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『ヘル・レイザー』は低予算で制作された映画だが、ホラー映画の金字塔とまで評される重要な作品となった。その製作の舞台裏には数々の逸話が隠されている。そんなヘル・レイザーにまつわる知られざる秘密を公開しよう。
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1. クレイヴ・バーカー監督は図書館で映画製作の本を借りようとした
ヘル・レイザーの脚本は、バーカー監督の『ヘルバウンド・ハート』という小説が基になっている。実は以前、自身が書き下ろした『ロウヘッド・レックス』が映画化された際、その出来に相当不満だったようで、「ぞっとするような映画化」から原作を守るために自ら監督になろうとしたのだ。
バーカー監督が脚本や数点の原画などの資料とともに映画をニューワールド・ピクチャーズへ持ち込むと、即座にゴーサインが出た。監督は社内の限られた人数で製作できるよう、これを”ビデオ作品集”として企画していたらしい。自分に映画作成の能力があることを証明すれば、より多くの予算がつくからだ。そして、いざ映画製作の本を借りようと地元の図書館へ向かったが、すでに貸し出し中だったそうだ。
2. バーカー監督は自分の存在を語れる怪物が欲しかった
1988年、バーカー監督はこう述べている。「大抵の怪物は自分が怪物であることについて語ることがない。私がフランク(ヘル・レイザーの登場人物)に望んだのは、会話シーンを持つことだ…フランクには自分の野望や欲望について語ってもらいたかった。と言うのも、映画の怪物が自分について語るべき内容は、人間が語るべき内容と遜色ないほど面白いと思うからだ。だからホラー映画はストーリーの半分を語っていないようなものだと感じるね。そこに登場するクリーチャーは、実に退屈な方法で悪を抽象化したものでしかない。悪が抽象的であることなんて絶対にないのにね…」
3. ダグ・ブラッドレイはピンヘッドが嫌だったが、貧乏くじを引いた
ピンヘッドを演じたのはダグ・ブラッドレイだが、配役の段階では彼とオリヴァー・パーカーの2名の候補者がいた。2人とも出番が多く、メイクの手間も省けるカースティーに色目を使う人物の役を希望していた。しかし、バーカー監督の証言では、ブラッドレイが「貧乏くじを引いた」のだそうだ。おそらく文字通りの意味だろう。
4. ジェニファー・ティリーがカースティー役のオーディションを受けた
バーカー監督がカースティーにぴったりの人物を探しているとき、オーディションにはジェニファー・ティリーも参加していた。
実はバーカー監督と実際にカースティーを演じたアシュレイ・ローレンスが出会ったのはまったくの偶然からだった。当時、ローレンスは演技を学ぶ学生で十代向けの演技ワークショップに参加していた。その時の友人がバーカー監督にローレンスにオーディションを受けさせてみないかと持ちかけたのだ。
製作側はこの役に名の知れた女優を欲しがっていたが、バーカー監督はローレンスを推し、ついに大抜擢の運びとなった。しかし、いざ決まってバーカー監督から説明を聞くとローレンスは酷いショックを受けたようだ。「いいかい、君の叔父が父親の皮膚を身にまとっている。そして君を殺害し、セックスしようと企んでいる。多分、この順序になる。」
5. 映画の名台詞はアドリブだった
ラリー役のアンドリュー・ロビンソンは、本作品では最も有名な俳優だっただろう。「猫とネズミの糞にはうんざりだ(Enough of this cat and mouse shit)」など、彼は会話シーンで多くのアドリブを発して本作品の雰囲気作りに貢献した。ラリー最後の台詞は元々ありきたりな「失せろ(Fuck off)」だったのだが、これを名台詞「畜生め!(Jesus Swept!)」に変えようと提案したのも彼だ。
6. 最も有名なワンシーンの1つの誕生秘話
フランクの皮なしバージョンを演じたオリバー・スミスはヘビースモーカーで、出番を待つ間スキンスーツを着ながらタバコを吹かすのが常だった。その姿がバーカー監督にインスピレーションを与え、劇中でも皮なしのフランクが喫煙するシーンが登場している。これについて、「スーツを着て、タバコを吸う姿がベティ・デイヴィスみたいで、フランクを凌駕する挑発的なキッチュ感があったんだ」とバーカー監督は語っている。
7. 衣装は”SMクラブ”からヒントを得た
衣装デザイナーのジェーン・ワイルドグースがセノバイトについて受けた指示は、「不快な美貌」など、非常に曖昧なものだった。バーカー監督はセノバイトの容姿は、「パンクとカトリック、そしてニューヨークとアムステルダムで訪れたSMクラブからインスピレーションを得た」と語っている。
セノバイトを演じた俳優たちは誰もが早朝4:30に撮影現場に行き、毎日数時間の特殊メイクに耐えねばならなかった。中には目も耳も口もまともに使えなくなるような衣装すらあった。バターボールを演じたサイモン・バムフォードなどは、2、3人がかりで被さられるマスクを着ている間は、手を引かれて歩き、まともに呼吸することもできなかったらしい。チャタラー役のニコラス・ヴィンスもメイクのお陰でまったく前が見えず、カースティーの喉に指を突っ込むシーンでは、アシュレイ・ローレンスの唇の皮を誤って剥がしてしまった。
8. ウジとゴキブリの飼育係がいた
ローレンスが味わった不快な経験は、唇の皮を剥がれた一件だけではない。例えば、撮影中はずっと同じTシャツを身につけ、汚らしいメイクをしなければならなかった。だが、これについて彼女はそれほど気にしなかったようだ。
ウジ虫が登場するシーンでは、バーカー監督はウジ虫の飼育係から受け取ったウジ虫をローレンスの胸の谷間目がけて放り込んだ。彼女は汗ばんで見えるようにスプレーされていたため、ウジ虫はブラジャーの内側に引っ付き、事もあろうにジーンズの中にまで入り込んでしまった。バーカー監督は「君は生きているから噛まれることはないよ」と慰めてきたそうだ。
またイギリスの撮影では、ゴキブリの飼育係が活躍した。イギリスのゴキブリは比較的小振りで、見栄えがあまり良くなかった。そこでアメリカのゴキブリを撮影に用いることになった。しかし、法律によってオスとメスのゴキブリをイギリス国内に持ち込むことが禁止されていた。これを解決するためにゴキブリの性別を鑑定したのは、言うまでもなくゴキブリ飼育係である。
9. アシュレイ・ローレンスが現場でセノバイトと一緒にいることは滅多になかった
アシュレイ・ローレンスがカースティーを演じながら、セノバイトと戦ったり、逃げ回ったりするシーンは、ほとんどがセノバイト抜きで撮影された。これは予算が限られていた事情ゆえであり、注意して映画を観れば1つのカメラ内に両者が一緒に写っているシーンがないことに気付くだろう。また予算節約のため、撮影現場もロンドン市内の本物の家が利用された。撮影後、この家では住人が自殺を図って売りに出されたようだ。
10. 予算が尽き、最後の数分にはVFXが利用された
翼竜のような悪魔がルマルシャンの箱を持って飛び去るシーンは、予算が尽きてしまったため特殊効果を用いて約20万円で作成された。このシーンはたった4.4mしかない廊下のセットの中をカースティーが走り、これをエンジニアが追いかけることで撮影された。非常に短いセットなので速く走ることができず、ゆっくりと、少し跳ねながら走る真似をするよう指示が出されたらしい。こうすることで、髪の毛を揺らし、走っているように見せたのだ。
11. 条件付きで追加予算をゲット
屋根裏部屋でフランクが復活するシーンは非常に印象的な場面だ。これは追加予算を獲得したことで実現された。便宜を図った1人にボブ・キーンがいる。本シーンにはフランクの心臓が床下に入り込むシーンがあるのだが、その膨張/収縮のスイッチを彼が担当することになった。また、より商業的価値を持たせるためにちょっとしたギャグも追加された。それは、カースティーがセノバイトから身を隠す場所を探しているとき、クローゼットから木彫りのイエスが飛び出す仕掛けだ。
12. “浮遊”シーンはシーソーを使って撮影
ピンヘッドがカースティーの頭上に浮かび上がるシーンは、ダグ・ブラッドレイをシーソーに乗せ、その反対側に巨体のADを乗せることで撮影された。
また、フランクの最初の拷問シーンは、映画の撮影が本格的に開始される前に撮影されたものだ。カメラのテストを行っているときに、映画撮影に利用できそうなもので実際にきちんとしたシーンが撮れるのか試してみることになったらしい。そこで皮膚があるフランク役のシーン・チャップマンを逆さまにつり上げ、血液を浴びせた。この場面は非常に出来がよく、実際に使われることになった。
苦痛を味わったのは、チャップマンだけではない。セノバイトとカースティーが病院で対決するシーンの撮影に、バーカー監督は大きなストレスを感じていた。これはセノバイトが明るい場所に出る最初のシーンで、彼らが間抜けに見えないかと気に病んでいたのだ。
13. アラン・ムーアではない
本作にまつわる昔からある噂に、時折登場する気の触れた髭面の浮浪者は、バーカー監督本人か、有名な漫画原作者アラン・ムーアではないかというものがある。この噂はバーカー監督がどちらも否定している。監督によれば、フランクが売春婦と写る写真はチャップマンと本物の売春婦で、多くのスタッフに覗き込まれながら小部屋の中で撮影したものらしい。
14. 様々なタイトル候補が存在した
ニューワールドは作品のタイトルに原題のヘルバウンド・ハートを使うことを禁じた。まるで恋愛映画のように聞こえるからだ。また、ヘル・レイザーもお気に召さなかったようだ。そこでバーカー監督は誰かがもっと相応しいタイトルを思いついたら、これを変えることにした。現場で働いていた由緒正しい英国女性スタッフの1人は、”最高のセックスをするために女がすべきこと”を提案したそうだ。なお、バーカー監督自身の案は、”サドマゾヒスト・フロム・ビヨンド・ザ・グレイブ”だった。
15. アメリカ映画協会の待った
驚くにはあたらないが、アメリカ映画協会は作品に難癖を付け、製作最終段階の編集作業に大きな影響を与えた。最初のハンマーによる殺害シーンでは、ハンマーが犠牲者の頭に突き刺さった場面のアップなど、2.5カットが削除された。
またジュリアが別の男を殺害する後のシーンでは、犠牲者役の俳優は全裸でいる然るべき理由があったと語っている。しかし、このヌードシーンも結局はセミヌードに差し替えられた。カースティーがフランクの腹に手を突っ込み内蔵を引き出すシーンや、フランクがセノバイトのフックでバラバラに引きちぎられるシーンも短縮されている。
ジュリアとフランクの誘惑シーンもずっと露骨なものだったという。協会側によれば、臀部の振りは2回までならいいが、それ以上は猥褻なのだそうだ。
16. バーカー監督が未だに悔やむシーン
序盤のシーンは手探りで撮影されたため、弱い部分があるとバーカー監督は述べている。例えば、ラリーとジュリアが家で会話をする最初のシーンだ。監督によれば、これは単なる説明会話で、撮影中に気に入ったことは一度もなかったらしい。「心から誇りを持っているシーンもある。でも残りは恥ずかしいよ! …使い古された陳腐なやり方をしてしまった…だが、誰だって間違いを犯すだろ。私の場合は実際にやってみないと解らないのさ」とは監督の弁だ。
Hellraiser Full Movie (1987)
via:io9
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コメント
1. 匿名処理班
有名な映画なのは知ってたけど、観たことない。
興味が出たから今度観てみるわ。
2. 匿名処理班
なぜ宇宙にまで飛び出したのか
3. 匿名処理班
>7. 衣装は”SMクラブ”からヒントを得た
知 っ て た
4. 匿名処理班
あっちは昔から血まみれ系のショッキングホラーが
人気なんだね。
5. 匿名処理班
ヘル・レイザー大好きなんだけど、新作はあるのに1・2・3がどこもレンタルしてないんだよなぁ・・・。
6. 匿名処理班
ヘル・レイザーは自分がおかしいのかもしれないけど
なぜか美しいと感じるところが多い作品だった
人間くさいと言うのかな?
7. 匿名処理班
カラパイアはこーゆーコアなオレが好きなのやるから好きだ(*´∀`)ピンヘッドにしてやろーがー!!不思議な箱はい
8. 匿名処理班
>バーカー監督は自分の存在を語れる怪物が欲しかった
この一文に凄く惹かれる
観てみようかな
9. 匿名処理班
これ子供のころ見て恐かったなぁw