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脳の疾患がもとで起きた奇妙な現象:腫瘍がもとで異常行動に走った2つのケース : カラパイア

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 脳の損傷は我々の行動や思考に様々な変化をもたらす。これまでの研究で、シリアルキラー(連続殺人者)の70%が、幼少期や思春期に頭部に大きな傷を負っていることがわかっている。また、カナダの研究では、女性受刑者の約40%に外傷性脳損傷(TBI)の病歴があり、しかもその多くが初めての犯罪を犯す前に発症していたことがわかった。

 大脳辺縁系が損傷すると、視床下部や側頭葉に影響を及ぼす。脳のこの部位はホルモン、攻撃性、感情、欲求と関わっている箇所で、ここが壊れると、まるで人格が変わったかのように、衝動的な行動を起こしたり、背徳的な思考をもってしまうのだ。

 今回は脳に腫瘍ができたことで異常行動を起こしてしまった2つのケースを見ていくことにしよう。
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1. 殺人者を生む腫瘍 「テキサスタワー乱射事件」

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 チャールズ・ジョセフ・ホイットマンほどその短い人生のうちのほとんどを模範的な市民として過ごした人はいなかっただろう。礼儀正しく、知性的で、まじめな若者であることは誰もが認めていた。17歳のときに幼なじみの恋人と結婚し、米海兵隊では腕のたつ狙撃兵として活躍し、従軍後はオースティンにあるテキサス大学の建築学の学生となった。

 ところが、1966年7月31日夜、ホイットマンは妻と自分の母親を刺殺し、翌日、銃を満載したバッグを持って、大学構内の建物に登った。そこに向かう途中で3人を殺し、建物に入ってからは高性能ライフルで10人を殺し、33人を負傷させた。臨月の女性は腹を撃たれてお腹の中の赤ん坊が殺され、その傍らで彼女の婚約者も撃たれて死んだ。最後は、警察によってホイットマンは射殺された。

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 この手の話はよく耳にするし、ホイットマンは銃を所持した若い白人男性という連続殺人魔のプロファイルに当てはまるが、彼がちょっと違うのは、妻と母親を殺した夜に、手記を残していることだ。

 “この頃、自分のことが本当にわからなくなった。自分は道理をわきまえ知的な、ごく平均的な人間のはずなのに、いつから始まったのか定かではないが、異常で不合理な数多くの考えの犠牲者になってしまった”

 “さまざまな思いの末、今夜、妻のキャシーを殺すことに決めた。彼女を心から愛している。ぼくにとっても、どんな男にとっても、彼女はできすぎた妻だ。こんなことをする明確な理由を理性的に(原文ママ)正確に特定することはできない”

 ホイットマンは自分の亡骸を検死解剖してもうらうよう望んでいた。というのも、この数ヶ月ひどい頭痛や奇妙な暴力の衝動に苦しめられていたからだ。彼は自分の脳の中でなにかが変わってしまったと考えていたのだ。

 “医者と約2時間話して、抑えがたい暴力の衝動が押し寄せてくる(原文ママ)自分の恐怖を伝えようとした。それ以来、医者に診てもらったことはなく、ずっとひとりで自分の頭の中の大嵐と戦ってきたが、それは無駄だったようだ”

 ホイットマンの予感は正しかったようだ。脳神経学者のデイヴィッド・イーグルマンが著作『Incognito: The Secret Lives of the Brain』の中で詳しく述べているが、検死解剖の結果、ホイットマンの脳の視床と呼ばれる部分に10セント大の腫瘍がひとつ見つかった。

 それが恐怖や怒りを統制する役割を担う扁桃体を圧迫していていたのだ。ホイットマンが豹変してしまった原因のひとつに、この小さな腫瘍があることは間違いないだろう。彼の心の理性的な思考部分をむしばみ、死へと追いやってしまったようだ。


Texas tower shootings - KTBC special


2. 小児性愛者をつくる腫瘍

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 2000年、アメリカ人男性が突然まるで人が違った行動をするようになった。教師であり義理の子どもをかわいがる善き父親だったこの男は、40歳を過ぎてから売春婦を買うようになり、見境なく児童ポルノを集め始めるようになったのだ。

 さらに悪いことに、思春期の義理の娘に手を出すようになったため、男の妻は彼を家から追い出した。男は児童へのいたずらで逮捕され、更生施設に入れられたが、ほかの患者やスタッフにまで性的いたずらをしたため、ついに刑務所に送られた。

 刑務所に入る前、男はひどい頭痛と抑えがたい衝動に苦しんでいた。医者による検査の結果、脳の眼窩前頭皮質という箇所に卵大の腫瘍が見つかった。ここは衝動をコントロールし、判断力や社会的な交流と関連している部位だ。腫瘍を取り除くと、異常な性衝動が消え、数ヶ月後には男は家族と共に家に帰った。

 ところが一年後、男は再び頭痛を訴え、またしても小児性愛の傾向を見せ始めた。脳をスキャンしてみると、またしても腫瘍がぶりかえしていたが、切除するとやはり衝動もなくなった。本人も自分の行動は悪いことはわかっていたが、快楽原則のほうが抑制力を上回ってしまっていたのだ。

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 前頭葉がダメージを受けると、衝動を抑えることができなくなる。脳科学者のデイヴィット・イーグルマンは、こうした事例を使って、責任の概念というものがあやふやになることを指摘する。上記の男は自分の行動に責任があるのだろうか? 前頭側頭認知症の人はどうなのだろう? わたしたち自身は脳の権化なのだから、脳が変わってしまったら、わたしたちはどうなるのだろうか? 現在の神経科学の考え方を反映して、法律そのものを変えるべきなのだろうか?

via:.buzzfeed・原文翻訳:konohazuku


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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 20:53
  • ID:5xDyV.yV0 #

悲しいけど、心や精神などの自我は物質的なものなんだなと改めて実感した。

痴呆になって性格が怒りっぽくなった親族がいて実感している。

2

2. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:00
  • ID:tKGhq0q80 #

俺にも腫瘍があるに違いない

3

3.

  • 2015年03月20日 21:10
  • ID:CVHErLJi0 #
4

4. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:10
  • ID:.YaACLRO0 #

ホイットマンはフルメタル・ジャケットの台詞にも出てきたよね、頭痛や不安を抑えようとして違法な薬品を使ったら脳腫瘍による精神不安定と合わさって一時的に精神がおかしくなり乱射事件を起こしてしまったって説もあったりする

5

5. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:14
  • ID:eRF96d.r0 #

理性とは何か

6

6. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:14
  • ID:hZrlXu6r0 #

善良な人間であっても病に立ち向かえないってのは恐ろしいわ

7

7. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:16
  • ID:.2w6fPLq0 #

これは怖いな
いつ自分も・・・・

8

8. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:24
  • ID:14h.vg5P0 #

後者は言い換えると人間誰しも根底には小児性愛者になりうる危険性があるってことでしょうか?

9

9. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:28
  • ID:QBfmnDvt0 #

ケガが原因なのか病気が原因なのかハッキリしろ
と思ったが今回の例はどれも病気だけをあげているわけか
自分も昔、コンクリートと激突したことがあるので今空ながら怖い
頭痛などはおこらないけど

10

10. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:37
  • ID:2OjWD.WZ0 #

もしも腫瘍等の疾患が原因で犯罪を犯したのなら、それは本人の意志を超えたものが原因の犯罪だから、個人的に罪に問うべきではないと思うなぁ

11

11. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:46
  • ID:E6Swcsmk0 #

※8
それはただの一方向の結果に過ぎない。
重要なのはあらゆる多様な衝動を抑えることができなくなるということ。

12

12. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 21:47
  • ID:6Btn2Ve30 #

連続殺人は脳の故障ってよくよく考えれば不思議だよな
例えば昔の英雄って見方によっちゃとんでもない連続殺人鬼だよね
あきらかに殺しが楽しくて英雄にのし上がったってやつもいる
今の時代戦争がないから連続殺人が目立ってきたと思うんだ
脳の故障が異常者を歴史のヒーローにした
じゃぁホイットマンは生まれた時代を間違えたか?

13

13.

  • 2015年03月20日 21:50
  • ID:S5ZliIpo0 #
14

14.

  • 2015年03月20日 21:52
  • ID:SuWIdcgE0 #
15

15. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 22:14
  • ID:bxffQ.NN0 #

「どんな理由があろうと責任は責任だ」が人類の金科玉条だろうな。

16

16.

  • 2015年03月20日 22:14
  • ID:tkAT.41.0 #
17

17. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 22:24
  • ID:htKPjrhn0 #

ロボトミーとかいう狂気の沙汰

18

18. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 22:34
  • ID:aXUc8xda0 #

※12
戦場で百人殺しても、それが味方や非戦闘員ならただの犯罪者で英雄にはなれないぞ。
そもそも、あきらかに殺しが楽しくて英雄にのし上がった奴って具体的に誰だよ。

19

19. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 22:52
  • ID:H8Ojqia10 #

更生という、おとぎ話が通用しなくなったようだね。
自分という個体の責任は自分でとれ。

20

20. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 22:55
  • ID:OkI4Zv6H0 #

物理的な原因がある方が安心する。
治療可能って事だし。

21

21. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 23:06
  • ID:g30PzDZS0 #

死刑判決がでた犯罪者の脳の解析こそが犯罪の予防につながる。
判別分析などでかなり確実的確率で予見が可能だろう。
更生教育しても、重犯を犯すものと犯さない者が必ずでる。
こころの教育などは意味がない。判断するのはすべて悩。
警察はもっと医学界と連携し、悩の統計学を修学する必要がある。

22

22. 匿名処理班

  • 2015年03月20日 23:18
  • ID:XiJlLb3M0 #

※18
その通り。
近代以降の戦争にはルールがあり、殺されない為には殺さざるを得ない。
そして敵兵だろうと死者を埋葬し、黙祷する事すらある。
殺したいから戦争へ行くというのは、まるで子どもの発想だよ。
守りたい誰かの為に、故郷の為に、青臭いアニメーションのヒーローの様だが、本当にそういう気持ちで戦う人もいるんだよ。

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