提督「…反乱だ」
本作は前作
提督「…転属だ」
の直接の続編となります。
・独自の世界観・設定・解釈等が含まれています。
・キャラ崩壊や、轟沈等扱いの悪いと思われるであろうキャラクター等が居ます。
「電は、人間が憎くなりましたのです」
「もうこれ以上、嫌なのです。人間の都合でかってに蘇らされて、勝手に戦って、少しでも都合が悪くなると、死ね」
「電は、ここで人間を裏切ろうと思っているのです」
「木曽さん、電に、協力して欲しいのです」
電は、ライフルを抱きかかえたまま、俺に向かってにっこりと微笑んだ。
電の考えは、もっともな物なのかもしれない。
俺は詳細は知らないが、当時の電の艦隊の環境は相当酷い物で沈没事故以前も衝突事故なんかは頻繁に起きていたと言う、
訓練の厳しさで疲労が溜まり、小さなミスが重なる。ミスが重なるのは錬度不足のせいだと昼夜を問わず訓練、結果、衝突事故で一隻轟沈。
あまりにも理不尽すぎる。
「だが…」
だが、ここで人間相手に戦ってなんになる?
人間と戦っている間、深海凄艦が何もしてこないとも限らない。
人間と戦ったって、圧倒的な戦力で押しつぶされるのが落ちだ。
地下にでもこもるか?それでも押しつぶされることに変わりはない、いくら資材や食料を備蓄していると言っても、限界がある。
それでもだ。
このままここで都合のいいようにこき使われて、死んでいくだけだと言うのなら?
「…何日か、時間をくれ」
「時間?ですか?」
「電の気持ち、俺も良くわかっているつもりだ、でもこれは話が大きすぎる。俺と電だけで始めるわけにも行かない…勝算を測らせてくれ」
「…それもそのとうりなのです。わかりました。」
俺は迷っていた。電の言うことはもっともだし、かといってこのままここで良い様に、と言うのも嫌さ。
だから、他の奴にも話を聞かなくちゃ、その上で、全員で判断するべきだ。そう思った。
それでもし、全員が乗ってくれるなら俺も乗ろう、と。
もし俺の心を覗ける奴が居たら笑ってくれ、俺は重要な決断を仲間に押し付けるクソ野郎さ。
「…と、いうことなのです」
何時もの館内放送ではなく、電が直接各部屋を回り艦娘を食堂に集めたときは何があるのかと思ったが…
人間への反乱、たぶん今まで考えた奴は居なかったんじゃないか?
この艦隊だから出来た事、なのかも知れない。
「俺は…電の案に乗っても良いのでは無いかと思っている。ここに来ている連中はみんな、いい加減な理由、理不尽な理由で連れて来られた奴ばっかりだ」
「しかしだ、俺と電、二人だけでやってもいい問題じゃない。この問題は…全会一致でなければ始められん」
「嫌な奴は出て行ってくれ…とやりたくても、俺たちが蜂起した時点で十五艦隊全員は共犯とみなされるからな」
説明する二人を前にアタシ達は考える。
確かに、人間に対して怒りを覚えなかったわけではないさ、アタシは人間を殺してしまったとは言え、相手は銀行強盗。
その相手からみんなを守ったあたしが責められる言われはないはずだ、なんて思いもした。
でも、皆も軍もアタシを責めた、新聞では艦名は報道されて居なかったが、欠陥を持った艦娘が銀行強盗を撲殺、なんて書かれていた気がする。
そのすぐ後アタシはここに来たから、その後どう報道されているのかもわからない。
「アタシは…木曽に賛成、したい」
「摩耶?」
「だってそうだろ?アタシは前、皆に対して言ったさ、俺たちはここで戦うことしか出来ない、じゃあ精一杯楽しんで死んで行こうぜ、って。」
「でも、あたしたちがここでどう戦っても、誰も知らないんだ。内地の艦娘がまともに戦って沈んだら、艦名や艦内神社に縁のある土地じゃ大々的に告別式なんてのも行われるのに」
「…利根さんは、どうなのです?」
「極悪人の我輩にそれを聞くのか?」
壁に背をもたれていた利根が方目だけ開けて呟いた。
利根は…恐らく、やった内容で言えば一番「妥当な」理由でこの艦隊に飛ばされた艦娘だ、誤射や誤爆ではなく、自らの意思で民間人を虐殺しているのだから。
「我輩は、もう人生…と言うのは変な話だが…そう言うのを諦めておった、随伴艦を沈め、民間人を殺し、ここで朽ち果てていくだけだとおもってた」
全員の視線が利根に突き刺さる。
こういっては失礼だが、一番の悪人だった利根はどんな答えを出すのか?たぶん、あたしを含めて皆、興味があったのだろう。
「でもな…おかしいんじゃ…この艦隊に来てから、久しく笑った記憶等無かったのに…今、我輩はとてもうれしいのだ」
「艦娘、不思議な物でな、一度欲が出るともっと欲が出てくる、我輩は何もせずに死にたく無い、ここで死ぬだけじゃ我輩は罪を償えたとは到底思えない」
全員何も言えなかった。
だってそうだろ?人一人殺しただけのアタシや腕を折っただけの木曽、ほとんど冤罪で飛ばされた電や曙とは重みって奴が違うだろ?
「我輩の部下だった駆逐艦たち、我輩が吹き飛ばした島の住民、皆深海凄艦の攻撃で死んだことになっておる。」
「違うんじゃ、全部ここに居る愚かな一人の艦娘のせいなのだ、我輩はそれを…何としても、姉妹艦や遺族の方たちに伝えたい」
ははっ、と乾いた笑い声を上げて利根は続けた。
「我輩は極悪人だ、罪を償うと言っておきながらまた、罪を犯そうとしておる。でもな、我輩はそれでも、構わないと思っておる」
全員が沈黙したままだった。
が、木曽が口を開いた
「欲が出るともっと欲が出てくる…ねぇ、俺もわかるぜその気持ち、内地に居たころは週一で風俗に通ってたが、最近になってまた行きたくなった」
「なっ…おい木曽!我輩が真剣な話をしているのになぁ!!」
「そうだよ利根、アンタは笑ってる方が似合ってる」
「…我輩も焼きが回ったのか?軽巡風情に諭されるとはなぁ?」
「曙ちゃんは、どうなのです?」
次は曙だった。
本人にミスは無いにもかかわらず、責任を追及されてこの艦隊に異動、理不尽さでは右に出る物は居ないだろう。
「私には反対する理由は無いわ、それにうまく行けば前の艦隊のクソ提督をぎゃふんを言わせることも出来るでしょ?」
「他に反対の方は居ないのですか?もし反対なら…お願いなのです、今のうちに名乗り出てください」
一人も、居なかった。
「決まり、なのです」
決起が決まった。はいいが、それからどうするかは電も木曽もろくに考えて居なかったようだ。
もともと、一人でも反対が居れば諦める。と言うことだったらしい。
つまり、決起を決めた後誰一人案を出せなければ「決起しようと思いました」で、この計画は終わるわけだ。
「ま、俺たちらしくていいじゃねぇか?」
曙はいろいろ文句を言ってたが、木曽はんなの知るかとけらけらと笑っていた。
「決まった。とはいえ、どうするのだ?まさか本国の艦娘全員と戦うわけではなかろう?」
「そのとおりです。電たちの目的はあくまで軍に隠されてきた事件を国民に知らしめる事と、この島を軍の支配下ではない同等の存在と認めさせることなのです。もちろん、必要とあれば武力行使も厭わないのです」
「ま、そうだろうな…こんな艦隊を作っている連中がはいそうですか、と認めるとは思えないしな」
「そもそも、その目的二つはどうやって達成するのよ?私たちは皆沈んでいる扱いなのよ?」
曙の言うとおり、私たちは公式には沈んでいる。
プラカードを掲げて日本に向かえば哨戒網につかまり、怪しまれて拘束されて振り出しに戻るのがオチだ。
「…外国と連絡を取る。と言うのはどうだ?艦娘は日本とドイツしか実用化してない、それ以外の国なら…PM…Dだっけ?そんな感じで独立性を維持する事は…」
「PMC、民間軍事会社じゃな、とはいえ何処と連絡を取る気じゃ、何処と」
「そりゃあ…アメリカとか?」
「…うまく良くとは思えないのです、アメリカは日本の同盟国なのですから…その同盟国に喧嘩を売ってまで電たちを助けてくれるでしょうか?」
「それにアメリカなんて、どうやって行けばいいのよ、深海凄艦の群れを突っ切ってハワイまで行くつもり?グアムにすらたどり着く前に全滅するんじゃない?」
「愚策だな」
「愚策じゃな」
お前ら、よってたかって俺を責めるなよ。
「…じゃあ、この島から物理的にに近くて、比較的日本に敵対的な…」
「…中国か北朝鮮ぐらいしか思いつかないんだけど」
「…我輩は嫌じゃぞ、報道の自由は無いからわれわれの訴えが黙認される可能性が高いし、即刻拘束されて人体実験されるのがオチだろう?」
「信じて送り出した艦娘がアヘ顔ダブルピースする未来しか見えないのです」
「…何言ってるんだ電」
「この艦隊に長く居ると見たくない物が見えるのです」
電、苦労したんだなぁ…
「無線通信、と言うのも考えたのですが…この島の設備では海軍向けの暗号通信か民間用の電波しか出せないのです、どちらを出しても奇跡的に他国が協力してくれても距離的に日本から鎮圧部隊が派遣されるのです」
「武力行使は最後の手段、と言ったが…避けられそうにないのう…」
「でも…外に助けを求めるのはいい案だと思うわ、外国は無理でも、誰か国内に信頼できる人は居ない?その人とだけ連絡を取る手段があれば…国内からなら、情報発信も情報収集も、可能なはずよ」
「ナイスだ曙、でもなぁ…」
信頼出来そうな奴、なら国内に何人か居る。
たとえば第三艦隊の提督、彼はアタシがこの艦隊に来る前に、ずいぶん尽力してくれた。
鳥海や高雄姉なら…多少は力になってくれそうだ、愛宕姉?アレは頭がゆるいからこの手の話は出来ねぇだろ?
もしかしたら、武蔵の姐さんも力になってくれるかもしれない、もしそうなれば百人力だろう。
「球磨の姉貴なら…でもなぁ…そいつらとだけ、連絡を取ると言うのは…」
「電なら、出来るかもしれないのです」
「電?」
「電がこの艦隊に来る前、隊内微弱電波で暗号通信ごっこをした事があるのです、そのときの暗号はすべて暁型だけで考えて作ったオリジナルの物ですから、暁型以外には解読は不可能なのです」
「へぇ…ずいぶん手の込んだ遊びをするんだな」
「まあ、そのとき偶然電離層が発生していて国内中に放送されたりしましたが…内容までは解読されて居ません、あのときのノートを暁型の誰かが持って居てくれたら…」
「あぁ!?あのときの謎の電波、アンタだったの!?おかげで鎮守府巻き込んで通信機器の一斉点検やって大変だったのよ!」
「ご、ごめんなさいなのです!曙ちゃん!」
「でも…褒めてあげるわ!」
完全オリジナルの暗号、か。
暗号強度としてはいまひとつかもしれないが、その一回しか放送されて居ない、と言うのなら…暁型以外の艦娘や軍の情報部に解読される可能性は非常に低い、
コメント一覧
-
- 2015年03月10日 22:58
- 胸糞
-
- 2015年03月10日 22:59
- 微妙
あとレス被りそのままになってんぞ
-
- 2015年03月10日 23:08
- 俺は好きだなこういうの
良かったよ
-
- 2015年03月10日 23:21
- 嫌いじゃない
だが響さんがいささかこじつけじみてませんかね?
-
- 2015年03月10日 23:26
- 前作より劣化したなぁ。回収しきれてない伏線や描写不足も目立つ
これなら続編出さない方が良かったかもしれないというくらいの色んな意味で惜しい作品
-
- 2015年03月10日 23:28
- これ無事HappyEndで終わらせた体を取ってるけど、十五艦隊の各メンバーをきちんとカウンセリングしてケアしないと絶対後々問題起きるよな……
特に電はヤバい。
-
- 2015年03月10日 23:29
- 前作で引き込まれただけになんか筆者がどこかで逃げたように思えた
-
- 2015年03月10日 23:30
- >>5
描写不足は俺も気になった。けど、回収して無い伏線って有ったか?気にならなかったんだが
>>6
刑務所っぽいところに居るから、その点はやってるんじゃね?
-
- 2015年03月10日 23:34
- 普通に良かったと思うんだけど
-
- 2015年03月10日 23:36
- 一番最後の独白誰だ?木曽か?
-
- 2015年03月10日 23:36
- 前回もひどいけどさらにひどくなったなwww
-
- 2015年03月10日 23:38
- >>7
元スレとか見てるとわかるけど、作者は本来前作の最初とラストしか考えて無い。
で、少しだけ間を付け加えて前作投下、そしたらラストでみんな続きかけっつって慌てて今作。
って感じなんで、今作は本当に蛇足
-
- 2015年03月10日 23:41
- 悪くはない...が前作からの期待が大きかったのと、描写不足による悪い意味の後味の悪さが目立ってしまう
頭空っぽにすれば楽しめるかもだが考えて読み解きながら追っていくのがこのSSの魅力の一つだし...うーん...
-
- 2015年03月10日 23:46
- 転属された艦娘たちは他の艦娘に手を差し伸べられ歪んだ心境を変えることができた
提督は艦娘たちほどチャンスを与えられず、変わることができなかった
展開次第では、彼も反乱した艦娘と共に戦う未来があったのかもしれない
立場としては転属された艦娘と左遷された提督で大した差はない
が、ここの電は提督だけを切り捨てた
左遷提督が哀れだ
-
- 2015年03月10日 23:47
- >>14
自分だけで抱え込んで逃げて職務放棄した奴だからね、仕方ないね。
ぶっちゃけどっかで提督が自分から電に泣きつけば良かったんだよ。
仲間を頼らないほど悲しい事は無いね
-
- 2015年03月10日 23:49
- 前作がよかった分、今作は見劣りする
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- 2015年03月10日 23:52
- 最後にかけて一気にご都合主義的に収束したな。黒幕がいきなり無能化するという打ち切りエンドみたいな。
-
- 2015年03月10日 23:52
- 調子にのって作家気取りで続編書いちゃったのか痛すぎるな
-
- 2015年03月10日 23:54
- >>10
逮捕された軍令部の人じゃね?
-
- 2015年03月10日 23:57
- >>18と、なると続編を期待して書くように行った連中も同じように痛いな
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