温まった地球は冷やしてしまえ!というプランが進行中。学会は警戒
気候を人間が支配する。
そんな技術をご存じですか?ジオ・エンジニアリングと呼ばれるこの技術は気候変動の潮流を止める1つの方法論ともいえます。しかし、この神をも恐れぬ技術には異論が多く、未だ常軌を逸した考え方だとも言われています。
米国科学アカデミー(NAS)はこの技術に関する、長らく待たれていた2つの論文を今月発表しました。そこでは非常に厳しい言葉をジオ・エンジニアリングに対して投げかけています。論文内では「ジオ・エンジニアリング」という単語は使用されず、タイトルは「Climate Intervention(気候介入)」となっています。著者によれば、ジオ・エンジニアリングは未だ存在していない技術をあたかも存在するかのように示す言葉なので、イメージを変えていく必要があるとのことです。これは、科学的理解がまだ不完全で、行動に対する結果を正確に予測できる段階にはきていないことを表しているとも言えます。
論文では、この「地球ハッキング」のための2つの方法論について焦点を当てています。1つはアルベド(地球上で反射する太陽光の量)の操作で、もう1つが二酸化炭素の削減です。
まずはアルベドの操作についてです。論文中では、太陽光を反射する粒子を大気中に散布する方法が特に危険性が高いことを強調しています。(最悪韓仏合作のSF映画「スノーピアサー」のように氷河期になってしまう)。実際著者は、一般的に使われる「日射量の管理」という言葉を「アルベドの操作」という言葉に置き換えています。これはつまり、「管理」するほどの知識が人間にはないことを示しているのです。
「天候を変えてしまう程のスケールでアルベドを操作するのはとても恐ろしいことです。人類はさまざまな局面で、予知もコントロールもできない事態を招く可能性がある。」と論文内で述べられています。
共同執筆者のひとりはウェブマガジンのSlateでジオ・エンジニアリングについて「頭がいかれている」と言いたい放題書いて、1ページを飾っています。また、アルベドを操作しても大気中の二酸化炭素濃度が高すぎるという根本的な問題は解決されません。
そこで、もうひとつの二酸化炭素の削減という方法ですが、こちらはまだ現実的です。実のところ、すでに二酸化炭素を削減する方法はいくつも存在しているのです。ただ時間がかかったり(植樹のように)、お金がかかるもの(温室効果ガスを大気中から取り除く浄化装置)ばかりなのです。研究者たちは、二酸化炭素を削減するためにもっといい方法を編み出すと同時に、その実現を支える政治的指導力のある人を確保する必要がありそうです。
新事実を語る論文とは違いますが、NASという米国科学界の権威が出した論文である以上、今後の研究課題を制定する際には大きな影響をおよぼすことになります。二酸化炭素削減とアルベドに関する論文を2つに分けたことで、ジオ・エンジニアリングのうちの一方をNASが擁護している、とみなされるかもしれません。 まだまだ人が扱える技術なんて、ほんの少しなのかもしれませんね。
Top image by Shebeko/shutterstock
source: NAS Reports Summary、Report: Carbon Dioxide Removal and Reliable Sequestration Report、Report: Reflecting Sunlight to Cool Earth
Sarah Zhang - Gizmodo US[原文]
(小山和之)
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