弟「兄ちゃんが自分は電柱だって言い張って家の前の歩道にずっと立ってる……」
弟「兄ちゃん、晩御飯の時間だよ」
弟「……」
弟「あのさ、いい加減やめようよ」
弟「ほら、みんな変な目で見てるよ」
弟「ねえってば」
弟「無視しないでよ」
弟「……」
弟「また来るからね」 スタスタ
女「あの子、また電柱に話しかけてる……」
友「退屈ー、次数学だし。なんか面白い話ない?」
女「面白いかどうかは分からないけど、最近近所の子がよく電柱に話しかけてるよ」
友「変なの。その子おかしいんじゃないの?」
女「そうかな」
友「そうだよ。そういう変な子と関わっちゃダメだよ」
女「そんな事言っちゃダメだよ。きっと悪い子じゃないと思うし」
友「女はすぐにそうやっていい子ぶるんだから」
女「そんなんじゃないってば」
男「女さん、また一人でしゃべってる……」
男「でね、女さんってばいつも一人でしゃべってるんだよ」
男「周りの子達もドン引きしててさ、クラスから浮いちゃってるんだよね」
男「でも全然平気そうなんだ。不思議だよね」
男「僕、最近なんだか女さんのことが気になっちゃって」
男「これが恋なのかなぁ」
男「どう思う、ママ?」
男「やっぱりママもそう思う?」
男「僕、ママ以外の人を好きになるのって初めてだよ」
男「これが恋かぁ」
男「僕、女さんと仲良しになりたいなぁ。ママも応援してくれるよね?」
男「ありがと、ママ。ママならそう言ってくれると思ってたよ。ふふふ、楽しみだなぁ」
姉「……この家、凄い匂いね。道路にまで腐臭がするなんて、死体でも置いてあるのかしら?」
『腹部』
『ホチキスの針、5本』
『+カッターでお絵かき』
『結果→出血、30分ほどで止まる』
『胃』
『塩水、1リットル』
『雑草、50グラム』
『砂、100グラム』
『結果→嘔吐、茶色だった』
『最近反応が大人しくてつまらない』
『自殺でもさせてみたら面白いかも』
『どの自殺方法がいいか考えてみる』
『これが上手くいけばこれからはこの方法で殺ろう』
弟「……」 パタン
弟「兄ちゃん」
兄「なんだ?」
弟「え……?」
兄「そんなに驚いた顔をしてどうした?」
弟「なんで、返事……」
兄「お前があんまりしつこいから返事してやったんじゃないか。まったく、今の俺は電柱なんだぞ」
弟「う、うん……ご……ごめん……ご、ごめんね」
兄「まあいいさ。俺はお前の兄ちゃんだからな。困った事があったらなんでも俺に言うんだぞ」
弟「……実は、あの……あの、僕……嫌な事、されてて……それで……」
兄「兄ちゃんにも経験あるぞ。そういう奴にはな――」
友「へー、電柱ってしゃべるんだ」
友「ねえねえ知ってる?」
弟「……」 グシュ
友「死ぬのって痛いんだよ?」
弟「……」 グシュ
友「練習で殺される身にもなろうよ」
弟「……」 グシュ
友「腸もはみ出してるしさー」
弟「……」 グシュ
友「まあいいけど、せめて埋めてあげてよね」
弟「うん」 グシュ
友「なんだ、聞こえてるんだね」
弟「……」 グシュ
男「うわっ、子供が猫を殺してるよ……最近は物騒だなぁ」
『デート10日目』
『16:13 女さん帰宅』
『17:11 居間点灯』
『17:30 トイレ点灯、50秒後消灯』
『18:39 女さんの母、帰宅』
『20:02 女さんの父、帰宅』
『20:37 風呂場点灯』
『20;39 シャワーの水音』
『20:40 鼻歌、女さんだ』『シャンプー』『泡立つ』『水音』『ごしごし』『水』『女さん』『女さん』『女さん』『女さん』『女さん』『女さん』『女さん』
『00:21 女さんの部屋、消灯』
女「ふぁ~あ。……おやすみなさい」
女「あの、しつこいです」
女「やめてくれませんか?」
女「用件はわかりましたから」
女「……」
女「直接お話すれば納得してくれるんですか?」
女「そうですか」
女「はい、近い内にそうします」
兄「なんで一人でしゃべってるんだ?」
女「電柱ってしゃべるんですか?」
兄「おっと」
女「今朝電柱さんに話しかけられちゃった」
友「そういう事もあるよねー」
友「よろしくにゃー、おとなりさん」
猫「にゃー」
友「うんうん。この生活も案外悪くないにゃにゃよー」
猫「にゃー」
友「大丈夫にゃー。猫のお友達もすぐにできるにゃーよ」
猫「にゃー」
友「にゃんにゃん」
猫「にゃー」
友「と、御来客だにゃー」
姉「……自殺は名案よね。あなたの時とは違って穴は掘らなくていいもの」
友「そう上手くいくかにゃー?」
姉「こんにちは」
姉「毎日うちの弟の話相手になってくれているそうで、どうもありがとうございますね」
姉「それにしても」
姉「世の中馬鹿ばかりだと思いません?」
姉「電柱に話しかける馬鹿、簡単に騙される馬鹿、存在しないものを信じる馬鹿」
姉「馬鹿は死ななきゃ治らないって言いますけど、死んで治ったのかしら?」
姉「機会があれば一度聞いてみたいものね」
姉「なんて、馬鹿の真似をしてもやっぱり全然面白くないわね」
姉「それじゃ、さようなら」 スタスタ
兄「……」
兄(俺は弟の兄だ)
兄(弟が俺を兄だと言うのだから、弟は俺の弟に違いないのだ)
兄(では、あの女は俺の姉か妹なのだろうか?)
兄(いいや、違う)
兄(あの女は俺を兄とも弟とも言いはしなかった)
兄(なのだから、あの女は俺の姉でも妹でもない)
兄(では俺は、あの女の兄でも弟でもない俺は、弟の兄として何をすべきだろうか)
兄(……)
兄(しかし俺は、電柱だ。電柱なのだ。電柱の俺に何ができると言うのだ)
兄(果たして俺は……兄である前に電柱なのだろうか……電柱である前に兄なのだろうか……)
猫「にゃー?」
猫「にゃー」
女「あ、猫ちゃんだ」 ナデナデ
猫「にゃー」
弟「……ごめんね」
猫「にゃー」
友「やっほー、エンジョイしてるかにゃー?」
猫「にゃー」
兄「何かいるのか?」
猫「にゃー」
姉「……」 スタスタ
猫「にゃー」
男「女さん、もうすぐずっと一緒にいられるよ」
友「やっほー、電柱くん」
兄「……」
友「調子はどう?」
兄「……」
友「君は聞こえない側かな? そうそう、アレ今日みたいよ?」
兄「……」
友「君の弟くんがアレされちゃうアレの日」
兄「……」
友「ダメだった時は仲良くやるから私はそれでいいけど、君はどうなのかにゃー」
兄「……」
友「ま、なるようになるってね。それじゃあねー」
兄「……むぅ」
男(……心臓がドキドキしてる)
男(女さんのお義父さんはさっき帰って来た。お義母さんも家にいる。ついにこの時が来たんだ)
男(僕と女さんが結ばれる日。二人の記念日。みんなが祝福してくれてる!)
男(そうだ、ママにも話さなくちゃ! 今日から女さんと僕とママの三人で暮らすんだ!)
男(ママになんて紹介しようかな? 僕の最愛の人? 将来を誓い合った人? えへへ)
男(女さん、待っててね) ピンポーン
母「はーい」 ガチャ
男「あの、僕、女さんの同級生の男と言います」
母「あら、女に用事? 呼んできた方がいいかしら?」
父「ん、女の友達かい?」
男「実は……お二人にお話があるんです」
父「話?」
男「……娘さんを僕にください!」
姉「弟」
弟「……っ」
姉「そんなに怯えなくてもいいのよ。少しお願いがあるだけなの」
弟「お、お願い……?」
姉「そう、それさえしてくれたらもう絶対に痛い事しないってお姉ちゃん約束するわ」
弟「……本当に?」
姉「ええ。本当よ」
弟「……どんな遊びなの?」
姉「すごく楽しいわよ。きっとみんなビックリするわ。そう、みんなをちょっと驚かせるだけのための遊びよ。おまけに紙と鉛筆だけでできるの」
弟「……お絵かき?」
姉「いいえ、遺書書きよ」
女(なんだか話し声がするけど、誰か来てるのかな?)
「……を言ってるんだ!?」
「もう……これ以上……出て行け!!」
「……いやぁぁぁぁぁぁ!?」
「……するんだ!? やめ……」
「あなた、なんで……」
「娘には手を……ぐ……逃げ……」
女「……?」
弟「えぐっ、えぐ……っ」
姉「もう、お姉ちゃんを疲れさせないでくれる?」
弟「う……うぅ……」
姉「最初から素直に書いていれば余計な事をせずに済んだのよ?」
弟「い、痛い……痛いよぉ……」
姉「少し手首を切っただけじゃない。もっと苦しい事、たくさんしてあげたでしょう?」
弟「えぐ……えぐ……っ」
姉「いい? 学校でいじめられていたって書くのよ? どうせ少しくらいいじめられてたでしょう? それを大袈裟に書けばいいの
コメント一覧
-
- 2015年02月24日 19:18
- ・・・・・・。
-
- 2015年02月24日 19:21
- 何も言えねえよ……
気狂い大杉
-
- 2015年02月24日 19:37
- なにこれ
高卒の俺にわかりやすく説明おね
-
- 2015年02月24日 19:44
- とりあえず死者が見えるのは弟と女でおk?
-
- 2015年02月24日 20:07
- 生きろってことだなきっと
-
- 2015年02月24日 20:16
- 理解した。
姉はさつじん快楽者で、友を殺害。また、普段から弟を虐待していた。途中のホチキス云々は姉の弟にやったことノート。
弟は、電柱を架空の兄とすることで現実逃避していた。また、弟は霊が見える。姉を殺害する練習として猫を殺した。
女は霊が見えるのが当たり前過ぎて生死の概念が異常。友の霊と友達。
男は霊が見えない。女のストーカー。自ら殺した母に語りかける狂人だが、女に母の霊が憑いてることを言われて発狂。
ハッピーエンド。
-
- 2015年02月24日 20:21
- ※6に補足。
兄は元々ただの電柱だけど、弟のイマジナリーフレンドとしての念で何か宿った的なアレだと思う。霊が存在する世界観だからそんな感じかと。
本当はこういう興醒めな解説は嫌なんですが、けっこう面白いのに理解追い付かない方がいるのはもったいないと思ったので書きましたおわり
-
- 2015年02月24日 20:28
- なるほど わかると面白いな。
男は自分の母親を◯したのに女は死者見えて話せるから男発狂して引きこもりか。死者が見えるから生きてるって言ってるんだな。
弟も自分が姉を◯すために練習した猫が見えてるから会った時にごめんねって謝ってるんだな
-
- 2015年02月24日 20:30
- ふむ この作者中々やりおるな
頭良さそう
-
- 2015年02月24日 20:45
- 読んでて意味わからなかったからコメントまで飛んでコメント見たらやっぱりわからなかった
-
- 2015年02月24日 21:31
- かいたやつさいこぱす
-
- 2015年02月24日 21:40
- 最後、 女が赤面する下りがわからん
おせーてくれよぉ
-
- 2015年02月24日 22:03
- シーンの切り替わりが激しいわりにどいつもこいつも唐突に出てくるから登場人物が把握しきれない
-
- 2015年02月24日 22:44
- 最後だけよくわからん
-
- 2015年02月24日 22:55
- 語尾がうつったにゃー
-
- 2015年02月24日 23:42
- タイトルで「きは なんにも いわないの 」って言う絵本思い出したけど内容全然違かったわ
-
- 2015年02月24日 23:47
- コメント見てなんとなく分かった。
案外納得出来たら面白い
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