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ハンターの家には、よく壁に仕留めた獲物の剥製が飾られていたりするが、1860年代の西洋の裕福なハンターたちは、自分の戦利品に手を加え、様々な細工を施し、家具に加工するのが流行していたようだ。
動物を家具にするアイデアは別のトレンドから始まった。当時は動物愛護の概念がなく、ご婦人方がライチョウやキジを丸ごと身につけるというおぞましいファッションが流行っていた時代だった。1860年代、こうした流行が爆発的になり、剥製師たちの供給が追いつかなくなっていた。
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英国ロンドンのウィグモアストリートで動物の家具を作っていた剥製師のジョージ・F・バットは、当時「ライチョウは食べられるよりも身に着けるほうが需要が多い。羽だけでなく、頭から尾まで全身を装飾品として使うのだ。」と語っていた。
インドのファッションの影響を受けて、女性たちはクマやトラの爪でできたジュエリーの製作を依頼するようになった。さらには、動物を利用した、シルバーの台座のついた馬の蹄のインクスタンドなどの文具が作られ、サイやシマウマや馬の4本の足を使った椅子なども作られた。
やがて、動物の体全体が家具や調度品に使われるようになり、こうしたさまざまな動物家具のカタログが、雑誌『ストランドマガジン』のほとんどのページを占めるようになったという。
1.キリンの子どもから作られた椅子
ハンターのJ・ガーディナー・ムーア所有のこの椅子は、キリンの子どもから作られている。英領アフリカのキボコ川近くで母親と一緒にいたところをムーアが仕留めた。ピカデリーのローランド・ウォードによるデザインで珍しい品。椅子の上にいるのはムーアの犬で、パンチという名前のスコッチテリア犬。母キリンがどうなったのかはわからない。
2.トラの椅子
椅子になったこのトラは、剥製師のジョージ・F・バットの作品である。インド南西部のトラヴァンコールの村々をたびたび襲っていた人食いトラだったという。このトラが射殺されたまさにその日も10歳の少女を襲い、少女はその傷がもとで死んだ。椅子は見事な模様のトラ皮で覆われ、頭と前足をそのまま残して、いかにも獰猛な動物が飛びかかってきそうに見えるよう配置されている。まるでトラがイスの背もたれを抱えているかのように尻尾も裏側に見えている。
3.カワウソの皮でできた椅子
デザインはサー・エドウィン・ランドシア、製作はバットだ。椅子の周りには、愛犬、チリンガムの牛、アメリカンバイソンなど、さまざまな動物の頭部が飾られている。ランドシア自身が仕留めたものもある。ランドシアはカワウソの皮をとても気に入っていて、あるとき友人から極上のものをもらったため、それをバットが椅子の上に広げて、大カワウソの頭部を背もたれの後ろから垂らすように配置した。
4.象の椅子
これは、セイロンの若いゾウの椅子。ローランド・ウォードのデザインで、完璧に自然に座っているような姿になっている。ホテルなどのエントランスにいるポーターが休憩する為のものだそうだ。
5.エミューのランプ
死んでから照明器具に変身させられている動物の数を知ったら驚くことだろう。このエミューのランプは裕福なオーストラリア人紳士の注文で作られた。客間にこんなものがあったら、不思議な感じがするかもしれない。
6.巨大なクマのランプスタンド
ロンドンのグローヴェナースクエアにあるエックハルトシュタイン男爵夫人邸のドアを開けると、この恐ろしげな巨大クマが柔らかな光でホール全体を照らしてくれる。このクマはアラスカでの釣り旅行の際に仕留められた一頭。ローランド・ウォードがデザインし、男爵夫人の結婚のお祝いに贈られたもの。クマの背中にスイッチがある。
7.猿の燭台
このサルはかつてあるご婦人の最愛のペットだった。死んでしまったとき、婦人は嘆き悲しみ、愛するペットを装飾としてだけでなく、なにか役にたつものに作りかえようと決めた。その結果できあがったのが、存在感抜群のこの燭台だ。
8.オウムのフルーツ・フラワースタンド
剥製師、バットは内親王のためにこのフルーツ・フラワースタンドを作った。中央の可動式のスクリーンは、妃殿下お気に入りだったオウムでできている。
9.ゾウの足のリカースタンド
巨大なゾウの足のリカースタンド(お酒のスタンド)である。エディンバラ公が仕留めたゾウの足を使って、ローランド・ウォードが製作したものだ。
10.クマのリカースタンド
これはロシアで仕留められたクマ。バットによって剥製にされた。英国王室別邸モールバラハウスの喫煙室で何年も辛抱強く立ち続けている。
11.イノシシの牙で作った調度品
この調度品は、バットがインドのイノシシの牙で作ったもの。北西地区の連隊本部の副官によって送られてきた。将校たちは高貴な娯楽であるイノシシ狩りにはまっていて、仕留めたイノシシの牙をなにか役にたつ美しい装飾品に作り替えようと、丁寧に保存していた。それが、食卓を飾り、話に花を咲かせる一杯をふるまうテーブルの調度品に変身したのだ。
12.クマの回転テーブルとランプ
バット作のこのクマは、回転式テーブルとランプの両方の役目を担う。クマは誰かに向かって絶えず吠えているような恐ろしい容貌をしていて、嫌々ながら職務を果たしているように見える。
13.トラの時計
裕福なハンターの田舎の邸宅では、ライオン、トラ、ヒョウなどの頭骨がよく見られる。これは、トラがその顎で時計をしっかりくわえているホール時計。このトラはインド人を少なくとも5人は殺したという。
14.アホウドリのレタークリップ
アホウドリのクチバシでできたこのレタークリップは、風変りだがよくできている。あるむこうみずな人間が、小さな船で大西洋を渡ろうとした。ついにニューヨーク湾までたどり着いたが、すっかり消耗しきっていた。何日も海にいて、アホウドリの大群に襲われたという。銃で応戦し、その死骸の頭部がバットのところに持ち込まれた。この冒険家は、手紙を束ねるたびに海での孤独な闘いを思い出すという。
via:mentalfloss・原文翻訳:konohazuku
今でこそ動物愛護が叫ばれているが、19世紀には人々にそんな概念はなく、狩りを楽しみ、戦利品で部屋を満たすことがある種のステイタスであったようだ。
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コメント
1. 匿名処理班
剥製慣れしてない自分からしてみると、
どれもこれも狂気を感じる
2. 匿名処理班
強いものを征服した証に飾るのも、動物愛護もそれぞれの文化だよね
3. 匿名処理班
なんでクマは必ず直立して軽く芸が入ってるんだよ。
4.
5. 匿名処理班
人間のも作れば一通り揃ったかな
6. 匿名処理班
昔は人間以外の生き物がいくら減ろうとさほど問題ではないみたいな考え方だったしなあ
ペットが死んだから形見に、とか害獣駆除のついでとかならわかるんだけどわざわざ狩ってあんなんに変貌させるのはちょっとよくわからない・・・
7. 匿名処理班
サルの燭台は・・・
気持ちはわからないでもないけど、剥製の作り方を考えると自分ならやりたくない。
8.
9. 匿名処理班
個人的な感想で恐縮だが、剥製とかあまり好きじゃない。悪趣味だと思ってる。
動物の毛皮を使った襟巻きとかも嫌いだ。
それしか手に入らない環境(昔のエスキモーとか)ならともかく、
わざわざそんな素材使わなくたっていいじゃん!
10.
11. 匿名処理班
自然の造形は美しいから剥製にして手元に置きたい気持ちもわかる。でもできるだけ元の姿の方が好きかな。
レタークリップはいいなと思ったけど、あの経験をした人しか所有する権利はない気がする。
12. 匿名処理班
タヌキやツキノワグマのはく製とかは見慣れているけど、家具にするというのは日本では稀だろうね。生命の捉え方が違うということに過ぎず、良いとか悪いではないと思うな。
13. 匿名処理班
動物愛護がどうとかっていうことはおいといて、趣味は悪いと思う。
14. 匿名処理班
ミイラとかを家に飾っておく文化とかみて、キモいなぁと思ってしまうわけだが、これも普通にキモいわ。
残酷とかなんとかを通り越して、悪趣味の極み。
15. 匿名処理班
剥製がどうしょもなく恐ろしいのは不気味の谷現象なんだろうか?
博物館とか旅館とかが恐怖でしかない。
16. 匿名処理班
椅子がおぞましいなあ。
居心地が悪そうだわ。変な匂いしそうだし
17.
18. 匿名処理班
象の足を使用した座イスなら十数年位前には輸入家具店とかで見かけたな。
郊外のバブルに取り残された様なうらびれた店で見かけたときには
どれ位狩られて輸入されたのか、子供心に気になったな。
19. 匿名処理班
『ハンティングはスポーツじゃない。参加していることを、片方は知らないのだから。』
ポール・ロドリゲスというコメディアンの言葉です。
20. 匿名処理班
アホウドリの食性から考えて人間を襲ってくるって嘘くさいなあ
悪い趣味を合理化するための作り話っぽい
21. 匿名処理班
昔々に散々やっておいてから今になって「残酷だぁ!野蛮だぁ!」って言うのってホントかなぁ?って思う ホントはまだやり足りないんじゃないかって
22.
23.
24. 匿名処理班
こんなの家にあったら夜一人でトイレ行けない
子供のトラウマ製造機になったりしないんだろうか
25. 匿名処理班
ちょっと狂気を感じるのがあるな...
1とか4は怖すぎるわ...
26. 匿名処理班
今まで剥製とか悪趣味だと思ってたけど
実際に狩猟初めて野生動物を捕獲してみると
その言葉に出来ない美しい造形をずっと手元にとっておきたくなる
気持ちがわかる様になったよ。
テレビやネット等や山とかでちらっと見るだけの情報・記号としての存在の動物ではなく
1固体1固体の魂とこれまでの生き様が細部まで曝け出して
厳然たる存在として常に目前にいるってことの重さはちょっと説明が難しい。
少なくとも生き物への敬意が今までとは違うレベルで沸くよ。
27. 匿名処理班
釣りとか競馬とかブリーダーとかも何十年後には
悪趣味とかおぞましいとか思われたりするのかな
28. 匿名処理班
そりゃ現代の俺らが見ると悪趣味だけど
当時はこれが流行してたんだからねえ
動物愛護だって流行みたいなもんだし、廃れたらこの時代に戻るんじゃない
29. 匿名処理班
木彫像だったら欲しいデザインのものがいくつか
本物はちょっと怖いです
30. 匿名処理班
他の事でもそうだけど、
欧米って過剰にやりすぎてはギリギリのとこになって反省するから
保護対象になったものへの不作為不介入も過剰になりがちなんだよね。
それは動物に対してだけでなく人間に対してもで、
(これは悪いことだとはいえないが)徹底的な人権概念なんかはその産物だし、
最近じゃイスラム国の台頭を許したのも
形は違えどこのプロセスから派生してると思えてしまうわ。
31. 匿名処理班
未来人A「21世紀の頃は虫を殺すのが当たり前だったんだぜ!」
未来人B「マジかよ、、生物愛護が叫ばれる今じゃ虫を殺すなんてあり得ないな。」
32. 匿名処理班
資料としての剥製や、狩りの副産物としてなら分からんでもないのだが。
愛玩動物までやるとは向こうの感覚はよく分からんな。
33. 匿名処理班
イノシシの牙は、現代人の価値観から見ても別にかまわないのでは?
34.
35. 匿名処理班
毛皮禁止とかあれこれ過剰すぎないかなあと思ってたけど、なるほど。
こんなんはびこってたなら嫌にもなるか。
36. 匿名処理班
正直ペットの剥製も理解出来ない
大事な家族だったら遺体を保存して残すより懇ろに弔って土に帰す方がやっぱり納得行く
37. 匿名処理班
もう二度と流行りませんようにっ!
38. 匿名処理班
「愛犬」だとか「最愛のペット」だとかを剥製にして飾ろうと思う神経が理解できん
生きてる時にはさぞや立派だったろうと思う動物でも、剥製になるとやたら気味が悪いんだよなぁ
生きてる時と同じ姿なのに息をしていないってあたりに本能的に異変を感じているんだろうか
39. 匿名処理班
現代の倫理観で過去を批判してはならない。価値観は時代と共に変わるものであり、簡単に善悪を分けられるものではないからだ。
っていうのが自分の信条なんだけど、この記事の剥製なんかその最たるものなんじゃないかな。
現代人から見ると悪趣味でしょうがないので、安易に過去の人たちを否定しやすい。
40.