1hHy85La0


-翌日-


ジム「クソッ!」

ジム「やってられっか! こんなこと!!」


エディ「もう参っちまったのかよ?」

エディ「昨日の今日だぜ」

エディ「いくらなんでも早すぎんだろ」


ジム「うるせぇ!」

ジム「こっちはマジメに仕事してるってのに、ジロジロ見やがって」

ジム「いい加減にやってられっかよ!」


エディ「昨日説明しただろ?」

エディ「もう少ししたら、収まるって」


ジム「そんなの待ってられっか!」

ジム「もういい! 俺は降りる」

ジム「掃除でも何でも、後は勝手にやってろ!」


エディ「おい! 待てって」

エディ「どこ行くんだよ!? おい!」





31: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:57:20.07 ID:1hHy85La0


トム「はぁ……」

トム「やっぱり、こうなっちまったか」


エディ「どうすんだよ、アレ」


トム「放っとけ」


エディ「良いのかよ? それで」

エディ「すぐには戻って来ないぜ、アイツ」


トム「じゃあ、連れ戻して説得でもするか?」


エディ「そりゃ……ムリだな」

エディ「アイツが話を聞くとは思えねぇ」


トム「……ああ」

トム「素直に人の話を聞くような奴だったら、ここまで苦労しねぇ」

トム「ここは放っておくのが一番だ」

トム「そのうち頭を冷やして帰ってくる」


エディ「ホントか?」


トム「ああ、俺を信じろ」





32: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 00:58:56.65 ID:1hHy85La0


-数分後-


トム(……まだ半分もいかねぇ)

トム(今日中に終わるのか? コレ)

トム「エディ、そっちはどうだ?」


エディ「…」


トム「おい、エディ」

トム「どうかしたか?」


エディ「いや……なんか聞こえねぇか?」


トム「あ? 何を……」


   キャー!!

        ワァー!!


トム「…」





33: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:03:48.57 ID:1hHy85La0


エディ「なぁ、今のって……」


トム「ジェームズの野郎が向かった方向だな」


エディ「……トム」

エディ「オレ、何かすっげえイヤな予感がすんだけど」


トム「奇遇だな……」

トム「俺もだ」


エディ「で、どうするよ?」


トム「わざわざ聞くことか?」


エディ「ほら、もしかしたら違うこと考えてるかもしれねぇだろ?」


トム「それなら、望み薄だな」

トム「行く以外の選択肢が思いつかねぇ」


エディ「だよなぁ……」





34: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:04:37.05 ID:1hHy85La0


<魔導学園 運動場>


ジム「オラオラ、どうした!?」

ジム「どこからでもかかってこいよ!」


剣術講師「くっ……」


ジム「へッ、そっちが来ないってなら」

ジム「俺の方から行くぜ」


  キンッ キンッ   

    カンッ


剣術講師「ぐわっ…」ガクッ


ジム「フンッ、口ほどにもねぇ」

ジム「こんな奴に教わってちゃ、上手くなるもんもならねぇぜ」


トム「おい! ジェームズ」

トム「何してんだ!?」


ジム「何って……見て分からねぇのか?」

ジム「コイツが腑抜けた剣術を教えてたからな」

ジム「俺が鍛え直してやってたんだ」





35: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:06:04.78 ID:1hHy85La0


エディ「何言ってやがる!?」

エディ「仕事を放り出したと思ったら、こんなことしやがって」

エディ「脳みそ足りてねぇんじゃねぇのか!」


ジム「何だ? 文句でもあんのかよ」


エディ「ああ! 大アリだね」

エディ「テメェの尻拭いさせられるこっちの身にもなりやがれ!」


ジム「だったらかかってこいよ」

ジム「いい加減、退屈してんだ」

ジム「俺に勝ったら、言うことを聞いてやってもいいぜ」


エディ「くっそ……勝手なこと言いやがって」


トム「ダメだ、エディ」

トム「アイツの挑発に乗るんじゃねぇ」


エディ「でも、トム!」


トム「分かってる」

トム「だが、あのバカはケンカにはめっぽう強い」

トム「剣術勝負なんていったら尚更だ」





36: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:07:09.30 ID:1hHy85La0


エディ「そりゃ、そうだけどよ」

エディ「このまま放っといて良いわけねぇだろ」


トム「だけどな……」


ジム「ビビっちまったのか? トム」

ジム「このままじゃ俺の不戦勝だぜ」


トム「…」


  「その勝負、私に預けてくれないだろうか?」


ジム「何だ? テメェは」


  「この学園の生徒会長をしている」

  「ナターシャ・シャルパンティエだ」


ジム「その生徒会長サマが何だって?」


生徒会長「私が代わりにお前の相手をする」

生徒会長「君に勝ったら、言うことを聞いてもらえるのだろう?」





37: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:08:18.56 ID:1hHy85La0


トム「ちょっと待て」

トム「助けようとしてくれるのは良く分かったが、アイツの実力は口だけじゃない」

トム「悪いこと言わねぇから、下がってろ」


生徒会長「大丈夫だ」

生徒会長「彼が強いことぐらいは、私にも分かってる」

生徒会長「だから、全力で相手をする」


ジム「面白れェじゃねぇか」

ジム「乗ってやるよ、その勝負」

ジム「ほら、剣はコイツのを使いな」


剣術教師「」


生徒会長「いや、それには及ばない」

生徒会長「剣なら自分のモノがあるからな」ジャキ


エディ「お、おい!」

エディ「それホンモンじゃねぇか!?」

エディ「シャレにならねぇよ」





38: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:10:01.21 ID:1hHy85La0


生徒会長「私も本気を出さないと負けてしまいそうなのでな」

生徒会長「訓練用の木刀とではハンデができてしまうが、許してほしい」

生徒会長「真っ向勝負すれば、力で押し負けてしまうだろうからな」 


ジム「いいぜ」

ジム「それぐらいハンデがあった方が面白いからな」


トム「ジェームズ、いい加減にしろ!」

トム「これ以上、事を大きくするんじゃねぇ」


ジム「勝負する気のない奴は口出すんじゃねぇよ」

ジム「これは俺とアイツの勝負だ」

ジム「テメェはそこでケガ人の子守りでもしてろ」


トム「おい! ジェームズ」


ジム「さぁ、行くぜ」

ジム「覚悟はいいな?」


生徒会長「その前に、君の名前を教えてほしい」

生徒会長「これから戦う者の名前ぐらい知っておきたいからな」


ジム「俺はジム……」

ジム「ジェームズだ」


生徒会長「いい名前だ」

生徒会長「では、行くぞ! ジェームズ」





39: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:11:33.89 ID:1hHy85La0


-数十分後-


ジム「ぐっ……」ガクッ


生徒会長「勝負あったな」

生徒会長「接戦だったが、私の勝ちだ」


ジム「ふざけんじゃねぇ!」

ジム「俺はまだ……うっ」


エディ「お、おい! 大丈夫かよ!?」

エディ「血が出てるじゃねぇか!」


ジム「……タダのかすり傷だ」

ジム「わめくんじゃねぇ」


生徒会長「浅くだが、腕を切らせてもらった」

生徒会長「しばらくは剣を振ることはできないだろう」

生徒会長「私もそんなことはしたくなかったが」

生徒会長「そうでもしないと、負けを認めてくれそうにないからな」


ジム「…っ」





40: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:13:47.35 ID:1hHy85La0


生徒会長「では、約束通り」

生徒会長「私の言うことを聞いてもらおうか」


ジム「フンッ、何でも言いやがれ」


生徒会長「なら、今すぐここから立ち去り」

生徒会長「2度と学園内で騒ぎを起こさないでほしい」


ジム「チッ……分かったよ」

ジム「行くぜ、エディ」


エディ「おい! どこ行くんだよ」

エディ「ケガの手当てはどうすんだって」


ジム「こんなもんツバ付けときゃ直る」

ジム「いいから行くぞ」 


エディ「だから、待てって!」


トム(……行っちまったか)

トム(まぁ、あの様子なら……とりあえずは大丈夫だろ)





41: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:14:40.36 ID:1hHy85La0


トム(だが……それより問題は)

トム「おい、ちょっと待ってくれ」


生徒会長「どうした? まだ私に何か用があるのか」


トム「ナターシャだっけか」

トム「手間かけせさせちまったな、あのバカを止めるのに」


生徒会長「気にしないでくれ」

生徒会長「私も彼にケガを負わせてしまったからな」

生徒会長「済まなかったと伝えておいてくれ」


トム「それは任せとけ」

トム「ただ、ひとつだけ忠告したくてな」


生徒会長「忠告? 何だそれは」


トム「アイツは負けず嫌いでな」

トム「チームプレイで負けるのはともかく、個人プレーで負けるのは絶対に許さねぇ」

トム「セイフティに止められたりした日には、意地でもタッチエンドを決めようとする」





42: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/20(木) 01:16:32.55 ID:1hHy85La0


生徒会長「つまり、どういうことだ?」


トム「アイツはアンタに仕返しに来る」

トム「自分が勝つまで、何度もな」


生徒会長「なら、気を付けなくてはいけないな」


トム「鬱陶しく思わねぇのか?」


生徒会長「この学園で私とやり合うことのできる人間は居ないからな」

生徒会長「正直……少し嬉しいんだ」

生徒会長「久々に楽しめそうだと思って」


トム「なら、俺から言うことは何もない」

トム「是非とも、あのバカが騒ぎを起こさなくなるまで懲らしめてほしいね」


生徒会長「出来るか分からないが、善処しよう」

生徒会長「では、私はこれで」

生徒会長「この授業の後始末をしなければならないからな」


トム「ああ……」

トム(全く、余計な問題を起こしやがって)

トム(マーガレットになんて説明すりゃあいいんだよ)

トム(……先が思いやられるぜ)





43: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:09:16.26 ID:dS7ReKPx0


<魔導学園 中庭>


ジム「グランドの次は、無駄に広い中庭」

ジム「あのマーガレットとかいう女」

ジム「怪我が治ったと分かったら、好き勝手に使いやがって」


トム「あんだけの騒ぎを起こしてお咎めなしってのに、随分な口の利き方じゃねぇか」

トム「そんな愚痴を言うヒマがあったら手を動かせ」

トム「タダでさえ、ケガで休んでたんだからよ」


エディ「そうだぜ」

エディ「大事にならなかったから良かったけど」

エディ「オメェが休んでた間は、オレ達が仕事してんだからな」

エディ「ちっとは感謝しやがれ」


ジム「うるせぇ」

ジム「俺だって好きで怪我したワケじゃねぇんだ」

ジム「あの女が容赦なく切りつけるのが悪りぃんだよ」





44: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:10:21.54 ID:dS7ReKPx0


トム「そもそもの原因はお前だろ」

トム「少しはマシになったと思ったら、すぐコレだ」

トム「これに懲りたら、無暗やたらとケンカを吹っ掛けるようなマネは止めるんだな」


ジム「そんな心配されなくても、しばらくはしねぇよ」

ジム「約束は約束だからな」


エディ「珍しいこともあるもんだぜ」

エディ「お前の口からそんな言葉出るなんてな」


ジム「ハンッ、俺だって約束ぐらいは守る」

ジム「ただし……あの女を負かすまでだけどな」


トム「お前が誰とケンカしようが関係ねぇが」

トム「面倒事は起こすなよ」

トム「テメェの尻拭いをさせられるのはコリゴリだ」


ジム「フンッ、お前らには手を出させねぇよ」

ジム「アイツとはタイマンでケリを付けるからな」





45: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:12:11.86 ID:dS7ReKPx0


  「あの、ちょっと」


エディ「ん? 誰だ」

エディ「オレ達になんか用でもあんのか」


  「ああ……うん」

  「僕はヨハン・V・レーヴェンガルト」

  「この学園の男子クラスの生徒だ」


トム「男子生徒ねぇ」

トム「居るとは聞いてたが、会うのは初めてだな」


ジム「で、ゲルマン野郎が何の用だ」

ジム「俺達は忙しんだ」

ジム「用がないなら、とっとと帰れ」


エディ「良く言うぜ」

エディ「さっきまで愚痴ってたクセによ」





46: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:13:21.48 ID:dS7ReKPx0


生徒「お願いだ」

生徒「力を貸してほしい」

生徒「もう君達にしか頼れないんだ」


トム「何なんだ? 一体」


生徒「今度の学内試合に参加してほしい」

生徒「このままじゃ、参加すらできないんだ」


エディ「学内試合? 参加できない?」

エディ「なに言ってんだ」


トム「面倒事なら間にあってる」

トム「他を当たってくれ」


生徒「待ってくれ!」ガシッ





47: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:14:44.41 ID:dS7ReKPx0


トム「言っただろ、面倒事はゴメンだ」

トム「用事なら他を当たってくれ」


生徒「これじゃあ、叔父さんに合わせる顔がないんだ」

生徒「お願いだから話だけでも」


エディ「トム、どうすんだ?」

エディ「簡単には帰ってくれそうにないぜ」


トム「はぁ……仕方ねぇな」

トム「話だけは聞いてやる」

トム「だから、腕を離せ」


生徒「ありがとう!」

生徒「やっぱり、僕の見込んだ通りだ」


トム(……ったく、また面倒くさいことに)

トム(勘弁してほしいぜ)





48: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:15:58.68 ID:dS7ReKPx0


-数分後-


トム「……話は分かった」

トム「今度の学内試合とかいうのに出て、自分の活躍をアピールしたい」

トム「さもなきゃ、親との約束でこの学校から追い出されちまう」

トム「だが、試合のメンバーは3人1組」

トム「数少ない男どもは端っから戦う気がゼロで、協力してくれそうにもない」

トム「このまま試合に出れないなんてことになったら」

トム「口添えをしてくれた叔父に合わせる顔がなくなる」

トム「どうしようもなくなって、頼みを聞いてくれそうな俺達に話しかけたと」


生徒「だから、お願だ」

生徒「僕に力を貸してくれ」

生徒「まだ、この学園を離れたくないんだ」


エディ「まぁ……同情はするけどよ」

エディ「オレ達は教師でもなけりゃ、生徒でもないんだぜ」

エディ「その試合に出るなんて無理じゃねぇのか?」





49: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:17:04.78 ID:dS7ReKPx0


生徒「そ、そんな……」


トム「残念だが、本当だ」

トム「俺達以外の奴を見つけて参加するんだな」

トム「別に男に拘らなくても、メンバーぐらい見つかるだろ」


生徒「……ムリだよ」

生徒「僕ら男子クラスは、1クラスしかない上に」

生徒「魔法もろくに使えない落ちこぼれ集団だと思われてるんだ」

生徒「学内試合は成績にも影響するから、男子と組もうとする女子はいない」

生徒「いるとしても生徒会長のナターシャさんぐらいさ」

生徒「ま、迷惑がかかるからそんなこと頼めないけど」

生徒「じゃあ……僕は帰るよ」

生徒「クラスの男子も説得すれば、どうにかなるかもしれないし」


ジム「おい! ちょっと待て」

ジム「今なんて言った?」





50: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:18:11.71 ID:dS7ReKPx0


生徒「え? もう帰るって」


ジム「違う、その前だ」

ジム「生徒会長がどうとか言ってたな」


生徒「ああ……うん」

生徒「会長なら協力してくれるかもしれないって」


ジム「ってことは、アイツも出るのか?」

ジム「その学内試合とかいうのに」


生徒「もちろん、去年の優勝したのは会長のチームだし」

生徒「出場しないはずないと思うけど」


ジム「へぇ、そうかい」


トム「ジェームズ、お前まさか……」


ジム「よし、乗った」

ジム「ヨハンとか言ったな」

ジム「お前のチームメンバー、俺達がなってやるよ」





51: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:19:17.96 ID:dS7ReKPx0


生徒「でも、君達の話じゃ……」


エディ「そうだぜ、ジム」

エディ「オレ達は生徒じゃねぇんだ」

エディ「試合なんて出れねぇよ」


ジム「だったら出れるようにするまでだ」

ジム「行くぞ! お前ら」


エディ「おい! 行くってどこに」


ジム「決まってる」

ジム「ここで一番偉い奴のとこだ」

ジム「ほら、行くぞ」


エディ「あ、おい!」





52: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:19:59.72 ID:dS7ReKPx0


エディ「仕事はどうすんだよ!?」


ジム「そんなもん後回しだ」

ジム「そこらへんの奴にやらせとけ」


エディ「おい、待てって!」


トム「はぁ……」

トム(うすうす感づいていたが……)

トム(……やっぱりこうなっちまったか)


生徒「これは一体……」

生徒「何がどうなって」


トム「アイツを野放しにしておくと後々面倒だ」

トム「俺達も行くぞ」





53: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:21:47.24 ID:dS7ReKPx0


<職員寮 3人の部屋>


トム「……にしても」

トム「こんな無茶苦茶な要求を通しちまうとはな」

トム「正直、アイツを舐めてた」


エディ「ま、丸く収まってから良かったと思うぜ」

エディ「あの野郎の事だから、もっと大事になってもおかしく無かったからな」

エディ「爺さんもふたつ返事でOK出してたし」

エディ「なにより、こいつが退学させられなくて良かったじゃねぇか」


生徒「まだ決まった訳じゃないけど」

生徒「ありがとう、君達のお陰だ」

生徒「改めてお礼を言うよ。トーマス君、エドワード君」


トム「……感謝してくれるのは結構だが」

トム「1つ言いたいことがある」





54: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:22:37.70 ID:dS7ReKPx0


生徒「何? トーマス君」


トム「その気持ち悪い呼び方をやめろ」

トム「俺はトム、こいつはエディ」

トム「そんでもって、アイツはジムかジェームズだ」


生徒「でも、それは……」


トム「いいから、言う通りにしろ」

トム「でないと付き合ってやらねぇぞ」

トム「その学内試合とやらに」


生徒「わ、分かったよ」

生徒「これでいいんだろ、トム」


トム「ああ、それと……」

トム「礼ならジェームズのヤツに言っとけ」

トム「俺達は仕方なく付き合ってるだけだ」





55: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:23:56.36 ID:dS7ReKPx0


生徒「けど……何処にいるの?」

生徒「この部屋には見当たらないけど」


トム「おい、エディ」

トム「ジェームズの野郎はどこへ行った?」


エディ「倉庫から木刀かなんか引っ張り出して、どっか行っちまったぜ」

エディ「どっかで振り回してんじゃねぇの?」

エディ「この前やられたのが相当悔しかったみてぇだし」


トム「ったく……好き勝手に行動しやがって」

トム「第一、まだケガが完治してねぇんだろ」

トム「傷口が開いたりしたらどうするつもりなんだ」


エディ「アイツだってそこまでバカじゃねぇだろ」

エディ「オレらが言っても、素直に聞くようなヤツじゃねぇし」

エディ「放っとくのが一番だぜ」





56: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:28:24.77 ID:dS7ReKPx0


トム「俺だって……出来るならそうしたい」

トム「だが、これからやるのはフットボールの試合じゃなくて」

トム「学内試合とか言う良く分からねぇ代物だ」

トム「おまけに魔法なんて厄介なモンもある」

トム「ある程度の作戦を練らなきゃ、勝てるもんも勝てねぇんだよ」


エディ「まぁ……確かにな」

エディ「ジムの野郎も負け越してるし」

エディ「簡単に勝てたら、世話ねぇよな」


トム「そういうことだ」

トム「分かったら、とっと探しに行くぞ」

トム「アイツ抜きじゃ、作戦なんて立てられねぇからな」





57: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:29:33.79 ID:dS7ReKPx0


-数時間後-


生徒「ルールは大体こんな感じかな」


エディ「へぇ、案外普通じゃねぇか」

エディ「魔法なんて言うから、身構えてたけど」

エディ「基本はカラテみたいなもんじゃねぇか」

エディ「それなら俺達でも何とかなりそうだな」


トム「だが、魔導学園なんて言うんだ」

トム「魔法を使ってこないはずがない」

トム「そうだろ? ヨハン」


生徒「むしろ魔法を主体にして戦う人の方が多いよ」

生徒「ルール的には防御リングのシールドを削りにくい魔法は不利だけど」

生徒「遠距離でも近距離でも戦えるし、高位の呪文になると2、3発でシールドがなくなるしね」


ジム「ハンッ、魔法なんて関係ねぇな」

ジム「剣なら1回でも当てりゃあ勝ちなんだろ?」

ジム「だったら、魔法を撃たれる前に攻撃しちまえばいいんだよ」





58: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:30:46.74 ID:dS7ReKPx0


生徒「そんな無茶苦茶な」

生徒「確かに、シールドは直接攻撃で無くなるようになってるし」

生徒「実際に会長みたいに剣を主体にしてる人もいなくはないけど」

生徒「あれは最低限の魔法を使えることを前提にしてるから」

生徒「いくら君でも……」


ジム「アイツに出来て俺にできねぇハズねぇ」

ジム「それとも、テメェは俺にはムリだって言いたいのか?」


生徒「そ、それは……」


トム「そこら辺にしておけ、ジェームズ」

トム「ヨハン、この際言っておくが」

トム「俺達は魔法なんて使えないし、使えるようになる見込みもねぇ」

トム「だから、ある意味ではそいつの言ってる戦法は一番理に適ってる」


生徒「でも、魔法が使えないなんて」

生徒「一体どうしたら」





59: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:32:28.90 ID:dS7ReKPx0


トム「そいつをどうにかするのが俺達の仕事だ」

トム「お前だって、そのために来たんだろ?」


生徒「それでも、いくらなんでも魔法なしは」


トム「もちろん、魔法が使えないってのが大きなハンデなのは分かってる」

トム「だが、スピードとパワーじゃこっちの方が上だ」

トム「それに……この程度の戦いは朝メシ前だろ? 勇者様」


ジム「ハンッ……俺はあの女を倒すだけだ」

ジム「負けた借りはキッチリ返さなきゃいけねぇからな」

ジム「もっとも、その邪魔をするってなら容赦はしねぇが」


エディ「いつになくやる気じゃねぇか」

エディ「普段の試合でもそれぐらいの気概を見せろってんだよ」





60: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/22(土) 10:35:13.12 ID:dS7ReKPx0


ジム「怖いなら逃げても良いんだぜ?」

ジム「テメェが居なくたってどうにでもなるからな」


エディ「……そこまで言うならやってやるよ」

エディ「テメェこそ、大口叩いてやられるんじゃねぇぞ?」


ジム「フンッ、そんなつもりは端っからねぇよ」


トム「ほら、こいつ等はやる気みたいだぜ?」

トム「お前はどうするんだ」


生徒「僕は……僕だってやってやる!」

生徒「こんなところで学校をやめるなんてイヤだ」


トム「そう来なくちゃな」

トム「なら、試合まで特訓だ」

トム「オメェら、根を上げるんじゃねぇぞ」





61: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:12:08.16 ID:ReDVqXxq0


<コロシアム 控室>


トム「さて……次は準々決勝か」

トム「思ったほど苦労はしなかった」

トム「正直、拍子抜けだな」


生徒「はは……余裕だね」

生徒「僕なんか、いつ負けるか気が気じゃなかったのに」


トム「ん? 意外だな」

トム「作戦通りに淡々と魔法を撃ってるから」

トム「てっきり、負けるなんて考えが吹っ飛んじまってたと思ってたが」


生徒「確かに、ジムの剣技は凄かったし」

生徒「エディのキックだって百発百中だった」

生徒「でも、元はといえば僕自身の戦いだから」

生徒「自分の精一杯を尽くしただけだよ」





62: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:13:22.31 ID:ReDVqXxq0


トム「そういう素直な奴は好きだぜ」

トム「なんせ、ウチのチームには独断専行にマイペースと」

トム「扱いに困るヤツらばかりだからな」

トム「お前だって、ジェームズのヤツを見てれば分かるだろ?」


生徒「……苦労してるんだね」


トム「ま、もう慣れちまったけどな」

トム「それより……」


エディ「おい! トム」

エディ「決まったぜ、次の対戦相手が」


トム「どうだった?」


エディ「やっぱりだ」

エディ「ナターシャ率いる生徒会チーム」

エディ「前回の優勝チームが相手だぜ」





63: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:15:06.52 ID:ReDVqXxq0


トム「だろうな」

トム「よっぽどの事がない限り、そうなるよな」

トム「で、ジェームズの野郎は?」

トム「一緒に試合の結果を見に行ったんじゃなかったのか」


エディ「結果が出たとたんにどっか行っちまったぜ」

エディ「大方、対戦相手にケンカでも売りに行ってんだろ」


トム「全く……どこまでも自分に忠実なヤツだ」

トム「ここまでくると、逆に尊敬できる」

トム「だが、こうなってくるとアイツが作戦通りに動くとは思えないな」


エディ「まぁ……今度の相手にやり返すために参加したみたいなもんだしな」

エディ「オレ達なんかお構いなしに、1人であの会長さんとやり合おうとするぜ?」


トム「なら、仕方ないな」

トム「次の試合には俺が出る」

トム「エディ、悪いがベンチで待機してくれ」





64: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:17:00.55 ID:ReDVqXxq0


エディ「待機って……んなことできんのかよ」

エディ「3人1チームなんだろ? これ」


生徒「ルール上は大丈夫なはず」

生徒「予備メンバーを登録しておけば、試合前の入れ替えは自由だから」


エディ「なら、いいんだけどよ」

エディ「作戦はどうすんだ?」

エディ「オレがいないんじゃ今までのは使えねぇぞ」


トム「俺がその場で指示を出す」

トム「どうせアイツは作戦なんか聞かねぇんだ」

トム「だったら、作戦を立てるだけ無駄だ」

トム「もはや作戦なんていえる代物じゃねぇが」

トム「現状じゃ、これが一番勝率が高い作戦だ」


エディ「まぁ、他にどうしようもねぇよな」

エディ「ジムの野郎がどう動くのか分からねぇ限り」





65: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:18:18.79 ID:ReDVqXxq0


トム「そういことだ」

トム「分かったか? ヨハン」


生徒「あ、ああ……」


エディ「どうしたんだよ? 気の抜けた返事なんかして」

エディ「なんか納得できねぇとこでもあったか?」


生徒「いや、そういうわけじゃないんだ」

生徒「ただ……会長相手に本当に勝てるのか、って思って」

生徒「ジムだって、一度負けてるからさ」


トム「さぁ? そんなことは俺達には分からねぇ」

トム「俺達が勝つかもしれねぇし、そうじゃないかもしねぇ」

トム「だが……その勝つ確率ってのを少しでも大きくするために俺達は作戦を練ったり、戦略を考えたりするんだ」





66: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:19:28.07 ID:ReDVqXxq0


トム「だから、負けるなんて考えは捨てろ」

トム「じゃなきゃ、今度の相手には勝てねぇ」


生徒「そうか……そうだね」

生徒「気持ちで負けたら、そこでお終いだよな」

生徒「折角、ここまで来たんだ」

生徒「こんなところで負けてられない」



  「そろそろ試合の時間です」

  「参加する選手は入場ゲートに移動してください」



トム「……お呼び出しがかかったみたいだな」

トム「エディ、あのバカを連れてこい」

トム「アイツのせいで失格になんてアホらしいからな」





67: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:21:38.89 ID:ReDVqXxq0


<コロシアム>


  「魔導学園内総合技術対抗試合、準々決勝のチームを紹介します」

  「Aコーナーはナターシャ・シャルパンティエ率いるグリーンチーム」

  「メンバーはナターシャ選手、クロエ選手、アルベルト選手となります」



生徒会長「…」 副会長「…」 書記「…」



  「対して、Bコーナーはヨハン・V・レーヴェンガルト率いるイエローチーム」

  「メンバーはヨハン選手、ジェームズ選手、トーマス選手となります」



生徒「…」 ジム「…」 トム「…」



  「両者、それぞれの位置についてください」






68: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:22:39.13 ID:ReDVqXxq0


生徒会長「約束は守ってくれているようだな、ジェームズ」


ジム「ここで俺が勝てばそれも終わりだ」


生徒会長「なら、勝たなくてはいけないな」


ジム「フンッ、言ってろ」



書記「こんなところでお前と会うなんてな、ヨハン」


生徒「やっぱり君が出てきたな、アル」


書記「ああ、男同士で試合が出来るなんて滅多にないからな」

書記「この試合、会長のためにも勝たせてもらうぞ」


生徒「望むところだ」



副会長「ええっと……クロエです」

副会長「その……よろしくお願いします」


トム「ああ」





69: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:26:11.14 ID:ReDVqXxq0


  「では、試合を開始します」

  「用意……」


      ドンッ


ジム「はあッ!」ダッ


副会長「!?」 書記「はや……!」


     カンッ


生徒会長「…っ!」


書記「か、会長!」


生徒会長「大丈夫だ、気にするな」


ジム「ヘッ……やるな」

ジム「普通の奴は受け止められないんだがな」


生徒会長「それは、どうも」





70: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:26:56.41 ID:ReDVqXxq0


トム(あの野郎……やっぱり突っ込んでったか)

トム「おい! ヨハン」

トム「相手がジェームズに気を取られてる今がチャンスだ」

トム「あっちのヤツを相手しろ」

トム「俺はもう1人を引き付ける」


ヨハン「分かった」


トム「深追いはするなよ」

トム「無理だと思ったら俺のところへ帰ってこい」


ヨハン「…」コクリ





71: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:28:28.89 ID:ReDVqXxq0


生徒会長「はあっ!」ヒュッ


ジム「!」スカッ

ジム「……危ねぇじゃねぇか」ブンッ


生徒会長「くっ……」カンッ

生徒会長「……君も人の事は言えないだろ」


書記「会長! 今、助けます」


生徒「させるか」

生徒「ライトニングウェイブ!」


書記「なっ……! ぐおっ」



副会長「アルベルト君!?」


トム「おい! こっちだ」

トム「お前の相手は俺がしてやる」





72: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:29:47.98 ID:ReDVqXxq0


副会長「…!?」


トム(挑発したはいいが……どうする?)

トム(相手の魔法は、防御リングとやらで防げるらしいが)

トム(食らいまくると場外に転送されて負けになっちまうし)

トム(なにより、俺はこんな木刀で魔法使い相手に戦えるほど器用じゃねぇ)

トム(ここは……)


副会長「アイスピラー!」


トム「避けるしかねぇな」

トム「よっ……はっ!」スッ サッ


副会長「……っ!」

副会長「アイスハリケーン!」


   ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


トム(マジかよ……)

トム(あんなもんどうやって避けろってんだ)

トム「クソッ……ぬわっ」





73: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:30:33.22 ID:ReDVqXxq0


副会長「まだまだ!」

副会長「アイス……」


  「ライトニングパルス!」


    ピカッ


副会長「きゃっ!」


生徒「大丈夫! トム」


トム「悪い、助かった」

トム「もう1人はどうした?」


生徒「それが……」


書記「やってくれたな! ヨハン」


生徒「手に負えなくなっちゃって」


トム「よし、分かった」

トム「サイドチェンジだ」

トム「俺があいつの相手をする、お前はそこの奴を頼む」





74: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:31:14.63 ID:ReDVqXxq0


ジム「てりゃぁ!」ブンッ


生徒会長「…!」サッ


ジム「やぁ!」ヒュッ


生徒会長「くっ!」カンッ


ジム「オラッ! どうした」

ジム「やっぱりハンデがねぇと俺に勝てないってか」ギリギリ


生徒会長「……かもしれないな」ギリギリ

生徒会長「だが、これはチーム戦だ!」


     ガンッ


ジム「なっ!」ヨロッ


生徒会長「アクアバレット!」





75: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:32:39.24 ID:ReDVqXxq0


生徒「ライトニ……!?」

生徒「うわっ!」ビチャ


副会長「アイスインパクト!」


    パキンッ


生徒「うわぁあああ!!」シュン



  「イエローチーム、ヨハン選手のダウン」

  「グリーンチームの先制です」



ジム「チッ……やりやがったな」

ジム「だったら……」


  カンッ コンッ カツッ


生徒会長「くっ、早い……!」


ジム「オラァッ!!」


     カキンッ


生徒会長「なにっ……」





76: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:34:33.92 ID:ReDVqXxq0


書記「食らえ」

書記「ファイアーボールッ!」


トム「……ッ」サッ

トム(クソ……バカの1つ覚えみたいに火の玉撃ちやがって)

トム(これじゃあ、アイツに近づけやしねぇ)

トム(ヨハンがやられちまったからな)

トム(どうにか俺が……)


ジム「オラァア!!」ダッ


書記「何っ!?」


トム「お前! アイツは……」


ジム「黙ってろ」

ジム「コイツは俺がやる」





77: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:35:19.29 ID:ReDVqXxq0


書記「クソッ! ファイ……」


ジム「遅せぇ!」ブンッ


   パキンッ


書記「ぬわっ……」シュン



  「グリーンチーム、アルベルト選手のダウン」

  「イエローチーム追いつきました」



ジム「よし、次は……」


生徒会長「はっ!」ヒュッ


ジム「なっ…!?」


   カンッ






78: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:37:23.24 ID:ReDVqXxq0


トム「……危ねぇじゃねぇか」

トム「いきなり突っ込んでくるなんて」

トム「タックルして良いのはボールを持ってるヤツだけだぜ?」


生徒会長「……完全に仕留めたと思ったんだが」

生徒会長「さすがはジェームズの仲間だな」


トム「お褒めに預かり光栄だね」

トム「だが、アイツの仲間だから凄いってのは気に入らねぇな!」ドンッ


生徒会長「!?」ヨロッ


ジム「退け、トム」

ジム「オラッ!」ブンッ


  カァンッ 
       パキッ


ジム「ぐっ……」シュン


生徒会長「……相打ちか」シュン





79: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:39:41.82 ID:ReDVqXxq0



  「ナターシャ選手、ジェームズ選手、共にダウン」

  「両チームとも最後の1人となりました」



副会長「ナターシャさん!?」


トム(1対1……数だけ見りゃ互角だ)

トム(だが、相手には魔法がある)

トム(こうなったら、玉砕覚悟で特攻するしかねぇ!)ダッ

トム「行くぞ!」


副会長「アイスピラー!」


トム「当たるかよ!」スッ サッ


副会長「ア、アイスハリケーン!」


   ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


トム(関係ねぇ、突っ切る)

トム「うぉぉおおお!!」ダダダダ





80: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/23(日) 00:48:59.06 ID:ReDVqXxq0



副会長「そ、そんな……」


トム(……抜けた!)

トム(ここまで来ればこっちのもんだ)


副会長「…っ!」


トム「行くぜ!」

トム「オラッ……」


副会長「ギガアイスクラッシュ!!」


トム「なっ!?」

トム(まだ隠し玉が……)

トム(ダメだ! 目の前が真っ白になって)


トム「うおぉぁああああ!!」





82: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:00:51.00 ID:88s8caYn0


<学園本棟 救護室>


トム「う、うっ……」


エディ「ん?」


トム「ここは……?」


エディ「おお、トム!」

エディ「目ェ覚めたのか!」

エディ「大丈夫か? どこも痛くねぇか?」


トム「……耳元でピーピー騒ぐな」

トム「頭に響く」


エディ「おう、大丈夫みたいだな」

エディ「心配したぜ」


トム「で、これはどうなったんだ?」

トム「どうして俺はベッドなんかで寝てんだ」





83: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:02:01.39 ID:88s8caYn0


エディ「覚えてねぇか? 最後に魔法食らってたろ」

エディ「実はアレ、結構な大魔法らしくてよ」

エディ「魔法自体はシールドが防いでだらしいが、ちっと刺激が強すぎたみたいで」

エディ「ぶっ倒れちまったから、この救護室に運んできたわけよ」


トム「そうか……」

トム「悪かったな、手間かけさせて」

トム「一応聞いてとくが、試合の結果は?」


エディ「それは、その……負けちまった」

エディ「でも、結構な評判だったぜ!」

エディ「去年の優勝チームを最後まで追い詰めたってんだからよ」


トム「下手な慰めはよせ、返ってみじめになる」

トム「で、他の2人は?」

トム「一緒じゃないのか」





84: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:03:33.03 ID:88s8caYn0


エディ「ヨハンの奴は親父さんに報告しに行ったぜ」

エディ「ジムの野郎は知らねぇ」

エディ「また、どっかで不貞腐れてんじゃねぇか?」

エディ「結局はナターシャに負けちまったし」


トム「また変に捻くれないで欲しいね」

トム「当分アイツの無茶に突き合わされるのは勘弁だ」


エディ「全くだぜ」

エディ「次、何か言いだしたら……ん?」


   コン コン


家政婦長「失礼します」


エディ「お、マーガレットじゃねぇか」

エディ「アンタもトムの見舞いか?」


家政婦長「ええ」

家政婦長「伝言を頼まれたので、そのついでに」





85: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:04:33.93 ID:88s8caYn0


トム「伝言? 誰からだ」


家政婦長「あなたの対戦相手のクロエさんと学園長先生からです」


エディ「学園長って……あの爺さんだよな」

エディ「オレ達なんかマズイことしちまったか?」


家政婦長「いえ、私は言付けを預かっただけなので、詳しいことは……」

家政婦長「それで、どちらから聞きますか?」


トム「……そうだな」

トム「対戦相手の方から頼む」

トム「爺さんのは覚悟が要りそうだからな」


家政婦長「そうですか、では」


  『気絶させてしまって申し訳ありません』

  『試合時間が押しているので見舞いに行けませんがお大事に』


家政婦長「……とのことです」





86: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:05:35.64 ID:88s8caYn0


トム「負かした相手の心配をするなんて随分と余裕だな」

トム「俺の心配をするぐらいなら、次の試合のことを考えりゃあいいのに」


家政婦長「クロエさんに伝えておきましょうか?」


トム「いいのか?」


家政婦長「どうせ表彰式の準備でコロシアムに行きますから」


トム「じゃあ、頼んだ」


エディ「で、爺さんからの伝言ってのは?」


家政婦長「学園長先生からは……」

家政婦長「話をしたいから3人で自分の執務室まで来るように、と」


エディ「あの爺さんがねぇ……」

エディ「悪い話じゃなけりゃいいけど」


トム「そればっかりは聞いてみないと分からねぇな」

トム「じゃあ、ありがとうな」

トム「伝言は確かに受け取ったぜ」





87: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:07:04.30 ID:88s8caYn0


家政婦長「それと……コレをどうぞ」


トム「何だ? それは」


家政婦長「魔法への抵抗力を高める薬です」

家政婦長「どこまで効果があるかは分かりませんが、今回みたいに気絶することは無くなるはずです」

家政婦長「人数分あるので、良かったら飲んでください」


エディ「魔法の薬? 爺さんに届けろって言われたのか」


家政婦長「いえ、私個人の差し入れです」

家政婦長「魔法を使う学園では入用でしょうから」


トム「なら、ありがたく貰っとくよ」

トム「魔法を食らってぶっ倒れるのはこれが最後にしたいからな」


家政婦長「それは結構です」



   「婦長、まだですか?」

   「そろそろ行かないと遅れてしまいます」






88: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:07:41.91 ID:88s8caYn0


家政婦長「では、仕事がありますので」

家政婦長「私はこれで」


エディ「……で、トム」

エディ「本気で飲むつもりか?」

エディ「明らかに怪しい色してるぜ、それ」


トム「俺は他人の厚意を無碍にしない主義なんでな」

トム「行くぞ……ゴク、ゴク」

トム「…」


エディ「……おい、大丈夫かよ?」

エディ「今まで見たことねぇぐらいに渋い顔してんぞ」


トム「……大丈夫だ」

トム「むしろ、最高の気分だね」


エディ「だったら、オレは……」


トム「…」


エディ「わ、分かったって!」

エディ「飲むから! オレも飲むから、そんな目で見んなよ」





89: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:08:28.04 ID:88s8caYn0


<学園本棟 学園長室>


学園長「おお、来とくれたか」

学園長「待っておったぞ」


トム「遅れて悪かったな」

トム「どっかの誰かを探すのに時間がかかっちまった」


ジム「ケッ……」


学園長「試合は惜しかったの」

学園長「あと少しで勝てそうじゃったのに」


トム「負けは負けだ、惜しいもクソもない」

トム「それより、話って何なんだ?」

トム「わざわざ俺達を呼ぶあたり、ただの世間話ってわけじゃないんだろ」


学園長「そうじゃな」

学園長「お主らは回りくどいのは好きじゃないみたいだしのう」

学園長「でも、素直に聞いてくれるか……」





90: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:09:14.32 ID:88s8caYn0


エディ「そういうのが回りくどいって言うんだよ」

エディ「言うなら言うで、さっさとしやがれ」


学園長「では、単刀直入に言わせてもらうとしよう」

学園長「お主たち……講師になるつもりはないか?」


エディ「あ? 講師」


トム「どういう意味だ、そりゃ」


学園長「そのまんまの意味じゃよ」

学園長「この学園の講師になる気はないと聞いておるんじゃ」


トム「どういう風の吹き回しだ」

トム「確かに、俺達がここに居るためには仕事が必要だってのは分かってるが」

トム「それは雑用係で充分だろ?」

トム「それとも……そいつも用務員の仕事の1つだって言うのか?」


学園長「ふむ……やはり、いきなり話しても聞いとくれんか」





91: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:10:21.30 ID:88s8caYn0


エディ「そりゃそうだぜ」

エディ「訳も分からねぇまま『はい、そうですか』なんて言えるかよ」

エディ「頼むんだったら、理由ぐらい教えろってんだ」


学園長「理由か……」

学園長「お主らはどうしてこの学園に来たか、覚えとらんか?」


トム「実験の失敗だが事故だが知らんが」

トム「どっかのバカが異世界に穴を開けて、それに俺達が落ちちまったせいだろ?」

トム「そいつがどうかしたのかよ」


学園長「……実を言うとじゃな」

学園長「お主らが来てから、学園内で実験の失敗や魔法の事故が頻発するようになったのじゃ」

学園長「それが王都のお役人たちの目に留まったみたいでの」

学園長「学園の教師の大半が、王都に連れ出されたり、退職してしまったのじゃ」

学園長「その所為で学園は未曽有の人手不足でな」

学園長「猫の手でも借りたい状況なのじゃ」





92: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:11:04.67 ID:88s8caYn0


トム「で、俺達にその穴埋めをしろってワケか」


学園長「早い話がそういうわけじゃ」

学園長「どうかね? やってはくれないかね」


ジム「ハンッ、くだらねぇな」

ジム「俺はテメェらの尻拭いをするほど暇じゃねぇ」

ジム「講師なら他の奴をあたりな」


学園長「むう、これだけでは押しが足りんか」

学園長「あまり無理強いはしたくなかったんじゃが……」

学園長「そこのお主」


ジム「何だ? 用がねぇなら帰るぞ」


学園長「いつだったか、ウチの剣術の講師を剣で負かしたじゃろう?」


ジム「ああ、あくびが出るような剣だったんでな」

ジム「それがどうしたってんだよ」





93: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:12:14.16 ID:88s8caYn0


学園長「彼はアレを最後に田舎へ帰ってしまったんじゃ」

学園長「自分の剣に随分な自信があったじゃが、心がすっかり折れてしまったらしくての」

学園長「おかげで……今、学園には剣術の講師がいない状況なんじゃよ」


ジム「……それがなんだ」

ジム「あの野郎が勝手に辞めただけじゃねぇか」


エディ「おい! ジム」

エディ「オメェの所為で辞めちまったようなもんだろ?」

エディ「少しは責任ってもんを感じたらどうなんだよ」


ジム「チッ……分かったよ」

ジム「やってやるよ」

ジム「そうすりゃあ、文句ないんだろ」


学園長「おお! 聞きわけが良くて助かったわい」

学園長「これなら、奥の手は使わなくて済みそうじゃ」


トム「おい……奥の手ってのはなんだ?」

トム「まだ、何か脅し文句を持ってたのか」





94: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:13:12.34 ID:88s8caYn0


学園長「いや、大したことじゃないんじゃが……」

学園長「お主たち、学園の対抗試合に出して欲しいと言っておったじゃろ?」


トム「ああ……どっかのバカのせいでな」

トム「で、それが何かに関係あるのか?」


学園長「アレは生徒同士の試合であってな」

学園長「本来なら、学園の関係者でも生徒以外は参加はできないものなんじゃ」

学園長「じゃが、それにも例外があって」

学園長「生徒以外でも教師の見習いや新任講師なら参加できるのじゃ」

学園長「だから……」


トム「俺達をこの学園の講師として試合に参加させた、か」

トム「……最初から俺達を講師にするつもりだったんだな」


学園長「最初は書類だけ書き換えようかと思っておったんじゃが」

学園長「試合でお主らの力量を見てしまっての」

学園長「是非とも手元に置いておきたくなったのじゃ」





95: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:15:21.32 ID:88s8caYn0


トム「ったく……いけ好かねぇ爺さんだ」

トム「いいぜ、やってやるよ」

トム「ここまでされたら逃げられねぇしな」


学園長「うむ、よろしく頼むぞ」


エディ「でも、オレ達は何をすりゃあいいんだよ?」

エディ「魔法なんてからっきしだぜ」

エディ「そんなんで、何を教えりゃいいんだって」


学園長「大丈夫じゃ、魔法を教える教師はなんとか足りとる」

学園長「お主らにやってもらいたいのは、男子クラスの担任じゃ」

学園長「今までは交代制で回してたんじゃが、数が足りなくなってしもうてな」

学園長「あそこなら人数も少ないし、何とでもなるじゃろう」


トム「で、具体的には何をすりゃいいんだ?」

トム「アルファベットの書き取りから始めりゃいいのか」


学園長「お主らの好きにしていい」

学園長「必要な授業は他の教師が受け持つからの」

学園長「お主らは空いた時間に、好きなことを教えていればいいのじゃ」

学園長「どこのクラスもそういう制度にしているからの」





96: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/24(月) 09:16:22.78 ID:88s8caYn0


トム「へぇ、そうかい」

トム「そりゃあ、楽しそうだな」


学園長「では、これで話は終わりじゃ」

学園長「細かい話は……」


トム「待て、最後に聞きたいことがある」


学園長「何じゃ?」


トム「ヨハンは……俺達と一緒に試合に出ていたヤツはどうなった?」

トム「アイツが退学になるってなら、この話は無かったことにしてもらうぞ」


学園長「それなら、安心せい」

学園長「彼の退学は無かったことになった」

学園長「まぁ、彼自身が辞めるつもりは無かったのは知っておったからの」

学園長「元から退学など聞き入れるつもりなぞ無かったわ」


トム「それを聞いて安心したぜ」


学園長「他に質問はないな?」

学園長「健闘を祈っておるぞ」





97: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:01:49.81 ID:xaK7WHm60


<魔導学園 廊下>


エディ「なぁ、トム」

エディ「ホントにここで合ってんのか?」

エディ「他のクラスの教室とはえらい離れてるぜ」


トム「爺さんに言われた通りにやってきたんだ、間違いはないだろ」

トム「ま、学生寮が男子禁制とか言ってたからな」

トム「教室ぐらい分けててもおかしくないんじゃねぇか?」


エディ「なんか……」

エディ「今更になってイヤになってきたぜ」

エディ「こんなところに追いやられてるヤツらの相手をしなくちゃいけねぇんだろ?」

エディ「考えただけでも、頭が痛くなるぜ」





98: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:03:16.99 ID:xaK7WHm60


トム「俺達のチームも大概だろ?」

トム「ヨハンみたいな奴もいるんだ」

トム「そうそう、おかしなヤツはいねぇだろ」


エディ「……そうだといいけどな」


ジム「おい、何くっちゃべってんだよ」

ジム「入るならさっさとしろ」


トム「心配されなくても、今から入るとこだ」

トム「行くぞ」


   ガラ ガラッ






99: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:04:08.17 ID:xaK7WHm60


<魔導学園 男子クラス>


エディ「……中は意外と普通なんだな」

エディ「正直、もっと酷いありさまだと思ってたぜ」


トム「俺達の部室じゃねぇんだ」

トム「それなりにキレイにしてるだろ」


生徒「!?」 書記「!」


書記「お前らは……!」


生徒「ト、トム!?」

生徒「エディにジムも!」


トム「よお、ヨハン」

トム「それと……誰だ?」


書記「俺だ! アルベルトだ」

書記「学内試合で戦っただろ!?」





100: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:04:57.72 ID:xaK7WHm60


ジム「ああ……あの火吹き野郎か」

ジム「弱すぎて印象に残ってなかったぜ」


書記「何だと! この……」


生徒「ア、アル! 落ち着いて」

生徒「こんなところで魔法なんか撃ったら大変なことになるよ」


トム「そうだ、止めとけ」

トム「コイツを消し炭にして面白い事なんか何もない」


書記「……分かったよ」


  「ヨハン、彼らと知り合いみたいだけど」

  「どこの誰なんだ?」


生徒「ほら、前に話しただろ?」

生徒「学内試合で助っ人を頼んだって」

生徒「それがあの3人なんだ」


  「ああ、彼らが……」





101: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:06:48.12 ID:xaK7WHm60


トム「何だ? お前は」


  「俺はこのクラスで学級委員をしているハインリヒだ」

  「ヘンリーでいい」


トム「俺はトーマス」

トム「こいつらは、エドワードにジェームズだ」


学級委員「よろしく」

学級委員「それで……どうしてここに?」

学級委員「何か用事でもあるのか」


エディ「聞いてねぇのか? オレ達の事」


書記「お前達のことなんて聞いてないね」

書記「知ってるのは、新しい担任が入ることぐらいだ」


エディ「なんだ、聞いてんじゃねぇか」

エディ「オレ達がその担任だぜ」


書記「は?」


エディ「だから、今日からオレ達が……」


トム「このクラスの担任だ」


書記「なっ!?」 生徒「本当に!?」





102: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:08:23.54 ID:xaK7WHm60


生徒「……そうっだのか」

生徒「それで、このクラスに」


トム「俺もこうなるとは思ってなかった」

トム(異世界の事は適当にぼかして話したけど)

トム(通じたみたいだな)


生徒「ゴメン……僕を手伝ったばっかりに」

生徒「こんなクラスへ飛ばされて」


エディ「気にすんなって」

エディ「女ばっかのクラスなんて居心地が悪くて仕方ねぇからな」

エディ「オレはこっちで良かったと思ってるぜ」


  「僕は女性の方が良かったね」

  「新しい担任と聞いて期待してたのに」

  「むさ苦しい男ばかり3人なんて、ガッカリにもほどがある」


エディ「なんだ? お前」

エディ「ケンカ売ってんのか?」





103: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:09:14.33 ID:xaK7WHm60


  「男の担任でも、もっと上品な人を期待してたのに」

  「これじゃあ、まるでダメだ」

  「特に1番右の君」

  「口が悪けりゃ、顔も悪い、おまけに背が小さいと来てる」

  「とても人前に出せる代物じゃないね」


エディ「んだと? このブロンド野郎が」

エディ「それが初対面の人間に向かって言うことこか?」

エディ「今すぐ、その減らず口を利けなくしてやろうか! ああ!?」


ジム「クックックッ……こりゃ傑作だ」

ジム「人前に出せる人間じゃない……」

ジム「テメェとは気が合いそうだぜ」


  「そんな風に思われるとは心外だね」

  「君は、顔は良いけど……それだけだ」

  「ガラの悪そうなオーラがにじみ出てるし、何より教養が無さそうだ」

  「そんなんで僕を同列に扱わないでくれ」





104: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:11:23.10 ID:xaK7WHm60


ジム「テメェ……」

ジム「サシミにされてぇみてぇだな」

ジム「いいぜ、立派な活け造りにしてやるよ」ジャキ


トム「おい! バカ」

トム「剣なんか抜くんじゃねぇ!」

トム「仮にもこいつは生徒だぞ!?」


ジム「邪魔するんじゃねぇ」

ジム「こいつには体で教えてやらねぇと気がすまねぇんだ」


エディ「そうだぜ、トム」

エディ「これから長いこと一緒に過ごすんだ」

エディ「愛のある教育ってのやってしてやらねぇとな」


  「はぁ……うるさいな」

  「少しは静かにするってことが出来ないのか」


ジム「何だ? テメェは」

ジム「俺達はこのブロンド野郎に話があるんだ、外野は黙ってろ」





105: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:13:35.13 ID:xaK7WHm60


  「アンタらの声がうるさくて集中できないんだ」

  「ケンカをするなら外でやってくれ」


  「何を言ってるんだよ?」

  「ケンカなんて野蛮なこと、僕がするはずないじゃないか」

  「これはタダの話し合いさ」


  「何が『タダの話し合い』だよ」

  「人のことを挑発しておいてさ」

  「確かにソイツらは、口も悪いし、ガラも悪い」

  「おまけに、簡単に挑発に乗るバカだ」
  

エディ「おい! 待ちやがれ」

エディ「今……」


  「でも、こんな奴でも担任だっていうなら黙ってろよ」  

  「そんなんだから、女子からも煙たがられるんだ」

  「みんな陰でお前の事こう言ってるぞ」

  「空気の読めない勘違いウィリアムって」





106: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:15:46.92 ID:xaK7WHm60


  「……そんなこと言っていいのかい? ポール」

  「僕は知ってるんだぞ」

  「君が1コ下の女子にご執心だって」


  「!?」


  「遠巻きに眺めてるだけみたいだけど」

  「教えてあげた方が良いかな?」

  「……変質者が君を見てるって」


  「お、お前……」


ジム「おい! テメェら」

ジム「散々ケンカを売っておいて、無視するんじゃねぇ!」

ジム「表へ出ろ! そこで決着を付けてやる」


エディ「ジム、久々に名案だぜ」

エディ「コイツらとはキッチリ話し合いをしなくちゃならねぇからな」


  「……そうだね」

  「こんなところでじゃ、話し合いなんてできそうにない」


  「ああ、自分の教室がメチャクチャになるのは嫌だ」


ジム「よし、こっちだ」

ジム「付いてこい」





107: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:17:02.40 ID:xaK7WHm60


トム「なぁ、ヨハン」

トム「……アイツらもこのクラスの生徒なのか?」


生徒「ああ、うん」

生徒「ブロンドの方がウィル……ウィリアムで」

生徒「眼鏡をかけてる方がポール」

生徒「2人ともこのクラスの生徒だよ」


トム「アレを相手しなくちゃいけねぇのか」

トム「……頭が痛くなってきた」


学級委員「いや、彼らはまだマシな方さ」

学級委員「このクラスにはもっと凄いのがいるんだ」


書記「ああ……下手に逆らえない偏屈中の偏屈がな」


トム「何だ? それは」


書記「王子様だ」


トム「あ?」





108: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:20:04.69 ID:xaK7WHm60


<職員寮 廊下>


トム「で、そいつは本当に王子様なんだな?」


学級委員「まぁ、王子とは言っても側室の子供で王位継承権は4番目」

学級委員「世継ぎも殆ど決まっているから、王様にはなれないだろうけどな」

学級委員「それでも、王族には変わらないから」

学級委員「教師も下手に扱えないんだ」


トム「それで引きこもりとは、いい度胸だ」

トム「引きずり出してやる」


書記「止めとけよ」

書記「どうせムダだし、そんなことしたらお前らのクビが飛ぶぞ」


生徒「そうだよ、トム」

生徒「先生達だって、王子を外へ出そうとしないんだから」

生徒「下手なことしたら君が危ない」





109: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:20:51.38 ID:xaK7WHm60


トム「なら、望むところだ」

トム「俺だって、なりたくて講師になったんじゃねぇんだ」

トム「向こうからクビにしてくれるんなら、願ったりかなったりだぜ」


生徒「でも、トム」

生徒「そんなこと言ったって……」


トム「心配すんなよ、ヨハン」

トム「多少の事じゃ俺達はどうにもならねぇ」


書記「おい、着いたぞ」

書記「ここがアイツの部屋だ」


学級委員「早速、呼び出してみよう」


   コン コン コン コン


学級委員「俺です、ハインリヒです」

学級委員「王子、扉を開けてもらえませんか?」


扉「…」





110: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:22:45.12 ID:xaK7WHm60


トム「おい、反応がないぞ」

トム「本当にこの部屋にいるのか?」


生徒「何時もこうだ」

生徒「1日中部屋に閉じこもって」

生徒「食事を運ぶとき以外は、誰も部屋に入れようとしない」


書記「だから、言っただろ?」

書記「偏屈中の偏屈だって」


トム「筋金入りの引きこもりってわけか」

トム「面白い……やってやるよ」

トム「ヘンリー、そこを退け」

トム「俺が代わりにやる」


学級委員「いや……でも」


トム「いいから、俺に任せとけって」





111: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:23:37.07 ID:xaK7WHm60


学級委員「そこまで言うなら、ほら」


トム「よし」 


   ガン ガン ガン ガン


トム「おい! いるのか?」

トム「いるなら返事をしやがれ」

トム「十秒以内に返事をしねぇと、このドアぶち破るぞ」


生徒「ト、トム?!」

生徒「何を言って……」


トム「10」


生徒「それはさすがにマズイって!」

生徒「ほら、また来ればいいからさ!」


トム「7……」


学級委員「ヨハンの言うとおりだ、トーマス」

学級委員「いくらなんでも、それは……」





112: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/25(火) 00:25:05.92 ID:xaK7WHm60


トム「あー、うるせぇ!」

トム「カウントを忘れちまったじゃねぇか」

トム「もういい……警告はしたんだ、ぶち破ってやる」


生徒「いや、だから!」


トム「アルベルト」

トム「そいつらを抑えてろ、近づかれると迷惑だ」


書記「ああ、任せとけ」


学級委員「アル、お前!」


書記「いや、いい機会だし」

書記「手伝う分には問題ないだろ?」


トム「おし、行くぞ!」

トム「うりゃぁ!!」ガンッ  


   バキッ  バタンッ






113: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:16:59.78 ID:VyoKdawQ0


<職員寮 王子の部屋>


トム「ここが王子様の部屋ねぇ」

トム「最上階の角部屋とは、いいとこ住んでんじゃねぇか」

トム「俺達の部屋と交換してほしいぐらいだ」


  「だ、誰だ!?」


トム「アンタがカールとかいう王子か」


王子「お前は誰だ!」

王子「誰の許可があってこんなことをした!?」


トム「許可?」

トム「んなもん、俺が許可したに決まってるじゃねぇか」

トム「ほら、外へ出るぞ」

トム「こんなとこに引きこもってると腐っちまう」


王子「こんなことをしてタダで済むと思ってるのか?」





114: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:18:30.03 ID:VyoKdawQ0


トム「なんだ? 俺のクビを切るってか」

トム「だったら、やってみろ」

トム「望むところだ」


王子「なっ……」


学級委員「トーマス、止めるんだ」

学級委員「それ以上はマズイ」


生徒「そうだよ、トム」


王子「アルベルト! ヨハン!」

王子「これをどうにかしろ!」

王子「コイツは一体、何者なんだ」


生徒「ええっと……何て言ったらいいか」

生徒「とにかく、トムは僕らの新しい担任で……」


トム「引きこもりがいるって言うから、来てやった」

トム「不登校は見過ごせねぇからな」





115: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:19:30.79 ID:VyoKdawQ0


王子「こんな奴が担任?」

王子「そんなバカな……」


書記「残念ながら本当ですよ」

書記「俺達だって、今日初めて知ったんだから」


王子「お前、名前は?」


トム「随分と偉そうな態度じゃねぇか」

トム「こういう時は自分から名のるのが礼儀ってもんだろ?」


王子「……ボクが誰だか分からないのか?」

王子「その気になれば、お前なんてどうにでもできるんだぞ」


トム「王子様だって言うんだろ? 笑わせるぜ」

トム「権力とかいう悪趣味なモンを振りかざして」

トム「思い通りにならないと駄々をこねるガキにしか見えねぇよ」


王子「なんだと!」

王子「この……」





116: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:20:08.53 ID:VyoKdawQ0


学級委員「王子!? 何を」


王子「うるさい! 黙れ」

王子「コイツにはボクの手で分からせてやる!」


トム「おっと……そうはいかないぜ」

トム「ヨハン、その剣をこっちに放り投げろ」


生徒「あ……えっと」

生徒「済みません、王子」ポイッ


王子「!?」


トム「おう、悪いな」ガシッ


王子「ヨハン! どうしてだ」

王子「どうしてそんな奴に手を貸した」


生徒「それは……」





117: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:21:33.21 ID:VyoKdawQ0


トム「ヨハンを責めてやるなよ」

トム「コイツだって、アンタを人斬りになんかさせたくないんだ」

トム「仮にもクラスメイトだろ?」

トム「もう少し仲良くしてやったらどうなんだ」


王子「うるさい! 黙れ」

王子「お前なんか剣が無くても!」


トム「止めとけよ」

トム「取っ組み合いのケンカじゃ、俺に勝てねぇんだから」


王子「黙れ!」

王子「お前の言うことなんか信じられるか」


トム「はぁ……仕方ねぇな」

トム「そんなに勝負したいってなら、乗ってやる」

トム「ただし、条件があるがな」


王子「……条件だと? 何だそれは」





118: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:23:32.17 ID:VyoKdawQ0


トム「ケンカは無しだ」

トム「ちょっとしたゲームで勝敗を決める」


王子「ゲーム?」

王子「何だ、それは」


トム「俺がボールを持って逃げ回る」

トム「お前がそのボールを奪えたら、お前の勝ち」

トム「逃げ切ったら、俺の勝ち」

トム「簡単だろ?」


王子「何をバカな……」


トム「いいのか? そんなこと言って」

トム「俺はどっちでも良いんだけどな」

トム「取っ組み合いのケンカよりは、よっぽど勝機があると思うぜ?」





119: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:24:19.65 ID:VyoKdawQ0


王子「……いいだろう」

王子「その勝負、受けてやる」

王子「ただし、ボクが勝ったら」

王子「二度とボクの前に現れるな」


トム「いいぜ、引きこもってようが何しようが自由にしやがれ」

トム「だが……俺が勝ったら」

トム「毎日教室へ来て授業を受けてもらう、いいな?」


王子「いいだろう」

王子「精々、捕まらないように逃げ回るんだな」


トム「ああ……そうさせてもらう」





120: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:25:18.17 ID:VyoKdawQ0


<魔導学園 グラウンド>


王子「うおぉぉぉぉ!!」


   ダダダダダダ


トム「よっと」サッ


王子「やぁああ!!」


トム「ほら、こっちだ」スッ


王子「はぁ……はぁ……」


トム「いい加減、諦めたらどうだ?」

トム「もう、何時間もこのままだぜ」


王子「……うるさい!」

王子「お前に……勝つまで、やって……やる」





121: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:28:21.94 ID:VyoKdawQ0


トム「そうかい」

トム「だったら、諦めてもらうしかないな」


王子「諦める……もんか」


トム「行くぜ」

トム「歯ァ食いしばれよ!」

    
   ドンッ


王子「ぐあっ……」ドサッ


学級委員「王子、もう辞めましょう」

学級委員「彼に勝つのは無理だ」


王子「う、うるさい」

王子「こんなやつに……負けるもんか」


トム「ほう、良い根性してんじゃねぇか」

トム「もっとナヨナヨした奴だと思ってたけどな」

トム「見直したぜ」





122: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:29:41.56 ID:VyoKdawQ0


王子「そんなこと言って……同情を誘ってもムダだぞ」

王子「ボクは勝つまでやるからな」


トム「いいぜ、かかってこいよ」


王子「うおぉぉぉぉお!!」


   ダダダダダダ


トム「やるな」ガシッ

トム「だが、まだまだだな」


    ドンッ


王子「ぐわっ…」ドサッ

王子「がっ……ゲホッ、ゲホッ」


生徒「それ以上は無理ですって」

生徒「ほら、いったん休憩しよう」

生徒「いいだろ? トム」





123: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:31:27.32 ID:VyoKdawQ0


トム「ま、それで勝てるっていうならな」


王子「……るさい」

王子「ボクは、勝つまで……」


  「トーマス!」

  「こんな所に居たんだな、探したぞ」


トム「ん? アンタは」


書記「会長に副会長!?」

書記「どうしてこんなところに」


生徒会長「アルベルト、お前もここに居たのか」 


書記「は、はい」

書記「一応……クラス行事みたいなものなので」


生徒会長「クラス行事?」


書記「えっと、それは……」





124: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:32:36.67 ID:VyoKdawQ0


副会長「あ!」

副会長「君、大丈夫?」


王子「!?」

王子「な、なんだ?」


副会長「そんなに汚れて、何があったの?」 


王子「いや……ボクは」


副会長「ここ擦りむいてるじゃない」

副会長「見せてみて」


王子「な、何を……」


副会長「いいから、ほら」

副会長「そういうのは放って置くのが一番よくないんだから」


王子「だから、何を」





125: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:35:53.97 ID:VyoKdawQ0


トム「……どうなってんだ? これ」


生徒会長「彼女の悪い癖だ」

生徒会長「ケガしている人を見ると誰かれ構わず世話をやく」

生徒会長「それで厄介ごとを引き受けても平気な顔してるからな」

生徒会長「博愛主義なのか、何も考えてないのか」

生徒会長「まぁ、そこがクロエの良い部分でもあるんだがな」


トム「手当たり次第にケンカを売るよりはよっぽどマシだ」

トム「そいつのお陰で、とんだ迷惑を被ってるからな」


生徒会長「……苦労してるんだな」

生徒会長「それで、クロエが手当てしているのは誰だ?」

生徒会長「初めて見たが……お前の知り合いか?」


トム「知らないのか?」

トム「6人しかいない男子クラスの一員だろ」





126: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:37:50.44 ID:VyoKdawQ0


生徒会長「6人?」

生徒会長「私が知ってるのは5人だけだが……」

生徒会長「記憶違いをしてたのか?」


トム(おい、ヨハン)

トム(どうなってんだ? これは)


生徒(……王子の事は僕らしか知らないんだ)

生徒(入学してから引きこもりっぱなしだから、王子を見たことがある人が少ないし)

生徒(本当のことを言っても、質の悪い噂ぐらいにしか思われない)

生徒(だから、僕達以外の女子生徒は王子の事を知らないんだよ)


生徒会長「どうした?」

生徒会長「何かマズイことを聞いてしまったか?」


トム「いや、何でもねぇ」

トム「ちょっと確認したいことがあっただけだ」


生徒会長「で、彼の正体は?」

生徒会長「やはり、そっちのクラスの1人なのか」





127: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:39:39.52 ID:VyoKdawQ0


トム「ああ……アイツは正真正銘、俺のクラスの6人目だ」

トム「ずっと引きこもってたらしくてな」

トム「さっき部屋から引きずり出してきたところだ」


生徒会長「そんな生徒がいたとは」

生徒会長「会長になっても知らないことはまだまだあるな」


トム「話は戻るが……」

トム「アンタは何しに来たんだ?」

トム「俺達の事を探してるみたいだったが」


生徒会長「運動場の方が騒がしいと生徒が騒いでいてな」

生徒会長「先生方は手が離せないということで、私達が確認しに行ったのだ」

生徒会長「そしたら、ジェームズ達4人が……」


トム「……もういい、分かった」

トム「アイツらのケンカを止めてくれって言いたいんだろ?」


生徒会長「私もあの乱闘の中に割って入ることは出来ないからな」

生徒会長「済まないが、力を貸してくれ」





128: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:40:43.26 ID:VyoKdawQ0


トム「こっちこそ、迷惑をかけて悪い」

トム「あのバカどもは責任をもって俺達が何とかする」

トム「いいな? お前達


生徒「まぁ、放っとくのマズイしね」


書記「もちろん行くさ」

書記「会長の頼みだ、断るはずがない」


学級委員「しかし……」

学級委員「アレはどうするんだ?」



王子「痛っ……」


副会長「それぐらい、ガマンしなきゃ」

副会長「男の子のでしょ?」


王子「それは……そうだけど」


副会長「だったら、泣き言を言わないの」


王子「あ、ああ」





129: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:42:38.08 ID:VyoKdawQ0


トム「……放っとけ」

トム「引きこもりにはいいクスリだろ」


生徒「確かに……王子がこの学園で女子と話すなんて初めてだろうし」

生徒「これで、少しは外へ出るようになって欲しいね」

生徒「ご飯を届けるのに、いちいち階段を上るのは大変だからさ」


トム「アイツの飯、お前らが運んでたのか?」


学級委員「ああ、当番制でな」

学級委員「休日以外は毎日日替わりで運んでる」


トム「そいつは難儀なこった」

トム「よく今まで続けられたな」


学級委員「半分日課みたいなもんだから」


書記「行くなら、さっさとしよう」

書記「会長も待ってるんだ」

書記「これ以上放っておくわけにも行かない」


トム「分かってるって」

トム「ほら、行こうぜ」





130: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/27(木) 00:43:46.97 ID:VyoKdawQ0


王子「なぁ……どうして、手当てなんか」

王子「お前には関係ないだろ?」


副会長「理由なんてないよ」

副会長「ケガしてるのをみたから、手当てしてるだけ」

副会長「君にはそういうことはないの?」


王子「ボクは……」


副会長「まぁ、無理しなくていいよ」

副会長「こんなこと言っても、理解してれる人はあんまりいないし」


王子「……お前の名前は?」


副会長「クロエ」

副会長「君はの名前は?」


王子「…」


副会長「アレ、言いたくない?」

副会長「だったら、無理しなくても」


王子「いや……ボクは」

王子「ボクの名前はカールだ」





131: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:46:07.38 ID:M6UKpfFy0


<魔導学園 グラウンド>


生徒「はぁっ!」ダダダダ

  
    ボスッ


トム「よし、いいタックルだ」

トム「なかなか様になってきたじゃねぇか」

トム「ウチのチームの連中にも見せてやりたいぜ」


生徒「……うん」


トム「どうした? 気のない返事なんかして」

トム「何か気に食わないことでもあったか」


生徒「そういう訳じゃないけど」

生徒「トムたちが来て、1ヶ月」

生徒「なんか……僕は何をやってるんだろうって考えちゃって」





132: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:46:59.27 ID:M6UKpfFy0


トム「フットボールの練習が嫌になっちまったのか?」

トム「だったら、ジェームズの野郎に剣技でも教えて貰ったらどうだ」

トム「今はアルベルトの奴に付きっきりみたいだが、1人増えるぐらいどうってことないだろ」


生徒「……それは遠慮しておくよ」

生徒「折角、アルが『会長の代わりなら自分が相手をする』って言ってくれたしね」


トム「なら、どうしたんだ?」

トム「イヤに憂鬱なことを言って」


生徒「何というか……最近は先生の急用とかで授業はめっきり減って」

生徒「魔法を使ってるより、フットボールの練習やってる時間が長いしさ」

生徒「しつこかった父さんからの手紙も、あの試合から全く音沙汰がないし」

生徒「魔法を学ぶために残ったのに何やってるんだろう、って」


トム「そうか……」


生徒「もちろん、トムたちの練習がつまらないってわけじゃないんだ」

生徒「引きこもってた王子とも普通に話せるようになったし」

生徒「でも、本当にここへ残って良かったのかって思ってさ」





133: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:47:40.88 ID:M6UKpfFy0


トム「さぁ? そんなことは俺には分からない」

トム「ただ……お前のここに残りたいって気持ちは本物だったと思うぜ」

トム「見ず知らずの俺達に助けを求めて、過程はどうであれジェームズの野郎を動かしたんだ」

トム「生半可な気持ちで出来ることじゃない、そう思わないか?」


生徒「うん、まぁ……」


トム「だったら、その時の自分を信じてやれ」

トム「考え直すのは、それからでも遅くはないだろ?」


生徒「そうだね」

生徒「折角ここに居られるようになったんだ、もう少し考えてみるよ」


エディ「おーい、トム!」


トム「ん、どうした? 練習中だろ」

トム「ヘンリーの奴にでも振られたか」


学級委員「そういう訳じゃない」

学級委員「人探しを頼まれたんだ」

学級委員「お前達、王子を見てないか?」





134: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:48:40.42 ID:M6UKpfFy0


生徒「王子? こっちには来てないけど」


トム「また、部屋にこもってるんじゃないのか?」

トム「アイツのことだ、外の明かりが眩しくなったんだろ」


生徒「でも、急に引きこもりに戻るなんて……」

生徒「この1ヶ月は毎日部屋から出てたんだよ?」


エディ「そうだぜ、トム」

エディ「部屋ならとっくにオレ達が探したんだ」

エディ「そこにいないっていうからお前のとこまで来たんだよ」


トム「じゃあ、何処だ?」

トム「アイツがジェームズのところに行くとは思えねぇし」

トム「俺達のところ以外となると……」


  「あの! もしかしたら」

  「召喚の洞窟かもしれません」


トム「アンタは……」





135: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:49:29.96 ID:M6UKpfFy0


ブロンド「これは、これは……」

ブロンド「生徒会の副会長、クロエ嬢ではありませんか」


副会長「えっと……君は?」


ブロンド「彼らのクラスメイトのウィリアムだ」

ブロンド「ウィルと呼んでくれ」


エディ「テメェ……どこから湧いてきたんだよ」

エディ「練習に参加しねぇってなら大人しくしてろ」

エディ「あのメガネ野郎だって、そうしてんだから」


ブロンド「悪いけど、君みたいなガサツな人間の相手をしてる暇はないんだ」

ブロンド「さぁ、クロエ」

ブロンド「この僕に理由を話してくれ」


エディ「コイツ……バカにしやがって」


トム「止めろ、エディ」

トム「こんなとこでケンカしても体力の無駄だ」





136: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:50:18.08 ID:M6UKpfFy0


ブロンド「そうさ、エディ」

ブロンド「ケンカなんて野蛮なもの」

ブロンド「レディに見せるわけにはいかないだろ?」


トム「ウィリアム……お前もだ」

トム「今すぐ、そのむせ返るような甘ったるい口調をやめろ」

トム「これ以上聞かされたら、お前をタコ殴りにしちまう」


ブロンド「しょうがない、分かったよ」

ブロンド「君の脅しは本物だろうからね」


副会長「その、済みません」

副会長「私が口を出したばっかりに……」


トム「気にするな」

トム「それより、どうしてコイツらと一緒にいるんだ?」


副会長「それは……」


学級委員「王子を探してたのは彼女なんだ」

学級委員「俺たちは彼女に頼まれて、王子探しを手伝ってただけだ」





137: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:51:16.08 ID:M6UKpfFy0


トム「どうしたって、そんなことを?」

トム「何か問題でもあったのか」


副会長「ええっと……」

副会長「実は私、おばあちゃんの形見の懐中時計を失くしちゃって」

副会長「それを探してる時にカール君に会って、説明したら」


  『懐中時計? それぐらいボクが見つけてやるさ』


副会長「って、言われて」

副会長「悪いって断ったんですけど……」


  『心配するな、ボクに任せろ』

  『それで、どこで失くしたのか分かるか?』


副会長「それで……校舎は探したから、後は外かもしれないって答えたら」


  『よし、ボクが探して来てやる』


副会長「……って探しに行っちゃって」

副会長「やっぱり断ろうと思って、みんなに探してもらってたけど」

副会長「グラウンドも運動場も何処を探しても見つからないんです」





138: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:54:06.93 ID:M6UKpfFy0


副会長「でも、この前の事件を思い出して……」


トム「この前の事件?」


学級委員「グラウンドの爆発騒ぎじゃないか?」

学級委員「魔法に失敗して、校庭と洞窟を結ぶ穴が開いたとか」


エディ「まさか、その洞窟ってのが……」


副会長「はい……それが召喚の洞窟です」


生徒「た、大変だよ! トム」

生徒「あそこは召喚に失敗したモンスターやクリ―チャーの巣になってる」

生徒「ちょうど1ヶ月前の事件だから、王子は知らないんだ」


トム「全く……世話の焼ける奴だ」

トム「よし、お前ら」

トム「今からアイツを探しに行くぞ、いいな?」


生徒「もちろん」


エディ「まぁ、放っとく訳にもいかねぇしな」





139: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:54:46.41 ID:M6UKpfFy0


トム「お前らは?」


学級委員「仮にも王子だからな」

学級委員「見捨てるわけにはいかない」


ブロンド「レディの頼みとあったら断るわけにはいかないさ」

ブロンド「彼にはちゃんと戻ってきてもらわないと」

ブロンド「女性の涙は見たくないからね」


トム「なら、決定だな」


副会長「私も行きます!」

副会長「こんなことになったのは私が原因だから」

副会長「私が行かないと」


ブロンド「ダメだよ、クロエ」

ブロンド「君を危険な目に合わせるわけにはいかない」

ブロンド「王子だってそう思ってるはずだ」

ブロンド「彼は僕が必ず連れ戻すから、ここで待っていてくれないかい?」





140: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:55:12.92 ID:M6UKpfFy0


副会長「でも……」


トム「そいつの言う通りだ」

トム「言い方は全くもってカンにさわるが、言ってることは正しい」

トム「だから、ここで待っててくれ」

トム「アンタだって、格好つけたクセに迷子になってる姿なんか見られたくねぇだろ?」


副会長「それでも……」


エディ「安心しろって」

エディ「アイツはオレ達が絶対に見つけてやるからさ」


副会長「……分かった」

副会長「カール君をお願いします」


トム「ああ、任せておけ」





141: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:56:23.10 ID:M6UKpfFy0


<召喚の洞窟>


エディ「ここが召喚の洞窟ねぇ……」

エディ「暗くて、ジメジメして、正に洞窟って感じだな」


学級委員「ここは元々学園の地下にあった洞窟を再利用してるだけだからな」

学級委員「補修も最低限のものしかしてないし」

学級委員「一番奥に何があるか、まだ分かってない」


エディ「いいのかよ……そんなもんを使ってて」

エディ「それに、モンスターやクリ―チャーの巣とか言ってたな」

エディ「ありゃどういう意味なんだよ?」


生徒「言葉通りの意味だよ」

生徒「ここは、一昔前に流行ってた召喚魔法の実験場で」

生徒「呼び出したモンスターがここに住みついてるんだ」


トム「召喚魔法ねぇ……」

トム「名前からして大方の想像がつく」

トム「どうせ、モンスターだかなんだかを呼び出したはいいが」

トム「元に返せなくなってここに放置したんだろ」





142: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:56:49.13 ID:M6UKpfFy0


生徒「まぁ……大体はそんな感じかな」

生徒「それで、召喚魔法は危険すぎる魔法ってことで禁術になって」

生徒「その実験場だったこの洞窟は閉鎖されたんだ」


トム「ところが、魔法の失敗だかで大穴があいちまって」

トム「何も知らない王子様が迷い込んじまったってワケか」

トム「全く……迷惑な話だぜ」


ブロンド「仕方ないさ」

ブロンド「魔法の失敗は誰にでもある」

ブロンド「今回はたまたま運が悪かっただけさ」


エディ「そういう割りには多すぎねぇか?」

エディ「こっちに来てから、そこかしこで魔法が失敗してるぜ」

エディ「ひょっとして、誰かがワザとやってるなんてことはねぇのか?」


ブロンド「そ、そんなことは……」





143: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:57:30.66 ID:M6UKpfFy0


学級委員「ない……とは言い切れないけど」

学級委員「そんなことをして誰が得をするんだ?」

学級委員「一連の騒動のせいで教師の数は足りてないみたいだし」

学級委員「授業が出来なくなる分、学生や教師にとって良いことはないだろう」


エディ「そりゃ……お前」

エディ「おい、トム」

エディ「何かねぇか? 事故を起こして得するような理由がよ」


トム「自分で言い出した癖に、俺に振るんじゃねぇよ」


エディ「そんなこと言わずにさぁ」


トム「しょうがねぇな」

トム「そうだな……」

トム「ただの嫌がらせってのはどうだ?」


学級委員「嫌がらせ?」

学級委員「それはどういう意味だ」





144: ◆pOKsi7gf8c 2014/11/28(金) 16:58:27.76 ID:M6UKpfFy0


トム「誰にも良いことはない、みたいなことを言ってたが」

トム「中には居ると思うぜ?」

トム「教師たちが困ってるのを見るのが楽しい、なんて捻くれた奴が」

トム「そんなやつが問題を起こして1人で楽しんでるってなら」

トム「そいつ自身は得するだろ?」


学級委員「確かに……」


トム「ま、そんな妄想劇を繰り広げたところで何も出ない」

トム「さっさと進んで……」


    ゴォォオオン  

   「うぁあああ!!」


生徒「これって!?」


トム「話は後だ! 行くぞ!!」





145: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:19:49.45 ID:m2sT8f4n0


<召喚の洞窟 窪んだ広場>


王子「くっ……来るなぁ!!」


  「…」ポヨン ポヨン



生徒「王子!?」


エディ「何だよ!? あのゼリーみたいなヤツ!」


学級委員「プリンだ!」


エディ「何なんだよ!? そりゃ」

エディ「アイツを襲おうってのか!?」


ブロンド「説明は後だ!」

ブロンド「とにかく、王子を助けないと」





146: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:20:33.25 ID:m2sT8f4n0


王子「や、やめろ……」

王子「こっちに来るんじゃない!」


  「…」ポヨン ポヨン



生徒「王子!」



王子「ヨ、ヨハン?!」

王子「助けに来てくれたのか!?」


  「…」ポヨン ポヨン



生徒「そうだ!」

生徒「だから、早くこっちに!」



  「…」ポヨン ポヨン


王子「ム、ムリだ!」

王子「化け物に道を塞がれてて……」

王子「コイツはボクを食べるつもりなんだ!」





147: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:23:00.56 ID:m2sT8f4n0


生徒「そんな……」

生徒「トム! どうしよう!?」


トム「どうするもこうするも、助け出すしかねぇだろ」

トム「俺とエディで奴の注意をひきつける」

トム「その間に、お前ら3人でアイツを引きずってこい」


生徒「わ、分かった」


学級委員「ああ」


ブロンド「まかせてくれ」


トム「よし、エディ」

トム「俺が適当に石ころを投げる」

トム「自慢のシュートをあのゼリー野郎に叩き込んでやれ」


エディ「おし、任せとけ!」


トム「じゃ、行くぜ」

トム「作戦開始だ!」





148: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:23:35.11 ID:m2sT8f4n0


  「…」ポヨン ポヨン


王子「ひっ……」

王子「は、はやく」

王子「早く助けてくれ!」



トム「ほら、エディ」ポイッ


エディ「食らえっ!!」バシッ


  「…」ボスッ ボテッ


エディ「命中! ……って、おい!」

エディ「弾かれちまったぞ!?」



  「…」ポヨン ポヨン


王子「お、おい! 何してるんだ」

王子「全然効いてないぞ!?」





149: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:24:24.01 ID:m2sT8f4n0


トム「んなこと見りゃ分かる!」

トム「大人しく助けられるのを待ってろ!」



王子「うるさい! ボクに……」


 「…」ポヨン ポヨン


王子「ヒッ……来るな!」

王子「お願いだから、早く!」



エディ「どうすんだよ! トム」

エディ「これじゃあ、ヨハン達も近づけねぇぜ!?」


トム「いいから、やるしかねぇ」

トム「アイツが反応するまで続けるぞ!」

トム「ほらッ」ポイ ポイ ポイ ポイッ


エディ「やっ! ハッ、ほっ……たあッ!」


   バシッ ガシッ ドンッ バシッ


   「…」ボスッ ボスッ ボテッ ボヨォン

   「…」ポヨ ズズズズズ





150: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:25:32.29 ID:m2sT8f4n0


エディ「あの野郎がこっちを向いたぜ!」


トム「よし! 今だ」

トム「ヨハン! そいつをこっちに連れてこい」



生徒「王子! こっちだ」


王子「わ、分かった!」


学級委員「さぁ、はやく!」


ブロンド「僕らの後ろに」



  「…」ポヨン ポヨン

  「…」ポヨン ポヨン ポヨン ポヨン


エディ「トム!」


トム「走れ!」

トム「一気に出口まで……」


  ボヨォォォォオオン

   ドシィイン





151: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:26:09.04 ID:m2sT8f4n0


  「…」ポヨン ポヨン


エディ「ア、アイツ……!?」


トム「……飛びやがった」


エディ「そんなのアリかよ」


生徒「どうしよう!?」

生徒「これじゃあ、出口まで行けない」


トム「回れ右だ!」

トム「アイツから逃げるぞ」


王子「もうムリだ」

王子「出口を塞がれたんだ、逃げ場なんて……」


トム「黙ってろ!」

トム「死にたくなかったら走れ」


  「…」ポヨン ポヨン





152: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:27:39.50 ID:m2sT8f4n0


  「…」ポヨン ポヨン


エディ「クソ、まだ追ってきやがる」

エディ「何なんだよ!? アイツは!」


学級委員「アイツはプリン」

学級委員「召喚魔法に失敗したときに出てくる失敗作だ」


トム「失敗作? その割には随分とデカくて速いな」

トム「あんなもんがポンポン呼び出されたら堪ったもんじゃないぞ」


ブロンド「多分、アレはプリンの集合体さ」

ブロンド「一体一体は弱くても、何匹も集まって合体したおかげで」

ブロンド「あんな化け物ができあがったんだ」


トム「ここの大ボスって訳か」

トム「面倒な奴に目を付けられたぜ」


生徒「でも、どうして2人はそんなことを?」

生徒「召喚魔法なんて習ったこと無いはずなのに」





153: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:31:29.31 ID:m2sT8f4n0


エディ「んなことより、あのバケモンをどうにかする方法はねぇのかよ?」

エディ「文字通りのデスレースなんてシャレにならねぇぜ」


トム「何か弱点とかはねぇのか?

トム「アンタらお得意の魔法とかで」

トム「蹴り付けたボールが跳ね返されたんじゃ、俺達はお手上げだ」


学級委員「プリンの弱点は決まった属性の魔法だ」

学級委員「弱点に極端に弱く、苦手な魔法を当てれば溶けてなくなる」

学級委員「だが、それ以外の攻撃はほとんど効果はない」


トム「決まった属性?」

トム「何だ、それは」


ブロンド「プリンの色で分かるんだ」

ブロンド「黄色なら土、赤なら氷属性……みたいにね」

ブロンド「アイツの色は青色だから炎属性の魔法が有効さ」


王子「…」





154: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:32:26.72 ID:m2sT8f4n0


トム「で、炎の魔法を使えるヤツは?」

トム「いるなら、さっさと魔法をぶつけてやってくれ」


生徒「ゴメン、僕は使えない」


ブロンド「僕も」

ブロンド「炎なんて物騒な魔法は使えないね」


エディ「ダメじゃねぇか」

エディ「これならアルベルトの奴を連れてくるんだったぜ」

エディ「確か、アイツも炎の魔法を使ってたろ?」


学級委員「いや、待ってくれ」

学級委員「俺達の中にも炎使いはいる」


ブロンド「ヘンリー、それは……」


学級委員「でも、こうするしか」





155: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:33:04.91 ID:m2sT8f4n0


エディ「どうしたんだよ、おい!」

エディ「炎使いがいるって話だろ」

エディ「オメェがそうなのか? ヘンリー」


学級委員「いや……王子だ」


エディ「おい! 本当かよ」

エディ「お前、炎の魔法が使えんのか!?」


王子「……ああ」


エディ「おし、やったぜ!」

エディ「さっそくアイツにお見舞いしてやれよ!」


王子「……ムリだ」

王子「ボクにはできない」


トム「あ? どういうことだ」

トム「お前は炎を使えるんだろ?」


王子「だから、ムリなんだ」

王子「魔法なんて……ボクには使えない」





156: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:34:06.65 ID:m2sT8f4n0


エディ「おいおい、そりゃどういう意味だよ?」

エディ「魔法の学校に通ってるってなら、魔法ぐらい使えるだろ」


王子「…」


エディ「ほら、お前の魔法でさ」

エディ「あのプリンとかいうゼリー野郎を追っ払っちまえよ」


王子「だから、ムリなんだよ!」

王子「ボクには魔法なんて使えない」

王子「魔法でアイツを倒すなんてできないんだ」


生徒「王子、まさか」

生徒「君が引きこもってた理由って……」


王子「そうさ、魔法を使えないからだよ」

王子「どんなに頑張っても、マッチ程度の炎しか起こせない」

王子「こんなので魔導学園にいるのもバカみたいだ」


エディ「じゃあ、なんだってこんなとこに居んだよ?」





157: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:36:18.30 ID:m2sT8f4n0


王子「ボクだって……」

王子「こんな居心地の悪いところは、すぐにでもいなくなりたかった」

王子「でも、王都に帰るわけにもいかない」

王子「母さんが居なくなって、王都に居場所の無くなったボクにはこの学園以外なかったんだ」


生徒「王子……」


ブロンド「マズイ、行き止まりだ!」

ブロンド「これ以上逃げられない」


エディ「クソッ、どうにかならねぇのかよ!」



  「…」ポヨン ポヨン



王子「さぁ、恨むなら恨めよ」

王子「ボクの所為でこんなところまで来て、あんな化け物に殺されるんだ」

王子「その方がお前達も気が楽だろ」





158: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:37:18.77 ID:m2sT8f4n0


トム「悪いが、遠慮させてもらう」

トム「バカやった仲間の尻拭いをするたびに、いちいち恨んでたりしたらキリがねぇ」

トム「それに、俺は魔法の使えない王子様の身の上話を聞きに来たんじゃない」

トム「他人の落し物のために、こんなことまでやって来た大バカ野郎を連れ戻しに来たんだ」


王子「な、何を……」


トム「その膨らんだポケット」

トム「一体何が入ってる?」


王子「これは……」


トム「見つけたんだろ? 懐中時計」


王子「…」


トム「だったら、届けてやらねぇとな」

トム「そのためにわざわざこんなことろまで来たんだ」


王子「でも……無理だ」

王子「そこは行き止まりだし、アイツを倒すなんて」





159: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:37:59.84 ID:m2sT8f4n0


トム「そんな事はお前が決めることじゃねぇ」

トム「やってみてから決まるもんだ」

トム「エディ、ウィリアム! お前ら2人でそいつの足を止めろ」

トム「その間に俺達でどうにかする」


エディ「おうよ! 任せろ」

エディ「行くぞ、ブロンド野郎」


ブロンド「その呼び方は気に食わないけど」

ブロンド「しょうがない、任されたよ」


  「…」ポヨン ポヨン



トム「さて……これで少しが時間が稼げたな」


生徒「でも、どうしよう」

生徒「このままじゃ、僕たち……」


トム「言われなくても分かってる」





160: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:38:36.05 ID:m2sT8f4n0


トム「おい、アンタ」

トム「さっき、マッチの火がどうとか言ってたが」

トム「それぐらいの火は起こせるのか?」


王子「起こせる……けど、無理だ」

王子「ボクにはアレを倒すぐらいの炎を起こす魔力なんて……」


トム「なら、魔力とやらがあれば出来るんだな?」


王子「でも……ボクにそんな魔力なんて」


トム「だったら、他の奴から借りればいい」

トム「おい、2人とも」

トム「コイツに魔力を貸せるか?」


生徒「出来るかどうか分からない」

生徒「でも……」


学級委員「やるだけやってみる」

学級委員「それしかないんだろ?」





161: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:45:24.67 ID:m2sT8f4n0


トム「どうだ? アンタの方は」

トム「腹は決まったか?」


王子「ボクは……」

王子「ボクにはそんなこと」


トム「やるか、やらないかを聞いてんだ」

トム「YESかNOで答えろ」


王子「…」


トム「お前が出来ないってなら、別の手を考えるまでだ」

トム「難しく考える必要はねぇ」

トム「で、どうする?」


王子「……失敗しても知らないぞ」


トム「上等だ」

トム「さっさと準備にかかるぞ」





162: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:46:05.62 ID:m2sT8f4n0


エディ「食らえ!」バシッ


  「…」ボスッ ボテッ


ブロンド「ブレスウィング!」


  ヒョォォォォオオ


  「…」ボヨォン ボヨォン

  「…」ポヨン ポヨン


ブロンド「ダメだ」

ブロンド「まるで効いてない」


エディ「トム! そろそろ限界だ」

エディ「これ以上はもたねぇぜ」



トム「向こうもそろそろ限界みたいだな」

トム「お前ら、準備はできたか?」


学級委員「ああ」


生徒「いつでも大丈夫」





163: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:46:53.19 ID:m2sT8f4n0


トム「よし、合図は俺がする」

トム「お前達の全力を叩き込んやれ」


王子「あ、ああ」



  「…」ポヨン ポヨン

  「…」ポヨン ポヨン ポヨン ポヨン


エディ「トム! さっきのだ」

エディ「アイツ飛ぶつもりだ!」


ブロンド「はやく! 魔法を」



トム「お前ら、そこを離れろ!」

トム「今だ! やれ」





164: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:47:31.43 ID:m2sT8f4n0


王子「ファイア……ブレス!」


   ゴォォォオオオオオオ


   ポヨン ポヨン ポヨン ポヨン

   ボヨォォォォオオン


エディ「クソッ! 飛んで避けやがった」


ブロンド「させるか!」

ブロンド「サイクロン!」


   ゴォォォオオオオオ


     「…!」


   ジュゥゥゥゥウウウウ






165: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:48:37.60 ID:m2sT8f4n0


<グラウンド 洞窟への穴の前>


エディ「あー、クソ……」

エディ「変なにおいがするぜ」

エディ「あのゼリー野郎、燃えるならもっとマシなにおいを出しやがれってんだ」


生徒「でも、良かったじゃないか」

生徒「無事に帰ってこれたんだし」


学級委員「そうだ」

学級委員「あの状況で、無事に帰ってこれただけでも十分だ」


エディ「まぁ、確かにな」

エディ「一時はホントにダメかと思ったぜ、特に最後のヤツ」


ブロンド「僕の機転のお陰で助かったんだ」

ブロンド「感謝してくれても良いんだよ」


エディ「元はといえば、そこの王子様の魔法だろ?」

エディ「オメェが威張るなってんだ」

エディ「な、トム」





166: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:50:11.76 ID:m2sT8f4n0


トム「まぁな」

トム「お前は良くやったぜ、王子様」

トム「さ、その時計を届けてこいよ」

トム「アイツも待ってるからな」


王子「でも、お前達は?」


トム「頼まれたのは、お前を見つけるところまでだからな」

トム「帰って風呂にでも入ってる」


王子「あ、ああ……」


トム「どうした? 早く行けよ」

トム「ここまで来たら、俺達の付き添いなんかいらねぇだろ?」


王子「いや……その」

王子「……悪い、ボクの所為で」


トム「そんなこと誰も気にしちゃいない」

トム「じゃなきゃ、助けに行こうなんて考えないからな」





167: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/01(月) 00:50:47.42 ID:m2sT8f4n0


王子「ほ、本当か?」


生徒「まぁ……色々あったけど」

生徒「王子が無事だったし、良かったと思うよ」


ブロンド「クロエとの約束も果たせたし」

ブロンド「僕はこれで満足さ」


王子「お前達……」


トム「ほら、早く行って来いよ」

トム「アイツもお前を待ってるぞ、王子様」


王子「……カールだ」

王子「ボクの名前はカールだ」


トム「……そうかい」

トム「じゃあ行って来い、カール」


王子「ああ、行ってくる」





168: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:35:35.41 ID:BF4Mv08j0


<魔導学園 グラウンド>


トム「よう、ヨハン」


生徒「ああ、トム」

生徒「おはよう」


ジム「なんだ、お前とヘンリーの2人しかいねぇのか」

ジム「アルの奴はどこ行った?」


学級委員「生徒会の仕事でもあるんじゃないのか?」

学級委員「最近はずっとお前に付き合ってただろ」


ジム「チッ……アイツが居ねぇと張り合いがねぇな」

ジム「俺の相手は誰がするんだよ」


学級委員「俺が相手をするか?」

学級委員「これでも、剣にはそれなりの自信があるんだ」


ジム「そいつは面白れェ」

ジム「だったら、付き合ってもらうぜ」

ジム「途中で泣き言を言っても知らねぇからな」





169: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:37:33.22 ID:BF4Mv08j0


エディ「おい、待てよ」

エディ「そいつまで居なくなったら」

エディ「どうやって練習しろってんだよ?」


ジム「んなもん、適当にやっとけ」

ジム「どうせ試合なんかしねぇんだ」

ジム「マジメにやったところで、無駄だ」

ジム「ほら、行くぜ」


エディ「あ、テメェ!」


生徒「止めときなって、エディ」

生徒「ああなったら、他人の言うことを聞くとは思えないよ」


トム「そうだぜ、エディ」

トム「アイツの相手をしなくて済む分、俺達は恵まれてる」

トム「ヘンリーの奴に感謝しなくちゃな」





170: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:39:26.27 ID:BF4Mv08j0


エディ「けど、3人だぜ?」

エディ「これじゃあ、パス回しぐらいしかできねぇじゃねぇか」

エディ「大体、後の3人はどこにいるんだよ」

エディ「アイツらが居れば、もう少しマシな練習が出来るのによ」


トム「カールのヤツは休みだ」

トム「俺が休むように言っておいた」

トム「魔力の使い過ぎだったか、今日になって急に疲れが出たらしい」

トム「ま、無理して倒れられちゃ困るからな」


生徒「ポールはいつも通りだよ」

生徒「『フットボールの練習なんてくだらないことはしない』とか言って」

生徒「また、図書館で本でも読んでるんじゃないかな?」


エディ「じゃあ、ウィルのヤツは?」

エディ「アイツは別に疲れたって感じもなかったし、練習には顔を出してただろ」

エディ「なんで居ねぇんだよ?」





171: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:41:00.93 ID:BF4Mv08j0


生徒「いや……そんなこと僕に聞かれても」

生徒「第一、ウィルがいないなんて今に始まった事じゃないし」

生徒「またどこかで、女子にちょっかいでも出してるんじゃない?」


エディ「……ったく、しょうがねぇ野郎だぜ」

エディ「そんなんで良く、オレのことをあーだこーだ言えたもんだな」

エディ「そう思わねぇか? トム」


トム「お前の意見は良く分かったが」

トム「俺に愚痴ったところで何も始まらない」

トム「とにかく、さっさと練習を始めるぞ」

トム「アイツらがサボってようが何しようが、俺達はやることやるだけだ」


エディ「へいへい、分かりましたって」

エディ「じゃあ始めようぜ、ヨハン」


生徒「ああ」





172: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:41:38.15 ID:BF4Mv08j0


-数時間後-


トム「よし、休憩にするぞ」

トム「エディ、ジェームズ達を呼んで来い」


エディ「どうしてオレが?」

エディ「アイツらの間に入るなんてイヤだぜ」


生徒「だったら、僕が行こうか?」

生徒「僕ならジムも絡んでこないだろうし」


エディ「いや、まぁ……そうだけどよ」


トム「で、どうすんだ?」

トム「俺としてはどっちでも良いんだがな」


エディ「ケッ……しょうがねぇな」

エディ「オレが行ってくるよ」

エディ「次はお前だからな、トム」


トム「ああ、分かってる」

トム「頼んだぜ、エディ」





173: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:43:01.63 ID:BF4Mv08j0


生徒「なんだ……僕が行ってもよかったのに」

生徒「どうしたんだろう? エディ」


トム「なんだかんだ言って、他人に迷惑をかけるのが苦手な奴だからな」

トム「お前に仕事を押し付けたくなかったんだろ」


生徒「へぇ……」


トム「覚えておいて損はないぜ」

トム「面倒事を押し付ける時に便利だからな」


生徒「あはは……」

生徒「機会があれば使わせてもらうよ」


トム「さて、昼飯は……」


  「トム! ヨハン!!」


トム「ん? アレは……」


生徒「ウィル?」

生徒「どうしたんだろう? あんなに慌てて」





174: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:44:20.11 ID:BF4Mv08j0


ブロンド「助けてくれ! お願いだ!!」

ブロンド「ポールが……ポールが大変なんだ!?」


生徒「ど、どうしたの!?」


ブロンド「ポールが、ポールを助けてくれ!」

ブロンド「僕の……僕のせいだ!」

ブロンド「僕があんなことをしたから」


トム「おい、どうしたんだ?」

トム「ポールに何があったのか」


ブロンド「そんなつもりじゃなかったんだ」

ブロンド「まさか……人がいるなんて」

ブロンド「僕は、僕は……」


トム「しっかりしろ!」

トム「一体、何があったんだ?」





175: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:46:46.03 ID:BF4Mv08j0


エディ「おい、トム」

エディ「呼んできたぜ……って、おい!」

エディ「こりゃあ、一体何があったんだよ!?」


ジム「やるじゃねぇか、トム」

ジム「このムカつくブロンド野郎にベソかかせるなんて」

ジム「なかなか出来ることじゃねぇぜ」


トム「黙ってろ」

トム「今は取り込み中だ」


学級委員「ウィル、お前……」


ブロンド「ヘンリー!」

ブロンド「どうすれば……僕はどうしたらいいんだ!?」


トム「いいから落ち着け」

トム「どこで、何があった」

トム「どうして俺達のところへ来た?」





176: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:48:03.50 ID:BF4Mv08j0


ブロンド「むこうの……」

ブロンド「図書館で火事があって」

ブロンド「それで、ポールが……」

ブロンド「アルに助けを呼ぶように言われて」


生徒「火事!? ポールが!」


エディ「一体全体、何がどうなってんだよ!?」


トム「考えるのは後だ!」

トム「とにかく行くぞ」


学級委員「図書館は校舎の北側だ」

学級委員「ウィルは俺が見てる」

学級委員「早くポールのところへ行ってやってくれ」


トム「悪い、頼んだ」





177: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:49:16.95 ID:BF4Mv08j0


<魔導学園 炎に包まれた図書館>


  ゴォォォオオオオ


エディ「なんだよアレ!?」

エディ「ホントに燃えてやがる!」


生徒「あの中にポールが!?」

生徒「だったら……」



  「放せ! 放せよ」


  「やめろ! 暴れるなッ」



生徒「アレは!」


トム「ポールにアルベルト……」

トム「一体どうなってやがんだ」


ジム「うだうだ考えるのは後だ」

ジム「詳しい話はアイツらから聞きゃいい」

ジム「行くぜ!」





178: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:51:17.93 ID:BF4Mv08j0


メガネ「メアリー! メアリーッ!!」

メガネ「メアリーが中に!?」


書記「やめろ! ポール」

書記「この中に飛び込むなんて無理だ!」


ジム「おい! アル」

ジム「こいつは、一体どうなってんだ?」


書記「ジムに、みんな!」

書記「来てくれたのか!?」


トム「そんなことより、これは?」

トム「どうして、お前がポールを羽交い絞めにしてんだ?」


書記「どうしたも何も……」


メガネ「放せ!」

メガネ「メアリーが中にいるんだ!!」





179: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:53:30.97 ID:BF4Mv08j0


書記「さっきからこの調子で」

書記「放って置いたら自分から火に飛び込むぐらいの状態なんだ」


メガネ「クソッ! 放せ」


書記「……とにかく、コイツを止めるを手伝ってくれ!」


トム「ジェームズ」


ジム「仕方ねぇな」

ジム「ほらよ」ガシッ


メガネ「止めろ!」

メガネ「僕は、僕が行かなきゃいけないんだ!!」


ジム「うるせぇ、すこしは大人くしてろ」


生徒「でも、どうしてこんなことに」

生徒「何か理由を知らないの?」





180: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:54:52.61 ID:BF4Mv08j0


書記「それが……図書館から逃げ遅れた生徒が居て」

書記「それがポールの知り合いみたいなんだ」


エディ「で、そいつが『メアリー』って事かよ」


メガネ「アイツは僕のたった1人の家族なんだ!」

メガネ「だから、こんなところで……」

メガネ「放せ! 放してくれ!!」


生徒「トム、どうしよう!?」

生徒「このままじゃ……」


トム「分かってる」

トム「ヨハン、誰でもいいから助けを呼んで来い」

トム「これは俺達だけじゃ手に負えない」


生徒「わ、分かった!」





181: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:56:12.62 ID:BF4Mv08j0


トム「エディ、カーテンでも布団でも何でもいい」

トム「とにかくデカい布を濡らしてここへ持ってこい」


エディ「トム、お前……」


トム「いいから早くしろ!」


エディ「デカい布なら何でもいいんだな?」


トム「ああ」


エディ「だったら、任せとけ」


書記「お前、一体何をする気なんだ?」


トム「そんなの決まってる」

トム「助け出すんだよ、そのメアリーとかいう奴を」





182: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:57:17.45 ID:BF4Mv08j0


メガネ「どうしてだ!?」

メガネ「お前達には関係ないはず!」

メガネ「これは僕の問題だ!」


トム「じゃあ、なんだ?」

トム「着の身着のままで炎の中に突っ込むってのか?」


メガネ「当たり前だ!」

メガネ「アイツを助けるためなら、それぐらい!」


ジム「やめとけよ」

ジム「オメェみてぇな奴が火の中に突っ込んでみろ」

ジム「10秒でこんがり丸焼きだぜ」


メガネ「それでもいい!」

メガネ「何もしない……何もできないよりはマシだ」

メガネ「だから、放せ!」

メガネ「放してくれよ……」





183: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 00:58:27.31 ID:BF4Mv08j0


トム「バカな奴だな」

トム「仮にメアリーとかいうのを助けられても、お前が黒焦げになったら意味がないだろ?」

トム「こういう時こそ周りを頼るんだよ」

トム「何でも自分1人で解決できると思うんじゃねぇ」


メガネ「それは……」


エディ「トム! 持ってきたぜ」

エディ「急いでたから、こんなもんしかなかったけどな」


トム「良くやった、これでも十分だ」

トム「お前達はそこでポールの事を見てろ」

トム「俺がメアリーを助けに行く」


書記「おい、助けに行くって」

書記「まさか……」


トム「そうさ、俺が炎の中に突っ込む」

トム「他に方法があるか?」


書記「でも、この炎じゃ……」


トム「そのために防火布を用意したんだ」





184: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/02(火) 01:00:14.74 ID:BF4Mv08j0


ジム「トム、お前で大丈夫か?」

ジム「俺が行ってやってもいいんだぜ」


トム「お前に任せる方が心配だ」

トム「大人しくそこでポールを見張ってろ」


ジム「はいはい、分かりましたって」


エディ「トム、気を付けろよ」

エディ「危なくなったら、すぐに戻ってくるんだぜ?」


トム「ああ、それじゃあ……」


メガネ「待ってくれ!」


トム「なんだ? まだ何かあるのか」


メガネ「メアリーは栗毛……ブリュネットで」

メガネ「いつも奥の魔導書のところにいる」


トム「ああ、了解した」

トム「じゃあ、行ってくる!」ダッ


   ゴォォォオオオオ






186: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:28:19.53 ID:s3nhkZH10


<図書館 燃え盛る炎の中>


   ゴォオオオオ


トム「…ッ」

トム(クソッ……そこかしこから炎が噴き出してる)

トム(これじゃあ、防火布があっても長くはもたねぇぞ)


   バチ バチ バチ

    ガタァン


トム(……本棚が崩れてきてやがる)

トム(早くしねぇと帰り道が無くなっちまうな)


   ゴォオオオオ


トム「おい! 何処だ、何処にいる」

トム「居るなら返事をしろ!」





187: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:29:14.56 ID:s3nhkZH10



    ガタァン
 
   ゴォォオオオオオ


トム(……っ、熱ぃ)

トム(何処だ! 何処にいる!?)

トム「メアリー! 何処だ!!」


  「……っ、ひっ……」

   ゴォオオオオオオ


トム(この声は……)

トム「メアリー! そこにいるのか!?」

トム「おい! 返事をしろ」


  「だ、だれ!? 誰かいるの!?」





188: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:30:17.62 ID:s3nhkZH10


トム「助けに来た!」

トム「待ってろ、今……」


   ゴォォオオオオオ

   「きゃあっ!」

     ガタァン


トム「おい! 大丈夫か!?」

トム「返事をしろ!」


  「……ひっく、……っ」

   ゴォォオオオオオ


トム(取りあえず、大丈夫みたいだが……)

トム(崩れた本棚が邪魔して向こうへ行けねぇ)

トム(他に回り道は無いのか?)


     ガタァン
 
   ゴォォオオオオオ






189: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:31:24.69 ID:s3nhkZH10


トム(……ぐずぐず考えてる時間はねぇな)

トム「そこで待ってろ! 今助けに行く」

トム「動くんじゃねぇぞ!」


  「……っく…っ…」

   ゴォオオオオオオ
  

トム(こうなったら最後の手段だ)

トム「おい! 聞こえるか!?」

トム「今から本棚を倒して道を作る!」

トム「お前はそこでじっとしてろ」

トム「いいか? 絶対に動くんじゃないぞ!」

  
    バチ バチ バチ

  ゴォオオオオ  ガタァン






190: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:32:14.27 ID:s3nhkZH10


トム「行くぞ!」

トム「3! 2! 1……」

トム「うぉぉおおお!!!」ダダダダダ


   ガァンッ バキバキバキ

    ドシィィイイン


トム「ぐっ……」ヨロヨロ

トム(……クソッ、破片が刺さった)

トム(プロテクターなしでタックルなんてするもんじゃねぇな)

トム(だが、そんなことより……)


   バチ バチ バチ

    ガタァン


トム「アンタがメアリーだな?」


栗毛「そう、だけど……」

栗毛「どうして」





191: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:33:21.17 ID:s3nhkZH10


トム「んなことは、どうでもいい」

トム「さっさと帰るぞ」

トム「ほら、コレを被っとけ」バサッ


栗毛「これは……」


トム「火除けだ」

トム「無いよりはマシだろ」


栗毛「でも、あなたは……」

栗毛「それに……そのケガ」


トム「だだのかすり傷だ」  

トム「それより、ここから逃げるぞ」

 
  バチ バチ バチ

    ガタァン
 

トム「このままじゃ、2人とも生き埋めになっちまう」

トム「歩けるか?」





192: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:34:10.10 ID:s3nhkZH10


栗毛「え、えっと……」


トム「無理なら、俺に負ぶされ」

トム「イヤかも知れねぇが、文句は言ってられないだろ?」

トム「ほら」


栗毛「…」コクリ


トム「よし」

 
  ゴォォオオオオオ

   バチ バチ バチ


トム(クソ……)

トム(もう、ここまで火が回ってきやがった)

トム「一気に駆け抜ける」

トム「振り落とされるんじゃねぇぞ」


栗毛「は、はい!」


トム「行くぞ!」





193: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:35:10.81 ID:s3nhkZH10


トム「ハァ…ハァ……」

トム(……っ、本棚が崩れて元の道が塞がってやがる)


栗毛「あ、あの!」


トム「大丈夫だ!」

トム「右に行くぞ」ダダッ


   ボォオオオオ


トム(さっきはあそこを通ってきた)

トム(こっから右に行くと……)

トム(クソッ……何処へ行けば良いんだよ)


栗毛「火、火がこっちに!」


   ゴォォォォオオオ


トム「……分かってる」

トム「掴まってろ!」ダダッ





194: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:36:06.41 ID:s3nhkZH10



   ゴォォオオオオ  

    ガシアャン


トム「くっ……ゲホッ、ゲホッ」

トム(だいぶ煙を吸っちまった、早くしねぇと窒息しちまう)

トム(俺が倒れたら、コイツもまとめてお陀仏だ)


栗毛「あの! 左です」

栗毛「そこを左に曲がってすぐに右に行けば!」


トム「左だな!」

トム「分かった!」ダダッ


   バチ バチ バチ

    ガシャァン


トム(まずは左に曲がって)ダダッ


   ボォオオオオ


トム(次を右に曲がれば……)ダダッ





195: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:36:42.23 ID:s3nhkZH10


栗毛「み、見えました!」

栗毛「出口です!」


トム(よし!)

トム(ここさえ抜ければ……)


  ゴォォォォオオオ

   ドシィイン


栗毛「きゃあっ!」


トム「くっ……」

トム「……大丈夫か?」


栗毛「はい、でも……」

栗毛「……出口が本棚で塞がれて」


トム「クソッ! こんなもの」

トム「フンッ……!」ガシッ

トム(……っ、動かねぇ)





196: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:38:14.55 ID:s3nhkZH10


栗毛「ごめんなさい、私のせいで」

栗毛「あなたまで巻き込んじゃって」


トム「……ッ! 黙ってろ」

トム「そんなくだらねぇこと言ってる暇があったら」

トム「ここから生きて帰る方法でも考えてろ」


栗毛「でも……これじゃあ」


トム「俺は諦めねぇ……」

トム「こんなところで死んでたまるか」

トム「うぉおおお!!」


    ガガガ ガンッ


トム「ハァ…ハァ……」

トム(クソッ、やっぱりダメなのか?)


  「トム! そこにいんのか!?」





197: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:39:08.40 ID:s3nhkZH10


トム「エ、エディ?」

トム「エディなのか!?」


エディ「他に誰が居るってんだよ」

エディ「煙でも吸ってバカになっちまったのか?」


トム「……いいや」

トム「幻覚だったらどうしようか、ってな」


  「フンッ、死ぬ間際でこんな奴の幻覚なんて見たくないね」


トム「ジェームズ、お前もいるのか?」


ジム「お前1人じゃ、心配だったからな」

ジム「様子を見に来てやったんだよ」


トム「そりゃ、結構だ」


エディ「ほら、トムも手伝えよ」

エディ「この本棚どかして、さっさとこんなとこから退散しようぜ」


トム「ああ」





198: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:41:34.47 ID:s3nhkZH10


ジム「じゃあ、行くぜ」

ジム「3、2、1……」


  ガコッ ズ ズ ズ

    ドシィン


トム「よし、やったな」


ジム「肩を貸してやる」

ジム「さっさと逃げるぞ」


トム「ああ……悪い」


栗毛「あ、あの!」


エディ「心配すんなよ、しっかりオレが運んでやるって」

エディ「ほら、掴まりな」


栗毛「は、はい」


ジム「オラ、とっとと出るぞ」

   
   ゴォォオオオオ  

  ガシアャン  ガタァン






199: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:42:22.44 ID:s3nhkZH10


<魔導学園 炎に包まれる図書館の前>
  

エディ「おし、脱出だ」

エディ「大丈夫か? お前ら」


トム「ああ、何とかな」


栗毛「はい……ありがとうございます」


エディ「いいってことよ」

エディ「礼を言うならそこにいるトムと……」


メガネ「メアリー!」


栗毛「に、兄さん!?」

栗毛「どうしてここに……」
  

メガネ「あ、足を怪我してるじゃないか!」

メガネ「大丈夫なのか!?」





200: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:43:33.08 ID:s3nhkZH10


栗毛「えっと……その」


メガネ「痛いのか!? 苦しいのか!?」ガシッ


栗毛「そ、それは……」


ジム「おい、せっかく助けてやったんだ」

ジム「テメェが怪我させてどうする」

ジム「何とか言うヒマがあったら、さっさと救護室にでも連れてけ」


メガネ「そ、そうだったな」

メガネ「さぁ、一緒に救護室に行こう」

メガネ「ヨハン、手伝ってくれ」


生徒「あ、ああ」


エディ「に、兄さんって……」

エディ「アイツ、妹がいたのかよ」


書記「あのポールに妹がねぇ」

書記「この前ウィルが言ってったのは、あの子のことだったのか?」





201: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:46:17.71 ID:s3nhkZH10


トム「まぁ、いいじゃねぇか」

トム「自分の家族をいちいち紹介する必要もないだろ」


エディ「そりゃあ……そうなんだけどよ」


  「トーマス! 無事だったか」


トム「アンタは……ナターシャか」

トム「どうしてここに?」


生徒会長「ヨハンに呼ばれてな」

生徒会長「お前から助けを呼ぶように言われたと」

生徒会長「しかし、炎の中に飛び込んだと聞いたときは驚いたぞ」

生徒会長「まさか……そんなことをするとは思わなかったからな」


トム「残念ながら、他に方法を思いつかなくてな」

トム「こうするのが一番だった」





202: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:47:00.15 ID:s3nhkZH10


生徒会長「全く……学内試合の時といい」

生徒会長「君達はよく無茶をする」

生徒会長「まぁ、何はともあれ無事で良かった」

生徒会長「あとの始末は私達がする」

生徒会長「君もさっきの彼女と一緒に救護室へ行くといい」


トム「ああ、そうさせて……」

トム(……っ! 急に視界が)

トム(クソ、さっきのダメージが今頃……)


エディ「おい、どうした? トム」


トム「いや……なんでも」

トム「な…い……」ガクッ


生徒会長「なっ!」


エディ「おい! トム!?」





203: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:47:49.77 ID:s3nhkZH10


<学園本棟 救護室>


トム「うっ……」


家政婦長「お目覚めになりましたか?」


トム「……アンタは」

トム「俺はどうして……」


家政婦長「図書館から出てきた後に気絶してしまったので」

家政婦長「皆さんがここまで運んできたのです」


トム「……メアリーと他の奴らは?」


家政婦長「彼女は別室にいます」

家政婦長「足のキズが思ったよりも酷かったようで、完治するまでは面会制限だそうです」

家政婦長「他の皆さんは図書館の後始末を手伝ってもらってます」

家政婦長「本当は私達の仕事なのですが……」

家政婦長「何分、人手不足なので」





204: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:49:48.98 ID:s3nhkZH10


トム「アンタは向こうにいなくていいのか?」


家政婦長「ええ、別の仕事があったので」


トム「別の仕事?」


家政婦長「あなたの手当てですよ」

家政婦長「校医はもう1人の方の治療に手一杯だったので、私が代わりに」

家政婦長「ほら、自分に巻いてある包帯が見えませんか?」


トム「ああ、これか……」

トム「悪いな、手間かけさせて」


家政婦長「いえ、気にしないでください」

家政婦長「でも、無茶もほどほどにしてくださいよ?」

家政婦長「そろそろ王都の生誕祭で、私もこんなことは出来なくなりますから」


トム「生誕祭?」

トム「なんだ、それは」


家政婦長「簡単にいえば、王様の誕生日のお祭りです」

家政婦長「毎年、その間の3日は休日になって、王都で盛大なパーティーが開かれるんです」





205: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:50:19.56 ID:s3nhkZH10


トム「それで、その誕生祭とやらとアンタの仕事と」

トム「どう関係があるんだ?」


家政婦長「誕生祭のパーティーには先生方も顔を出さなければならないので」

家政婦長「その間、この学園の管理は私に任されるのです」

家政婦長「ですから……」


トム「俺に構ってる暇はない、って訳か」


家政婦長「まぁ、そんなところです」


トム「分かったよ」

トム「俺としても、こんな場所に何度も世話になる予定は無いからな」

トム「せいぜい迷惑がかからないように気を付けさせてもらう」


   コン コン


家政婦長「おや? 誰か来たみたいですね」

家政婦長「では、私はこれで……」


トム「ああ、世話になったな」





206: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:53:57.87 ID:s3nhkZH10


トム「で、何処のどいつだ?」


  「僕だ、ポールだ」


トム「そうか、入っていいぜ」


メガネ「……失礼する」


トム「それで、何の用だ?」

トム「このタイミングだ」

トム「見舞いってワケじゃないんだろ」


メガネ「それは……その」

メガネ「お礼を言いたくてな」


トム「お礼? お前が俺に?」

トム「どうして、また」


メガネ「そんなこと決まってる」

メガネ「僕のためにメアリーを助けに行ってくれた」

メガネ「そのお礼だ」





207: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:55:01.09 ID:s3nhkZH10


トム「お前、何か勘違いしてないか?」


メガネ「えっ?」


トム「俺はお前のために火の中に飛び込んだわけじゃない」

トム「ウィリアムにお前を助けるよう言われたから、やっただけだ」


メガネ「でも、アレは……」


トム「お前のためにやった様にしか見えなかった?」

トム「そいつは違うな」

トム「あそこで俺が行かなかったら、お前が行ってただろ?」

トム「だから、お前の代わりに行ったんだ」

トム「お前に死なれちゃ、約束を破っちまうからな」


メガネ「約束って……そんな」

メガネ「だって、ウィルとお前は赤の他人だろ?」


トム「いいや、仲間だ」

トム「アイツはどう思ってるかしらねぇが、俺は仲間だと思ってる」

トム「仲間は見捨てない、それが俺のポリシーだ」





208: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:55:56.68 ID:s3nhkZH10


メガネ「それだけであんなことが出来るかよ」

メガネ「自分の命がかかってるんだぞ?」


トム「簡単なこった」

トム「お前だって、妹のために炎に飛び込もうとしただろ?」

トム「俺はそれをお前達……仲間のためにやっただけだ」


メガネ「お前達?」

メガネ「それって……」


トム「なんだ? 自分は入ってないと思ってたのか」


メガネ「……練習になんて顔を出してないし」

メガネ「そもそも、あまり話してない」

メガネ「それでどうして……」


トム「練習に顔を出さないぐらいで仲間から外さねぇよ」

トム「そんなこといったら、ジェームズの野郎なんか仲間外れを通り越して敵になっちまう」

トム「もちろん、口数だって関係ない」

トム「お前以上に口をきかない奴もウチのチームにいるからな」





209: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/03(水) 00:58:59.82 ID:s3nhkZH10


メガネ「でも……」


トム「なんだ? そんなに仲間外れにされてぇのか」


メガネ「いや、そういう訳じゃ」


トム「だったら、黙ってろ」

トム「お前は俺達の仲間で、チームメイトだ」

トム「文句があるなら、今ここで仲間を辞めるか、練習に顔を出せ」

トム「話はそれから聞いてやる、いいな?」


メガネ「あ、ああ……」


トム「分かったなら、とっとと出てけ」

トム「これ以上くだらない話を聞かされたら傷口が開いてきちまう」


メガネ「わ、分かった」タタタタ


   ガチャ バタン


トム(ヨハンといい、カールといい……手間のかかる奴らだ)

トム(こんな調子じゃ、俺の体の方が持たねぇ)

トム(ま、これで一応ケガ人になったからな)

トム(ここにいる間はしっかり療養させてもらうか)   





210: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:47:41.67 ID:l4Ivq/2PO


<学園本棟 救護室>


エディ「おい! 起きろ」

エディ「起きろってんだよ、トム!」


トム「うっ……ん?」


エディ「おお! 起きたか」


トム「なんだよ、エディ」

トム「こんな朝っぱらから……」


エディ「そいつが、トム」

エディ「大変なことになっちまったんだって!」


トム「あ? どうした」

トム「カールの野郎がまた引きこもっちまったのか?」


王子「失礼な!」

王子「ボクはちゃんとここに居るぞ」





211: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:48:45.02 ID:l4Ivq/2PO


トム「じゃあ、ポールの奴が練習に来なくなったか」


メガネ「うるさいな」

メガネ「アレから練習には顔を出してるぞ」


トム「なら、ジェームズの野郎の暴走か?」


エディ「おお! そうだ」

エディ「あの野郎が剣を振り回して大変なんだよ!」


トム「だったら、アルベルトの奴かナターシャにどうにかしてもらえ」

トム「凶器をぶん回すバカには俺じゃ役不足だ」


エディ「でもよぉ……」


トム「ほら、分かったら出てけ」

トム「今は療養中なんだ」

トム「折角の休みをそんな奴のために使いたくねぇ」





212: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:50:18.61 ID:l4Ivq/2PO


エディ「そんなこと言わねぇで、頼むって」

エディ「お前ぐらいしかどうにかできそうな奴が居ねぇんだよ」


メガネ「僕からも頼む」

メガネ「このまま放っておく訳にもいかないんだ」


トム「ったく……仕方ねぇな」

トム「一体何があったんだよ?」


王子「キメラが出たんだ」


トム「あ? キメラ」


メガネ「動物を魔法で融合させて作ったモンスターだ」


トム「モンスターって……」

トム「あのゼリー野郎みたいなヤツか?」


エディ「そんなもんじゃねぇって」

エディ「羽が生えたライオンが3倍ぐらいデカくなったバケモンだ」





213: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:50:50.38 ID:l4Ivq/2PO


トム「何でそんなもんが出てくんだよ……」


メガネ「ウチの教師の1人が研究で作ってたんだ」

メガネ「最強の生き物を造り出すとかいって」


トム「……で、そのキメラがどうしたって?」


王子「職員寮の方に出て来たんだだ」

王子「檻から逃げ出したみたいで、学園中大パニックだ」


トム「職員寮?」

トム「だったら、気にすることねぇじゃねぇか」

トム「そんな騒ぎなら、さすがに教師が出てくるだろ」


エディ「そいつが……化け物がもう1匹現れちまってみたいでよ」


メガネ「学園にいる先生じゃ、1匹を相手にするのが精一杯らしい」

メガネ「学園長は王都へ行ったまま帰ってこないし」

メガネ「キメラを作った本人も、出張で留守にしてるみたいだから」





214: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:51:47.02 ID:l4Ivq/2PO


トム「つまり……」

トム「化け物が1匹フリーになってるから」

トム「そいつを俺にどうにかしろって言いたいのか?」


エディ「いや、そういうワケじゃねぇんだけど」

エディ「ジムの野郎が化け物退治に乗り気でよ」

エディ「このまま放っといたら、1人で殴り込みに行っちまいそうなんだよ」


トム「全く……あの野郎は」

トム「ヒーローごっこは終わりにしたんじゃなかったのかよ」


エディ「あのバカがそう簡単に諦めると思うか?」


トム「……仕方ない、放って置くわけにもいかねぇからな」

トム「アイツのとこへ案内してくれ」





215: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:52:20.24 ID:l4Ivq/2PO


<学園本棟 外廊下>


ジム「……いい加減にそこを退きやがれ」

ジム「さもなきゃ、テメェでも叩っ斬るぞ」


書記「断る」

書記「アンタ1人で行かせられるかよ」


ジム「なら、仕方ねぇな」

ジム「剣を抜けよ」

ジム「それで決着を付けてやる」


書記「望むところだ」

書記「そっちが負けたら、大人しく引いてもらうからな」


ジム「それはこっちのセリフだ」

ジム「オメェこそ、怪我して泣いても知らねぇぜ?」


書記「なら、試してみればいい」

書記「泣いて謝るのはお前かもしれないけどな」





216: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:53:03.34 ID:l4Ivq/2PO


ジム「ヘッ……いい度胸だ」

ジム「だったら……」


トム「待て、そこまでだ」


ジム「なんだよ? トム」

ジム「今、いいとこなんだ」

ジム「邪魔すんじゃねぇ」


トム「知るか」

トム「この騒ぎの中でケンカしてるバカを止めて何がおかしい」


エディ「そうだぜ、ジム」

エディ「あんな化け物に1人で勝負するなんて」

エディ「幾らなんでも無茶苦茶だぜ」


ジム「ハンッ……テメェの知った事かよ」

ジム「あれぐらい、俺1人でどうにでもなる」





217: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:54:45.71 ID:l4Ivq/2PO


メガネ「でも、相手はキメラだ」

メガネ「教師が手こずるような化け物を1人で相手をするなんて無理だ」


ジム「無理かどうかは俺が決める」

ジム「テメェは黙ってろ」


メガネ「だけど……」


王子「止めとけよ」

王子「ボク達の話なんて、まるで聞いちゃいないぞ」


ジム「そっちの王子様の言う通りだ」

ジム「分かったら、そこを退きやがれ」


書記「嫌だね」

書記「お前が引くまで俺はここを退かない」

書記「会長にも、お前がヘンな事をしないように見張れと言われてるんだ」


ジム「口を開けば、会長、会長と……」

ジム「いい加減に鬱陶しいんだよ」

ジム「その口、二度と利けなくしてやってもいいんだぞ?」ジャキッ





218: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:55:32.89 ID:l4Ivq/2PO


エディ「おい! そんなもん出すんじゃねぇ」

エディ「んなことしても何にもなんねぇって!」


ジム「少なくとも俺の気は晴れるんだ」

ジム「さぁ、どうすんだ? アルベルト」


書記「それは……」


トム「待て」

トム「そっから先は俺に任せろ」


書記「トム、何を……?」


トム「いいから」


書記「……分かったよ」


ジム「で、何だよ? トム」

ジム「お前まで俺の邪魔しようってのか?」





219: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:56:25.63 ID:l4Ivq/2PO


トム「だったら、どうする?」


ジム「フッ……力ずくでも退かしてやるよ」


トム「ここには5人いるんだぜ?」

トム「いくら元勇者様でも、5人相手はキツイんじゃないのか?」


ジム「関係ねぇな」

ジム「オメェらが邪魔するってなら、俺はそれを退けるだけだ」

ジム「分かったら、とっととどきやがれ」


トム(やっぱり、コイツを止めるのは無理か……)

トム「なら、仕方ないな」

トム「お望み通り、ここを退いてやるよ」


書記「お、おい!」

書記「それじゃあ……」


トム「ただし、条件がある」





220: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:58:29.29 ID:l4Ivq/2PO


ジム「条件? なんだそりゃ」

ジム「泣いて土下座でもすればいいのか?」


トム「お前がそんな事するような奴なら、こんなに苦労してねぇよ」


ジム「じゃあ、何だって言うんだよ?」


トム「化け物退治なら、俺達も付いていく」

トム「それが条件だ」


エディ「げっ……!」


王子「なっ!?」


ジム「ほう……面白れェじゃねぇか」

ジム「いいぜ、のんでやるよ。その条件」


メガネ「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

メガネ「トム! それはどういう意味だ」





221: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 15:59:15.62 ID:l4Ivq/2PO


トム「どういうも、なにも……そのままの意味じゃねぇか」

トム「コイツを止められないから俺達も付いていく」

トム「簡単だろ?」


王子「いや、簡単って……」


書記「おい、トム」

書記「俺はお前がジムを止めると思ったから、代わってやったんだぞ」

書記「それで一緒に行くって、どういう事だよ?」


トム「そんなこと分かり切ってる」

トム「話し合いで解決できそうにないから、代わりの案を出しただけだ」

トム「コイツが話を聞かないってのは、お前も分かってるだろ?」


書記「でも、これは!」


エディ「ほら、落ち着けって!」

エディ「トムだって、考えなしにこんなこと言わねぇって」

エディ「理由だけでも聞くだけ聞いてみようぜ、な?」





222: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 16:00:12.05 ID:l4Ivq/2PO


書記「……分かった」

書記「俺が納得する理由を話してみてくれよ」

書記「そしたら、その提案も考えてやる」


トム「まず、1つ目は」

トム「ここでコイツを止めても、俺達もコイツも怪我するってことだ」

トム「どこの酔狂な奴が持たせたが知らんが、このバカは本物の剣を持ってる」

トム「そんなのを無理矢理押さえつけてみろ」

トム「怪我する奴が居るに決まってる」


書記「まぁ、たしかに……」


トム「次に、コイツを1人で行かせたところで化け物を倒せる保証がない」

トム「仮に倒せたとしても、相手は未知のモンスターだ」

トム「どんなケガするか分かったもんじゃねぇ」


ジム「なんだ? 俺が負けるとでも思ってんのか」





223: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 16:02:02.73 ID:l4Ivq/2PO


ジム「なんだ? 俺が負けるとでも思ってんのか」


エディ「前に負けたことがあるじゃねぇか」

エディ「都合よく忘れちまったのかよ」


ジム「……アレはまぐれだ」

ジム「次は負けねぇよ」


トム「とにかく、俺としてもチームメイトを失うのは嫌なんでな」

トム「ソロプレイはナシだ」

トム「分かったな?」


ジム「フンッ……分かったよ」


王子「それで、結局ボク達が一緒に行くメリットは何?」

王子「何人で行こうが、怪我するときはするぞ」


トム「でも、人数が多い方が大ケガする確率は減る」

トム「コイツを邪魔しようが、見逃がそうが、怪我するってなら」

トム「全員でアイツを倒しちまう方が、まだ怪我しないですむ確率は高いだろ?」

トム「だったら、しっかりと作戦を立てて集団で挑む方が良い」





224: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 16:03:22.07 ID:l4Ivq/2PO


トム「ま、無理に来いとは言わねぇけど」

トム「どうする? お前ら」


エディ「オレが行かねぇって言っても、勝手に行くんだろ?」

エディ「だったら、付いてってやるよ」

エディ「こんなとこでビビってもしょうがねぇからな」


メガネ「僕も行く」

メガネ「メアリーだっているんだ」

メガネ「このままキメラを放って置くわけにはいかない」


トム「お前達は?」


書記「俺は……」


ジム「ビビっちまったんなら、来なくていいんだぜ」

ジム「難なら、大事な会長さんに手助けしてもらうか?」


書記「……俺も行く」

書記「会長にはコイツを見張れって言われたんだ」

書記「コイツが行くっていうなら、俺も行く」





225: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 16:03:54.56 ID:l4Ivq/2PO


王子「お、おい! ボクを置いてくな」

王子「ボクだって、やるときはやってやる」


トム「よし、決まりだな」

トム「俺達全員でキメラとかいう化け物を倒す」

トム「それでいいな?」


ジム「ああ、俺は良いぜ」


書記「俺達もな」


トム「なら、行動開始」

トム「……と行きたいが」

トム「後の3人はどうした?」

トム「化け物相手なら、頭数が多い方が良いんだが」


王子「ヨハンは父親に呼ばれたとかで、王都に帰ってる」

王子「誕生祭が終わるまでは帰ってこないってさ」





226: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/05(金) 16:05:15.94 ID:l4Ivq/2PO


トム「残りの2人は?」


メガネ「朝から姿を見てない」

メガネ「こういう時は直ぐには戻って来ないから」

メガネ「探しに行くだけ無駄だと思う」


トム「そうか」


ジム「あんな奴らいなくたって、問題ねぇよ」

ジム「俺だけでもキメラの1匹や2匹どうってことねぇんだ」

ジム「こんだけ群れてりゃ、負けるはずねぇ」

ジム「そうだろ? エディ」


エディ「オメェこそ」

エディ「大口叩いて、あっさりやられるんじゃねぇぞ?」

エディ「尻拭いするのはオレ達なんだからな」


ジム「ハンッ……言ってろ」


トム「とりあえず、その化け物の見えるところまで行くぞ」

トム「作戦を考えるのはそれからだ」





228: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:48:26.38 ID:/Llut/0T0


<学園本棟 屋上>



   「グルガァオッ!!」



トム「アイツがキメラねぇ」

トム「こりゃまた……随分なデカブツだな」


エディ「だから言ったろ? ヤバいって」


ジム「相手にとって不足なしだ」

ジム「あれぐらいデカくなきゃ、やる気になれねぇよ」


書記「そんなバカなこと言ってるから、会長に目をつけられるんだ」

書記「アンタを見張るように言われた俺のことも考えろ」


ジム「俺がいつ、お前に子守りを頼んだんだよ?」

ジム「俺は俺のしたいようにする、テメェにとやかく言われる筋合いはねぇ」





229: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:49:29.45 ID:/Llut/0T0


書記「俺だって、お前の事なんか放っておきたい」

書記「でも、あの人に頼まれたんだから仕方ない」

書記「それが分かったら、少しは大人しくしてろ」


ジム「そんなに嫌なら断ればいいじゃねぇか」

ジム「あの女に言われて渋々やってるだけだろ?」

ジム「だったら、俺なんか放って好きなことをやりゃあいいじゃねぇか」


書記「そんなこと出来るか」

書記「お前を放って置いたら、会長に迷惑がかかる」


ジム「じゃあ、何だ?」

ジム「アイツに迷惑を掛けたくないから、嫌な仕事でも引き受けるってのか」


書記「…」


ジム「ケッ、あんな口うるさいだけの女の何処が良いんだか」


書記「なんだと?」

書記「お前、会長をバカにする気か!?」





230: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:50:45.08 ID:/Llut/0T0


ジム「なんだ? おっ始めようってのか」

ジム「いいぜ、試合前のウォーミングアップだ」

ジム「そのケンカ、買ってやるよ」


王子「やめろよ、2人とも」

王子「ケンカなら、さっきので充分だろ?」


メガネ「そうだ、これからキメラと戦うんだ」

メガネ「ケンカするなら後にしろよ」


書記「……分かったよ」

書記「ジム、さっきの言葉を覚えてろよ」

書記「後悔させてやるからな」


ジム「そりゃ、楽しみだ」

ジム「オメェこそ、泣きべそかいても知らねぇからな」


トム「そこら辺にしておけ、2人とも」

トム「さっさとあの化け物をどうにかする方法を考えるぞ」





231: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:52:10.95 ID:/Llut/0T0


ジム「そんなの簡単だぜ、トム」

ジム「俺が1人でアイツの前へ出ればいい」

ジム「それで終わりさ」


トム「そいつは却下だ」

トム「さっきも言ったように、お前がケガする可能性が高いってのと」

トム「万が一にも成功したときに、お前が図に乗るのが気に入らねぇ」


ジム「そうかい」

ジム「だったら、作戦でもなんでも考えな」

ジム「俺は反対しないぜ」


トム「そいつは助かるな」

トム「このメンツで、一番うるさいのはお前だろうからな」


エディ「そんでよ、トム」

エディ「何か良い考えはあんのか?」

エディ「正直、オレにはあの化け物を倒す方法なんてなんも思いつかないぜ」





232: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:53:45.76 ID:/Llut/0T0


トム「フットボールと同じだ」

トム「ランが駄目ならパス、近接攻撃がムリなら遠距離攻撃」

トム「折角、魔導学園とやらにいるんだ」

トム「魔法とやらを使わせてもらおうぜ」


エディ「おお! そうだったぜ」

エディ「コイツら、魔法を使えるんだったな」

エディ「試しに一発、あの野郎に撃ってみてくれよ」


メガネ「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

メガネ「僕らの魔法がどこまでキメラに通用するか分からないし」

メガネ「遠距離攻撃っていったって、魔法にも射程がある」

メガネ「この距離から魔法を浴びせるなんて無理だ」


エディ「そういや……そうだったな」

エディ「カールなんて、マッチぐらいの火しか出せねぇとか言ってたし」


王子「うるさいな」

王子「ボクだって、あれから魔法の練習をしたんだ」

王子「今なら炎の球ぐらい出せる」





233: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:55:22.37 ID:/Llut/0T0


エディ「ホントかよ?」

エディ「魔法なんて使えねぇ、みたいなことを言ってたじゃねぇか」


王子「そ、それは……」


書記「魔法を使えなかったのは、ただの思い込みだったんだよ」

書記「魔力の扱いが絶望的に下手だったから気付かなかった」

書記「練習を手伝ってやった俺が言うんだ、間違いない」


王子「おい! アルベルト」


エディ「へぇ……わがまま王子がそんなことをねぇ」

エディ「人間、変わろうと思えば変われるもんなんだな」


王子「う、うるさい!」

王子「それより、トム」

王子「ポールの言ってた事はどうするんだ」

王子「ボク達じゃ、アイツに襲われない距離で魔法なんか当てられないぞ?」





234: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:56:16.04 ID:/Llut/0T0


トム「そんなの簡単だ」

トム「アイツに襲われない場所から狙えばいい」

トム「アウトレンジが無理なら、インファイトしかないだろ?」


メガネ「でも、どうやって?」

メガネ「それも出来ないから苦労してるんだろ」


トム「いや、出来る」

トム「お前ら、アイツが何処にいるか分かるか?」


ジム「そんなもん、見りゃ分かる」

ジム「目の前のグラウンドだ」


トム「じゃあ、俺達の下に見えるのは?」


書記「下って……中庭の事か?」


トム「そうだ」

トム「で、その中庭はどうなってる?」





235: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:57:31.66 ID:/Llut/0T0


エディ「どうなってるって……」

エディ「樹とか花とか生えてるぜ、手入れは行き届いてねぇみたいだけどな」


トム「そっちじゃねぇ、その周りだよ」


メガネ「周り? 周りは建物に囲まれて……」

メガネ「そうか! そういう事か」


トム「分かったみたいだな」


王子「どういうことなんだよ、トム」

王子「もったいぶった言い方しないで、はやく教えてくれ」


トム「あの化け物をそこの中庭におびき出す」

トム「丁度いいことに、そこはグランドにつながる面以外は建物に面してる」

トム「だから……」


メガネ「キメラを中庭に閉じ込めることが出来れば」

メガネ「屋根の上から魔法で攻撃できる」


トム「そういうこった」





236: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/06(土) 23:59:03.36 ID:/Llut/0T0


エディ「けど、1ヶ所開いてんだろ?」

エディ「そこはどうすんだよ」

エディ「閉じ込めようったって、塞ぐのは無理だぜ」


ジム「要はアイツをそこの中庭から出さなきゃ良いんだろ?」

ジム「だったら、俺が出てけば問題ない」

ジム「俺があの化け物が逃げないようすれば、万事解決だ」


エディ「……こんなこと言ってるけど、どうすんだ?」

エディ「何かいい方法は無いのかよ」


トム「悪いな、エディ」

トム「今回ばかりはそいつの案が正しそうだ」

トム「化け物の足止めは、誰かが逃げ出さないように立ち回るしかねぇ」


エディ「でも、さっきは反対してたじゃねぇか」


トム「それはコイツ1人で行かせるのに反対って意味だ」

トム「俺達も付いてくんなら、問題ねぇ」





237: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:00:19.59 ID:N8DwPw370


エディ「オレ達って……」

エディ「オレも行くことになってんのか?」


ジム「なんだ? 臆病風に吹かれちまったか」

ジム「ま、チキン野郎ならしょうがねぇな」

ジム「見た目通りの肝っ玉だったってことだ」


エディ「んだと!? バカにしやがって」

エディ「いいぜ! 俺も行ってやるよ」

エディ「こんな能無し野郎を、トム1人に任せるわけにはいかねぇからな」


トム「じゃあ、作戦決定だな」

トム「俺達3人はあの化け物をそこの中庭におびき寄せて、閉じ込める」

トム「残りの奴らはここで魔法を撃ちまくる、いいな?」





238: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:01:13.58 ID:N8DwPw370


メガネ「魔法を撃つタイミングは?」

メガネ「万一、お前達に当たったらどうするんだ」


トム「最初の合図は俺がする」

トム「後は、そっちの判断に任せる」

トム「……そこのバカがムカつくからってワザと当てるなよ?」


書記「そんな闇討ちみたいな事はしない」

書記「決着を付けるなら、正面から一騎打ちだ」


ジム「勇ましいのは結構だが、後で後悔すんじゃねぇぞ?」


書記「それはこっちのセリフだ」


トム「よし、作戦開始だ」

トム「行くぞ!」





239: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:02:43.13 ID:N8DwPw370


<魔導学園 グラウンド>


   「グルルルルルル」


エディ「なぁ、トム」

エディ「ここまで来たのはいいけどよ」

エディ「こっからどうやってアイツを中庭まで運んでくんだよ」

エディ「まさか……バカ正直に正面から突っ込むつもりじゃねぇよな?」


トム「何のためにボールをこんなに持ってきたと思ってんだ」

トム「アイツにぶつけて、注意を引きつけるためだろ?」

トム「ほら、ジェームズ」

トム「この袋を持ってろ」


ジム「どうして俺がボール持ちなんてしなくちゃなんねぇんだ」

ジム「こういうのはダニーの仕事だろ?」


トム「生憎と、ここにアイツはいないんでな」

トム「それにボール運びはランニングバックの仕事だろ」

トム「剣ばっかり握ってて、忘れちまったか?」





240: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:04:06.72 ID:N8DwPw370


ジム「ケッ……分かったよ、やってる」

ジム「その代り、向こうに付いたら好きにやらせてもらうからな」


トム「ああ、好きにしろ」

トム「怪我しない程度に援護してやる」



   「グルガァオッ!!」



エディ「おい! トム」

エディ「あの野郎、こっちを向きやがったぞ!?」


トム「丁度いい、近づく手間が省けた」

トム「エディ、俺がボールを渡す」

トム「お前はとにかくアイツに向かってボールを蹴りまくれ」


エディ「おうよ!」


トム「ジェームズ、俺達は化け物に集中する」

トム「道順は任せたぞ」


ジム「ああ、途中で迷子になるんじゃねぇぞ」


トム「お前こそ」



  「グァアアアアア!!」



トム「さぁ、来たぜ」

トム「行くぞ! 2人とも」





241: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:05:28.78 ID:N8DwPw370


<魔導学園 中庭>


トム「エディ!」ポイッ


エディ「とりゃ!」バシッ



   「グギャアアアア!!」ガンッ



エディ「怒ってる、怒ってる」

エディ「そのうち頭の血管が切れて死んじまうんじゃねぇか?」


トム「そうなってくれたら、楽でいいんだが……」



   「グォオオオオオ!!!」



トム「あんまり期待しない方が良いみたいだぞ?」ポイッ


エディ「……ったく、手のかかるバケモンだぜ」バシッ


 
   「グゴォオオオ!!」ガンッ






242: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:07:23.13 ID:N8DwPw370


ジム「じゃ、そろそろ俺の出番だな」

ジム「いい加減、ボール運びも飽きてきたんだ」

ジム「好きにさせてもらうぜ?」


トム「まぁ、待てよ」

トム「アイツらの魔法をお見舞いしてやってからでも遅くはないだろ?」

トム「じゃなきゃ、作戦を立てた意味が無くなっちまう」


ジム「フッ……そうかい」

ジム「『反対しない』って言っちまったからな」

ジム「合図でも何でもして、さっさと魔法を食らわせてやれ」


トム「残念ながら、そういう訳には行かないな」

トム「まだアイツをおびき寄せただけで、完全に閉じ込めたわけじゃない」

トム「このまま魔法を撃ってグラウンドにでも逃げられたら……」



   「グガァアアアア!!」ダダダダダ






243: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:07:59.23 ID:N8DwPw370


エディ「トム! 突っ込んでくるぜ」


トム「くっ……右に避けろ!」



    ズガァアアアン



エディ「イテテ……」

エディ「おい、大丈夫か? 2人とも」


トム「ああ、何とかな」


ジム「アレぐらいじゃ、やられねぇよ」


    「グッ……」


トム「しかし……派手にやってくれたな」

トム「頭から校舎に突っ込むとは」

トム「だが、これでアイツの後ろに回り込む必要が無くなった」

トム「今のうちにグラウンドの方へ移動するぞ」





244: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:08:39.99 ID:N8DwPw370



   「グ…グググ……」

   ガラ ガラ ガラ ガラ


エディ「なっ……アイツ」

エディ「もう動けんのかよ!?」


トム「流石に馬鹿デカい図体してるだけはあんな」

トム「ジェームズ、ボールを寄こせ」

トム「アイツらに合図を送る」


ジム「ほらよ」ポイッ

ジム「アイツらの魔法がどこまで役に立つか分かねぇけどな」


トム「前にバケモンを1匹倒してんだ」

トム「それなりに効くだろ、っと!」ブンッ


  
   「ググ…グルガァ……」


    ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


   「ギャアアアア!!!」






245: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:09:37.74 ID:N8DwPw370


エディ「おお……凄ぇや」

エディ「ありゃ、やっちまったんじゃねぇか?」


ジム「フンッ、ここの教師連中が苦戦してんだ」

ジム「あんなんじゃヤラれねぇよ」

ジム「やっぱり、俺が出張らなくちゃぁな!」ダッ


エディ「あ、おい!」



   「グ、ガガガ……」


ジム「食らえッ!」ヒュッ


     ザシュッ


   「グギャアア!!」



トム「……やっぱり、こうなっちまったか」


エディ「どうすんだよ?」

エディ「ありゃ、言っても聞かないぜ」


トム「仕方ねぇ、死なない程度に援護する」

トム「行くぞ、エディ」





246: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:10:57.53 ID:N8DwPw370


   「ガァッ!!」ブンッ


ジム「遅せぇ!」サッ ブンッ


   「ギャア!!」サクッ


ジム「チッ……浅い」


   「グォオオオオ!!」ダダダダダ


ジム「なっ……!」



トム「エディ」ポイッ


エディ「おらよ……っと!」バシッ



   「グガッ!?」ガンッ


ジム「オラァ!!」ブンッ


      ズシャ

   「グォオオオオ!!」






247: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:13:23.25 ID:N8DwPw370


ジム「もう一発!」ヒュッ


      スパッ

    「ギャアアア!!」


    ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


   「グギャアアアア!!!」
   


エディ「よお、ジム」

エディ「危なかったじゃねぇか」

エディ「1人で大丈夫だって、どの口が言うんだ?」


ジム「ケッ、余計なことしやがって」

ジム「アレぐらいなら余裕で避けられた」


エディ「ホントかよ?」

エディ「結構マズそうな顔してたぜ、お前」





248: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:14:02.77 ID:N8DwPw370


ジム「テメェの目が節穴なだけだ」

ジム「俺はそんな顔してねぇよ」

ジム「それに、アイツの行動は見切った」

ジム「次は確実に仕留めてやる」


トム「出来るのか?」


ジム「あんなんでも生き物には変わりねぇ」

ジム「目玉を一突きすりゃあ、お終いだ」


トム「なら、それに賭けるしかないみたいだな」



    ズババババババ

   「ギャアアア!!」


    ゴォオオオオオオオ

   「グゴォオオオオ!!」






249: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:15:49.20 ID:N8DwPw370


トム「肝心の魔法は大して効いてねぇみたいだし」

トム「時間をかけ過ぎたら、上の奴らが息切れしちまう」

トム「速攻で決める」


ジム「で、どうすんだ?」


トム「俺とエディでアイツの注意をひきつける」

トム「その間に、お前はアイツを仕留めろ」

トム「ボールの数だって少ねぇんだ、次はないぞ」


ジム「俺はヘマしねぇよ」

ジム「忠告なら、そこの小さいのにするんだな」ダッ


エディ「あの野郎……好き放題言いやがって」

エディ「オレがミスするかってんだ」

エディ「やってやろうぜ! トム」


トム「ああ、もちろんだ」





250: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:16:43.01 ID:N8DwPw370


     ボォオオオオ


    「グォオオ!!!」


ジム「後ろだ! バケ猫野郎」ブンッ


       ザクッ

    「グギャアア……!」ブンッ



エディ「させるかよ!」バシッ



    「ガッァ!」ガンッ

   「グオォオオオオ!!!」



トム「もう一発だ」


エディ「あいよ!」バシッ



     「ガアッ!」スカッ


     ズガガガガガ

   「ギャアアアアア!!」


    ゴォオオオオオオオ

    「グ、グググ……」






251: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:17:28.08 ID:N8DwPw370


トム「今だ!」

トム「行け! ジェームズ」



ジム「言われなくても」

ジム「おりゃあああ!!」ダダダダダ

ジム「オラァ!」


      ズブッシャ


   「ギャアアアアア……!!」

  
ジム「よし、もういっ……」


   「グォオオオオ!!!」


     ブンッブンッ


ジム「なっ……うおっ!?」


    ガンッ ドサッ


ジム「」



トム「!?」 エディ「ジム!?」



   「グォオオオオオオ!!」シュタッ






252: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:18:16.54 ID:N8DwPw370


エディ「なっ!?」

エディ「アイツ……飛んで」


トム「……っ」

トム(クソ、俺はどうすれば……)



   「ブレスウィンド!」


        「フレアインパクト!」

  「ブリザード!」


     ズガガガガガガガガ


   「グギャアアアアア!!!」



トム「こ、こいつは……」


  「遅れて申し訳ありません」





253: ◆pOKsi7gf8c 2014/12/07(日) 00:20:30.60 ID:N8DwPw370


エディ「マ、マーガレット!?」

エディ「どうなってんだよ? こりゃ」


家政婦長「もう1匹のキメラは先生方の協力で撃退しました」

家政婦長「残りはあそこにいるのだけです」

家政婦長「後は先生方に任せて、私と一緒に避難しましょう」


トム「言いたいことは色々とあるが……」

トム「アンタのおかげで助かった」

トム「もう少し遅かったら、2人まとめてあの世行きだったからな」


家政婦長「済みません」

家政婦長「本当なら、このような被害が出るまでに抑えるべきだったのでしょうが」

家政婦長「先生方の魔法も中々効かなかったもので」


トム「まぁ、いいさ」

トム「俺達は死なずに済んだんだからな」

トム「それより……」



ジム「」



トム「あそこでノビてる奴を回収しなくちゃな」





学園長「ようこそ、王立魔導学園へ」 アメフト選手「またかよ……」【後編】へつづく


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