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インテル、第五世代Core i (Broadwell)の新省電力技術を詳細解説。Haswellから30〜60%減 - Engadget Japanese


2月4日、インテルが東京にて定例記者説明会を開催しました。基本的なテーマは3つ。インテルが1月に発表した第五世代Core iシリーズに付いての概要と、同社が普及を進めている深度センサー付きカメラ「RealSense 3D Camera」についての紹介、そして第五世代Core iシリーズの新技術解説です。ここでは、初公開の情報が中心となった3点目を中心に紹介します。

なおタイトル写真は、日本では初公開となった薄型ノート向けの第五世代Core iシリーズ(いわゆるBroadwellーU)のCPU実物。この基板はCore Mとほぼ共通の大きさですが、1円玉2枚より少し大きな程度まで小さくなっていることがわかります。

インテル 第五世代Core iシリーズ 技術解説

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技術解説に関しては、インテル技術部長の竹内健氏が担当しました(写真はBroadwellのウェハ、つまり切り出す前の半導体本体を持つ同氏)。なお、第五世代Core iシリーズの基本に関しては、下記の記事を参照ください。

インテル、第五世代(Broadwell) Core iプロセッサ発表。薄型ノート向け2コアのUシリーズから



竹内氏は冒頭で第五世代Core iシリーズ(のアーキテクチャーであるBroadwell)は、基本的な構造はHaswell(ハスウェル、第四世代Core iシリーズのアーキテクチャー名)と同じである、としつつも、Haswellよりも強化された点を概要で紹介。

製造プロセスが14nm(ナノメートル)に微細化された点を最大の特徴としつつ、さまざまなテクニックを用いたことも合わせて電力効率が大きく向上した点を紹介。CPU部のクロックあたりの命令実効効率(IPC)の改良による電力効率アップなどと合わせて、Haswell比での消費電力がアイドル(待機)時で60%、アクティブ(動作)時で30%減少した点を紹介。

グラフィックスを担当するGPU部では、演算性能の20%向上やDirectX 12への対応、4K出力への対応といった点をアピールしました。



なお製造プロセスとは、若干乱暴ですが、半導体を製造する際の技術世代を表現する言葉。世代が進む(回路の長さが短くなる=数字が小さくなる)と、同じ回路を製造しても物理的な大きさ(ダイサイズ)が小さくなり、理論上の半導体性能も向上。結果として理論上の動作可能なクロックが上がり、動作電圧、ひいては消費電力も下げられるという、半導体メーカーにとっては大きな改良となります。

上の写真は竹内氏が持っていたウェハのアップ。回路が形成されていることがわかりますが、製造プロセスが進むと、同じ構造でもこの面積が小さくなるわけです。

ただし製造プロセスを進めるには、非常に大きなコストも掛かり、一時的に歩留まりも下がるというデメリットもあります。



続けて竹内氏は、従来は大きくアピールしていなかったものの技術的に重要な改良点として「システム全体で最適化をはかる動的な熱および電力管理」について解説。一例として、「Haswell世代から拡張された」と発表されつつも不明点の多かったBroadwellのターボブースト動作に関して、ある程度踏み込んだ解説がなされました。

ターボブーストとは、Core MとCore i5、i7シリーズにのみ搭載される、自動オーバークロック的な機能。CPUの消費電力や温度を内部のセンサーで監視しており、システムの規定値より余裕がある状態では動作クロックを定格値よりも上昇させ、処理の高速化を計ります。

これまでにもターボブースト機能は複数回バージョンアップされており、より継続して高クロック状態を保てるように、またCPUだけでなくGPU(グラフィックス処理)にも適応できるようになど、様々な点で改良されてきていますが、BroadwellではノートPCなどで重要となるバッテリーへの負担も考慮した改良がなされているとアピールしまました。



さて今回は、動作概念のグラフを用いた解説がなされましたので、こちらの用語から紹介しましょう。ターボブースト対応CPUでは、クロックは非動作時(熱や消費電力の制限が厳しく、有効化できない場合)を定格クロックと定めており、インテルはこの場合の電力値をPL(Power Limit)1と呼んでいます。またターボブーストの動作しきい値となる電力値をPL2と呼びます。

従来のターボブースト対応CPUでは、「PL2を超えると動作を緩め、PL2に設定された電力値に近づける動作」としていました。上のグラフは従来CPUでのターボブーストの概念として紹介されたものですが、PL2よりも電力が増しているのはこうした動作のためです。

しかしこうしたターボブーストの動作は、AC駆動時はともかく、バッテリー駆動時では頻繁かつ急激に消費電力の増加と減少を繰り返すことから、バッテリーへの負担が増加し、バッテリー駆動時間や充放電回数への影響という点からは好ましくない状態になる、というデメリットがありました。



そこでBroadwellではターボブースト動作を規定するファームウェアなどを改良し、PL3という上限段階を新しく設けています。

これは「バッテリー・プロテクション」と呼ばれ、この段階に達すると一定時間はPL2レベルに動作を抑え、急激な電力増加・減少(グラフの形状から「スパイク」と呼ばれます)の回数を減少。結果として「バッテリーに負荷を掛けない範囲でクロックを可能な限り上げる」動作が実現できる、というわけです。



さらに、PCH(シリアルATAコントローラやUSBコントローラが搭載された、いわゆるチップセット部)に関してもCPUが電力消費を監視し、規定された電力の上限に達した場合はスロットリング動作(一時休止を挟むことで、性能は落ちるものの消費電力が軽減できる状態)に移行する新機能を紹介。



Broadwellはこうした電力管理機能の強化により、ターボブーストの上限である最高性能状態から、無負荷時の最低消費電力状態までの「幅」がより広がったとまとめています。



さらに、CPUを含めたシステム(PC)全体の総合的な電力と温度制御に関しては、これまでは主にAtom搭載モデルなどで使われてきた総合制御技術、インテルDPTF(Dynamic Platform and Thermal Framework)が導入されていることを紹介。

続けてDPTFでは、CPUのみならずメモリチップや周辺機器までも消費電力と温度による動作制御がなされており、負荷が高まると(可能であれば)周囲の制御下にある部品の動作を緩めて動作を優先する「プラットフォーム・パワー・シェアリング」という考え方が導入されていると解説しました。
目新しいところでは、ワイヤレスLAN(WLAN)モジュールの温度や消費電力、バッテリー充電回路の充電速度(当然熱の状態に関係します)までも総合的な制御下に置かれるとのこと。

加えて、たとえば2-in-1タイプのPCなどでは、外装の表面温度を測定するスキン(表面)温度センサーを搭載することで、手持ち時に不快にならない点を優先した温度制御が可能になるなど、柔軟な温度管理が可能となる仕組みとなっている点もアピールしました。

また、既発表の製品ですが、現在日本で発売されている代表的な第五世代Core iシリーズ搭載PCも展示されています。

インテル技術説明会で展示された第五世代Core i搭載PC

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なお質疑応答では、これから登場する第五世代Core iシリーズの追加モデルや、続くアーキテクチャーであるSkylake(スカイレイク)のスケジュールに関してもヒントが出ました。

これによれば、今後の第五世代Core iとして、高性能ノートPC用の4コア版(通称Hシリーズ)とデスクトップ向けが夏以降に登場。またSkylakeは現状では以前発表した予定通り、つまり第一陣は今年後半リリースとなるとのこと。

ともすれば基本的な機能はHaswellと大きな違いはないとも言われるBroadwellアーキテクチャーですが、インテル製CPUとしてはかなりの省電力化が進んでいたHaswellに比べても大きく省電力化を図るべく、実は非常に複雑かつ他のデバイスを巻き込んだ、つまりCPUだけでは解決できない省電力化が図られていることが公開された、非常に面白い解説でした。
インテル、第五世代Core i (Broadwell)の新省電力技術を詳細解説。Haswellから30〜60%減

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