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妻「7ヶ月目に来た戦いの日」|エレファント速報:SSまとめブログ

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妻「7ヶ月目に来た戦いの日」

1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:03:43 ID:G3EwmG/w

山無し谷無しオチ無しの日記のようなもの。



一応
妻「結婚して1年が過ぎたとある土曜日」

女「恋人同士になって5回目のクリスマス」

女「大学生活2度目の誕生日」

と繋がってます



2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:04:42 ID:G3EwmG/w


目覚ましに頼ること無く目が覚めた。

隣に振動が伝わらないよう、ゆっくりと枕元の携帯を見ると、サブディスプレイに6:03の表示。

妻「……」

私の隣には、うつ伏せで幸せそうに眠る夫くん。枕に半分うずまった寝顔が、狂おしいほどに可愛い。

妻「……おはようございます」

夫くんには聞こえないように、朝の挨拶。

ゆっくりゆっくり慎重に、狩りの最中の肉食獣のように、布団の中で夫くんに忍び寄る。

最近、ちょっと自分のお腹が重く感じるようになってきた。

お腹と夫くんに負担をかけない範囲で、肩に鼻の先を精一杯近づけて深呼吸をする。

妻「……すー……」

布団というのは、空気をとてもよく保持してくれる。つまり、夫くんの匂いもたっぷり蓄えてくれるのだ。

なんというか、私の語彙力が欠乏しているせいで上手く書き表せないけども……良い。

良い匂いだ。



3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:05:59 ID:G3EwmG/w


7ヶ月目に入り、お腹の大きくなってきた私の身体を気遣って、最近は休日の家事を夫くんがしてくれるようになった。

申し訳なくて、まだ大丈夫だから私にやらせてと言ったのだけども、却下されてしまった。

しかし、今日は、どうしてもやりたいことがあるのだ。どうしても。

……それはそれとして、もうひと呼吸。

夫くんの匂いを思いっ切り堪能できる機会というのは、実はそんなに多くはない。

限られたチャンスを逃さず、胸いっぱいに夫くんの匂いを吸い込む。

……良い匂いだ。本当に。

もうひと呼吸。

……夫くんの目が覚めるまで、こうしていよう。



4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:06:57 ID:G3EwmG/w


6時半。夫くんの携帯電話が震え出した。

匂いでとろとろに蕩けていた私の脳みそに喝が入る。

夫「んぐ……」

もぞり、と身じろぎして、枕に顔を半分取り込まれたまま、無事な方の目を開ける夫くん。

肩の辺りで匂いの虜になっていた私と目が合う。

夫「……ぅはよう」

妻「お、はよ、ざいます」

夫くんは眠気と低血圧で、私は芳香と高心拍数で、ろれつが回っていない。

ヴー、ヴーと自己主張を続ける携帯に手を伸ばし、アラームを切った。



5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:08:04 ID:G3EwmG/w


なんとも眠たげな、目じりの下がった半開きの目。

ちょっぴり髭が伸びている。あそこに頬ずりしたい。できないけども。

夫くんは大きなあくびをして、私の頭に柔らかく触れてくれた。

頭を撫でるというか、頭を抱きしめるというか。

表現が難しい仕草だったけども、妙に幸せだ。

目を閉じて、優しい手のひらの感触を貪りながら、思わずにやけてしまう。

妻「んふふ……」

夫「起きられる?」

妻「まだまだ全然動けますよっ」

夫「ん。でも無理するな、よ、ふぁぁ」

妻「…く、ぁぁ~……」

夫くんの言葉の途中で暴発したあくびが、私にも感染してしまった。



6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:09:13 ID:G3EwmG/w


二人で一緒に布団から脱出する。

途端に、ひんやりとした部屋の空気に襲われた。

今の私は夫くんの匂いを堪能しすぎて相当にのぼせているので、全身がきゅっと冷やされて、ちょっと気持ち良い。

最近は少しずつ暖かくなってきたとはいえ、朝と夜はまだまだ気温が低い。

しかし、私の魂は真っ赤に燃えている。

いかに夫くんが私の身体を気遣ってくれているとしても、今日はどうしてもやりたいことがあるのだ。

今日は2月14日、土曜日。戦いの日。

お菓子業界の陰謀なのだとしても、大義名分を頂けるのであれば私は一向に構わん。

私という人間は、常に夫くんといちゃつくきっかけを求めている。



7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:11:10 ID:G3EwmG/w


私がバレンタインデーという行事を知ったのは、小学2年生の時だった。

私の初恋の相手であり、現在進行形で最愛の相手でもある夫くんは、一つ年上だ。

その日、夫くんが同じクラスの女の子からチョコレートを貰ったことを知った。

併せて、その理由も。

何で私にそんな素敵な行事を教えてくれなかったんだ!!と母に八つ当たりしてしまった記憶がある。

私が母にお菓子作りを習い始めたのはその直後だった。

幼い私の嫉妬心と来たら、思い出すと赤面せずにはいられないほどに分かりやすく、

我を忘れて暴れたくなるほどに素直だった。

我ながらとんだマセガキだったと思う。

そして向こう見ずで無鉄砲でもあった。

初めてチョコを贈った小学3年生の時、私は馬鹿正直に、朝のHRが始まる前の夫くんの教室に渡しに行ってしまったのだ。

違う学年の男の子に学校でチョコを贈ったという事で、同級生にも散々散々からかわれたものだ。

きっと、夫くんもからかわれただろうということは想像に難くない。



8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:12:53 ID:G3EwmG/w


ちなみに翌年からは学習し、夫くんの家に直接渡しに行くようになった。

生まれた年が違うのは、もうどうしようもないことだ。

でも学年が違うからこそ、夫くんの同級生の誰よりも早く渡したい。

夫くんに一番最初にチョコを渡したのは自分だ、という事実が欲しかったのだ。

我ながら、みみっちい優越感と嫉妬心だと思う。

けども、その幼稚な嫉妬心のおかげで私はお菓子作りが好きになった。

その翌年以降、毎年欠かさず夫くんにチョコレートを贈り続けることができ、

夫くんの「ありがとう」と笑顔を堪能できた。

悪いことばかりではない、と思う。



9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:16:34 ID:G3EwmG/w


冷たい水で顔を洗って歯を磨き、のぼせた脳みそに喝を入れる。

化粧台の前で髪に櫛を通して後ろで結び、軽くメイクをする。

首を振って、他の角度からの見え方を鏡で確認する。


私は幸運にも夫くんと夫婦になることができた。

でもそれは、本当に本当に、幸運としか言いようがないような出来事なのだ。

例えばの話だけども、私と夫くんがご近所さんではなかったら、私が夫くんの幼馴染じゃなかったら、

きっと夫くんと私の接点はほとんど無かったと思う。

私が一方的に憧れて、終わりだったはずだ。

まずスタートラインで、私は他の女の人に比べてとんでもない幸運に恵まれていた。

圧倒的なアドバンテージを持っていたのだ。

そのアドバンテージを活かすことができて本当に良かった。



10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:18:20 ID:G3EwmG/w


これは言うなれば、容姿端麗頭脳明晰スポーツ万能の勇者さまが、

たまたま家が近所だったアリアハンの村娘と結ばれてしまうようなものだ。

だからこそ慢心はしない。

私は、自分の今の立ち位置が、数多の幸運の上に成り立っている奇跡のような結果だと理解している。

運が良かったのだ。決して、私のスペックが高かったからとか、そういう理由ではないことを理解している。

とてもではないけども、自分のスペックが夫くんとは釣り合うものではないことも理解している。

だからこそ、だからこそせめて可能な限り少しでもきちっとして、愛想を尽かされないようにしなければ。

私は、夫くんに良く見て貰うための努力は惜しまないと決めている。

愛想を尽かされないために死力を尽くす事を決めている。

身だしなみを整える。

全力で猫の皮を被るのだ。



11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:23:08 ID:G3EwmG/w


リビングに戻ると、夫くんはパジャマの上にエプロンを装着してキッチンに立っていた。

萌える。

他の人のエプロン姿なぞどうでも良いけども、他ならぬ夫くんのエプロン姿だ。

しかもパジャマの上。

ポイント高い。

とはいえ、最近は毎週末この姿を見ることができるのだけども。

いやぁ、心の底から言える。眼福眼福。

素晴らしい目の保養だ。

個人的には浴衣が世界中の全衣類の中で最も夫くんに似合う服だと思う。

私たちの新婚旅行は外国ではなく、国内のちょっと高級な感じの温泉旅館に泊まってのんびり、だった。

浴衣を愛してやまない私としては願ったり叶ったり。



12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:25:43 ID:G3EwmG/w


しかも、私がチェックインを担当させて貰った。

受付で、夫くんの苗字と、自分の名前とを続けて書いて、幸福感に身悶えしていた。

幸せが極まりすぎて、あの時の私は呼吸をする事にさえ幸せだった。

部屋に案内され、まず夫くんに抱きしめて貰った。

あまりに幸福感が強すぎて、あの時私のシナプスはいくらか死滅したと思う。

今思い出しても幸福感で身悶えできるのだから、その時の私の身悶えっぷりがわかるというものだ。


ともかく、最近の休日は私が食事メニューを考えて、夫くんがそれを作ってくれるようになった。

今日はたまねぎとワカメのお味噌汁。

たまねぎがとろとろになるくらいじっくり中火で煮込んだ後、火を止めてからお味噌を溶かす。

白米とお味噌汁。茹でたソーセージに生野菜サラダ。昨日の残り物のひじき煮。

そしてベーコンエッグを作って朝食は完成だ。

夫くんが調理してくれている間に、私は洗濯を済ませてしまおう。



13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:26:48 ID:G3EwmG/w


洗濯籠に入った、夫くんのYシャツ。ズボン。下着に靴下。

私の濁った視覚には、いよいよ以て宝の山としか認識されない。

私の穢れた嗅覚には、依然としてご馳走のように認識される。

夫くんはキッチン。ここには、今、私一人だ。

……洗濯して匂いが消えてしまう前に、思いっきり吸い込んでおこう。

私がそう思うのも当然だし、ぶっちゃけ洗濯の度の恒例行事である。

妻「……すんすん…………はぁぁ……」

……なんて良い匂いなんだろう……。

私にとっては、夫くんの匂いは、生活必需香と言っても決して過言ではないものだ。

夫くんの汗腺からは、きっと依存性のある物質が分泌されているに違いない。

でなければ、私がここまで夫くんの匂いに依存し切っている現状に説明がつかない。

どうにかしてこの匂いを再現した香水あるいはアロマとか作れないものか。化け学の範疇になるのだろうか?

専攻に物理系を選んだことがちょっと悔やまれる。



14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2015/02/15(日) 20:27:45 ID:G3EwmG/w


少し前までは、夫くんが一日着ていた服を洗濯する前に、こっそり羽織りながら袖や首下の匂いを嗅いでにやにやしたりしていた。

あれはあれでとても良いものだ。それは間違いない。

でもあれは匂いとかそういう要素抜きにして夫くんの服を着ているという事実になんか興奮してきてしまうから良くない。

だって夫くんが一日着ていた服に包まれているということは、
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年02月16日 16:31
      • 5 この人ワンパターンだよな、全作大好きです
        ゲーム好きの彼女が欲しいです
        無事産まれると良いなぁ
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年02月16日 16:52
      • このシリーズ、好きだ。何かニヤニヤする。
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年02月16日 17:10
      • 5 あ、甘すぎるぞ!

        カカオ100%のチョコレート持ってこい!
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年02月16日 17:15
      • 夫も妻の事大好きなんだろうな、俺男だけど夫イケメン過ぎる
        妻が一作目ピクミンになるのもわからんでもない
      • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年02月16日 17:36
      • 相変わらずの神っぷり
      • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年02月16日 17:38
      • あー、好きだ
      • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2015年02月16日 21:53
      • 5 俺も彼女とか嫁とピクミン3やりたいです・・・(´;ω;`)

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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