神娘「やめんかチュウ助! やめい!」
- 2015年01月23日 23:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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神娘「だからやめんかって! やーめーてーって!」
神娘「雪! 冷たい! 耳に押し込むな! こらぁ!」
神娘「ふぅーっ、ふぅーっ……」
神娘「……はぁ」
神娘「捕まえたぞチュウ助。これでもう悪さはできまい」
神娘「まぁったく、神が気持ちよく寝ておるところにちょっかいかけおって。一体何のつもりじゃネズミのくせに」
神娘「いや何にせよこれは罰を与えねばならん。とんでもなく重い罰じゃ。なにせとんでもなく重い罪じゃしな」
神娘「うむ、わしも心が痛い。たった一人のわしのしもべを罰しなければならんのじゃ。これがつらくなくて何であろうぐふふ」
神娘「おっと。笑ってなぞおらんよ。嬉しくなんか全然ない。つらいつらい」
神娘「と、いうわけでチュウ助、地獄で悔やむがうわっぷ!?」
ドシャシャシャシャシャシャ!
神娘「――――ぷはっ」
神娘「……っ」ブルル!
神娘「……チュウ助よ。なぜ天井から雪が降ってくるのじゃ?」
神娘「いや降るっていうか注ぐっていうか雪崩れてきたっていうか」
神娘「これは珍しいこともあるもんだ? 確かに珍しいが違うじゃろ。悪意じゃろ。本格的にわしと戦争じゃろ」
神娘「そんなつもりはない? 信じてくれ? んなもんどうやって信じろと」
神娘「嘘をついてない証拠に自分の尻尾が尾形光琳の紅白梅図屏風絵を床に一筆書きするから見てろ?」
神娘「そんなことできるわけ…………すげー!」
神娘「よし信じるとしよう」
神娘「なんだか騙された気はするがいいもの見れたしとにかく良しとしよう」
神娘「で、要件はなんじゃ?」
神娘「とぼけるな。わしを起こしたのはただおちょくるがためではなかろう」
神娘「さすが? おだてるな。持ち上げても何も出んぞ。嬉しくもないえへへ」
神娘「……こほん」
神娘「どうせ仕事のことじゃろ。さっくり話せ。すぐに終わらせてまた眠る」
神娘「その前に? まだ天井に残ってる? 何が……うわっぷぁッ!」
朝 アパートの一室
女「ふわあ……」
女「……」
女「だるい」
女「だるいだるいだるいかったるい起きる気力もない」
女「だから二度寝も仕方ない。会社休むのも仕方ない。おやすみ……」モゾ
ピンポーン!
女「……」
女「なにぶんわたしはだるいから」
女「居留守を使うのも仕方ない」
ピンポンピンポーン!
女「だらしなくてごめんなさぁい……」モゾ……
ピンポンピンポンピンポン……
女「……」
ピンポンピンポンピンポン……
ピンポンポーン!
女「うるさい!」ガバ!
女「誰よ朝っぱらからこんな嫌がらせ!」
ガチャ!
女「どちら様ッ?」
神娘「おいっす。神じゃ」
女「……?」
神娘「寒い。入るぞ」
女「ちょ、ちょっと!」
神娘「これ神をつまみあげるとは不敬な」
女「あんたが勝手に人の家に上がり込もうとするからじゃない」
神娘「扱い方というものがあろう。つまみあげてよいのはネズミだけじゃ」
女「いやよあんな汚い生き物」
神娘「それは同感じゃがしかしわしの神社の神主はネズミのチュウ助での」
女「チュウ助?」
神娘「すこぶる性格は悪いが仕事はできる厄介な奴じゃ。ほれこいつ」
女「でっか! でもかわいい!」
神娘「おぬしの目は大丈夫か?」
女「少なくとも汚くはないじゃない。げっ歯類は嫌いじゃないわ。ハムスター飼ってたし」
神娘「むう。最近のもんの考えることはわからん」
女「何よチンチクリンのくせして。っていうか」
神娘「?」
女「あんたほんとなんなのよ」
神娘「神じゃが。さっき言ったろうが。頭も大丈夫か」
女「あんたこそ」
神娘「むう」
女「自分を神とかいう変な言葉づかいの奴なんて、女の子でなけりゃ通報してるわよ」
神娘「そういうもんかのう」
女「さ、わかったら帰って帰って」
神娘「大丈夫じゃ。前回の経験からこういう時の対処法は分かっておるぞ」
女「?」
神娘「後ろを見るがよい」
女「……。あ!?」
ガラーン……
神娘「邪魔なものがなくなってすっきりしたのう」
>前回の経験
→神娘「わしの眠りを妨げるのは誰じゃ……っていたたたっ!」
女「え、あれ……家具は?」
神娘「うむ」
女「なんでこんなに何にもなくなってるの……」
神娘「うむうむ」
女「いや、だってさっきまでは間違いなく!」
神娘「うむうむうむ」
女「あんたのせい!? あんたのせいなのね!?」
神娘「うぐぅ……」
女「返しなさい! 全部元に戻して!」
神娘「首を、絞めるな……っ」
女「いいから早く!」
神娘「むぐ……もう戻した……」
女「あ……」
神娘「ぷはぁっ……」
女「……。あんた、なんなの」
神娘「神じゃ。三度目じゃな」
女「神……」
神娘「正確にはなくし物、遺失物の神じゃ。厄介になる。よろしく」
女「え?」
……
神娘「こぶ茶うまい」
女「つまり……あんたは本当に神様なのね」
神娘「うむ」
女「なくし物の神、だっけ? なんでわたしのところに……」
神娘「呼ばれたからじゃ」
女「……呼んでないけど」
神娘「ん? だが呼ばれたから来たんじゃし」
女「だから呼んでないってば」
神娘「んー?」
神娘「しかし神社には来たんじゃろ?」
女「どうだったかなぁ。あ、いや、そーいえば……」
・
・
・
数日前 夜
女「うえ……飲みすぎ、た……」フラフラ
女「ううん、ここどこぉ……?」
女「……神社? なんでこんなところに入っちゃってんだろ」
女「なんか怖いし早く出よ……」
ツルっ!
女「いったぁ!」
女「なによう……何に滑ったのよう……」
女「っつぅ……。あ」
女「財布が、ない?」
女「ちょっと信じらんないどういうことぉ」
女「暗いし探しづらいってのに……」
女「…………。最悪」
女「財布が飛んでったっぽい方向に賽銭箱があるとか」
女「いい加減にしてよホント……」
・
・
・
女「で、やっぱり賽銭箱にインしちゃってたみたいだから、仕方なく柏手打って帰ってきたのよ」
神娘「なるほどのう」
女「まあカードとかは別だったし大金入ってたわけでもないけど、ねえ……」
神娘「まあそんなことはいいとして」
女「あ、そんなことってなによ」
神娘「そんなことはいいとして、わしはわしの仕事をせねばならんし」
女「仕事?」
神娘「そうじゃ。おぬしの望みを叶える義務がある」
女「じゃあ財布返して」
神娘「無理じゃ」
女「な、ん、で、よ!」ギリギリ……
神娘「ふぐぅ! 無理なもんは無理じゃ……!」
女「返さないとこのまま締め落とすわよ」
神娘「だから無理なんじゃって! チュウ助が管理しておるがゆえに! チュウ助はきっちりしておるがゆえに!」
女「チュウ助くん?」
神娘「もう神社の修繕に使ってしまったそうじゃ」
女「ちくしょー!」ギュゥゥッ!
神娘「締めすぎぎぎぎっ!」
ピンポーン!
女「またお客?」
神娘「ぁ……ぁ……」ピクピク
女「ちょっと待ってなさい。戻ったら続きね」
神娘(助かった……一時的に)
ピンポンピンポーン!
女「はいはーい」
ガチャ
?「ちっす。神だよー。お邪魔しに来てやったっち。よろしく!」
女「…………」
女「は?」
少女?「ではではお部屋探検隊ー!」
女「ちょぉっと待ったぁ!」
少女?「あれれー身体が宙にていくおふー」
女「何よあんた」
少女?「え? 言ったし。ついさっき言ったし。めっちゃ言ったし」
女「神?」
少女?「当たりし」
女「神、ねえ……」
少女?「お? のっとびりーびん?」
女「いや信じる信じないじゃなくて。もしかして今日はそういう日なのかなって」
少女?「そゆ日?」
女「神様大集合的な」
少女?「んんー?」
女「もしくは変人大集合的な」
少女?「んんんー?」
少女?「ま、とにかく下ろしてよーお邪魔させやがれよー」
女「そんなこと言ったって」
神娘「こぶ茶おかわりくれーってああああああーッ!?」
女「えっ?」
少女?「うにゅぴらああああーッ!?」
女「ええっ?」
神娘「おぬし、痴呆小娘!」
少女?「ばっちゃんわらしじゃん!」
女(…………知り合い?)
……
部屋
女「お待たせ」
神娘「……何をしておったんじゃ?」
女「会社に休みの連絡をね。なんか本格的に……なんというかこんな状況だし」
神娘「ふむ」
女「それより決着ついた?」
神娘「まだじゃ……っ」
少女?「にゅぅぅ……っ」
女「天井の染み数え勝負ってそれどうなったら勝ちなのよ」
神娘「決めてない」
女「あ、そう……」
神娘「勝った」
少女?「負け、た……」
女(かなりわけ分かんない……)
少女?「んみ、でもまだまだ! 三回勝負だし!」
神娘「ぬ!? いつの間に!?」
少女?「今決めた!」
神娘「なら仕方ない!」
女「えぇ……。ってそうじゃなくて。ちょっと聞いてよ二人とも」
神娘「なんじゃ?」
少女?「なにー?」
女「いろいろ聞きたいことはあるけどまず。これ、何?」
少女?「
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