海洋プラゴミは従来予想の20~200倍
海洋プラスチックゴミは大きな問題ですが、それがどれほど大きな問題かは把握できていませんでした。新たにサイエンス誌英語版に発表された研究報告による見積もりでは、海洋プラゴミは一年間に800万トンにもなるよう。専門家によるこれまでの予想の20~200倍もの数値です(トップ画像は2010年に海に入り得たプラゴミを示したもの。色が濃いと量が多い)。
どれだけのプラスチックが海に流れているかの推定標準偏差は、これまでよく「海に流れるのは全プラスチックの0.1%」とされてきました。でも、その数値は1970年台に書かれた米国科学アカデミーの報告を元にしたもの。その頃とは大きく時代も変わり、その数値は時代遅れとなっています。
今回のサイエンス誌の研究報告は、概算ではあるものの最新のデータを元にしたものです。でもどのようにして「800万トン」という数値を出したのでしょうか?
研究者たちは世界銀行のデータを用い、海に面した192カ国の沿岸部(内陸まで50kmの地帯)でどれだけプラゴミが出るか計算しました。そして各国のゴミがきちんと処理されないで排出される割合を、経済状況や地域を元にした統計的モデルを作って見積もります(統計的モデルには廃棄物管理データが存在する80カ国のデータが外挿されている)。最後に皆のポイ捨てレートとして2%が織り込んであります。
一番重要な数値はもちろん世界でどれだけのゴミが出ているかですが、国別の数値も出ています。経済成長速度の早い新興国が上位にあるのは驚くに値しませんよね。
でも奇妙ことも。昨年科学者たちは海面に漂っているはずのプラゴミを探して世界を回る船旅をしていましたが、そこで見つかったのは想定のたった1%のゴミのみでした。99%のプラゴミは行方不明というわけなんですが、この「99%」というのも前述の1970年代の推測を元にした値。なので、今回の新しい推定で考えると行方不明ゴミは「99.9%」に近くなるというわけなんです。一体プラゴミはどこに行ったんでしょう?
今回の発表により、どうやら大部分のプラゴミは海底に沈んでいるのか、海面よりも下のどこかを漂っているであろうことがわかったのです。まるで、「太平洋ゴミベルト」のように(そこでは粒子状になったプラスチックが渦巻いています)。
私達が海洋プラスチックゴミ問題の底深さが理解できるようになるには、まだまだこれからなのかもしれません。
source: Science
Sarah Zhang - Gizmodo US[原文]
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