米国コロンビア大学の研究チームが、スマートフォンでHIV と梅毒の検査ができるアクセサリを開発しました。34ドルと安価ながら、ELISA (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay) 法を使った高精度の検査が可能です。
また同大いわく、HIV に加えて梅毒のトレポネーマ抗原検査および非トレポネーマ抗原検査ができる単体のデバイスは世界初。
検査手順は、まずアルコール消毒した指先に細い針を刺して専用ケースに採血します。次いで採血ケースを検査用マイクロ流体チップカートリッジに挿してドングルへセット。最後にスマートフォンの専用アプリを起動してスタートボタンを押すと、15分ほどで検査結果が表示されます。
ドングルの性能は、専用施設でのHIV ELISA 検査や梅毒の RPR (Rapid Plasma Reagin) 検査をゴールドスタンダードして感度が92~100%、特定率が79~100% と、治療方針の検討に使えるだけの高い精度を備えるとしています。
またあらゆるスマートフォンやタブレットに対応するために、ドングルへの電力供給とデータ転送にイヤフォン端子を使うほか、電力供給の不安定な発展途上国でも使えるよう、イヤフォン端子からのわずかな電力で動かすための工夫も凝らされています。
その工夫のひとつがドングルのスタートボタン。ドングル内で試薬を流す管はあらかじめ負圧に保たれており、スタートボタンを押すことで気圧が変わり試薬が吸われて移動するという機械式の「ワンプッシュ・バキューム」になっています。
この仕組みは電気を使わないことに加えて、操作が簡単かつ丈夫でメンテナンス不要といった途上国での使用に適した特徴も備えます。
チームを率いるSamuel K. Sia 准教授は、将来的にこのドングルが普及することで梅毒による死者を10倍以上減らせるとともに、高い検知力によって偽陰性のHIV 感染者を発見し、拡散を防ぐことでHIV の撲滅も可能になると述べています。
ドングルは初テストをルワンダの母子感染予防施設で実施済み。今後はより大規模なテストを成功させることで、WHO の関心を引き採用されることを目指します。