ジュンと真紅のハッピーバレンタイン
- § 主な登場人物紹介
- 真紅
ローゼンメイデン第5ドールにしてアリスゲームの覇者。焼き土下座を53秒間やり遂げる根性の持ち主。
雛苺
食う・寝る・遊ぶの3つしか考えられない第6ドール。1時間経つとそれまでの記憶の半分を忘れる。
翠星石
週に1日ぐらいしか働かない第3ドール。イタズラが大好きで、くっつき虫を四方八方に投げつける。
蒼星石
翠星石の双子の妹で第4ドール。薔薇屋敷に出戻って悠々自適の生活を結菱一葉と送っている。
金糸雀
影の薄い第2ドール。ガリガリ君を2秒で完食できる。
水銀燈
逆十字を捺された最凶の第1ドール。しかし年始のオミクジでは中吉をひいた。
雪華綺晶
巻かなかった世界の大ジュンの部屋に住みつく第7ドール。ガリガリ君を0.5秒で完食できる。
薔薇水晶
バレンタイン商戦で忙しいEnjuDollでてんてこまいな看板娘。人形はさっぱり売れない。
桜田ジュン
真紅達のマスター。真紅から感謝の正拳突き一万回を毎日その身に受けている。
- § 桜田家の台所
- 翠星石「バッレンタイン~♪ もうじっきバッレンタイン~♪ チョコをたくさん作るですぅ~♪」
雛苺「チョッコレイト~♪ チョッコレイト~♪ チョコを作って食べちゃうの~♪」
翠星石「こぉら、チビ苺。食べるのもいいですが、ちゃんとチビ人間に贈る分も残しとけですよ」
のり「あらあら、ジュン君にあげるために頑張ってるのね翠星石ちゃんにヒナちゃん!」
翠星石「ば、馬鹿言ってんじゃねーです! これはあくまで翠星石が食べるために作っているのです!
チビ人間のは毒見用ですよ! 毒見!」
雛苺「だったらヒナが毒見もするの! それなら問題ないのよね翠星石!」
翠星石「いや、それはその…っ!」
のり「うふふふ」
真紅「……」のそのそ
翠星石「おっ、どうしたですか? 真紅? のそのそと今頃登場して?」
雛苺「真紅も一緒にチョコを作りたいの?」
真紅「幾度にもわたるノベルティの欠片すらないバレンタインネタ、欠如したパイオニアマインド、時には起こせよムーヴメント」
のり「な、何を急に言いだすの真紅ちゃん!?」
雛苺「意味が分からないのよ」
翠星石「まぁた非チョコ三原則(チョコを作らず、持たず、持ち込ませず)でも掲げて暴れる気ですか?」
真紅「いえ、そうではないわ。もう賛成も反対も無い。ただ…飽きた」
翠星石「飽きた?」
真紅「ネコも杓子もチョコを作ろうだのの、食べようだのの昨今、もうチョコレートには飽きたの。
バレンタインチョコなんて本当もう飽きたわ。チョコとか私が一番最初に飽きたわ」
翠星石「だったら食べなきゃいいじゃないですか。翠星石は自分が食べたいからチョコを作るだけですぅ」
のり「確かに、贈るチョコよりも自分チョコってのが現代の主流だと聞いたことがあるような無いような…」
真紅「それでも敢えて言うわ。バレンタインのチョコだなんてクソよ」
翠星石「クソておめぇ…。蒼星石ですら、この日のためにカカオの栽培から始めていたんですよ」
真紅「ならば蒼星石もクソだわ。いいえ、クソ製造機よ。クソを産む機械よ」
雛苺「し、真紅…! その言い方はちょっとひどすぎるの」
真紅「バレンタインは恋人間で贈り物をする風習がある日だった。それがいつの間にかチョコと一緒に
告白しようという日になって、今ではただ単にチョコを食べる日。これがクソでなくて何?」
翠星石「真紅の言うことが分からないでもないですが、そこまで声色を荒げるほどのことでも…」
真紅「私、真紅はここに宣言する」
雛苺「うゅ!?」
のり「宣言?」
翠星石「唐突に何を…?」
真紅「バレンタインの意義をチョコで塗りつぶした現代社会の目を覚まさせるべく、チョコを駆逐する!」
雛苺「くちく…!? ヒナ、聞いたことあるの! ○○を○○して○○するような事なの!」
翠星石「それは鬼畜です、チビ苺。ある意味、真紅は鬼畜ですが」
のり「で、でもチョコを駆逐するだなんて、どうやって?」
真紅「チョコに変わって、バレンタインを代表する物品をプロデュースするのよ」
翠星石「なんと!?」
雛苺「本気なの? 真紅」
真紅「ええ」
のり「けど、一体何をチョコの変わりに…」
真紅「ニボシよ」
翠星石「ニボシぃ~? 何でニボシ!?」
のり「あっ! そう言えば聞いたことがあるかも! 2月14日はニボシの日でもあるって」
真紅「その通りよ。既にニボシ協会もムーヴメントを起こそうとしているわ」
翠星石「いやいやいやいやいや! ニボシで愛の告白だなんてイメージ的にチグハグですぅ」
真紅「だまらっしゃい! チョコレートで愛の告白というイメージも当初はチグハグだったはずよ!
チョコにLOVEとでも書いておかなきゃ、恋愛要素ゼロでしょ! ただのスイーツでしょ!」
のり「そ、そう言われれば」
翠星石「でも、それって真紅がニボシ協会の商業戦略に乗っかってるだけですよね」
雛苺「うぃ! 担ぐ神輿がお菓子会社からニボシ協会に変わっただけなの」
のり「あらぁ、難しい言い回し知ってるのねヒナちゃん」
真紅「む…、流石ね雛苺。鋭い指摘だわ」
雛苺「わぁい、ほめられちゃったの」
真紅「この真紅、他所の商戦にそのまま乗っかる趣味は無い。ちゃんとオリジナリティを考えているわ」
雛苺「おりじなりてぃ?」
真紅「ずばり、愛の告白にふさわしいニボシとして、ドッキング煮干をプッシュする」
翠星石「ドッキング煮干…? なんですか、それは?」
のり「ひょっとして、ニボシの中に混ざっている、二匹の口と口が繋がっている、こんなニボシのこと?(↓)」
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雛苺「ヒナもそれ見たことあるー!」
翠星石「ほう、そんなのがあったですか」
真紅「ふふふ、その通り。そして私はただの煮干を人工的にドッキング煮干に加工する技術を持っている」
翠星石「な、なんですとー!」
真紅「そして、これを愛の口づけの象徴『キッシング煮干』と銘打って売り出す。どうよ?」
翠星石「そ、そこはかとなくエコノミックメイデンの香りがしてきたです…!」
雛苺「お金もうけの予感なのー!」
真紅「チョコの甘さや重さに倦怠感を抱き始めた消費者のハートをこれでがっちりキャッチだわ」
のり「な、なんだか真紅ちゃんのわりには普通に成功しそうで怖くなってきたわ」
真紅「そうでしょ。そうでしょ。大体、日本は島国よ、お魚天国よ。アフリカだかガーナだかのカカオよりもサカナに目を向けるべき」
翠星石「むむむ…、こりゃもうチョコ作ってる場合じゃねーです!」
雛苺「真紅! ヒナにも煮干をドッキング煮干にする技術を教えてなの!」
真紅「私のは最早ドッキング煮干ではない。キッシング煮干って言ったでしょ」
雛苺「じゃあ、そのキッシング煮干を教えてなのよ!」
翠星石「す、翠星石にも教えてくれですぅ!」
のり「ヒナちゃん!? 翠星石ちゃん!?」
真紅「あなた達ならそう言ってくれると思っていたわ。ついてらっしゃい!」
雛苺「うぃ!」
翠星石「おぃっす!」
のり「ちょ、ちょっとみんな!? どこへ行くの!? チョコ、湯煎にかけたままよ~っ」
翠星石「後始末はのりに任せたです!」
雛苺「煮干がヒナ達を待ってるの~!」
真紅「さあ、こっちよ二人とも! 早く来なさい」ダバダバ
- § 槐の店(EnjuDoll)のアトリエ
- 槐「ふうふう…」
薔薇水晶「大丈夫ですか、お父様?」
槐「大丈夫だとも。しかし結構、疲れる作業だね」
薔薇水晶「しかし、このキッシング煮干はきっと売れますよ」
槐「真紅の持ち込み企画だったから、かなり危険視していたが論理は通っていた。
薔薇水晶の言うとおり、これは売れる。もしかしたら本当に一大ムーヴメントに…」
真紅「頑張っているようね二人とも」ガチャッ
薔薇水晶「真紅…」
真紅「人手を二人ほど連れてきたわ」
翠星石「こ、ここで煮干をくっつける作業をしていたのですか」
雛苺「サカナ臭いの~」
真紅「路上で私が食品を売るのは色々と問題があるからね。
槐にアイデア提供して、キッシング煮干が売れたら、そのマージンを貰うのよ」
薔薇水晶「雛苺と翠星石が手伝ってくれるのですか」
真紅「ええ、私もこれから手伝う」
雛苺「それで、どうやってキッシング煮干を作ってるのよ?」
薔薇水晶「簡単です。潰したご飯粒で煮干の口と口をくっつけてるだけです」
槐「ご飯粒が乾けば、結構な引っ張り強度にも耐えるキッシング煮干の完成だ」
翠星石「ご…ご飯粒でですか」
真紅「ご飯と煮干は相性も良いし、最適でしょ?」
翠星石「うーむ、今日の真紅は何から何まで論理的です! これがアリスの才覚ですか!」
真紅「ふっ…、アリスとは世に新たな流れを作る者。この程度おちゃのこさいさいよ」
雛苺「すごいのー! かっこいいの真紅ー!」
翠星石「その気風で、儲かったら翠星石達にもバイト代はずんでくれですぅ!」
槐「だったら口じゃなくて、手を動かしてね」
薔薇水晶「翠星石達の報酬は出来高制ですよ」
翠星石「わ、分かってるですってば」
- § アトリエのドアの外側
- 金糸雀「あわわわわわ…、久しぶりに隠密乙女をやっていたら、とんでもない情報ゲットしてしまったかしら」ガクブル
ピチカート「…っ」
金糸雀「この情報は一体どうすれば…? 誰に持って行くのが正解かしら」
ピチカート「?」
金糸雀「え? 素直に真紅達に協力して小銭を稼いだら? 馬鹿言っちゃいけないかしらピチカート。
あの真紅がこれ以上の人員に秘密を共有したりするはずないかしら。分け前が減るもの」
ピチカート「…ッ」
金糸雀「そう、だからカナも取りあえずはここから撤退しなくちゃ。真紅に見つかったら大変よ」サササッ
- § 小一時間後・nのフィールド・ローゼンの箱庭
- 水銀燈「…で、私のところへ来たと」
金糸雀「そーなのよ! 一大事でしょ! 真紅が大金を得ようとしているのかしら!」
めぐ「頑張ってるわねぇ真紅ちゃん」
金糸雀「いいの水銀燈!? このままじゃ金銭面でも大きく真紅に水をあけられるかしら!」
水銀燈「金銭面で『も』って、どういうことよ? 『も』て? 私はあらゆる面で真紅に遅れをとっているとは思ってないわよぉ…!?」
金糸雀「ふわわわわわ…っ、今のは失言だったかしら水銀燈お姉ちゃん…!」
水銀燈「とは言え、真紅に調子こかれるのは私としても面白くない」
めぐ「じゃあ、私達もキッシング煮干を作って売って対抗する?」
水銀燈「真紅の真似事をするのは、もっと面白くない」
金糸雀「そう来ると思ってカナにも考えがあるわ
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- イイハナシカナー?
- :-:2015/02/12(木) 22:59:24
- 今回は蒼星石の方が影薄かったな