八幡「瞳を閉じれば貴女が」
- 2015年03月01日 23:10
- SS、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
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春とは、出会いと別れの季節である。
就職、進学と、新たな環境へと変わりゆく季節であり、
その新たな環境へ進むために元居た環境から旅立つ季節である。
ちょっとセンチメンタルになってしまう季節。
でも、ぼっちな俺には関係ない。
ぼっちは誰かと出会うことはないし、出会うことがなければ別れることもない。
新たな環境でも人の輪っかの外、別れの際には涙ぐむ周りの奴らを冷めた目で見る。
今まではそうであったし、これからもそうであろう。
小町「お兄ちゃーん、先出るからねー」
3月のある朝、小町のそんな声とパタパタ歩いていく音が聞こえた。
八幡「―――あー、いってらっしゃ・・・」
そう言いながら薄ぼんやりと開いた瞳で携帯で時刻を確認する。
ん、7時半か・・・まだまだ大丈夫・・・じゃない!?
普段ならそこから着替えて学校に行けば、まぁ遅刻は免れる時間帯。
でも今朝はそういうわけにはいかない。寄り道する必要があったのだった。
寄り道の必要性を知ったのは昨晩。「明日の朝、早めに起きればいっか」なんて
思ってたら寝坊ですよ。
飛び起き制服に着替え始めるが、普段しなれないネクタイを結ぶのに少し手間取る。
着替え終え、家を出る。見上げた空は凛と澄み渡った青空。
春とはいえ、朝方はコートがないと少し肌寒いほどであった。
由比ヶ浜「(あれー、ヒッキーまだ教室来てないなー)」キョロキョロ
由比ヶ浜「ねぇ、彩ちゃん、今朝ヒッキー見てない?」
戸塚「ん、八幡?僕は見てないけど、材木座くんは八幡を見かけたって今朝言ってたかな。
声掛けたのに無視されたー、って。朝だから八幡急いでいたのかなー?」
由比ヶ浜「ははっ、そーだねー(ヒッキーなら朝とか関係なしにスルーしそうだけど・・・)」
由比ヶ浜「もう、ヒッキーったら・・・今日、卒業式なのに」ホッペプクー
戸塚「だねー、でも、もう来るんじゃないかなー」
ガラッ
八幡「ハァハァ・・・」
戸塚「ほらね?」
由比ヶ浜「・・・あれ、ヒッキー・・・」
八幡「(失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。
失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。)」
八幡「(まさか、今日という日に限って忘れ物しちまうなんて・・・)」
何?日頃の行いってやつですか?
教科書や宿題を解いたノートを忘れると、貸してもらう、あるいは見せてもらう相手のいないぼっちは
ピンチに追い込まれるわけであるため、ぼっちは学校へは忘れ物をしていかないものである。
プロぼっちの俺がぼっちの初歩でミスをしてしまうなんて・・・
クソっ、平塚先生に対して「誰かもらってくれないなら俺がもらっちゃうよ?」って思ってたのは
毎回本心ではなかったことか?
いたずらにアラサーの現実をおちょくっていたことが悪かったのか?ゴメン、先生。
だから今日くらいは勘弁してください。
今日だけは・・・。
平塚「クシュン」
平塚「(ふふっ、誰か私のこと噂して・・・いや、違うぞ。春・・・こ、これは花粉症?!)」
平塚「(とうとう来てしまったか・・・花粉症でないことが私の売りの一つであったのに・・・)」
平塚「(はぁー、また一つ売れ残る原因が増えていく・・・あれ、涙出てきちゃった。まだ卒業式は
始まってないんだけどなー・・・)」ポタポタ
「―――卒業生、入場」
マイクから流れるその声とともに、吹奏楽部による「威風堂々」の演奏が開始される。
体育館の重い扉が開かれ、卒業生が列をなし登場。
卒業生は胸に花飾りを付け、ある者は恥ずかしそうに、ある者は背筋を伸ばしながら、
三者三様に行進していく。
八幡「―――」ウルッ
いかんいかん、式が始まったばかりだというのに俺の涙腺は・・・
川崎「・・・ほら、これ使いな」コソッ
隣に座った川崎からポケットティッシュが手渡されたので、俺はありがたく使わせてもらう。
卒業生の行進の列を見ながら色々な思い出があふれ出てくる。
まぶたを閉じれば思い出される、あの笑顔・・・
「―――在校生、送辞。在校生代表、生徒会長、一色いろは」
一色「はい」
一色「―――冬の寒さも緩み、桜の蕾の膨らみに春の訪れを感じる季節となってまいりました。
本日、晴れてこの総武高校を卒業なさる三年生の皆さん、本当におめでとうございます。
在校生を代表し、心よりお祝い申し上げます。
私が皆さんと出会ってから、ともにすることができた時間は大変限られたものではありますが、
三年生の皆さんとの間には様々な思い出があります―――」
体育館には在校生代表による送辞の言葉が響く。
あー、早く終わんないかなー。
卒業式の主役は卒業生だろ?大事なのは送辞じゃなくて答辞だと八幡思うなー。
まだこの季節の体育館は寒いからな、余計そう思う。
薄っぺらなスリッパからも床の冷たさが伝わってきそうだ。
こんな時は温かいマッカンが欲しくなる。
某国営放送も今年の秋あたりからしきりに「マッカン」「マッカン」言ってるしな。
・・・えっ、マッカンじゃない?マ○サン?
缶コーヒーじゃなくてウイスキーづくりのドラマ?
2009年の冬から全国展開を開始し、最近缶コーヒー界のトップに立ったとかの
ニュースじゃなかったのか・・・そうだよな、全国制覇にそんな時間要しないよな、マッカン。
今度の連続テレビ小説はマッカンやんねーかな。
制作秘話から全国展開まで・・・やだ、見てみたいっ!全編千葉ロケ決定だわ。
一色「―――様々な人の力を借りて、私は生徒会長という役職を務めておりますが、生徒会長になるにあたっても、
また、生徒会長になってからも諸先輩方の支えがありました。」
城廻「・・・」ニコニコ
一色「前任の生徒会長であった城廻先輩、生徒会のメンバーの皆さん・・・そして、生徒会長になることに
迷っていた私の背中を押してくれた、ある先輩///」
城廻「・・・」
雪ノ下「・・・」
一色「その先輩は私の生徒会長選挙に向けて色々尽力してくれていました。自信のなかった私を励ますために、
『お前を応援してくれる奴はこんなにいるんだ』って―――普段はどよーんとした目をしていて、
私の扱い方がぞんざいで、でも・・・ホントは優しくて」
一色「生徒会長になってからも先輩は色々助けてくれました。他校と共同で運営したクリスマスパーティーにも、
時には背中を押してくれて、手を引っ張ってくれて、そして、たまに歩調を合わせてくれて」
一色「いっつも面倒くさがりながらも、私と一緒に歩いてくれました。『責任取るためだ』、なんて照れ隠しに
言ってたけど、そんな素直じゃないところも可愛くて・・・///」
一色「多分こんなこと言ったら顔真っ赤にさせて、それもまた可愛いんでしょうねー。残念ながら舞台上からは
見つけられないのが残念です///」
由比ヶ浜「(なんでいろはちゃんら辺コッチ見てんだろー)」ボウヨミー
八幡「・・・」
あー・・・眠いな。昨日は緊張して眠れなかったからなー。
寝られたと思ったら、そのまま寝坊しちまうし・・・
一色「先輩は私を思って歩調を合わせてくれます。でも、そうじゃなくて、今度は私から先輩の隣に立てないかなって
最近よく考えるんです。いつも先輩が私を押してくれるでも手を引くでもなく、同じ歩幅で、同じ景色を一緒に
眺めながら歩いていけないかなって」
一色「今すぐは無理ですけど、必ず追いついてみせます。だから先輩は少し先で待っていてください。私、頑張ります。
だって、先輩のことが・・・好きだから///」
城廻「・・・」
雪ノ下「・・・」
由比ヶ浜「・・・」
会場「(ザワザワザワザワ)」
オイ、ダレダヨセンパイッテ?!
イロハス、マサカオレノコトヲ?デモオレニハ...
ナイワー、ヒキタニクンハハヤトクントデキテイルッテノニー
オイオイ、ゼンコウセイトノマエデコクハクカヨー
八幡「(・・・おっ、送辞ももう終わりそうだな)」
いや、長ぇよ送辞。関係ないことグダグダ言いやがって・・・
まぁ、とりあえず、やっと始まりますよ本日のメインイベント。
八幡「・・・」カチャカチャ
へへっ、手が震えてやがるぜ・・・。雪ノ下に頭を下げ、土下座一歩手前まで拝み倒して借り受けた一眼レフの
準備に手間取ってしまう。
川崎「・・・ほら、これで手暖めな」コソコソ
隣に座った川崎からホッカイロを手渡される。緊張と寒さで硬くなった俺の手も温かさで徐々に緩んでいく。
八幡「すまん、助かる」コソコソ
一色「―――皆さんのこれからのご多幸とご健勝をお祈りしまして、送辞と代えさせていただきます。
卒業生の皆さん、今までありがとうございました」
一色「在校生代表、一年○組、一色いろは」ペコリ
会場「ザワザワザワザワ」
オイー、セイシュンシテンジャネーゾ、イッシキィ!
ヒラツカセンセイ、オチツイテクダサイ!
ガタッ...アノネコカブリ...
ユキノシタサン、オチツイテ!ハイライトガシゴトシテイナイ!
「えーっ、静粛に!皆さん、静粛に!」
「―――続きまして卒業生代表、三年、城廻めぐり」
城廻「―――――――――はい・・・」
由比ヶ浜「(あっ・・・城廻先輩のハイライト消えてる・・・)」
おいおい、最後にやっちまいやがったな、送辞の奴・・・
結果的に次の答辞に影響なさそうだから良いものを・・・
司会のうながしの元、答辞を行う生徒が演台に向かう。
コメント一覧
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- 2015年03月01日 23:14
- 川なんとかさん大勝利
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- 2015年03月01日 23:21
- これからだろうがよ
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- 2015年03月01日 23:21
- めぐりんきゃわわ
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- 2015年03月01日 23:27
- ※1
ぷぷぷ。名前も覚えて貰えないようなヒロインなんてただのモブなんだよ
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- 2015年03月01日 23:28
- 8日後にはこの続きですねわかります
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- 2015年03月01日 23:53
- めぐり先輩、実名出したらあかんて…
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- 2015年03月01日 23:54
- 読み終わると青春の味を感じていいですね!適度な長さで爽やかでよかったです!続き待ってます!
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