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[PR] au「Fx0」イベント、中の人が語る攻めの話。世界初のFirefox OS 2.0機、Webで全部できる世界に向けて



2月23日、KDDIのFirefox OS搭載端末「Fx0」をテーマに熱く語り合う「ウェブ新世紀ハジマル 『Fx0』体験イベント〜触れて試して中の人に聞ける〜」が、アーツ千代田3331にて開催されました。

イベント開始直前に小雨が降り出したあいにくの天候だったにも関わらず、会場はほぼ満席。トークセッションがスタートするまで、Fx0のタッチ&トライコーナーには使用感を確かめる参加者で人だかり。なぜか登壇者もそこに一緒になって参加するという、早くもカオスなイベントになる予感が立ちこめています。



なお、登壇者はFx0の企画・開発に携わったKDDIの上月 勝博氏、Mozilla Japanの浅井 智也氏、女優でありギーク(寄り)な開発者でもある池澤 あやかさん、YouTuberのジェットダイスケ氏の4人。Fx0の話題はもちろんOSの将来的な話もある中で、一部「中の人」らしからぬ発言も飛び出し「あたらしい自由」を感じさせるフリーダムなトークが繰り広げられました。

ネジ1本のコスト40倍、その真相


出演者の1人、上月氏はかつて着うた、着うたフル、LISMOのサービス企画のほか、QWERTYキーボードを搭載するクラムシェル型Android端末 IS01を手がけた人物です。IS01は「メガネケース」の“愛称”で呼ばれるauにとってエポックメイクな製品でした。

今回登壇した通り上月氏は現在、Firefox OS端末の企画に関わるKDDIの切り込み隊長的存在。Fx0もKDDIの田中 孝司社長との直接の掛け合いの末に生まれた製品です。



浅井氏はMozilla JapanでFirefox OSを担当する1人。当初から上月氏とFx0の企画を水面下であたため続け、世界初*のFirefox OS 2.0端末としてFx0を世に送り出した立役者でもあります。
*Mozilla Corporation調べ、2014年12月現在



池澤さんは、WebデベロッパーとしてRuby、HTML、CSS、Javascriptといったプログラム言語の他、GPUプログラミングやオープンソースマイコンのArduinoまで扱う、自称「ギーク寄り女子」の“女優”。しかし、女優としての仕事は「1年くらいしていない」状況で、テクノロジー系の仕事が主になってきていることから、もはや「ギーク寄り」ではなく「ギークそのもの」と言えるかもしれません。



数々のガジェットを動画で紹介しているYouTuberのジェットダイスケ氏は「SIMフリーでもない新しいOSの端末を、しかもauが出しているということがどういうことなのか、よく分かっていない」と言うほど、Fx0について情報をもたないまま参加。一般人に近い目線でトークに加わりました。



Fx0最初の話題は、スケルトン筐体が印象に残るTOKUJIN YOSHIOKA(吉岡徳仁)デザインの見た目について。吉岡氏はauでこれまで、X-RAYやMEDIA SKINといったデザインモデルを手がけて来ました。

上月氏は、テカり具合、色の濃さなどを変えて何種類も試作したうえで決定した外装であり、内部のパーツをディスプレイ側にできるだけ寄せることで、背面から見た時の透過性をも増しているそう。「ぱっと見た時に違いが分かる、目立たせる」(上月氏)デザインを狙ったものの、初期の段階では阪神タイガースファンのKDDI田中社長の影響で「黄色と黒のしましま模様」になる危機もあったようです。



Fx0の発表会にも登場し、iPhoneとの2台持ちでFx0を活用している池澤さん。ネジ1本1本の色まで筐体色に合わせているところに「こだわりを感じる」とコメントすると、上月氏は「(通常の端末と比べてネジ1本が)40倍のコスト、と発表会の時に田中社長がしゃべったら、端末の値段が高いのはそのせいみたいに言われてしまいました。実際のところ、通常の端末のネジは1本当たり数十銭くらいのもので、それが40倍だとしても端末代としては数百円上がるかどうかというレベルなんです」だとし、誤解があるとしました。

 

「やりたい放題」で進めたプロジェクト

さて、KDDIのこの端末に、なぜ新しいFirefox OS 2.0が搭載されることになったのでしょうか。



これにMozillaの浅井氏は「Firefox OS自由にできるOS、WebでいろんなものがつながっていくOS、というところにKDDIさんに乗っていただいた」と説明。さらに上月氏と旧知の仲である浅井氏は「やりたいことはたくさんあるけれど、(Androidなどの)スマホだとなかなかできないことってありますよね」と上月氏に同意を求めます。

いきなり水を向けられた上月氏は「いろいろな事情が……」と渋い表情を見せます。

またジェットダイスケ氏がFirefox OSについて「Chrome OSみたいなものかと思っている」と話すと、浅井氏は「ある意味似ています。Chrome OSはノートPCをWebだけで全部できるようにするもの。でもスマートフォンにはAndroidがあるせいか、GoogleがWebで全部できる、ってことをやってくれない」と不満顔。「じゃあWebだけでできる環境をスマートフォンでも実現しましょう、と言ったら、日本で一番最初に手を挙げてくれたのがKDDIで、それを動かしてくれたのが上月さん」だったと語りました。



浅井氏の話は最初のFirefox OS 1.0にも及びました。「1.0はこれまでスマートフォンが高くて買えなかったブラジルなどの新興国に向けたもの」であり「正直、動きました!というレベルのもの」ときっぱり。しかしこのことから、Firefox OSは廉価な端末専用というイメージが広まってしまったようです。

そのため、Fx0が正反対のハイスペック端末になったことに「意外だった」と池澤さんが漏らすと「そう思われるのは心外」と浅井氏は苦笑い。「Windowsは昔、動作が重たかったけど、Windows 7になったら軽くなった。けれどそれで廉価なPC専用OSになったと思った人は誰もいないですよね」と反論。「廉価な端末でも動くOSを我々は作った。もちろんハイエンドの端末に載せれば、カッコいいものが作れます」(浅井氏)というのがFirefox OS 2.0端末のポイントの1つと言えそうです。

ただ、KDDIにとっても、当時はハイスペックで新しいFirefox OS端末を出せるようなところが、auのラインアップ上は用意されていませんでした。そのため、まずは廉価でシンプルな端末から始めようとしていたところ、田中社長からは「攻めていけ。やりたいようにやれ」と号令が下り、急きょ方針を変更。「あとはやりたい放題(笑)」(上月氏)だったとか。

ではFx0はいくらで買えるのか。

ジェットダイスケ氏のこの質問に対し、上月氏は「本体一括だと5万円弱、割引施策で3万円弱」と市場価格を案内。実際には裏技的に低価格で運用できる方法もあるようで現場でも盛り上がりましたが、誌面では割愛します。ご興味の向きはご自身で調べてもらえればと。

アプリ開発に池澤さん、ジェットダイスケ氏が関心

ご存じの通り、Firefox OSを搭載したFx0は、HTMLベースのプログラムでアプリを開発できるのが特徴です。これにはWeb開発者でもある池澤さんも興味津々の様子。「(時間に)余裕ができたので、(アプリ開発を)やってみようかな」と話すとともに「Webと同じ技術でできるので、MonacaとかPhoneGapとかを使ってアプリを書き出せるのでは?」と発言。さらに、Firefox OS 1.0が新興国向け端末に搭載されているという話から「新興国でどういう使われ方をしているのかがすごく気になる」とも。

現在29カ国、15キャリアが取り扱っているというFirefox OS搭載機。その中でもいち早く端末をリリースしたブラジルなどポルトガル語(スペイン語)圏のユーザーが多いとのことで、Firefox OS向けにアプリをリリースした浅井氏の知り合いは、スペイン語でフィードバックが届くことがあるのだとか。そういったユーザーは「日本でAndroid、iOS向けのアプリを出しても、きっとリーチできない人たち」であると浅井氏は指摘し、開発者にとってもやりがいのあるプラットフォームではないかと語りました。

HTMLとJavascriptなどでアプリが作れることについては、ジェットダイスケ氏も「やりたいなあ」と前向き。浅井氏から「カメラアプリも作れるし、SDカードの読み書きもできる」などと聞いて「これまで20年くらいWebで蓄積されてきたあれこれの知識を引っ張ってくれば、とんでもないものができたりするんですね」と俄然興味が湧いてきた様子でした。



その後、いかにFirefox OS向けアプリが簡単に作れるのかを説明する浅井氏に、池澤さんが「写真表示するアプリやタイマーアプリなら1分で作れます」と乗っかり、ジェットダイスケ氏は「マジで!?」と絶句。上月氏もさらに「田中社長も5分か10分で端末を振ったら何かするようなアプリを作った」とたたみかけます。

池澤さんは、「端末の性能が今後上がっていけば、ネイティブ言語じゃなくてもHTMLベースで速度的に満足できるアプリがどんどん作られるようになってくると思う。先取りしておけば今後得できるんじゃないかな」とエンジニア目線からFx0の魅力をアピールしていました。

 

自由度の高いFirefox OS端末。タブレット端末にも?

上月氏は、Firefox OSのポータル「au Firefox OS Portal Site」について説明。2月からユーザーの投稿コーナーを設け、Fx0向けアプリやコンテンツ、ソースコードを共有できるようになったことを報告しました。KDDIの担当者でも気付けなかったプログラム上の不具合を指摘してくれることがあり「オープンソースの醍醐味」を感じているのだとか。



また、上月氏は自分がデザインしたスマホカバーを3Dプリンターで出力して購入できる 3D PRINT LAB. で、Fx0向けのカバーを取り扱うことも発表しました。DMM.make提供の高性能な3Dプリンターを利用することで、3Dプリンターならではの複雑な形状を実現。カラーを選択したり、表面に取り付けられる立体的な“スタンプ”も自由に選べるなど、オリジナル感のあるスマホカバーでFx0を彩ることができます。

当日のイベント会場では、そのサンプルが3種類展示されていましたが、実際にサービスを利用できるようになるのは3月上旬〜中旬頃とのこと。ケース1個の価格は3980円(送料込み、税別)。



なお、来場者からもFx0に関する質問・意見がいくつか飛びました。

「見た目がスケルトンでライトな印象なのに、重量がある」という意見については、上月氏が「最近の端末に比べると分厚い、重いと思われるかもしれないが、その分けっこう丈夫には作っている」と回答。Fx0に付属するクリアカバーも、付属品といえども落下試験を行うなど実用にも考慮しており、「パーツ1個1個ちゃんとしたものを使っているので、“具”がしっかりしている」と、独特の表現で作り込みの高さをアピールしていました。

また、Fx0が他のスマートフォンなどとの2台持ちをほぼ前提としているような売り方をしていることに対して、「開発者や好き者はともかく、一般の人は2台持ちしないのでは」というごく正常なツッコミもありました。

上月氏は「今は2台持ちを意識しているが、Fx0を1台持ちできない理由はないので、(販売戦略上)どこを優先するか」とコメントするのに止まったものの、これに対して「“メガネケース”(IS01)よりは1台持ちできる!」と切り返したのが浅井氏。



母親の初めてのスマートフォンにFx0を選ばせたという“親孝行”なエピソードを披露。それでも「ちゃんと使っている」こと、唯一最大のクレームが「(物理的なキーボードを備えるガラケーと違ってタッチパネルのスマートフォンは)キー入力がしにくい」ことだと話しました。年配の方でも一般的なスマートフォンとほとんど変わらない使い方ができているということで、1台持ちも十分に可能であることを身(内)をもって証明したと言えます。

しかし納得しない質問者は次に池澤さんへと矛先を向け、「Fx0の1台持ちはできるか」と迫ります。「困りはしないと思う……最低限はそろっているし……」と考え込みながらも、友人に面白いアプリがあると教えられて、すぐに試せるのがiPhone/Androidのいいところでもあると語る池澤さん。ただ、それらのプラットフォームでもFirefox OSと同じように、HTMLやJavascriptを元にアプリ化できる開発環境があることから、いずれはバランス良く3つのプラットフォームにアプリがリリースされるようになるのでは、と、Firefox OSの将来に期待を寄せていました。

最後にジェットダイスケ氏から「今後の新端末の展開」について聞かれた上月氏。「全く決まっていない。いろんな方々からフィードバックをいただきながら考えている最中。ただ、商用化するかどうかは別として、自由度は高いので、いろんな形のものは出したい。近々、その取り組みをご紹介できるかもしれない」と回答すると、ジェットダイスケ氏に「じゃあ、なくなることはないんですね」と強く念押しされ会場の笑いを誘っていました。



イベント後半の懇親会では、Fx0を手にとり最後まで熱心に質問をしていた参加者の姿も。

このほか、遠隔操作で炊飯予約し、炊き上がりを自動ツイートしてくれるというau未来研究所の次世代炊飯器「INFOJAR」も展示。こちらもFirefox OSを使ったもの。イベント中に炊き込みご飯を作っており、参加者の関心を集めていました(きぬさやでFx0と書いているのが見えるでしょうか)。



このほか、懇親会では非売品のフォクスケ巡る争奪戦も。ジャンケン大会には、なぜか登壇者の池澤さんも参加していました。




AndroidやiPhoneなど先行するスマートフォンに比べてFx0は登場したばかり。当然いろいろなものが足りません。端末しかり、アプリしかり、周辺機器しかり。ですがブラウザとしてのFirefoxがそうであったように、足りないものは作って行くのがオープンプラットフォームの流儀です。AndroidやiOSといったプラットフォームと異なり、Firefox OSはユーザー自身がそうした足りないものを作って行く。INFOJARなどの事例をみても、KDDIもFx0を通じて「つくる自由」を届けようとしているように思えてなりません。この新しい取り組み、引き続き注目していきたいですね。