赤信号「なんで私はみんなに睨まれるんです…?」
- 2015年01月26日 23:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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赤信号「都会の赤信号として生まれて3年」
赤信号「せっかくのエリート育ちですのに」
赤信号「何故か私に変わると皆嫌そうな顔をしますの」
赤信号「私は皆さんの身を守ろうと危険を伝えておりますのに」
赤信号「挙げ句、私の事を完全に無視する方もしますし…」
黄信号「赤信号」
赤信号「あら、私の同僚ではありませんか。どうしたんですの?」
黄信号「別に用はないけど、今は信号青だから。」
黄信号「何か話そうかなーって」
赤信号「丁度良かったですわ、お暇なら私の話を聞いてくださる?」
黄信号「?」
……
黄信号「……なるほど。」
赤信号「私たちは赤、黄、青で三位一体。何故私は睨まれてしまうのでしょう…」
黄信号「……わたしは交換で入ってきた新人だけど、そんな信号の推測でいいなら。」
赤信号「? 構いませんわ、聞かせてほしいですの」
黄信号「……」
黄信号「たぶん、本当のエリートは青信号だけなんだとおもう。」
赤信号「えっ…」
黄信号「わたしは皆より仕事の時間が少ない色だけど」
黄信号「それでも、たまに感じる事があるの。」
黄信号「よくオジサンとかが、わたしが青信号に変わる前に渡ったりするの。」
黄信号「赤信号のいうことを無視するのもみてた。」
赤信号「つ、つまりは…」
黄信号「渡るひとははやく渡りたいの。」
黄信号「渡っちゃだめっていう色は、きっと邪魔なの」
赤信号「!!!」
黄信号「だからね、渡っていいよっていう青信号だけがみんな気持ちよくなってくれるんだと思うの。」
赤信号「……」
赤信号「で、では私は…嫌われ者、なのでしょうか」
黄信号「……」
黄信号「そう思うひともいるとおもう。」
赤信号「……」
黄信号「でも、これからもわたしたちがみんなの安全を守ることに変わりないの」
黄信号「それがわたしの仕事で、わたしのしあわせだから。」
黄信号「わたしはあまりみんなのことをみられないけど」
黄信号「それでも、わたしの事がみんなの中にあるってだけで、うれしいの。」
赤信号「…そう、ですわね」
黄信号「うん。がんばろ。」
赤信号「ありがとう、ございましたの…」
青信号「ちょ、ちょっと赤ちゃん、わたしもう点滅はじめてるからね!」
黄信号「それじゃあ、わたしは車道のほうにもどるから」
赤信号「え、ええ」
赤信号「…」
赤信号(ああ、また私を疎ましそうに睨む方が…)
赤信号(……)
……
赤信号「おとうさま、わたしもいつか信号になるんですの?」
赤信号父「ああ…」
赤信号「たのしみですの、みんな手をあげてくれると聞いておりますわ」
赤信号父「……」
赤信号父「…赤信号」
赤信号「はい、おとうさま」
赤信号父「お前は、時に恨まれる事があるかもしれない」
赤信号父「お前の声を聞かない人間がいるかもしれない」
赤信号父「でもね、お前はただ胸を張っていればいい」
赤信号「…?」
赤信号父「私たちに価値があるからこそ、人は我々を作り上げた」
赤信号父「私たちが必要だから、私たちを見捨てなかった」
赤信号父「必ずお前を必要な人がいる、それを忘れるな」
……
赤信号(ようやく、理解できましたの…)
赤信号(わたくしは馬鹿ですの…)
赤信号(足を止めさせる立場の分際で、皆に笑顔を向けられようなどと…)
赤信号(でも…どうしても今は自身を持てませんわ)
赤信号(光を渡される事が何より楽しかったのに…)
赤信号(ぐすっ…)
横断歩道「んん?雨が降りはじめたか?」
赤信号「あっ…」
横断歩道「…おっと、雨じゃなかったみてえだな」
横断歩道「珍しいじゃねえか、いつも元気なあんたがよ」
赤信号「す、すみませんの…」
横断歩道「なんの、こちとら五年も雨風に晒されてんのよ、女の涙ごとき屁でもねえぜ」
横断歩道「それよりどうしたんだ?人間に踏まれながらでいいなら話でも聞いてやるぜ」
赤信号「…いえ、結構ですの」
横断歩道「おいおい、強がってんじゃねえか?」
赤信号「…これは私が乗り越えなくてはいけない壁なのです」
赤信号「お気持ちは受け取っておきますわ」
横断歩道「…まぁ、無理には聞き出せねえしな」
横断歩道「俺なんかで良ければ聞いてやっから無理すんなよ」
赤信号「…はい…ですの…」
横断歩道(大丈夫かねぇ…あんた、どう思う?)
黄信号(とても心配。)
黄信号(でも、わたしがなんとかするわけにもいかないの。
横断歩道(ん?あんた詳しい事情知ってるのか?)
黄信号(かくかくしかじかなの。)
横断歩道(ああ…なるほどねぇ)
黄信号(内緒でお願いするの。)
横断歩道(あーったあーった、影から応援する事にするよ)
黄信号(でも何かあったら支えてあげてほしいの)
横断歩道(注文の多い子供だな…)
赤信号(耐えるんですの…)
赤信号(どんなに睨まれても)
赤信号(どんなに無視されても!)
赤信号(わたしは、安全のために無くてはならない物なんですの!)
……
青信号「赤ちゃん、ここの所調子いいね」
赤信号「あら、そうですの?」
青信号「うん!こっちまで元気になるよ!」
赤信号「貴方はいつも元気じゃありませんの」
青信号「えっ!? あはは、そうかな~?」
赤信号「ふふ、そうですわよ」
赤信号(わたくしは睨まれようと構わないのですわ)
赤信号(皆が安全に、横断歩道を渡って頂けるなら……)
横断歩道「なんか大丈夫みてえだな」
黄信号「うん。」
横断歩道「強がりってより、ありゃ心からの笑顔だよな」
黄信号「そう見えるの。」
横断歩道「俺の出る幕はなかったなぁ、おい」
黄信号「それがいちばんいいこと。」
横断歩道「あー、そうだなそうだな……」
横断歩道「お互い暇な奴同士、結局暇なのがいちばんだな」
黄信号「?」
黄信号「そっち、子供の大群きてるけど。」
横断歩道「ぬおっ!?これはハゲちまいそうな予感っ!」
横断歩道「ぐわぁぁぁっっ!白線だけ踏むゲームはやめてくれぇぇぇぇっっ!」
黄信号「…」
黄信号「そっちはあまり暇そうに見えないの…」
青信号「あっ、点滅…」
青信号「赤ちゃん、任せるよっ!」
赤信号「了解ですの!」
横断歩道「あー、俺は夜中は暇だねぇ、平和で結構」
黄信号「こっちはサンデードライバーが多くてヒヤヒャしたの」
横断歩道「はーん、お前にも嫌な事あるんだな」
黄信号「ちなみにカラスのフンがそっちに落下中なの」
横断歩道「!? なっ…」
黄信号(平和なの…)
横断歩道「危ねぇーーーーーーっ!止まれ、止まれぇぇぇぇぇ!!!!」
黄信号「っ!?」
それは一瞬の出来事だった。
赤信号「……」
自転車に乗った青年が。
赤信号「うそ……」
走ってきたトラックに
赤信号「うそ…ですの…」
跳ね飛ばされて、右足が普通のそれとは全く違う方向に折れ曲がっていた。
女子学生「イケメン先輩、ここで事故ったんだよね」
女子学生2「そうそう」
女子学生3「なんか信号が青なのにトラックが来たらしいよ」
女子学生2「えっ、それマジ!?」
女子学生「うわー…ここ通るのやめない?」
女子学生2「ここ渡らなくても着くしね」
赤信号「…」
横断歩道「……ケッ」
幸いにも青年は骨折だけで済んだが、一貫して信号は青だったと証言する
しかし車載カメラでは車両側の信号は青だった事が記録されており、青年の信号無視という事で片付いた。
黄信号「……でも。」
青年は正直者の優等生という事で通っており、
青年の通う学校の生徒は皆、青年の主張を信じきっていた。
学校だけにはとどまらず、青年の事を知る近所の人間、そしてその知り合い……と噂は広がっていき
事故から一週間にも関わらず、赤信号のいる横断歩道の利用者は激減していた。
横断歩道「ふざけた話だよな…」
黄信号「こっちの車両側も利用者が減ってるの。」
黄信号「…こういう暇は嬉しくないの。」
横断歩道「励ましてやろうにも、かける言葉が見つからねえしなぁ…」
黄信号「わたしは励ましたの。ううん、現在進行形で励ましてるの。」
横断歩道「そりゃ、俺だって声はかけてやってるけどよぉ……」
青信号「あ、赤ちゃん…」
青信号「わたし、点滅始めてるから…」
赤信号「はい、ですの…」
赤信号(……)
赤信号(私の…私のせいではありませんわ)
赤信号(でも……私が安全を守ってあげられなかったのは確かですの……)
赤信号(事故を発生させておいて、赤信号など名乗れるのでしょうか…)
赤信号(私がこの役目を引き受けるのは、早かったのではないでしょうか…)
赤信号(私はこんなにも弱いではありませんか…)
横断歩道「今日も人がまばらだなぁ、おい……」
横断歩道「向こう側は大活躍だってのによぉ」
横断歩道「ハゲは辛いけど、通ってくれないのも寂しいもんだぜ」
黄信号「あまり大きな声でそんな事言わないで。」
横断歩道「あーってるよ……ん?」
黄信号「あれは…」
横断歩道「あのガキの学校の制服じゃねえか」
黄信号「大量。 10人くらいいるの。」
横断歩道「こりゃ久々の大量通過か?」
赤信号(人が……?)
赤信号(頑張らなくては……いけませんの…)
コメント一覧
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- 2015年01月26日 23:18
- どこの交通誘導警備員が書いたんだ……
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- 2015年01月26日 23:38
- 信号はきちんと守る、ああ守るさ
だが信号待ちの時間ほど無駄な時間もないと思う
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- 2015年01月26日 23:40
- こういう発想が出来る人間ってすげえよな(なりたいとは言ってない)
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- 2015年01月26日 23:44
- はいはい神話神話
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- 2015年01月26日 23:44
- 何で俺泣いてるんだ...
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- 2015年01月26日 23:45
- 信号機でここまで書けるとはやるな
どんだけ信号機好きなんだよ俺君よ
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- 2015年01月26日 23:55
- 赤信号
みんなで渡れば
怖くない!