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キョン「いい加減にしろ! ハルヒ!」




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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:15:42.54


完結させると言ったから、絶対に完結させる。
朝に保守してくれた人、ありがとう。
最初からやります。


―俺とハルヒは結婚した

―いつまでも、ずっと一緒に、仲良く過ごすはずだった

―でも真実は残酷だ

ガシャン!

ハルヒ「い、痛いっ!」

キョン「何で分からないんだっ!」


2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:16:49.39


バチン!

ハルヒ「何するの! 分かってないのはキョンの方でしょ! 私の方が辛いんだから!」

何が辛いのか、何が分かっていないのか。

自分自身でも分からないまま、意味の無い言い争いをいつもしていた。

でも、分からないままのことをいつか分かり合えると信じて、別れることはしなかった。

ハルヒの方から別れを切り出してこないところから、およそ俺と同じ気持ちなんだろう。


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:24:16.29


ハルヒ「キョン! ちょっと! ねえ、大丈夫!?」

キョン「………」

ハルヒ「今、タンスどけるから!」

キョン「………」

ハルヒ「返事して! 死なないで、置いていかないで! もう独りになるのは嫌!」

キョン「………」

意識が朦朧としていた。同時に、目の前がぼやけている。

頭からも結構出血しているみたいだ。




6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:20:25.75


バシッ!

キョン「いてっ! あんまり調子に乗るのも大概にしておけっ―」

ハルヒ「キョン!」

テーブルの角につまづいた。

一瞬にして俺の体が宙に浮く。

視点が大きくずれた後、目の前にはタンスの棚があった。

キョン「ヤバイ!」

ガタン! ドスーン!


14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:35:51.92


古泉「それで、あなたはどうするんですか?」

キョン「今すぐに元の時間に戻りたいんだが」

古泉「しかし、それはあなたの死を意味しますが」

キョン「構わん。どうせ、このまま時間の流れに乗っても結局は死ぬんだからな。もう一度ハルヒと喧嘩するのは辛い」

長門「どうして」

キョン「ん?」

長門「何故あなたは未来を作ろうと思わない。このままここの世界で生き残る選択肢もあるはず」

キョン「長門……」

朝比奈「私も同じです。未来を変えちゃうのはダメだと思うけど、無い未来を作るのはダメではないと思います」





17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:42:56.97


古泉「今のところ元の世界に戻る術は無い訳ですから、戻るにしても、ここで一休みをしていっては如何ですか?」

キョン「……悪いな。そうさせてもらうか」

長門「しかし、あなたの希望が最優先。本当に今すぐ戻りたい?」

キョン「いや、さっきは自分の中で混乱してて、訳が分からなくなっちまってた。ここでなんとか頑張ってみるさ。ハルヒとも、もう一度暮らしたいしな」

長門「……そう」

朝比奈「そろそろ帰りましょうか。長門さんもチョコの準備間に合わなくなっちゃいますよ」

古泉「それでは、ここは僕が鍵を閉めておきましょう。皆さんお先にどうぞ」


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:46:44.15


―帰り道―

古泉「それにしてもビックリしましたよ。まさかあなたが未来から来るとはね」

キョン「別に死にたくて死んだ訳でもなければ、戻ってきたくて戻ってきた訳でもないさ」

古泉「これは僕の勝手な推測ですが……」

キョン「ハルヒが望んだってか」

古泉「先に言われると困りますねえ」

キョン「お前が何を言い出すかは、死んだ後でもインプット済みだ」

古泉「おっと、そろそろここでお別れですね。何か今回の事で分かったことがありましたら、僕の方にお願いしますね」

キョン「ああ、分かった」


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:52:06.35


キョン「俺の実家……。そういや、親に何も言わずに俺は逝っちゃったんだよな」

俺は数年ぶりに実家のドアを開けた。

キョン妹「あ、キョン君おかえり!」

キョン「ただいま」

キョン妹「はい! これ!」

キョン「ん?」

キョン妹「数学のワーク! 手伝って!」

キョン「えっと……今俺は高2だから……。お前はもうすぐ中学生じゃないか」

キョン妹「えー、わかんないんだもん」

それだけ言い残すと、妹はシャミセンのとこへ走っていった。


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:59:11.41


キョン「これがかつての俺の部屋か」
俺は本棚に立ててあったアルバムを開いた。

キョン「これは夏の合宿のときか」

アルバムの中で、SOS団メンバー+αは楽しそうに海辺で遊んでいる。

キョン「………もう止めよう」

キョン母「キョンー! ご飯!」

キョン「あぁ、今行く!」


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:04:25.22


キョン「ふー、実家の風呂は気持ちいいな」

俺は今、夕食の後に風呂に入って上がってきたところだ。

すると、急に俺を睡眠欲に似たような感覚が襲った。

キョン「うっ、頭が重い……。相当眠いぞ……。今日は色々あったし、そろそろ寝るか」

そして俺はベッドへと倒れこんだ。

……はずだった。

しかし、目を開けるとそこは―


33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:07:22.72


Oh…最初のほうちょっと修正してるねw



35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:09:51.31


目を開けるとそこは―

―いつもの喫茶店だった

ハルヒ「ちょっと! 何ボーッとしてるの!」

キョン「あ、あぁ悪い」

ハルヒ「昨日といい、今日といい、最近あんた弛んでるわよ!」

キョン「すまんな、続けてくれ」

続けてくれ、と言ったものの、その前に話していたことがわからない。

昨日の夜に寝た時は寝巻きだったはずなのに、今は普通の私服を着ている。

ハルヒ「それじゃ! 鶴屋さんの家にみんなで行きましょう!」


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:15:44.96


―鶴屋邸―

鶴屋「やぁ、みんな! よく来てくれたねー!」

ハルヒ「場所の協力、感謝するわ!」

鶴屋「全然いいよー。みんなと居るとめがっさ楽しいからねー」

ハルヒ「それじゃあ、今から第一回SOS団くじ引きバレンタインデー大会をするわ!」

古泉「どうぞ、例のくじ引きセットをご用意しておきました」

キョン「ちょっと、ストップ! 古泉、トイレに行きたくないか?」

古泉「……えぇ、そういえばそうですね。鶴屋さん、トイレをお借りしたいのですが、場所を教えていただけますか?」

鶴屋「玄関から入って、突き当たりを右だよっ!」


投下スピード上げる





38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:16:34.19


俺は古泉と歩いていた。

古泉「何かお話があるのではないですか?」

キョン「早い話が、俺の朝の記憶が無いんだ」

古泉「記憶……ですか」

キョン「そうだ。どうやって朝着替えたか、どうやっていつもの喫茶店まで歩いてきたかが全く分からない」

古泉「一応、長門さんにも聞いてみますか」

キョン「あぁ、後で聞いてみることにする」

古泉「それでは、そろそろ会場に戻りましょう。皆さんがお待ちでしょうし」


39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:18:42.65


ハルヒ「もう、遅いわね」

キョン「さっきからすまないな」

ハルヒ「い、いいわよ。じゃ、始めるわ!」

そして、それから30分。

結局、朝比奈さんと長門のチョコは古泉に、ハルヒと差出人不明、およそ罰ゲーム付きと思われるチョコが俺に来た。

朝比奈「どうぞ。涼宮さんと長門さんとで三人で作ったんですよ」

古泉「そうですか。ありがたく頂きます」

長門「……私からも」

古泉「長門さんもありがとうございます」


41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:19:29.75


ハルヒ「はい、あたしからよ」

キョン「おいおい、随分とぶっきらぼうだなあ。もうちょっと、告白を控える見目麗しい少女のようにだな……」

そして、ハルヒは俺の胸倉を掴みつつ、引きつった笑顔を浮かべた。

ハルヒ「へぇ、あたしが"見目麗しい少女"じゃないって言うのね?」

キョン「言ってない、ってか言わないっていうかI don't say!」

その言葉を聞くと、やっとハルヒは胸倉を掴むのを止めた。

キョン「それより、この罰ゲーム付きチョコは今やるのか?」

ハルヒ「今じゃないわ。私の前でやるの」

キョン「お前の前? まさか公開羞恥オナn」

ハルヒ「あんたには一発、ハリケーンミキサーが必要みたいね」

キョン「バッファローマン!?」


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:21:10.33


そしてその後、我がSOS団一行は、鶴屋さんの家で、ゴールすると俺が腹筋をする人生ゲームをやったり、ババ抜きで負けると俺が腹筋をするゲームをしたりした。

ハルヒ「今日は面白かったわ。ありがとう、鶴屋さん」

鶴屋「いいっていいって、また時間があったらウチに来てよ!」

古泉「お邪魔しました」

朝比奈「お邪魔しました~」

長門「……お邪魔しました」

キョン「お邪魔しましたー。……長門」

長門「……何?」

キョン「また話があるんだ」


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:22:05.50


俺と長門の向こう側ではハルヒと鶴屋さんが何やら話しをしている。

鶴屋「ほら、これみんなで食べてよ!」

ハルヒ「えっ、こんなに貰っちゃって大丈夫?」

鶴屋「いいの!いいの!」



長門「……それで話は」

キョン「俺の朝方の記憶が無いんだ。どういう手段で喫茶店に来たかもわからん」

長門「……あなたの意識が段々薄れている」

キョン「は?」


48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:23:34.81


長門「……あなたが昨日、目を覚ましたのはいつ?」

キョン「夕方だから……5時ぐらいだろうか」

長門「……次に、意識がなくなったのはいつ?」

キョン「風呂に入った後だから、今度は9時ぐらいだろうか」

古泉「ということは、5時から9時の間、要するに4時間の間だけしか彼には意識が無い、ということですね」

長門「……そう」

朝比奈「えぇ、どういうことですかあ?」

キョン「ということは、その意識のある時間は、段々短くなってるのか……?」


50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 23:24:32.86


長門「……そう」

キョン「……意識が無くなるのはいつだ?」

長門「およそあと2日」

古泉「2日……ですか」

朝比奈「あと、キョン君は2日間しか居られないってことなんですか!?」

長門「正確には意識。肉体は存在し続ける」

キョン「だが長門。未来が無いのは俺とハルヒが結婚した後の話だ。それ以前の未来があるってことは、俺はなんとか大丈夫なんじゃないのか?」

朝比奈「ううん、時間は断層になっているから、今のキョン君とは違うキョン君が今と未来の間に存在してもおかしくないんです」

キョン「くそっ。どちらにせよヤバイな。俺の寿命も後2日、時間にすると約8時間か。月曜日がタイムリミットだな」

ハルヒ「みんなー! 帰るわよー!」





64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:00:07.62


―喫茶店―

ハルヒ「今日はこれで解散ね」

朝比奈「今日は楽しかったですー」

古泉「それでは皆さん、僕は用事がありますのでお先に」

古泉が出て行く。古泉が一番初めにここを出るとは珍しい。

ハルヒ「あっ、ちなみにキョンはこの後罰ゲームだから残ってなさいよ」

朝比奈「ちなみに罰ゲームって何をするんですか?」

ハルヒ「このゲームは皆には内緒なの。みくるちゃんには卒業したら教えてあげるわ」

朝比奈「うぅ、ずるいです……」

ハルヒ「有希にも今度教えるわ!」

長門「……わかった」


バイさるくらった、すまん


66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:04:56.37


朝比奈「それじゃあ、皆さんさようならー」

長門「……」

それから二人とも、喫茶店を出て行った。

今、喫茶店に残っているのは俺とハルヒだけだ。

ハルヒ「さて、そろそろ始めましょ」

そう言って、ハルヒは立ち上がった。

キョン「おいハルヒ、何処へ行くんだ?」

ハルヒ「いいからついてきなさいよ」


68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:09:55.52


連れられてきたのは学校だった。

土曜日の夕方の学校に人影は無い。

ハルヒ「……キョン」

キョン「何だ、ハルヒ。わざわざ、こんなとこに連れてきて」

ハルヒ「罰ゲームするから、さっきのチョコ出しなさいよ」

―俺の思考に何か違和感がある。何か矛盾しているような、していないような。

ハルヒは、俺からチョコを受け取ると中身を空けた。

キョン「まさかチョコに下剤でも混ぜているんじゃないだろうな?」

ハルヒ「そんなことするわけないでしょ、失礼ね!」

チョコに罰ゲームを付属させるのは失礼じゃないのか?


70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:15:18.57


ハルヒ「目をつぶってあっちを向いてて。私が指を鳴らしたらすぐに目を開けて振り返ってよね」

ますます不安になってきた。視覚を奪われた俺に何をするっていうんだ。

ハルヒ「……ちなみに聞いていい?」

キョン「なんだ?」

ハルヒ「私がこれから何するかわかる?」

キョン「わかるわけないだろ、未来人じゃあるまい―」

あれ、俺、「未来」から来てるんじゃなかったっけ。

この後、ハルヒに何されたか知ってるはずなんだが―

キョン「―全く想像がつかんな」

ハルヒ「……そう。わかった」


72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:21:20.75


俺はハルヒと反対側を向いて目をつぶった。

後ろの方でガサガサと袋を漁る音がする。

キョン「お前、自分で自分の作った奴を食べてるんじゃないだろうな」

ハルヒ「ほ、ほんなわけないひゃない!(訳:そ、そんなわけないじゃない!)」

……絶対食べてるだろ。

それから、数十秒ぐらいだろうか。今度は、後ろから合図の音が鳴った。

キョン「それじゃあ、行くぞ」

俺はゆっくりと振り向く。

キョン「なっ―」


79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:27:24.34


キョン「なっ―」

チュッ

距離にして数センチ、俺に抗う余地は無かった。

ハルヒ「んっ……んっ……」

キョン「んん……」

目を開いたハルヒとキスした状態で目が合う。

その瞬間、ハルヒは強引にも舌を潜り込ませてきた。

キョン「(おいおいおい、マジかよ。これってまさか……)」

淀みない動きでチョコが俺の口に移る。

ハルヒ「んっ! はぁはぁ……」


82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:31:57.27


キョン「………」

ハルヒ「何よ、私がキスするような女じゃないとでも思ってたの?」

キョン「………」

ハルヒ「あたしだってしたかったわよ! 好きな男作って、キスだって、それ以上のことだって! でもあたしを満足させられるような奴は現れなかった!」

キョン「………」

ハルヒ「でも高校に入って初めて見つけたの! 自分のちょっとしたわがままにだって付き合ってくれて、かつ、あたしの傍にいつでも居てくれる人!」

キョン「………」

ハルヒ「それがあんたなの! あたしにはあんたが必要なの! あんたがいないとダメなの!」


85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:38:09.79


ハルヒも俺も泣いていた。

理由もわからないままに泣いていた。

キョン「……ハルヒ」

ハルヒ「今度は何? フるっていうの? いいわ、今すぐここでフって頂戴。でもその代わり、今すぐ死んでや―」

俺も一気に距離を詰めてハルヒの唇を塞ぐ。

キョン「ハルヒ、俺も好きだ。最初は、変な奴だとばかり思ってたが、SOS団の活動をしているうちに印象も変わった」

ハルヒ「……遅いわよ、ばか」

結局、付き合い始めの頃の気持ちと、結婚した後の気持ちも、あまり変わっていなかったのかもしれないな。

目に少しだけ涙を浮かべたハルヒを見つめていると、校門の塀の死角に誰かが潜んでいることに気付いた。

キョン「ほら、あそこに誰かいるっぽいぞ」





93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:54:26.47


俺が指差すと、校門の陰から二人が出てきた。

長門「……あなたは動きすぎ」

朝比奈「はぅー、ごめんなさい」



ハルヒ「グズッ……。あの二人、お仕置きするんだから……」

キョン「ま、今日は許してやれ」

しかし、俺はハルヒと一緒になれるという幸福感と共に、多少の罪悪感にも苛まれていた。

あと2日で、ハルヒと付き合っている「俺」はいなくなる。


95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 00:58:47.42


―自宅―

キョン「ふう。まさかハルヒに告白することになるとはな……」

ふと携帯に目をやると、例の彼女からメールが来ていた。

『付き合うことになっても、団長と雑用は変わらないんだから注意しなさいよ!』

キョン「へいへい、団長さん」

携帯を閉じようとしたその時、突然着信メロディーが手の中で鳴った。

キョン「もしもし」

古泉「今から外に出られますか? 雑談でもどうでしょう」

キョン「……どこに行けばいい?」


96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:02:06.16


―公園―

キョン「突然どうした」

古泉「こんな遅くにすみません。少しお話しがしたかっただけなんですが」

キョン「まぁ、いいさ」

公園は昼間の盛況ぶりとは裏腹に、今は誰も居ない。

少しばかりの沈黙の後、古泉が先に口を開いた。

古泉「もし、世界の崩壊と涼宮さんが天秤にかかっていたら、あなたならどうしますか?」

キョン「どういうこった」

古泉「要するに、涼宮さんを取れば世界が崩壊し、世界の存続を取れば涼宮さんを失う、という状況になったとき、あなたはどうしますか?ということです」


101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:07:24.04


キョン「……答えづらい」

古泉「……申し訳ありません。少し軽率な質問だったかもしれません。話を変えましょう」

そういうと古泉は近くにあったブランコに座った。俺も隣に座る。

古泉「私はSOS団副団長、失格かもしれません」

キョン「何故にだ?」

古泉「僕は一度だけ、たった一度だけ、僅かな間ですが涼宮さんを憎んだことがあります」

キョン「神人絡みか」

古泉「えぇ。つい最近の事です。いつものように、仲良くしていた同僚と神人を倒しに出向きました」


104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:12:17.67


古泉「しかし、その時の神人は普段とは全く違いました。明らかに体格が普段の2倍程だったんです」

キョン「……それでどうした」

古泉「僕とその友人は警戒しました。少しでも隙を見せれば"死ぬ"と」

時間は八時を回った。そろそろ意識の無くなる頃か。

古泉「神人1体に対して2人体制で臨んだのですが、無理でした」

キョン「………」

古泉「すぐに他の仲間達は倒されて……その同僚も……」

キョン「………」

古泉「同僚は……その同僚は……」





106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:16:21.49


古泉「死んだんですよ! えぇ! 僕の同僚は志半ばにしてね!!」

キョン「おい、やめろ……」

古泉「次の日、学校へ行くと、例の通り涼宮さんは不機嫌でした」

キョン「やめろ……」

古泉「理由を聞くと、親と相当口喧嘩をしたということだったようです……。なんで……なんで他人の口喧嘩ごときで人一人死ななきゃいけないんですか!」

キョン「もう、やめろっつってんだろ! んなこと、ここでブチ撒けたところでそいつの供養にもならん!」

古泉「……ごめんなさい。ちょっと思い出してしまったようで、感情的になってしまいました」

キョン「辛くなったら未来の俺に相談してくれ。今、俺が出来ることは今のお前の話を聞いてやることだけだ」


108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:22:07.33


古泉「あなたはいつでもみなさんの頼りで羨ましい限りです。最後に一つだけいいですか?」

キョン「どうした?」

古泉「僕は世界を救います。例え、天秤にかかっているものがSOS団だとしても」

キョン「……一度だけ俺らに味方するんじゃないのか?」

古泉「……機関とSOS団ならばSOS団に味方します」

古泉はブランコから立ち上がり、公園の外に止めていた車に乗って走り去った。

俺もブランコから立ち上がる。

キョン「泣いても笑っても後2日か……」

そこで俺の意識はフェードアウトした。


114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:27:22.73


残りは後1日になった。

目を覚ますと、今度はハルヒの家に居た。

ハルヒ「それじゃあ、キョンはこっちね」

通された部屋は女の子を感じさせる雰囲気だった。

キョン「ここは……お前の部屋か?」

ハルヒ「そうよ。さっき説明したでしょ?」

キョン「……で、何をするんだっけか」

ハルヒ「ちょっと、あんた若年性アルツハイマー? 今日はSOS団でお泊り会するっていって集まったんでしょ」

キョン「す、すまんな。最近調子悪くて」

ハルヒ「キョン、疲れてるんじゃない? 無理しちゃダメだからね!」

顔を少し赤らめて言うハルヒ。こんなハルヒも見納めか。

キョン「お、おう。ありがとうな」


116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:33:24.75


そしてハルヒは「お菓子を買ってくるわ!」と言い残して家を飛び出して行った。

クイッ クイッ

キョン「ん……長門?」

長門「……こっちへ」



キョン「玄関にみんなを集めてどうした。買い物行ってるハルヒにドッキリしかけようってか」

長門「……今日中」

朝比奈「今日中ってなんですか?」

古泉「僕からもお願いします。詳しく教えて頂けませんか?」

キョン「長門、どういうことだ?」

長門「……あなたの意識は今日中で元に戻る」


119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:40:15.62


ハルヒ「みんな! お菓子買ってきたわ!」

古泉「荷物をお持ちしましょう。涼宮さんはこちらへ」

ハルヒ「へっ?」

古泉がハルヒを俺達の待つ部屋に案内する。

キョン「ほらよっ」

俺は赤の車をハルヒに放り投げる。

ハルヒ「何これ……人生ゲーム?」

朝比奈「涼宮さん、一緒にみんなでやりませんか?」

ハルヒ「……オッケー、受けて立つわ! みくるちゃんと有希も覚悟なさい。土曜日のことがあるからね!」

朝比奈「ひぃ~!」

長門は一人でルーレットを回している。

長門「……ユニーク」


123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:45:05.92


ハルヒ「また勝ったわ! 何度でもかかってきなさい!」

キョン「お前、何連勝だ……」

俺達は人生ゲームを何回もしていた。既に周りは暗くなっている。そろそろお迎えか?

ハルヒ「でも、ちょっと飽きてきたわね」

古泉「それでは、最後に王様ゲームでもしませんか?」



朝比奈「どうぞ、涼宮さん。クジをどうぞ」

ハルヒ「とりゃー!」

朝比奈「長門さん、キョン君、古泉君もどうぞ」


125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:50:57.39


ハルヒ「それじゃ、行くわよ!」

全員「王様だーれだ!」

キョン「……俺だ」

古泉「やはりあなたでしたか。こんなにタイミングよく引くなんて奇跡的ですね。一応まだ10分あります」

キョン「……わかった」

ハルヒ「何があと10分なの?」

俺はハルヒの質問を無視して続ける。

キョン「王様が1番に……話をする」

長門「……1番は?」





127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:54:46.77


ハルヒ「あたしね。何の話?」

キョン「そうか……。ハルヒ、よく聞いてくれ」

ハルヒ「な、何よ改まって……」

話をする、と言ったものの、言葉が出ない。そのまま数分ほどが経過していた。

キョン「本当にありがとうな。ハルヒ。SOS団のお陰で、俺は楽しい高校生活が送れた」

ハルヒ「何言ってんのよ、卒業する気? まだ一年も先よ?」

キョン「たまにはやりすぎて教師に怒られることもあったが、そんなことはどうでもいい」

ハルヒ「ねぇ、何言ってんの? ちょっと!」

キョン「お前と居られた時間は楽しかったぞ……」

ハルヒ「待って! 質問に答えてよ、どういうことよ!」

古泉「急いでください、残りは3分です!」


131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 01:59:11.56


キョン「くそっ、もう眠気がきやがったな……」

ハルヒ「落ち着いて、ゆっくりでいいから話して、ね?」

キョン「……もういい! 短く言う! ハルヒ、結婚しよう!」

ハルヒ「……えっ! いきなり、いきなり何なのよっ。訳わかんない!」

すると、長門が俺に耳打ちをしてきた。

長門「……このままだと、これから先と同じ結果を招く。あなたが死んだとき、涼宮ハルヒは相当なパニックを起こすはず」

古泉「長門さん。お言葉ですが、これは彼が歩んだ道です。そこに口出しするのはいかがなものかと思いますが」

古泉の顔が一瞬だけ強張る。

決して自分の心の裏を見せない奴だったが、何か黒い影のようなものを感じさせた。


134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:04:21.89


長門「古泉一樹……!」

キョン「長門……すまん。俺は未来を変える、とか大層なことは出来ない……。だから、後は頼んだ」

長門「……わかった」

ハルヒ「もう、なんなのよ! 3人で耳打ちし合ったりして!」

キョン「うっ……視界が歪んで……。ハ、ルヒ、もう一度だけ、言わせてくれ」

ハルヒ「な、何よ」

キョン「愛し、てるか、ら。また、喧嘩、し、よう」

ハルヒ「えっ……ちょっと、何か嫌だ! キョンが離れていく気がするよ、行かないで―」

そこで、俺の意識は途切れた。

俺が死んだのは確かな事実となった。


136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:08:54.22


______キョンが死んだ直後(古泉視点)______

ハルヒ「ちょっと! キョン! キョン! なんでこんなところで……またあの頃に戻りたいよ……」

僕はタイミングを見計らって玄関を開ける。

古泉「涼宮さん」

ハルヒ「こ、古泉君!? こっ、これはあたしがやったんじゃないの! キョンが足を滑らせて……!」

古泉「直接的ではないにしても、あなたにも原因があるのは事実です」

ハルヒ「違う! 私がやったんじゃない! 嫌だ! 何言ってんの! キョンは自分で死んだのよ!」

古泉「僕は懺悔する必要があると考えますが?」

ハルヒ「私じゃない! あああああああああ! キョン、キョン! 生きててお願いいああああああいいいあああいあ!!」


138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:13:56.68


ボトッ

古泉「……お貸しします。どう使うかはあなた次第です」

ハルヒ「け、拳銃……? 本物なんて初めて見たわ。……いいわよ、あたしが死ねばあたしの罪にはならない! 今からキョンの元へ行くわ!」

古泉「外に出ていますから」

バタン

古泉「……さようなら、涼宮さん。そして、キョン君、やっぱり僕は世界を救うことにします」

部屋の中では、涼宮さんが狂いながら叫んでいる。

ハルヒ「キョン、愛してるわ! 今すぐあなたの元へ―」


143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:18:57.33


ターン!

部屋の中で、何かが弾けるような音が聞こえた。

僕は泣いていた。

長門「……古泉一樹」

古泉「長門さんですか」

僕はとっさに笑顔を取り繕う。

長門「……あなたは最低」

古泉「えぇ、最低です。人間の最底辺まで落ちた感覚で一杯ですよ。なにせ、人の状況判断能力を失わせて殺したんですからね」


146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:22:25.19


古泉「……一つだけ聞いて良いですか?」

長門「……何?」

古泉「何故彼は元の時間に戻れたのでしょうか。涼宮さんが"戻りたい"と願ったままだと思っていたのですが」

長門「……あなたのせい」

古泉「はい? 今、なんと?」

長門「あなたが殺したから。あなたが殺したから、彼も死んだ。罪のない彼を殺した」

古泉「……」





149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:25:54.73


長門「……涼宮ハルヒが居なくなれば、私の役目も終わり。あなたは3人目を殺した」

古泉「……」

長門「……朝比奈みくるも役目は終わり。今の世界から見ると、あなたは4人目を殺した。……それと、涼宮ハルヒを殺したからといって、世界を救ったことにはならない」

長門さんはそういって、長門さんは僕の目の前から消えた。

古泉「……フフッ」

僕は二人の亡骸のある部屋に入る。強烈な血の匂い。

涼宮さんは自分の胸を貫いたようで、キョン君を抱きしめるように眠っていた。

そして僕は拳銃を拾い上げて―


153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:29:12.40


―僕の頭に向けて引き金を引いた

―壁一面にホウセンカが咲いた

―真実は残酷だ。

~完~


支援、本当にありがとうございました。
それと、朝の分を見ていたのに途中で落ちてしまった!という人、ごめんなさい。

あぁ、あとID:Qts8YsMn0。
さりげなく保守をしていてくれた気がする。ありがとう。


154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:30:53.35


>>1

良かったと思うよ



156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/24(木) 02:31:08.70







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