戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://horahorazoon.blog134.fc2.com/blog-entry-6675.html


楓「飴の降る町で」 : ホライゾーン - SSまとめサイト

楓「飴の降る町で」

≫ EDIT

2015-02-22 (日) 12:01  アイドルマスターSS   コメント:0   このエントリーをはてなブックマークに追加
2: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:22:43.49 ID:sDZA5Cqh0

「プロデューサー、今日は飴が降っていますね」

窓の外、降る飴は色とりどりに輝いている。

ストロベリーの赤、メロンの緑、レモンの黄色。

「ええ、雨が降ってますね」

窓の外を見て、そう言って返す貴方の背中の猫はどこか寂しそうで。

思わず口をついて出たこと葉は、猫へひらひらと舞い落ちる。



eval.gif掟上今日子の備忘録





3: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:23:17.46 ID:sDZA5Cqh0

「飴、お嫌いなんですか?」

私は彼の鏡中を汲み取る事はできない。くすんでいるから。

けれど、貴方は上下に裂けた背中で語る。

「雨、嫌いなんです」と。

「どうしてですか?」と尋ねるより早く、貴方の背中は口を紡いだ。

ここから先は、キャッチボールで。




4: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:24:39.13 ID:sDZA5Cqh0

「どうしても、気分が高揚しなくて」

「紅葉しないんですか」

確かに球は青々とした森の奥から私めがけて飛んできた。

外に降る飴とは大違い。緑一色。

「楓さんは、雨、好きなんですか?」

「私は……嫌いではない、ですね」

町が虹色に染まる幻想的な光景は、一度見たら嫌いにはなれないだろう。




5: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:25:33.29 ID:sDZA5Cqh0

「そう、ですか」

私が投げ返したボールは森の奥から暫く返ってはこなかった。

そうして、事務所の机が音という傷で一杯になった頃。

「……少し、昔話を聞いてくれませんか」

森の奥から飛んできたボールはふらふらふらふら、

躊躇いながらも私の足元へ着地した。

「聞かせてください。プロデューサーの、昔話」




6: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:26:23.66 ID:sDZA5Cqh0

私はそれを優しく手に取ると、今度は投げ返すでなく、森の奥へ足を踏み入れる。

彼は、それを望んでいるはずだから。

森の中、プロデューサーを見つけて隣に座り、ボールを手渡した。

「……俺、この仕事を始める前、彼女がいたんですよ」

しかし、私に返ってくるはずのボールは、大きく跳ね上がって天井に突き刺さった。

斜め上、かしら。

「……そう、なんですか」




7: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:28:02.43 ID:sDZA5Cqh0

「驚きましたか」

「ええ、驚きました」

実はそこまで驚いてはいなかった。

彼の愛用しているマグカップには、彼しか持っていない鍵がかかっているから。

他の誰も、開けられはしないから。

「その彼女に……こんな雨の日に、振られまして」

「降られてしまったんですか」

きっとそれは通り飴。

降り始めは凄まじくて、色んな味が混ざり合って、美しいけれど。

降り終わってみれば、残っているのは汚い色の、美味しくない飴溜り。




8: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:29:23.84 ID:sDZA5Cqh0

「……俺が、悪いんです」

「プロデューサーは、悪くありません」

だって、通り飴を予想できる人なんて誰もいないのだから。

傘を持っていなくて降られるのは、当然だから。

「いいえ、俺が……」

それきり、プロデューサーは沈み込んでしまった。

ずぶずぶと、私の視界から彼は消えていく。

引き上げなければ、きっと自然に浮き上がってくるのを待つしかない。




9: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:30:17.94 ID:sDZA5Cqh0

「お散歩、しませんか」

だから私は引き上げた。精一杯の力で。

「……濡れますよ?」

「構いません」

「風邪、引きます」

「大丈夫です。惹きませんから」

どうも風邪さんは、私がタイプではないらしい。

一度も私に惹かれた事がないというのは、それはそれで寂しい。




10: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:31:22.33 ID:sDZA5Cqh0

「……仕事が」

「終わってますよね」

知っていました。

私が話しかけた時から、貴方は銃声を鳴らしていない。

「……少しだけですよ」

彼は錘のついた腰を持ち上げる。

まるで事務所はムショのよう。




11: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:32:41.38 ID:sDZA5Cqh0

私の足を、鎖が縛る。私が誘ったはずなのに、思うようには進めない。

きっと、伝えられること葉は少ないから。

「では、生きましょうか」

それでも私は歩かなくてはいけない。無期限の刑期は、今破られたから。

「……はい」

牢屋の扉を開けて、彼は外へ出て生く。

私は、その後を憑いていく。




12: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:33:48.44 ID:sDZA5Cqh0

幽霊のようだ。私は。

見えもしないものを見て。見えるはずのものを見ないで。

「どれが楓さんの傘ですか?」

「私の暈はこれです」

バッと彼の前で暈を開く。

飴色の空に、金環日食が咲いた。

「えっと、俺の傘は……」

「暈、一つでいいと思います」




13: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:35:43.96 ID:sDZA5Cqh0

「え、いやでも」

「二人で入ればいいじゃないですか。哀愛暈、です」

そう、この暈に入れるのはお互いに辛い想いを持っている人だけ。

愛し、哀され。人々はできてる。

「……楓さんが、いいのなら」

「ええ、構いません」

そっと、彼は私に実を寄せた。

彼は熟した林檎。私はまだ青い果実。

どうも、相反して赤くなってしまいそうだ。




14: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:36:33.95 ID:sDZA5Cqh0

「……」

飴の降る町を、二人、哀愛暈で歩いていく。

ぽつ、ぽつりと。

飴の音だけが聞こえてくる、静かな喧騒。

「……私は」

「へ?」

最初に口を開かせたのは、私。

「私は、誰かと付き合った事はありません。ですがプロデューサーが悪いとは……」

「……いいえ、俺が悪いんです。気にしないでください。俺が、この仕事に熱心に……ああいえ」




15: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:37:52.60 ID:sDZA5Cqh0

そこで彼はこと葉を一旦切り、二つに分かれたこと葉を見やった。

どちらを放すべきか、悩んでいるようだ。

「この仕事を熱心にやりすぎたのが、問題だったんです」

「……プロデューサーの仕事を理由に、降られたんですか」

「……ええ」

当たり前だ。熱くなりすぎた心は、水で冷やさなければならない。

空から降った飴は、さぞ、冷蔵庫でキンキンに冷やされていたのだろう。




16: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:40:08.16 ID:sDZA5Cqh0

「……もう一つ、理由、ありますよね」

「え……」

ただ、貴方が放したこと葉は、私の欲しかった方ではなかった。

私が欲しかったのは、貴方が口に押し留めたもう一つのこと葉。

「それは……」

口篭る。

もごもごと、こと葉を歯で磨り潰して、飲み込もうとしているようで。

良薬を飲んでいるような苦々しい表情で、貴方は立ち竦んだ。




17: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:41:12.72 ID:sDZA5Cqh0

「……まだ、言えません」

「癒えませんか」

彼の心に残った傷は、そう簡単には治らないようで。

いいえ、治せないようで。

「ええ……今は、まだ」

「では……待っていますから。いつか、話せる日を」

「……はい」

彼のその返事に、私は微笑んだ。




18: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:43:43.12 ID:sDZA5Cqh0

「あ……」

ふと、傘を下げると雨はすっかり止んでいた。

空には、お日様が顔を出している。

「雨、止みましたね」

「そうですね……じゃあ、事務所に戻りましょうか」

「はい」




19: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:44:35.96 ID:sDZA5Cqh0

 
次に、飴が降るのはいつになるのだろう。

きっとその次の飴が降る日に、貴方は今日飲み込んだこと葉を放してくれるだろう。

顔を出したお日様は「残念だったな」と言わんばかりに笑い。

私の心は、混ざり合った飴たまりのように、複雑だった。



終わり




20: ◆uCbLPg/WnY 2015/02/16(月) 09:46:02.56 ID:sDZA5Cqh0

他人の見る風景を言葉で表す事はとても難しい事だと学びました。

一応、誤変換はありません。『こと葉』なども全て意図的なものです。

それでは、ありがとうございました。




23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/17(火) 02:39:07.52 ID:F8C5Ii+Co


飴の降る天気・・・グルメ界かな




22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/02/17(火) 01:03:30.74 ID:UooLQTPOO

こういうのもオツだね



関連記事

アイドルマスターSS   コメント:0   このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント一覧
コメントの投稿





ランダム記事ボタン
週間人気SSランキング
新刊ピックアップ
フィギュア
ゲーム
アニメ
最近のオススメSS
清麿「強くてニューゲームか…」 ヌァァァァァァ!!

一夏「ドゥフッw拙者織斑一夏でござるwwww」 ギャプッwwwコポォwwww

佐天「またレイプされた…」初春「佐天さんも大変ですね」 黒髪美少女のレベル0が性的過ぎてヤバイ

佐天「すごいテニスが出来る能力かぁ」 間違いなく攻撃的な能力だなぁ

浜面「女の子になれる能力かぁ」 アイテムで性別逆転して……

オーキド「ここに3人の女性がおるじゃろ?」 レッド「は?」 僕はナツメちゃん!!

【※ネタバレ注意】エレン「同期にホモとレズしか居ない……」 確かに

ボーボボ「黒の騎士団入団希望のボーボボでぇす!!」ゼロ「ほう?」 死ねやぁ!!!!!

桐乃「そうです!私はブラコンの変態ヤローです!」 きゃわわ!!!!!!!

岡部「紅莉栖をひたすら愛で続けたらどうなるか」 うわぁぁああぁ!!(AA略

クリリン「やっぱりオレも、サイヤ人の子供欲しいな・・・」 スレタイのインパクトェ……

ゆうしゃ「くらえー!まおー!!」魔王「くはははは!!」 ゆうしゃちゃん!!!!

俺「グヘヘヘ……」 女騎士「早くこの手錠を外せ!」 お○んぽなんかには絶対負けない!

鍛冶師「今日中に仕上げるぞ」弟子「はい」 雰囲気が良いSS

< `∀´> 「ついに地球はウリ達の物ニダー」 ニダニダ
みんなのいちおし!SS
よく耳にするとか、印象的なSS集ダンテ「学園都市か」 "楽しすぎて狂っちまいそうだ!"

一方通行「なンでも屋さンでェす」 可愛い一方通行をたくさん見よう

インデックス「ご飯くれるとうれしいな」一方通行「あァ?」 "一方禁書"凄まじいクオリティ

フレンダ「麦野は今、恋をしているんだね」 通称"麦恋"、有名なSS

キャーリサ「家出してきたし」上条「帰って下さい」 珍しい魔術側メイン、見るといーの!

垣根「初春飾利…かぁ…」 新ジャンル定温物質ウヒョオオ!!

美琴「……レベル5になった時の話ねえ………どうだったかしら」 御坂美琴のレベル5に至る努力の経緯

上条「食蜂って可愛いよな」御坂「え?」 ストレートに上食。読めて良かった

一方通行「もっと面白い事してモリモリ盛り上がろォぜ」 こんなキャラが強い作者は初めて見た

美琴「週末は アイツの部屋で しっぽりと」 超かみことを見てみんなで悶えましょう

ミサカ「たまにはMNWを使って親孝行しようぜ」 御坂美琴のDNAは究極に可愛くて凄い

番外個体「     」 番外通行SSの原点かな?

佐天「対象のアナルを敏感にする能力か……」 ス、スタイリッシュアクションだった!

麦野「どうにかして浜面と付き合いたい」 レベル5で楽しくやっていく

ミサカ「俺らのこと見分けつく奴なんていんの?」 蒼の伝道師によるドタバタラブコメディ

一方通行「あァ!? 意味分からねェことほざいてンじゃねェ!!」 黄泉川ァアアアアアアアアアア!!

さやか「さやかちゃんイージーモード」 オナ禁中のリビドーで書かれた傑作

まどかパパ「百合少女はいいものだ……」 君の心は百合ントロピーを凌駕した!

澪「徘徊後ティータイム」 静かな夜の雰囲気が癖になるよね

とある暗部の軽音少女(バンドガールズ)【禁書×けいおん!】 舞台は禁書、主役は放課後ティータイム

ルカ子「きょ、凶真さん……白いおしっこが出たんです」岡部「」 これは無理だろ(抗う事が)

岡部「フゥーハッハッハッハ!」 しんのすけ「わっはっはっはっは!」 ゲェーッハッハッハッハ!

紅莉栖「とある助手の1日ヽ(*゚д゚)ノ 」 全編AAで構成。か、可愛い……

岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 SUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!

遊星「またD-ホイールでオナニーしてしまった」 ……サティスファクション!!

遊星「どんなカードにも使い方はあるんだ」龍亞「本当に?」 パワーカードだけがデュエルじゃないさ

ヲタ「初音ミクを嫁にしてみた」 ただでさえ天使のミクが感情という翼を

アカギ「ククク・・・残念、きあいパンチだ」 小僧・・・!

クラウド「……臭かったんだ」 ライトニングさんのことかああああ!!

ハーマイオニー「大理石で柔道はマジやばい」 ビターンビターン!wwwww

僧侶「ひのきのぼう……?」 話題作

勇者「旅の間の性欲処理ってどうしたらいいんだろ……」 いつまでも 使える 読めるSS

肛門「あの子だけずるい・・・・・・・・・・」 まさにVIPの天才って感じだった

男「男同士の語らいでもしようじゃないか」女「何故私とするのだ」 壁ドンが木霊するSS

ゾンビ「おおおおお・・・お?あれ?アレ?人間いなくね?」 読み返したくなるほどの良作

犬「やべえwwwwwwなにあいつwwww」ライオン「……」 面白いしかっこいいし可愛いし!
モバイルゾーン
QR