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長門「クエエエエエ」




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2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:04:40.58


キョン「おっす」ガチャッ

長門「クエエエエエエ」

キョン「!?」

長門「クエエエエエエ、クエエエエエエエエエ」

キョン「……」

長門「……」

キョン「ど、どうしたんだ?長門」

長門「クエエエエエエ」

キョン「……」


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:05:32.47


俺と長門は、まだ二人しか来ていない部室の中で
シュールな沈黙を噛みしめていた。

長門は俺の目をじっと見つめ続け、時折思い出したように奇声を上げる。


キョン「……一体どうなってんだ」

長門「クエッ、クエエエエッ」

キョン「長門、お前大丈夫なのか?正気なのか?」

長門「クエエエエエエ」

キョン「……」

長門「……」


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:07:51.03


長門は神妙な顔をして俺を見つめる。
その目つきは、人間のそれではなく、動物のように見えた。

キョン「……また何かおかしな事が起きたのか?」

長門「ケーッ!クエッ、グエッ」

キョン「わからん……」

もしかしたら、長門は俺に何かを伝えようとしているのかも知れない。
突然言葉が喋れなくなり、俺に助けを求めているのか?


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:10:33.29


キョン「そうだ!喋れないんだったら筆談とか、パソコンで文字を打って話せばいいじゃないか。そうだろ?長門」

長門「クエエエエエエエ」

キョン「…………」

長門「クエエエエッ、クエエエエエエエエエエエエ」

キョン「駄目だこりゃ」


どうやら長門は発する言葉がおかしくなっただけでなく、
頭の中身までおかしくなっているらしい。
俺は準縄ならざる事態に少し身震いした。


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:12:31.64


キョン「今度は一体何が起きたってんだ」

長門「……」


ガチャッ


キョン「!」

ドアが小気味よい音を立て、背の高い男が入って来た。
俺は古泉の登場を心底喜んだ。

キョン「古泉!長門が変なんだ」

古泉「ウホッ?」

キョン「……え?」


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:16:06.31


古泉「ウッホウッホホッホ」

キョン「……」

古泉「ホッホッホッホホホホ」

キョン「まさか……お前もか」

長門「クエエエエエエエ、クエエッ、クエエ」

古泉「ウッホッホッホホホホッホ」

長門「クエッ、クエッ、グエー」

古泉「ウォーホォー」

キョン「……」


13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:17:57.63


古臭い校舎の狭い部屋に、二人の鳴き声がせわしなく響いていた。
俺はその光景にリアリティを見出せなかった。
普段大人しく、冷静沈着である二人が、何故こんな風になってしまったのか?

キョン「……」

長門「クエエエエエッ」

古泉「ウッホホウッホウホホホホーイ」

キョン「SOS団内で最も頼りになる二人がこうなっちゃあ……どうしたもんかな」




15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:21:20.43


俺は途方に暮れた。
やがて、この鳴き声が煩わしく感じ、居たたまれない気持ちになった俺は、
部屋から出て廊下をあてもなく歩く事にした。

キョン(これからどうすりゃいいんだか)

キョン(……朝比奈さんやハルヒは大丈夫なのか?)

ふと残りのメンバーの事を思い出したと同時に、
俺は教室の喧騒がいつもと違う雰囲気を呈している事に気が付いた。

「ウキャキャキャキャー」

「くるっぽー、くるっぽー」

「ワン!ワンワンワンワンワン!」

「ミ”ャアアアアアアア」

キョン「……!?」


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:25:56.65


それは明らかに、高校生が掃除の時間に交わす他愛も無い会話の音ではなかった。
まるで動物園を歩いているかのような、獣達の叫声があちこちから聞こえていた。

キョン「……なんつーこった」

キョン「SOS団だけじゃなかったのか……」

谷口「グルルルル……」

キョン「うおっ!?」

谷口「……」

キョン「谷口かよ……いきなり後ろから変な声出すなよな」


19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:27:43.46


谷口「フーッ……フーッ……」

キョン「……言っても無駄か」

谷口「グルルルル……」

キョン「一体全体どうなっちまったんだよ」


何をしてよいか分からぬまま、俺は校舎を只歩きまわっていた。
途中ですれ違う人達は皆、ケダモノの声を発しながら悠々と歩く俺を不思議そうに見つめていた。


22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:31:51.52


「パオーン」

キョン「……」

「チュンチュン……チュンチュン……」

キョン「……」

「アオーン」

キョン「なんだか、慣れてくると変な気分になってくるな」

キョン「自分だけが世界で唯一まともな人間みたいだ」

キョン「……いや、実際の所そうなったのかもしれん」


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:36:58.21


みくる「……」

キョン「あっ!朝比奈さん!」

廊下の隅で縮こまっている可愛らしいシルエットは、どう見ても朝比奈さんだ。
毎日彼女を熱心に見てきた俺に間違いは無い。

キョン「朝比奈さんっ!大丈夫ですか?」

みくる「……」

キョン「朝比奈さん?」

みくる「フゴッ、ブゴゴ」

キョン「……」

みくる「ブヒッ、フゴッ、ブゴォッ」

キョン「……もっと可愛いのを期待してた」


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:40:31.97


豚かよww



25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:41:16.77


朝比奈さんは愛らしいその顔を歪ませながら
俺に向けてブタ声を一心に放っていた。

キョン「どうしろってんだ」

みくる「ブゴォ、フゴォッ」

キョン「……とりあえず部室に連れていくか」

朝比奈さんの手を引きながら、俺は部室へ戻った。
ドアを開けると、案の定中にいた二人の奇声が耳に刺さった。


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:46:37.68


長門「クエエエエエエッ!クエエエエエエエエッ!」

古泉「ウォーホォー!ホホホッホホッホッホ」

みくる「ブゴォー!フゴッ、フゴゴゴ」

キョン「……」

最早その部屋は動物達の檻に等しかった。
ひとまずこの中に入れておけば、外に出て何か良からぬ事をしでかしたりはしないだろう。




28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:54:20.91





長門「クエエエエエエエエエエエエエ」バタバタ

古泉「ウホオオオオッウオオオ」ドスンドスン

みくる「ブヒィッ!フゴァァァァ」ガタッガタガタ

キョン「……」

キョン「そうだ、ハルヒはどうなった?」

俺は目の前の異常に気を取られ過ぎていたのか、
ハルヒの安否をすっかり見落としていた。

あいつもこうなっているのか?
俺は三匹を部室に残し、ハルヒを探しに再び出て行った。


29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 00:58:43.81


キョン「どこにいるんだ……?」

国木田「コケーッ、コッコッコッコッコ」

キョン「教室じゃないのか……?」

鶴屋「コーン、コーン」

キョン「何処行きやがった……」

朝倉「バウッ!バウバウバウッ!」

キョン「わっ!びっくりした」

喜緑「リーンリーン……」

キョン「虫の声とか口から出せるのかよ……?」

コンピ研部長「キュイキュイ!ブッキュキュキュキュ!」

キョン「もはや何だか分かんねえ……」


30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 01:05:01.88


俺がハルヒを見つけたのは屋上だった。
ハルヒはフェンスにもたれかかる様にして、眼下に広がる街を眺めていた。

キョン「……」

ハルヒ「……」

キョン「おい、お前は……正常なのか?」

ハルヒ「……あんたが何を普通って捉えてるかどうか知らないけど、私は今の私を正常だと思っているわ」

その言葉は少し冷たく、残酷な響きに聞こえたが、
返答が返ってきた事に俺は一抹の安堵を覚えた。


31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 01:09:32.06


キョン「お前……皆がおかしくなっちまったの、知ってるか?」

ハルヒ「知ってるわよ……そりゃ」

キョン「そうか……」

ハルヒ「あんた、どう思ってんの?この事について」

キョン「え?」

ハルヒ「どう思ってんのって聞いたの」

キョン「どうって……訳分かんねえよ」

ハルヒ「……」


32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 01:11:54.41


キョン「みんな動物みたいになって、俺はどうしたらいいんだ」

ハルヒ「……」

キョン「正常なのは俺たちだけじゃないか」

ハルヒ「……ふう」

ハルヒは離れて聞こえる位大きな溜息をついた。
冷たい視線が俺を刺すように投げかけられる。

キョン「……?」

ハルヒ「あんたのね、そういう所が嫌なのよ」

キョン「何がだ?」


34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 01:14:38.63


ハルヒ「あたしね、キョンの事好きよ」

キョン「なっ……」

ハルヒ「でもね、そういう『自分は正常だ』っていう考えがどうも鼻に付くの」

ハルヒ「あんた、普段から周りの人の事、内心見下してるでしょう?」

ハルヒ「態度で分かるわ。こいつらはみんな何も考えてないって感じの、嫌味ったらしい考え方が染み出してたわ」

キョン「……」

ハルヒ「それさえ無ければ、いいのにね」

キョン「いきなり何言い出すのか俺にはさっぱり分からんが」

キョン「俺は、俺たちは、正常だろ?」

キョン「だってこうして喋ってる、俺は動物じゃない」


35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 01:16:31.59


ハルヒ「……」

キョン「何も考えず、ギャーギャー騒いでるだけのあいつらとは違うんだ」

ハルヒ「……」

キョン「俺、何か間違った事言ってるか?」

ハルヒ「もうあんたのそんな考えにはうんざりだわ」

キョン「……!?」

吐き捨てるようにハルヒが言うと、その瞬間、
俺は全身の毛が湧き立つような感触を覚えた。




37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/29(火) 01:18:24.76


キョン「ウガッ!?ガッ」

ハルヒ「あんたも、ギャーギャー騒いでる動物の内の一匹に過ぎないのよ」

キョン「ガッ……グ、グゲッ」

言葉を出そうとしても、口から出るものはケダモノじみた呻き声だけだった。
ハルヒは悶える俺を見て、ハルヒはけたたましい声を上げた。

校舎全体から動物の鳴き声が聞こえてくる。

やがて俺は難しく考えるのをやめ、醜い雄叫びをあげるのに夢中になっていた。



<終>




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