査読者に報酬が支払われる新体系のOAジャーナル「Collabra」が創刊される
科学誌Scienceが運営するオンラインニュースは13日(日本時間)、カリフォルニア大学出版局によって、査読者や編集者へ金銭的な報酬支払いが行われるオープンアクセス(OA)誌「Collabra」が創刊されたと伝えています。
多くの科学ジャーナルにおける論文の査読プロセスは、査読を依頼された研究者のボランティア活動をベースとした無償の互助システムによって成り立っており、査読者や編集者に報酬が支払われることは基本的にありません。
一方で、ジャーナル側のビジネスモデルはどうなっているかというと、NatureやScienceなどのように基本的に論文を一般公開しないジャーナルでは論文の購読者から購読料を徴収しており、これに対して、投稿された論文を公開しているOAジャーナルは、投稿者に費用を請求することで運営を行っています。
今回のCollabraの試みは、オープンアクセスとして公開するために投稿者(研究者)から徴収した料金の内、一部を研究者コミュニティに還元することで、既存のモデルに代わる査読システムを構築しようというもの。具体的には、投稿料として875ドルを請求し、そのうち約28%にあたる250ドルを、査読者や編集者への報酬という形で研究者コミュニティに還元するとしています。
ただし上記の支払額は、ジャーナルへの貢献度に応じて付与される “ポイント” によって変わり(例えば、担当編集者やレビュワーには論文一本につき3ポイント、シニア・エディタには1ポイントが与えられる)、また、論文がアクセプトされたかリジェクトされたかに関わらず、報酬は支払われることになるとのことです。
▼Collabraのフローチャート。
科学ジャーナルのOA化を巡っては、2013年にノーベル生理学・医学賞を受賞したランディ・シェクマン教授がトップジャーナルであるCNS誌(Cell, Nature, Science)に “絶縁宣言” をしてOA誌「eLife」を創刊したり、先日にはNature Communications誌が完全オープンアクセス化へ移行(過去記事)するといった出来事がありましたが、一方でOA誌の先駆的存在であるPLOS ONE誌は成長が停滞しているといった指摘※もなされています。
そうしたOA化の潮流の中で、これまでとは異なるアプローチを試みるCollabraですが、果たして研究者の支持は得られるのか。今後の展開に注目したいところです。
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著者
企業の研究所でR&D業務に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。ソース明示とポイントを押さえた解説を心がけてゆきたいと思います。