【艦これ】電「暁お姉ちゃんが頭を打って変になっちゃったのです」
〈司令室〉
電「し、司令官さん! た、たたた大変なのです!」 バターン!
提督「ん? どうした電。そんなに慌てるなんて珍しいな」
電「じ、実は……あ、暁お姉ちゃんが……」
提督「!? ……暁の身に何かあったのか!?」
電「あ、あの……ですね……」
提督「ああ、焦らなくていい。まずは落ち着くことが大事だ。……暁がどうしたんだ?」
電「……暁お姉ちゃんが……」
暁「司令官、ごきげんよう。本日はお日柄もよく、絶好の演習日和ですね」 ニコニコ
電「暁お姉ちゃんが頭を打って変になっちゃったのですー!!」
提督「……本当に暁なのか……?」
暁「もう、だから何度も暁だって言ってるじゃないですか。司令官も皆もひどいわ……心配されてるって伝わってきて、ちょっと嬉しくもあったりするけどね。ふふふ」
雷「……やっぱり一回入渠してきた方がいいよ……暁姉絶対どっか怪我してるって。……多分頭かなんかを」
響「……私もそう思う。いつもの暁と違いすぎて、正直ちょっと気持ち悪い」
暁「さすがにそこまで言われると傷ついちゃうわ! もう……ひどいと思いませんか? ねぇ、司令官?」
提督「…………」 ナデナデ
暁「し、司令官!? も、もう……あまり頭をなでなでしないでください……みんなの前だと……お恥ずかしいです。私はもう子供じゃないん、ですから///」
提督「今すぐ入渠してくるんだ!」
なんとか説得し、暁は渋々入渠しに行った。
提督「……で、いったい何があったんだ? ……いったい何があったんだ!?」
響「大事な事なので二回言ったね」
電「……本当についさっきのことなのです」
雷「いつも通りの朝だったわ……」
――――――――――――――――――――――――
〈第六駆逐艦の部屋〉
暁「わ、わあああああああああああ!!」
響「朝から騒がしいよ、暁」
電「おはようなのです、暁お姉ちゃん」
雷「おはよ暁姉。早くしないと遅刻しちゃうわよ!」
暁「はい、おはようなのです。……って違うわよ! なんで起こしてくれないのよ! あなた達もう着替え終わってるのに暁はパジャマじゃない! ち、遅刻しちゃうー!!」
雷「何度も起こしたのになかなか起きなかったのは暁姉じゃない。そんなんじゃダメよ! ほら、急げば間に合うから早く着替える着替えるー」
暁「わ、わーーーーん!」
響「ここまでテンプレ、だね」
電「いつものことなのです」
〈廊下〉
暁「はぁはぁはぁ……な、なんとか間に合いそう……」 タッタッタッタ
響「ギリギリではあるよ。急ごう」 タッタッタッタ
雷「もう、遠征任務の前から体力使ってるじゃない」 タッタッタッタ
電「あはは……準備運動と思うしかないのです」 タッタッタッタ
暁「うううううう!! みんなごめん! 一人前のレディーとしたことが……って、わわっ!」 ツルン
ゴッチーン!!
響「暁!?」
雷「暁姉!?」
電「暁お姉ちゃん!?」
暁「…………」
雷「だ、大丈夫!? かなり派手に滑って転んだけど!?」
響「思いっきり頭を打ったね。とても痛そうだ。怪我は無いかい?」
電「わわわ……大丈夫なのですか!?」
暁「…………ええ、ちょっと頭痛いけど、全然大丈夫よ。ごめんなさい、心配かけたわね。……けど痛いというより、どっちかというと恥ずかしかったわね……あなた達身内以外にこんな転び方を見られたら、穴に埋まりたい気分になっちゃってたかも。ふふふ」 ニコニコ
響「」
雷「」
電「」
――――――――――――――――――――――――
電「ってことがあったのです」
提督「確かに変だな……いつもだったら絶対『……うう、いったーい! な、なんなのよぉ……ぐすん』ってなるもんな」
響(司令官、男の人が暁の声真似をするのはさすがにちょっとどうかと思うよ……)
雷「ぜったい、ぜぇったいにどこか変よ! あんな暁姉、今まで見たことないもの……あんなのいつものちんちくりんな暁姉じゃないわ!」
提督(妹からちんちくりん扱いされる姉って……)
暁「ふぅー、入渠完了しましたよー。良いお湯だったわ」 キー、パタン
提督「はや!」
暁「だから言ったじゃないですか、どこも異常はないって。まぁでも、朝のお風呂もなかなか新鮮で、気持ちよかったです。優雅なひと時でした」
提督「もう一回入渠してくるんだ! 俺の“知ってる”暁が!」
響「こんなにも」
雷「レディーっぽい!」
電「わけがない! なのです」
暁「またですか!?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
提督「じゃあ暁。頭を思い切り打ったんだ。どっか記憶が飛んで無いかの確認をしよう。自己紹介をしてくれ」
暁「ええ、構いませんよ。私は特III型駆逐艦1番艦の暁でございます。吹雪型をベースに航行性能や航続距離を向上させました。特型駆逐艦の最終完成形で、ちゃんと淑女として活躍しましたわ。……嘘偽りはございませんよ?」
雷「うわあああああああん! こんなの暁姉じゃないーーーーー!!」
電「お、お姉ちゃん! 泣いてはダメなのです! た、耐えるのです……う、うぅ……!」
響「……Мне грустно(私は悲しい)」
提督「ごめん! ごめん暁! ちゃんと廊下にワックスがけしておけば……滑りにくかっただろうに…………くっ!」
暁「いや、みんなして泣かないでくださいよ!! なんで泣いてるんですか!」
提督「暁がこんなに変になってしまったんだぞ!? 泣きたくもなるさ……」
暁「私いまそんなに変です!? と、とりあえず泣き止んでください!」
提督「……あぁ、すまなかった。じゃあ次の質問だ……――」
~しばらく時が経って~
提督「……記憶には何の問題もなさそうだな。本当に君は暁なんだな」
暁「だから言ってるじゃないですか! もう……みんなひどいわ本当に……」 プンスカ
雷「だって信じられないんだもん……」
電「右に同じなのです」
響「左に同じ」
暁「正真正銘、私はあなた達のお姉さん、暁よ」
雷「暁姉はそんな『正真正銘』なんて難しい言葉知らないわよ!」
響(いや……その言い分はさすがに……)
提督「……まぁ暁もこんな状態だし、今日の遠征任務は中止だ。君たちはいつも通り勉学や演習に勤しんでくれ。……暁は」
暁「はい、なんでしょう?」
提督「本日の秘書官だ。私の補佐をしてくれ」
暁「了解しました! 微力を尽くして司令官をサポートしますね!」
提督「あ、あぁ」
提督(や、やりづれぇ……まぁこうなってしまったんだから仕方がない。今日一日は様子を見よう。そのためには一番身近で様子を見れる秘書官にするべきだろう)
提督「他の三人も分かったな?」
響「了解したよ」
電「了解なのです」
雷「……了解したわ」
提督「他の艦娘達にも状況は伝えておく。それでは、解散」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
暁「ふんふふんふふーん♪」 テキパキテキパキ
提督(テキパキと事務作業をこなしてる……これがあの暁だなんて信じられんな……)
暁「ん? どうかしましたか? 司令官」
提督「!? い、いや、なんでもない。今日はいつもより事務作業を頑張っているなぁと思ってな」
暁「あぁ、そういうことですか。ふふ、いつもお忙しい司令官のためっと思いながらだと、自然と頑張れてしまうんですよ」 ニッコリ
提督「」
暁「司令官、次は何をすればよろしいでしょうか?」
提督「あ、あぁ……次は……」
提督(作業効率が良すぎてもう今日の事務作業がほとんど終わってきてしまった……どうするか……)
提督「ちょっと待っていてくれ。今考える」
暁「はい、わかりました。お待ちしております」
提督(うーん、どうするか……――ハッ!! そうだ。このままちょっと放置してみよう。いつもだったらそわそわし始めて『そわそわ、そわそわ……何時間でも待っていられるんだから!』とか言って、本当は暇で我慢することがきついだろうに見栄を張るはずだ……今の暁だったらどうなるか少し試してみよう……すまんな暁よ)
暁「…………」
提督(考えるふり……考えるふりだ……今こそ仮病で築き上げた俺の演技力の見せ所だ!)
暁「……んー」 ノビー
提督(身体を伸ばし始めた……ちょっと退屈になってきたか?)
暁「…………」 ジー
提督(……なぜだかじーっとこっちを見ている。……まさか、こちらの策がばれたか!?)
暁「!? …………///」 フイ
提督(目が合った瞬間目を逸らされた。しかも顔が赤い……よくわからん。本当に変になったな暁は……)
暁「…………んー……」ソワソワ
提督(!? そわそわし始めた!! やはり今の暁でも見栄を張るのか!? ……さぁ、どうなる!?)
暁「……司令官?」
提督「ん? なんだ暁」
暁「何時間でも……待っていられますから」 ニコ
提督「見栄を張っているように見えない!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
暁「では司令官は私がどういう反応するか試してたんですか!?」
提督「あぁ……どういう反応するか確かめたくてな」
暁「……ぷー、ひどいわ司令官。私、ずっと待ってたのに……」
提督「す、すまない。許してくれ。ちょっとした出来心だったんだ」
暁「……ふふ、豪華なランチを奢ってもいいんですよ?」
提督「……分かったよ。それで許してくれ。」
暁「はい!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
〈食堂〉
提督「明日の分の事務作業をやっていたら少し遅くなってしまったな。他に誰もいない」
暁「……司令官? どうして豪華なランチに旗が立っているんですか?」
提督「あ、すまない。いつもの癖で。……まぁほら、豪勢だろ?」
暁「「ほら、豪勢だろ?」じゃないですよ!……まぁ、エビフライもハンバーグも、スパゲッティも好きなんですけどね」 ニコニコ
提督(美味しそうに食べるなぁ……こういう所は案外いつも通りだな) ジー
暁「……? 司令官も食べますか? お・こ・さ・ま・ラ・ン・チ」 ニヤニヤ
提督「ちょっと嫌味を込めるのをやめなさい。別に欲しいわけじゃないさ」
暁「あらら、そうですか。……司令官にあーんしてあげたかったのに……」 ボソ
提督(……こんなことはいつもだったら絶対に言わないな)
コメント一覧
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- 2015年02月12日 16:04
- 一人称が名前から私に代わるって素晴らしいよね
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- 2015年02月12日 16:10
- 電って上の子達を名前で呼ぶだけで「〇〇お姉ちゃん」なんて呼ばないと思うが
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- 2015年02月12日 16:13
- いつ静の最終回と言ってもいいくらいすごい作品。
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- 2015年02月12日 16:47
- 電ちゃんは姉たちを「ちゃん」付けで呼ぶ。
だがそんな事はどうでもいいくらい良かった。
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- 2015年02月12日 17:05
- まぁお互いの呼び方に関してはゲームじゃ触れてないし、自由でいいんじゃね
駆逐艦内だとお姉ちゃん呼びは何か違和感あるけど
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- 2015年02月12日 17:08
- 本気でグッときちゃったじゃねーかwww
今まで読んだ艦これssの中では一番だな!!
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- 2015年02月12日 17:14
- そんなに転んでいるとお身体に触りますよ
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- 2015年02月12日 17:22
- これリアルタイムでずっと見てたわ
仕事なんてなかった
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- 2015年02月12日 17:34
- 解体して建造し直せばいいじゃない(ブラック提督
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- 2015年02月12日 17:48
- 1ページ目しか読んでないけど提督以下全員キチ○イにしか見えない
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- 2015年02月12日 18:20
- いいもの読ませてもらった
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- 2015年02月12日 18:46
- ガチで泣いた!乙!
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- 2015年02月12日 19:01
- ええ話やな…
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- 2015年02月12日 19:04
- 一発ネタかと思いきや良い話じゃないか!
泣いたわちくしょう!
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- 2015年02月12日 19:35
- やっぱり駆逐艦は最高だぜ!
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- 2015年02月12日 20:09
- ハラショー
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- 2015年02月12日 20:35
- タイトルでまたマジキチ系かと思ったらこれは良作
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- 2015年02月12日 21:03
- いいぞ~これ。
SSで何度も繰り返し読んでも面白いのはなかなかない。
暁自身の言い方の使い方が上手い。
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- 2015年02月12日 21:32
- うむ。良かった。
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- 2015年02月12日 21:41
- 姉妹への呼び方はゲームでは出てないからね仕方ないね
あ、皆とても可愛かったです
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- 2015年02月12日 22:38
- うーん…。途中まではすっごく良かったんだけど、淑女な暁が最後に挨拶しにいった相手が提督だったのは微妙かも。
個人的にはここは雷の元へ向かった方が良かったな。雷を慰めるのはレディーな暁の役目というのもありだけど、それにしてはあっさりと終わっちゃったし…。
雷の描写から暁たち姉妹の絆にもっと焦点を当てた流れになると勝手に予想してたから肩透かしを食らった気分。
変わってしまった暁に最も感情を揺さぶられてたのは雷なのに、雷視点では結局わけもわからないうちに戻っちゃっただけになってるじゃない。夢を見た話をする相手が雷とかならもっと良かったのに。
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- 2015年02月12日 22:42
- 「はいじゃないが」はやめろって、コメントはないのね。
如月が言ってるあたりがまた…
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- 2015年02月12日 22:47
- うん、良い話だった!!
…………で
電が頭を打ってプラズマになるSSはまだかな?
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- 2015年02月12日 22:59
- ほのぼの系になるのかな。
もう少し長くてもよかったかも
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- 2015年02月12日 23:05
- ※23
スイッチ鎮守府の電がおるやろ()