ジュン「じゃ、ちょっくら、出かけようか……」
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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:24:56.02
雛苺「ねー、ねー、お出かけするのー。」
「…… ……。」
雛「ちょっとだけでいいのよ! 猫さん怖くないんでしょー?」
「…… ……。」
雛「うー……」キラキラ
「…… しょうがないわね」
雛「わーい! やったなのー!!
ジュンも行くのよー!」
2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:29:24.68
ジュン「へいへい……。昨日から約束してたもんな。」
雛「~♪」
ジュン「しかし、めずらしいツーショットだよな。
まあ、今日はコイツと遊んでやってくれよ、水銀燈」
水銀燈「……。」
ジュン「……落ち着かないのは分かるぞ。
……けど、コイツは……よ。」
銀「……分かってるわよ……。」
ジュン「じゃ、ちょっくら出かけるか……。」
……僕の名前は桜田ジュン。
世界に7体というローゼンメイデンのうち、3体を世話する中学生だ。
あとの4体のことも、もちろん知っている。
コイツらが、敵同士だったってことも。
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:31:08.90
今日は、チビ苺たちと遊んでやる日だ。昨日、コイツと遊ぶと約束したんだ。
……アイツ、水銀燈とも遊びたいと言い出して……
僕が何とかナダめスカして、ここに連れてきてやったというわけだ。
雛「すいぎんとーと、ねこしゃんと、くろねこしゃんと、おでかけなのー♪」
猫「にゃー。」
ジュン「……まったく、チビ苺のやつ、暢気なもんだ……猫に乗っちゃって……」
銀「……。」
黒猫「……ニィー……。」
ジュン「お前も乗ってるんかい……!!」
……そんなこんなで、家の近くにある公園にやってきた。
今日は休日にしては珍しく、誰もいないようだ。
アイツらは姉ちゃんの弁当をつついているみたいだし、
僕は雲でも眺めていよう……
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:34:15.06
銀「……あなた、やっぱり苺が好きなのねぇ……。」
雛「ビスケットも好きだもん♪」
銀「……めぐがよく食べてるわね……"びすこ"……」
雛「めぐ……病院にいるみたいだけど、どうしてるのー?」
銀「……もうちょっとかかるみたいよぉ……。」
雛「じゃあ、こんどヒナが元気のおまじないしてあげるのー!」
銀「……そう……喜んでくれるわよ……。」
なんだ、結構仲良くなってるじゃん……。
ちょっと心配してたけど、取り越し苦労だったな。
けど、おまじないって何だろう……?
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:35:50.27
ジュン「さて、飯も終わったみたいだな。何しようか?」
雛「かくれんぼー!」
銀「かくれんぼ……?」
ジュン「……お前、病院でベッドの下に隠れてたろ、あれだ、あんな感じ」
銀「なるほどねぇ……。受けて立つわ。」
雛「じゃんけんするの!」
……僕が鬼になった。雛苺はもう慣れたもんだけど、
水銀燈とかくれんぼするなんて夢にも思ってなかったし、
どんな戦法で来るのか分からない……暗い場所に隠れられたら、長期戦も覚悟しないと。
……まだ30秒か……。
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:37:17.06
雛「やっぱり、ベンチの後ろなのよ♪」テクテク
銀「……。」トコトコ
雛「す、水銀燈はちがうとこに隠れなきゃなのよ!」
銀「そんなルールがあったのぉ!?……かくれんぼなんかしたことないし……」
雛「……けど、今日はいいの!」
銀「ふぅん……ジュンはまだ来ないのぉ?」
雛「そろそろ60秒なのー! 水銀燈ー、静かにするのよー!」
銀「わかったわぁ……ジュン、ここを見つけられるかしら……?」
さーて、まずは滑り台の陰……違うな。
水銀燈の奴、かくれんぼをしたことがないらしいから、
多分アイツといっしょだろう……。
どーこに隠れてるんだろーかー……。家とは勝手が違うからなー……。
ふーむ……木の陰だろうか……。この公園に木はいち、にー、さん……
……とにかく、全部アタろう……
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:38:13.45
銀「くくく……ジュンったら、こっちにぜんぜん気づかないじゃないのよぉ……」
雛「こういうところはねー、意外と見つからないのよ!」
銀「本当にぃ……?」
雛「……こまかいことはいーいの! 見つからなければいいのよ!」
銀「ふふふ……騒いだらジュンに見つかってしまうわよぉ……?」
……木の後ろには居なかったな……と、すると……
ジュン「うおーっ、どこだー……!?」
ジュン「……疲れたな……」
ちょっとだけ、ベンチに座って休もう……。
完全に運動不足だな……。
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:39:54.37
銀(……ちょっ、ジュンが……雛苺!?)
雛(……すぅー……すぅー……)
銀(なっ……何を眠っているの!? 敵が来てるというのに……)
雛(う~ん……むにゃむにゃ……)
ギュッ
銀「――!!」
(ま、マズい……!)
お? この後ろだなー……
意外に気づかないんだよなー……
ジュン「水銀燈みーっ……あれ?」
銀「……あ……はは……」
ジュン「コイツ……お前のひざで寝てるのか?」
銀「その……よう、ねぇ……」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:43:08.75
とりあえず、雛苺を起こさないように、そっと抱きかかえて……
僕らは改めてベンチに座ることにしたんだけど……。
……左側がすごく怖い。どうしてだろう。
今までに見たことが無い構図だからだろうか?
僕は受け入れられないというのか……?
雛「すぅ……すぅ……」
ジュン「…… ……。」
銀「…… ……。」
無理も無い。昔ならここで、雛苺を抱きかかえたまま
家に逃げ帰っていたことだろう。
そして程なく真紅たちを説き伏せ、そのまま戦いへと
繰り出していったことだろう。
今、僕の左側で、水銀燈が雛苺をひざに寝かせ、
ベンチの上に正座している……。
僕は平静を装ってこそいたが、心の中では震えが止まらなかった。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:44:22.36
ジュン「……め、めめめ、飯喰って一遊びしたから、ひ、昼寝したんだな……」
銀「……わかるの?」
ジュン「あ、当たり前だろ。コイツは、柏葉ん家よりも長く僕の家に居るんだから……」
銀「柏葉って……?」
ジュン「知らなかったか? ……コイツの契約者だった人だ。
昔、一回負けてるのを知ってるだろ?」
銀「あ、ああ……そういうことね……」
……どうやら、僕の心配は杞憂だったようだ……。
水銀燈の奴、今までこんな経験が無いから、
ぜんぜん落ち着きが無いな……。
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:45:24.67
雛「……う~……もうたべれないなの~……Zzz……」
銀「ふふ……あはは……」
ジュン「ど、どーしたんだよ!?」
銀「あはは……ふふ……」
ジュン「弁当に変なもん入ってたか……!?」
銀「違う……ちがうの……」
どうも様子が変だ。どうしたんだろうか……。
肩が震えているような……螺子が切れ掛かってるとでもいうのか?
雛「……すいぎんとー……」
銀「?」
雛「……だいすき……」
銀「……!!」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:48:58.22
なんとなく、秋の高い空を見上げてた僕が左のほうに視線を向ける。
肩を震わせ、虚空を見上げ、一転を見つめたまま、水銀燈は動かない。
その傍を、彼女の人工精霊・メイメイが、紫色に光りながらせわしく飛んでる。
十五時を回り、公園で遊ぶ子供の数も増えてきた。
楽しく遊ぶはずだったのに、どうにも辛気臭い……。
居たたまれなくなってしまった僕は、切り出した。
ジュン「……礼拝堂行こうか、礼拝堂……。」
銀「…… ……」コクッ
ジュン「…… よいしょ、っと……」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:50:33.16
まだ静かに寝息を立てている雛苺を抱えながら、
空いているほうの手で水銀燈の手を引いてやることにした。
薔薇乙女のなかでも背の高い彼女だったのだが、
それでも背丈90cmほどの彼女の震える手は小さく、どこか冷たかった。
人形だからとかいう理由で片付けるわけにも行かなかった。
たまにではあったが、真紅や雛苺の手を温かいと感じることがあったからだ。
ジュン「……少し冷えてきたな。」
銀「…… ……。」
ジュン「…… ……。」
雛「すぅー…… すぅー……。」
ジュン「お…… ……。」ピタッ
銀「……早く歩きなさいよ」
ジュン「あ……うん。」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:54:06.96
水銀燈にせかされるまま、礼拝堂に着いた。
一つだけ長いすが放置されている以外は、がらんどうだ。
公園でベンチに腰掛けた時と同じように、長いすに改めて座る。
薔薇窓からは日が差し込んできて、どこか幻想的だ。
僕の左では、雛苺の寝顔をじっと見ながら、
水銀燈が何かつぶやいている……。
銀「……あなた、私が敵だって知ってても……」
ジュン「…… ……。」
銀「……それを、私は……」
ジュン「……」
銀「……ううっ……。」
あの水銀燈が……泣いていた。
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:55:35.23
雛「う……ふぁー……あれ? ここは……
うゆ? 水銀燈……?」
銀「……雛苺ぉ……。」
雛「どうしたの?」
銀「……雛……」
ギュッ
雛「うゆー……」
目覚めると礼拝堂にいたことに驚いたのか、雛苺は目をぱちくりさせ、
水銀燈が強く抱きしめると、再び目を泳がせていた。
そして、雛苺は、水銀燈の頬を流れてる一筋の涙に気づいたみたいで……。
雛「……笑ってるのに、泣いちゃだめなのよ。めっめっなのよ。」
雛「あとでおまじないしてあげるから……」
雛「……水銀燈? 寝ちゃったの……?」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:57:33.76
雛「……ジュン」
ジュン「どうしたんだ?」
雛「水銀燈の螺子が切れちゃったみたいなの。
めぐのところに行こう?」
ジュン「分かった。すぐに行こう。」
水銀燈の奴、涙を流して微笑んだまま、寝てるみたいだ……。
僕は、意外にもコイツの涙を見たことが無かった。
……なんて、美しいんだろう。
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:58:23.93
僕たちは柿崎さんの入院してる病院に水銀燈を連れて行き、
しばらく休ませることにした。今度は、水銀燈を抱いて、
雛苺の小さな手を引いてやる。
……やっぱり、すこし温かい。
改めて、眠っている水銀燈の手を握ってみる。
……さっきより、温かくなっている……。
……3階の、316号室か。
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 02:59:56.25
めぐ「そう……ありがと……わざわざ……。
螺子は……巻いておいたよ。」
ジュン「いえいえ……僕はただ、付き添いを……」
雛「……今日は水銀燈うごけないの……もっと遊びたかったなぁ……」
ジュン「……また遊んでくれるさ……。」
雛「…… ……ジュン、ヒナね」
雛「……ホントは、最初……ちょっとだけ怖かったの。」
雛「でも、もう大丈夫だから……。」
そういえば、コイツはずいぶん前に、
水銀燈にさらわれたことがあったっけな……。
……怖かったに違いない。……けど。
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:02:33.47
コイツはすごく優しいんだ。
そんな水銀燈とも、遊びたいと願って、叶わないままに停まって……。
――さっきみたいに、遊ぶのが夢だったんだよな。
多分、アイツもうれしかったんだと思う。
滅多に顔を合わせるわけじゃないし、
そうじゃなきゃ、笑いながら泣かないからな……。
めぐ「……水銀燈と、遊んでくれたのね」
雛「う、うぃ。……かくれんぼしたり、お弁当食べたりしたのよ!」
めぐ「……ありがとう、ピンクの天使さん……」
ジュン「ハハハ……天使だってよ、雛苺。」
雛「……えへへ、照れるの……。」
めぐ「……また、遊んであげてね……。」
雛苺の髪をなでながら、微笑んでいた柿崎さんが
一瞬だけ見せた憂いの表情を、僕は見逃せなかった。
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:04:38.69
柿崎さんの傍らで眠っている水銀燈の横顔に目をやると、
微笑んでこそいたが、涙の跡がくっきりと浮かんでいる。
ジュン「……どうか、したんですか……?」
めぐ「……明後日、アメリカに発つの……。
知っているでしょう? ……私の心臓のこと……」
ジュン「あ、いや……うすうすは、聞いて……」
めぐ「そう……。」
ジュン「……まだ、悪いんですか。」
めぐ「……少し、落ち着いてきてるけど。
でも、これは生まれた時から……良くなってはまた悪くなる……
だから、ずっと死にたいって思ってた……。」
まずい事を聞いてしまったか。
心なしか、雛苺の表情もこわばっている……。
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:06:17.98
めぐ「……どうせなら今ある命……全部あの子に使ってもらおうと思ってた……」
雛「…… ……。」
めぐ「…… だけど、もうそんな必要も無くなったでしょう?
あまり実感は沸かないけど……。」
ジュン「……。」
めぐ「この時代には、長くいられそうって……あの子が言ってたから……
だったら、もっと長く、天使さんの顔を見ていたいな、って思えるようになったの……。」
めぐ「長くは持たないかもしれないけど……ね……。」
めぐ「ねえ……雛苺……」
雛「うゆ?」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:08:38.89
めぐ「……帰ってくるのは、来月になる……契約者の私が眠っている間は、
この子も力を使えない……まともに動けないでしょう……。」
雛「そう……なの……」
めぐ「……今日は……本当にありがとう……
来月……また、この子と遊んであげてね……。」
雛「……うん! わかったなの!
そうだ、ちょっと頭、登るのよ。よい、しょっと……」
ジュン「何してるんだ?」
いつも僕の背中を登るようにして、雛苺が柿崎さんの背中を登った……。
柿崎さんも、なんだかまんざらでもなさそうだ……。
雛「……元気になるおまじない♪」
めぐ「……あっ……ありがと……ふふ♪」
雛苺は、柿崎さんの頭を撫でていた。
元気になるおまじないって、これだったのか……。
……柏葉も、前にしてもらったって言ってたっけな……。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:11:08.10
銀「…… うーん…… あら? ここは……めぐ!?」
めぐ「この子たちが、あなたを連れてきてくれたんだよ。」
銀「……確か、公園に行って……礼拝堂に行って……」
雛「あっ! 水銀燈、おはよーなのー!
水銀燈にも、おまじないしてあげるね♪」
銀「え……!? ちょっ……」
ジュン「まあまあ、落ち着けよ。」
雛「今日は夢が叶ってよかった♪」
銀「……夢?」
雛「えへへ……」
ジュン「柿崎さん、何かジュース買ってきますよ。」
めぐ「……ヤクルト、お願いできる……?」
ジュン「はい。」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:14:08.11
ヤクルトを買って、再び病室のドアを開ける。
雛苺と水銀燈は、なにか話をしているようで、
それを柿崎さんが微笑みながら聴いている……
たまに雛苺たちが話しかけると、笑って答えている……
そんな光景が広がっていた。
ジュン「何を話していたんですか?」
めぐ「……いろいろ話してくれたよ。……金糸雀がよく家を覗いてることとか、
翠星石とおやつの苺を取り合ったとか……」
銀「あと、真紅のクッキーがマズい、とか……」
雛「ちがうのー、ヒナそんなこと言わないの!」
めぐ「ふふ……いつも真紅のことばかり……」
ジュン「ハハハ……そういわれれば、そうだなー……」
バシッ
ジュン「ってー……」
銀「何よぉ、笑わなくてもいいじゃない……」
雛「でもでも、水銀燈が真紅のこと一番気にしてるのよ。」
銀「ひ、ひないちごぉぉぉ……」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:17:00.23
こんな感じで談笑していると、時計は十七時を回っていた。
そろそろ帰ろうか、と腰を上げたときだった。
銀「雛苺……また来月、遊びましょう……?」
雛「うん! やくそくなの!」
銀「帰ってきたら、ジュンの家にお邪魔してやるわぁ。
楽しみにしてなさい……!?」
ジュン「あ、パソコンから入るのはやめてくれよ。」
銀「言われなくても。なんなら玄関から入ってやるわよ?」
ジュン「ハハハ……どうにでもしてくれ。羽が舞ってきたらわかるから。
すいません、柿崎さん……長居してしまって。」
めぐ「……いいのよ。多分、また、この病院に入ることになると思うから……
その時は……暇があったら……いや、絶対に……寄っていってね。」
ジュン「はい。……それでは、また。」
めぐ「またね。」
雛「またねー!」
銀「また来月……。」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:20:27.07
今まで見られなかった景色を見ることが出来て、よかった。
水銀燈から叩かれたところがちょっと秋風にしみるけど……
80cmほど下にあるコイツの笑顔を見てると、そんなことどうでもよくなってくる。
雛「今日はありがとなの、ジュン!」
ジュン「どうってことないよ。僕が休みの日は、いつでも行ってやるぞ。」
雛「……ジュンのぼり、してもいい?」
ジュン「ああ、いいぞ。」
雛「わーい!」ピョンッ
その日の夕飯は、花丸ハンバーグだった。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:23:01.73
それから1ヶ月後の十四時。
約束どおり、玄関から水銀燈がやってきた。
銀「ごきげんよう……」
雛「わーい! 水銀燈なのー!!」
どうやら、柿崎さんの術後の容態は、安定しているみたいだ。
雛苺と水銀燈は、1ヶ月前と同じように、猫にまたがって公園に出かけた。
僕はその後ろを、葉が赤く色づき始めた木を見ながら歩く。
公園についてから、"苺のわだち"に生っていた苺を食べて、
その後で、また1ヶ月前と同じように、3人でかくれんぼをした。
またもや僕の鬼で始まり、またもやベンチの裏で2人を見つけた。
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:24:47.58
ジュン「ホイ、水銀燈と雛苺みーっけ。
またここだったか……」
雛「見つかっちゃったなの。」
銀「詰めが甘かったみたいねぇ……。」
ジュン「さて、最初に見つかったのは水銀燈だから、
次はお前が鬼だな。60数えたら、僕たちを探してくれ。」
銀「わかったわぁ。」
ジュン「公園燃やしちゃだめだぞ。」
銀「そんなことしないわよぉ!! ジャンクにするわよ……!?」
ジュン「わ、悪かった、そんなに怒るなって……。」
雛「ジュンー、早く隠れるのよー!」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:27:26.72
僕は5分くらい後に、あっけなく見つかってしまった。
銀「……ジャングルジムの上に登ったくらいで、隠れた気になってるのぉ……?」
ジュン「チクショー、見つかってしまったか……って、もう雛苺がいるじゃん。」
ヒナ「えへへ……滑り台の上にいたら、見つかっちゃったの。
今度はヒナが鬼ね。いーち、にー、さーん……」
ジュン「……アイツは鬼でも強いから、頑張って隠れろよ。」
銀「そう……それは楽しみねぇ……。」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:29:35.71
2分経ったあたりで、水銀燈が見つかったようだ。
ヒナ「すいぎんとーみーっけたなのー!」
銀「なかなかやるわねぇ……木の上にいたのに……」
ヒナ「羽がおちてたから分かったの!
ちいさなこともみのがすな、って、くんくんが言ってたのよ。」
銀「くんくん……!?」
ヒナ「水銀燈もくんくん好きなの!?」
銀「……まぁ、普通よぉ。」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:30:36.19
ヒナ「そっかー。じゃあ、ヒナたちといっしょね!」
銀「そう……真紅は?」
ヒナ「真紅が一番くんくんが好きなのよ!」
銀「……このことは真紅には内緒よ! いいわね!?
さっさとジュンを探しに行くわよぉ!!」
ヒナ「わ、わかったなの。」
ほーう……水銀燈もくんくんが好きなのか……。
それは意外だったな……。プクク……。
ヒナ「今ジュンの声がしたの! こっちなのー!!」
ジュン「げえっ!!」ズドン
銀「あら、ジュン……自滅ぅ?」
ヒナ「ジュンみっけなの!」
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:31:36.75
ジュン「あたた……やっちまった……」
銀「ふふ……変な顔♪」
ジュン「なんだと!?」
ヒナ「ジュンこんな顔してるのー。ぷー。」
ジュン「だーっ!! お前らー!!」
銀「あははははは……」
ヒナ「キャッキャッ……」
秋の夕日はつるべ落とし、楽しく遊んでいたら、
時間は早く過ぎるもので……十七時も半を回り、そろそろ日も傾いてきた。
だけど……。
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:33:16.86
雛「えへへ……♪ 今度はかけっこするのよ!」
銀「かかってきなさい……?!」
ジュン「お前ら、そろそろ帰るぞ……。」
雛「うゆ!? もうそんな時間なの!?」
銀「ぜんぜん気がつかなかったわぁ……。」
ジュン「今日はくんくん探偵の日だろ?」
雛「水銀燈もいっしょに観るのよー!」
銀「そうねぇ……久しぶりだしぃ……
真紅と推理対決も悪くないわねぇ……しんくぅぅ、覚悟してなさい……!?」
ジュン「まあまあ、落ち着こうぜ。帰ったら紅茶を入れてやろう。
雛苺はオレンジでいいか?」
雛「わーい! オレンジぃー!!」
銀「ふふ……」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:34:29.24
帰り道、僕の前を手をつないで仲良く歩く、
二人の影が東に伸びている。
雛「今度はみんなで遊ぶのよ!」
銀「楽しみにしておくわぁ……。」
雛「えへへ……♪」
銀「ふふふ……♪」
……かすかな笑い声が聞こえてくるようだった。
さて、今日の夕飯はなんだろうか……。
【おわり】
二人の影が東に伸びている。
雛「今度はみんなで遊ぶのよ!」
銀「楽しみにしておくわぁ……。」
雛「えへへ……♪」
銀「ふふふ……♪」
……かすかな笑い声が聞こえてくるようだった。
さて、今日の夕飯はなんだろうか……。
【おわり】
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:36:31.50
おつー
悲しい話かと思ってたけどほほえましい話だった
悲しい話かと思ってたけどほほえましい話だった
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:37:59.11
最後までなにがしたいのかわからなかったけど雛苺ちゃんかわいいチュッチュしたい
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/26(土) 03:45:38.33
追いついたら終わってたorz
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