魔術師「勇者一行をクビになりました」
勇者「今回中ボス討伐に協力してくれた魔法使いが、正式に仲間に加わってくれることになった」
魔術師「はぃ」
勇者「こう言っちゃ申し訳ないけど、魔法使いの能力は君の上位互換なんだ」
魔術師「…はぃ」
勇者「君は皆と上手くやろうともしないしね」
魔術師「………」
勇者「俺たちはパーティーなんだ。君と一緒だと戦いにくいって声もあがっている」
魔術師「……はぃ」
勇者「だから悪いけど…」
今日、私は勇者様の一行をクビになった。
魔術師「…」トボトボ
故郷への帰路を1人歩く。気持ち?とっても惨め。
帰ったら皆にバカにされる…。だからと言って、私を迎え入れてくれるパーティーがあるとは思えない。
昔から暗くていじめられっこで、私は集団の中ではよく浮く。
魔術師(頑張ってたもん)
ただ私に才能が無かっただけで。
魔術師(上手くやろうとしなかったわけじゃないもん…)
私なりに頑張った。
戦士『ねぇその目、何か不満でもあるの?』
魔術師『ぃ、いえっ』
雰囲気が暗くてよく誤解されていた。
僧侶『魔術師さん、魔法を繰り出すのはもう少しタイミングを見てくれません?』
魔術師『す、すみません…』
皆との連携がわからなかった。
勇者『全員分の装飾品装備買ってきたぞー』
戦士『やったー、ありがとう!』
魔術師(お礼言わなきゃ)『ぁ、あり…』
踊り子『ちょっと勇者ー、これセンスなーい』アハハ
勇者『何だよー笑わなくたっていいだろー』
僧侶『私は好きですよこういうの』
戦士『僧侶、勇者はお世辞間に受けるから正直に言いなー』
勇者『戦士までひどいなぁ~』
魔術師『…』ポツン
勇者さん、戦士さん、僧侶さん、踊り子さん…皆は仲良くやっていたけど、私はいつもその輪の外にいた。
魔術師(頑張ってたもん…)
魔術師「う、えうぅ」
泣けてくる。
私はいらないと宣告された。
私を否定するような勇者さんの発言が、頭の中で何度も繰り返し私を責める。
魔術師「もうやだぁ…」グスグス
こんな私、どこに行ってもいらないと言われる。
またいらないと言われるのは嫌だ。誰かと関わればまた傷つく。だけど1人じゃ生きられない。
この世界は、何て苦しいんだろう。
魔術師「うえぇ」
「たーすけてくれー」
魔術師「…え?」
遠くから声が聞こえたような気がした。
「助けてマジで!!ヘールプ!!」
今度ははっきり聞き取った。
もしかして、誰かのピンチ…!?
魔術師「ぃ、今行きますぅ!」
私は声のする方に駆けた。助けられるか自信はない。
魔術師(これは…?)
声を追って来ると、魔法陣の描かれた岩を見つけた。
周囲に人の気配はないが…。
「あーチキショウ、出せってんだよコラアアァァ!!」
魔術師「ひぃ」ビクッ
と、岩の中から声が聞こえた。
「あ、誰かいんの!?出して、だーしてー!!」
魔術師「ぇと…どうやって…?」ビクビク
「魔法職の奴を引っ張ってきて、この魔法陣の効果を打ち消すんだよ!」
魔術師「ぁ、私も魔法職…」
「マジで!?すみませんお願いしますマジでプリーズ!助けて助けてたーすけてー!!」
魔術師「ち、ちょっとだけお時間頂けますかぁ…?」ビクビク
「おう、1時間でも1週間でも1年間でも!ゆっくり焦らず落ち着いてー♪」ヘイヘイ
魔術師(落ち着いてできないよぅ…)ブルブル
とりあえず声に従って、魔法陣の効果を打ち消すことにした。
これは…難解だが、時間をかければ解除できそうな気がする。
>3時間後
魔術師「ぉ、お待たせしましたぁ…何とかなりそうです…」
「…」
魔術師「ぁのぅ…?」
「んー…ハッ!寝てた!何だってぇ~?」
魔術師「ぁ、いぇ…」
魔法陣解除の準備を終わらせた私は呪文を唱えた。
魔術師「…解除!」
「イヤッハー!!」
魔術師「!!」
物凄い魔力が岩から溢れ出す。この魔力は…人のものではない。
そう思いながら私は、とても重大なことに気がついた。
魔術師(誰が何で封印されてるのか聞くの忘れてたああぁぁ!!)
もしかして封印されていたのはとんでもない存在だったかもしれない。
しかし時既に遅し。封印されていたものは、その姿を現した。
悪魔「ありがとありがと、マジさんきゅー!」
黒い翼をはやした若い男が現れた。顔は整っているが派手なアクセサリーをジャラジャラつけて、とてもガラが悪い。
悪魔「お礼は何がいい?金?力?それともア・タ・シ?なーんつってイャハハハハ」
魔術師「」ブルブル
悪魔「あン?」
魔術師「怖いよぉ~」
腰が抜けて立てなくなった。
悪魔「こりゃまた可愛い魔術師さんだなー、食べちゃいたいくらい」
魔術師「ひっ」
悪魔「ウソウソ!俺様可愛い女の子は大好きだけど、こう見えて義理堅いから食ったりしねーから!」
魔術師「ほ、ほんとですか…?」
悪魔「う・そ♪」
魔術師「ひゃああああぁぁ」
悪魔「うそうそ、ほんとだから!あ、どっちが嘘でどっちが本当かこんがらがってきたなイャハハハハ」
魔術師(笑えない)ビクビク
悪魔「で、礼は何がいい?」
魔術師「えっ!?」
悪魔「助けてくれたんだからお礼してやるよ。何でも言ってくれ!」
魔術師「え、えと、えーと…」
悪魔「あ、もしかして思いつかない系?何でもいいよー、何でも」
魔術師「ぃ、いぃです、お礼なんて」アセアセ
悪魔「ところでさー、チミのような食べやすそうなお嬢ちゃんが、何でこんな森を1人で歩いていたの?」
魔術師(食べやすそう?)「帰る途中で…」
悪魔「へー里帰り。どっかのパーチーに入ってねェの?」
魔術師「ぁ、今日クビになりまして…」
悪魔「はアァん、そっかー。じゃクビにした上司が憎いだろ~。俺様が呪い殺してやんよォ」ウケケケケ
魔術師「いや、いいです、殺さなくていいです!」
悪魔「あそー。でも何でクビになったァ?男女関係のもつれ?」
魔術師「いえ…私の力量不足です」
悪魔「力量不足でクビになンのかよ、無慈悲な上司だなー」
魔術師「仕方ないんです…勇者さんは1日も早く魔王を倒さないといけないから」
悪魔「ンはっ!?勇者!?魔王オォ!?」
魔術師「」ビクッ
悪魔「…なぁ、今って何年?」
魔術師「今ですか…?暦上では645年ですが…」
悪魔「ヤベェ~ッ!!寝っすぎたァ~…」ズーン
魔術師「あのぅ…」
悪魔「ま、過ぎたことは気にしても仕方ねェな!前向きに生きまーす☆彡」キラリン
魔術師(元気だなぁ)
悪魔「ンで、勇者は魔王を倒しに旅をしていて、チミは勇者一行をクビになった。そしてチミは勇者を憎んでいる!間違いねェな!」
魔術師「いえいえ、憎んでいませんよ!」
悪魔「でも、悔しいだろ?」
魔術師「っ!」
悔しいかって?そりゃあ悔しいに決まっている。
頑張ったのに認められなくて、いらないって言われて。
魔術師「でも…」
悪魔「「でも」禁止ィ!!」
魔術師「」ビクッ
悪魔「むぅ」ジロジロ
魔術師「…?あ、あの?」
悪魔「アンタ…結構いいな」
魔術師「え?」
悪魔「よし決めた!俺様、チミの使い魔になっちゃるよ!」
魔術師「え…ええええぇぇ!?」
悪魔を連れて人のいる所に行ったらどんな目で見られるか…。
魔術師と悪魔…まるで自分が悪魔召喚の儀式を行ったかのような誤解を生む組み合わせだ。
魔術師「ぃ、いいです!ほんと!」
悪魔「世間体気にしてんなら大丈夫だよォ?翼をしまえばホラ…ハーイ、下賤な人間と変わりませーん」ジャーン
魔術師「ぁの、私の使い魔になってどうするんですか?」アセアセ
悪魔「復讐よ」ニヤリ
魔術師「…え?」
悪魔「一緒に魔王をブッ倒そうぜ!!そして勇者に恥をかかせて、俺様たちは愛の終着駅へ一直線って計画よオォォ!!」
魔術師「どこから突っ込めばいいんですか!?」
悪魔「ツッコミは不要だぜェ!心配すんなって、俺様がいれば何とでもなるってェ~!!」
魔術師「あうぅ」
悪魔さんは私の頬を両手でギュッと締めて大笑いしている。
何かもう、理解が追いつかない。
悪魔「そいじゃ早速契約しようゼエェ!!」
魔術師「け、契約…ですか?」
悪魔「おう!この紙にサインしろ!」バッ
魔術師(使い魔との契約ってそうやってやるの?)「えーと…」
>婚姻届
魔術師「…」
魔術師「ところで悪魔さん」
悪魔「ノオオォォ!!見事なスルー、こりゃ参ったねッ☆彡」
魔術師「魔王を倒すって…どうやってやるんですか?」
悪魔「あー、俺様の全盛期の力を出せりゃ何とかなると思うンだけど、何せ寝すぎて調子が悪ィ」
悪魔「そォこォでェ、チミの魔力を貸ちてくだちゃい♪」
魔術師「私のですか…?」
悪魔「よォし早速魔王城を攻めるぞオォ!」バサッ
魔術師「いきなりですか!?」
悪魔「俺様の背中に乗れ!出来れば俺の背中に胸を押し付けろ!」
魔術師「嫌です~…」
悪魔「嫌とか言ってらんねェンだよ!オラァ強制連行じゃい!!」ヒョイッ
魔術師「きゃあ!?」
悪魔「スピード出して行くぜえぇ、振り落とされたくなければ俺様をギュッと抱きしめなァ!胸押し付けてな!!イャハハハハハ!!」ビュウウゥゥン
魔術師「いやああああぁぁぁぁ」
こうして私は押し切られるまま、悪魔さんと魔王城へ飛び立っていったのだった。
…ていうか、本当にどうしてこうなったんだろう。
>魔王城付近
悪魔「おー見えてきたな~」
魔術師「あっという間ですね…」
悪魔「人間って不便だよなァ、翼がねェと魔物とエンカウントしまくりフィーバーじゃ~ん」
魔術師「そういうものですよ…」
悪魔「…っと、これ以上近づいたら危ねェな」
魔術師「?」
悪魔さんはそう言って着地する。
魔王城はまだ、遥か遠くに見えている。
魔術師「どうしたんですか?」
悪魔「相手さん、魔法で網を張ってやがる。そン中入ったら、魔王城に近づく者がいるって一発でバレちまう」
魔術師「へえぇ…そんな魔法があるんだ…」
悪魔「ま、でもお陰さんで相手さんの実力がわかった。この程度の
コメント一覧
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- 2015年01月16日 22:29
- なんでまとめたし
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- 2015年01月16日 22:42
- 悪魔の馬鹿笑いにつられ笑いした
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- 2015年01月16日 22:44
- テンションうざかったけど、まぁ王道で悪くはないかな
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- 2015年01月16日 22:46
- ケツにオークの棍棒が吸い込まれて行くとか恐ろし過ぎワロエナイ
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- 2015年01月16日 23:04
- 好きだ
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- 2015年01月16日 23:17
- 最初はウザかったけど半分くらいから慣れたw
勇者のみじめなその後も気になる
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- 2015年01月16日 23:19
- 個人的にはさくさく読めて好き
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- 2015年01月16日 23:48
- 凄く面白かった
また新しい作品を書いてほしい
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- 2015年01月16日 23:50
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また勇者と魔王かよ…
<読後>
な、なかなかおもしれえじゃねえか(赤面)
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