三船美優「心から笑える今……」
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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 12:53:34.36
美優(……寒い……)
美優(クリスマスなのに、海なんてやめておけばよかったのかな……)
美優(でも家に1人でいても……仕方がないし……)
美優「はぁ……」
美優「……」
美優「……?」
「は、はやまっちゃダメだ!」
美優「えっ……?」
美優(男の、人……? 誰……?)
「そんな勿体ないことするぐらいなら、俺にあなたの人生をください!」
美優「え……えぇぇっ!?」
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 13:00:27.58
美優「あ、あの……」
「もったいないですよ! あなたみたいな美人が、何があったか知らないけれど自殺だなんて!」
美優「じ、じさつ……?」
「え?」
美優「あの……私は、海を見ていただけで……」
「……」
美優「……あの……」
「ま、間違えました。すみません……」
美優「い、いいえ……別に、お気になさらず……」
「で、でも! よければなんですが、俺に人生を預ける気はありませんか?」
美優「じ、人生って……どういう……」
「あっ、名乗ってませんでしたね……俺、アイドルのプロデューサーやってるんです。あなたをプロデュースしたい!」
美優「アイドル……?」
P「はい!」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 13:07:18.82
美優「……」
P「急な頼みだとは思いますけれど、でもあなたを見て俺はこう、ピーン! と来たんです!」
美優「は、はぁ……」
P「あ、怪しい事務所じゃないんですよ? ちゃんとホームページもありますし! これ、名刺です」
美優「……」
P「売込み中のアイドルとか……渋谷凛、って知ってますか?」
美優「あ……聞いたことはあります」
P「彼女も、うちの事務所の所属アイドルなんですよ!」
美優「……そうなんですか」
P「え、えぇ……あの、ひょっとして何か……」
美優「いえ、怒っているわけではありません……その、人付き合いって苦手で……」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 13:15:15.05
美優「なにを話していいのか……こんな私が……人前に立てるんでしょうか……?」
P「立てます、立たせてみせます! もったいないですよ!」
美優「……」
P「あの、どうでしょうか?」
美優「……三船美優と申します」
P「え?」
美優「私の、名前です……少し、考えさせてください」
P「わ、わかりました! 連絡先は名刺に書いてありますから!」
美優「……はい」
P「あの!」
美優「は、はい……?」
P「俺、まだまだプロデューサーとしては未熟ですけど人を見る目はあると思ってるんです!」
美優「……」
P「だから、ぜひ前向きに考えてください! お願いします!」
美優「……ありがとうございます……」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 13:22:12.94
美優(アイドル……私が……)
美優(こんな年なのに……?)
美優「……」
美優(……どうしたらいいのかしら)
美優「……でも……」
美優(不思議な人だったな……)
美優(……あなたの人生をくださいなんて、一瞬ドキっとしちゃった)
美優「家にいても、やりたいことも無いし……」
美優「いっそ、思い切ってしまおうかしら……?」
美優「あ……そうだ、名刺に書いてあるホームページ……」
美優「……みて、みようかな」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 13:33:02.94
美優「……これが……」
PCの画面に映るのは、きらびやかな衣装に身を包んだ女の子たち。
すごく楽しそうに笑う彼女たちは、とても可愛くて……
美優「アイドル……」
美優「……私が、なれるのかしら……こんな、風に」
美優「……」
とても無理だと、思ったのだけれど。
何故か電話に手が伸びていました。
美優「……もしもし、あの。私は……」
電話には、優しそうな声の女の人が出て、面接の予約を取り付けました。
これが、私がアイドルになった最初の一歩。
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 13:39:29.86
美優「ここが……」
プリントした地図に従って、事務所へ。
想像していたよりも一回り小さな建物が迎えてくれました。
美優「……」
心を決めてきたはずなのに、なんだか拒絶されているような気までして、
なかなか踏み出せずにいると、後ろから声をかけられました。
P「あれ……あの時の!」
美優「え? あ……」
P「えーっと……そう、三船さん、三船美優さんですよね! よかった、アイドルになってくれるんですね!?」
美優「あ……まだ、面接を……」
P「そんなの合格に決まってるじゃないですか! 俺が見込んだんですから間違いありません!」
美優「いえ、あの……」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 13:50:23.45
P「大丈夫ですよ、ちひろさんだってきっとわかって……」
凛「……事務所前でなにやってるの? プロデューサー」
美優「あ……」
そこに立っていたのは、渋谷凛ちゃん。
最近売り出し中のアイドルで、テレビでも時々みかける子。
そんな女の子が、目の前にいる男の人を『プロデューサー』と呼ぶのを見て、
この人が本当にプロデューサーなんだ、と少しだけ驚きました。
P「あ? おぉ、凛! いや、俺がスカウトした人がアイドルになるために来てくれたんだよ!」
凛「え? あ……」
美優「……」
軽く会釈をすると、向こうも返してくれました。
凛「……あんなスカウトで、本当に人が来てくれるなんて」
P「あんなとはなんだよ、あんなとは! 俺は自分の直感をだな……」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 13:56:00.47
凛「あ、そうだ。じゃあ今日は面接ですか?」
美優「え? あ、はい……」
凛「それなら、案内しますから。こっちです」
P「え、案内なら俺が……」
凛「プロデューサーはいいから」
P「……」
美優(あ、しょんぼりしてる……)
凛「いきましょうか」
美優「あ、はい……」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 14:14:54.94
美優「……」
凛「……あの」
美優「は、はい……」
凛「あんな人だけど、プロデューサーとしての腕は確かだから」
美優「……」
凛「きっと、一緒にアイドルやれるって思ってます。それじゃあ」
美優「……ありがとうございます」
凛「……」
少しだけほほ笑んで、手を振ってくれた彼女は、
確かに、アイドル渋谷凛でした。
美優「……アイドル……」
その時は目の前の事務室の扉が、とても大きく重いもののように見えました。
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 14:25:02.12
美優「……」
覚悟を決めて、ノック。
トントントンと3回叩くと、電話をとってくれた女の人の声が返ってきました。
ちひろ「はーい! あら……」
美優「あの、面接の予約をさせていただいた……」
ちひろ「あぁ、わかりました! どうぞ、こちらへ」
美優「はい……」
ちひろ「えーっと、三船美優さん……で間違いありませんね?」
美優「そう、です……」
ちひろ「……プロデューサーさんに声をかけられたんですよね?」
美優「……はい」
ちひろ「あの人、ちょっと変なんですよ。怪しまないであげてくださいね?」
美優「え、えぇ……」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 14:38:58.76
ちひろ「おっと、話がそれちゃいましたね……あの」
美優「は、はい……」
ちひろ「アイドルに、なりたいですか?」
美優「……はい」
ちひろ「レッスンも、楽ではありませんよ?」
美優「……大丈夫です」
ちひろ「これまでとは、違う世界にいく覚悟はありますか?」
美優「……それは」
ちひろ「それは?」
美優「……わかりません。でも、変わってみたいと、思えたんです」
ちひろ「……なるほど、わかりました」
ふぅ、とためいきをひとつ。
真剣な目でこちらを見つめられました。
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 16:01:39.59
ちひろ「では、雇用条件はこちらの紙に書いてありますから読んでくださいね」
美優「え? あの……」
ちひろ「なんでしょう?」
美優「その、なにか……特別なこととか、しなくてもいいんでしょうか……」
ちひろ「うーん、まぁ……プロデューサーさんが見込んだのなら、間違いないでしょうから」
美優「……そうなんですか?」
ちひろ「それに、我が社はアイドルになりたい女性を全力で応援するのが使命ですから!」
美優「……すごいですね」
ちひろ「えぇ、そういう会社ですから」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 16:14:46.56
思っていたよりもあっさりと。
私はアイドルになれた……ようです。
実感はわかないけれど。
美優「これで、いいのかしら……?」
美優「……」
レッスン場を覗いていくといいといわれて、ふらふらと歩きまわると、
何人かがレッスンをしている様子でした。
私よりもずっと若そうな人達ばかりで、やっぱり場違いじゃないかなんて思ってしまったりもして。
美優「……」
それでも、あの中に自分が立つとしたらと考えてみると、
なんだか胸が高鳴るようで。
何かに打ち込もうと思えたのは久しぶりでした。
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 16:22:23.16
数日後。私の初めてのレッスンの日。
P「三船さん!」
美優「あ……プロデューサーさん」
P「よかった、アイドルになってくれるんですね!」
美優「……少し、興味があっただけで……私がなれるかは……」
P「なれます! させてみせますよ!」
美優「……」
P「レッスンですよね? さぁ、こっちへ」
美優「は、はい……」
P「今日はとりあえずどれだけ動けるかを見るために軽めのからやってみましょうか」
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 16:26:43.57
美優「ふっ……くっ」
思っていたよりも、ずっと辛い。
これまでロクに運動をしてきたわけでもないのだから、あたりまえなんですけれど、
初めてのレッスンの感想はそれでした。
P「いったん休憩しましょうか?」
美優「す、すみません……」
P「うーん、ボーカルはなかなか。ビジュアル……表現力もいいと思いますがダンスはこれからですね」
美優「は、はい……」
P「大丈夫です。これからゆっくりやっていけばいいんですから!」
そういって笑うプロデューサーさんはとても幼く見えて、
まるで少年みたいだな、なんて思ってしまいました。
P「三船さん?」
美優「あ……はい。よろしくお願いします……」
P「はい、任せてください!」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 16:33:43.05
P「ふぅ……やっぱり、いいですよ!」
美優「そんなことは……」
P「あります! そりゃあ、まだ慣れていませんけれどそこは経験で補えますから」
美優「でも、私はもう若くもありませんし……」
P「年齢がなんだっていうんですか! シンデレラがいくつかなんて絵本には書いてありませんよ?」
美優「……」
P「三船さんは美人なんですから、もっと笑顔が欲しいですね」
美優「笑顔……ですか」
P「えぇ。まだ辛いとは思いますが……やっぱり美人は笑ってるのが一番ですよ!」
美優「はぁ……」
恥ずかしいセリフを、軽く言ってしまえるのは彼がプロデューサーという仕事をしているからなのか。
私にはわかりませんでしたが、悪い気分にはなりませんでした。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 16:44:23.35
それから何日も時間がたって。
レッスンにもようやく身体がついていくようになったころ。
美優「……お仕事、ですか?」
P「はい!」
美優「でも……私、まだ」
P「大丈夫ですよ、三船さんならできます」
美優「……」
P「今回の仕事は、ぜひ三船さんにやってほしいんです。きっとイメージにもあいますから」
美優「……そこまで、いうのであれば……」
P「はい!」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 16:50:19.53
美優「……あの」
P「なんでしょう?」
美優「これ、衣装……ですか?」
P「はい、そうです」
美優「……リボンがたくさん……」
P「プレゼントを意識したグラビアです。どうでしょう?」
美優「……私に、似合うでしょうか」
P「絶対に似合いますよ! 俺が保証します」
美優「……ふふっ、不思議な人ですね。プロデューサーさんって」
P「そうですか?」
美優「えぇ……なんだか、できそうな気がしてきました」
P「それは何よりです」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 17:01:11.17
―――
――
美優「……ふぅ」
P「お疲れさまでした。どうでしたか?」
美優「……難しかったです。笑顔も、うまく作れませんでした……」
P「そうですか? 結構綺麗に写ってたと思いますけれど……でも、向上心があるっていいですね!」
美優「いえ……プロデューサーさんが、見ていてくれたから」
P「?」
美優「……その、緊張もしましたし」
P「……そうなんですか?」
美優「はい、とても……」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 17:08:17.37
P「でも、成功だとは思いますよ」
美優「そう……でしょうか」
P「はい! カメラマンさんも満足していましたし、俺もよかったなぁって」
美優「……プロデューサーさんにそういってもらえると、自信が持てそうです」
P「そういってもらえると、プロデューサー冥利に尽きますけれど……でも、まだまだこれからですよ!」
美優「はい……あの……」
P「なんでしょう?」
美優「少し、お話しませんか……?」
P「話って、何のです?」
美優「……わかりませんけれど、でも。もう少しだけ……」
P「……わかりました。まだ時間もありますし世間話でもしましょうか」
美優「ありがとうございます……」
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 17:18:21.08
美優「プロデューサーさん」
P「どうしました?」
美優「少しずつですけれど……私、変われているでしょうか」
P「……アイドルとしてなら、輝きだしていると思いますよ」
美優「そう、ですか……」
P「きっと、このまま一流のアイドルになれるって俺は信じてます。それだけ三船さんは魅力的ですから!」
美優「そんなに、からかわないでください……」
P「からかってなんていませんよ。きっと今回の仕事でオファーも増えるはずです!」
美優「……そうでしょうか」
P「そうですとも!」
ああ、この人はアイドルを見るのが大好きなんだと気付いたのはこの時でした。
純粋に、プロデュースをしている時が幸せなのだろうと。
そして、少しずつ彼に惹かれていったのも同じ時期でした。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 17:28:03.56
―――
――
トレーナー「かなり慣れてきた感じですね。すごくいいですよ!」
美優「ありがとう、ございます……」
小さなお仕事が増えて、少しずつだけれどアイドルらしくなれて、
レッスンにも慣れてきたのか最初のころに比べればかなりこなせるようになった頃。
私に少しの転機が訪れました。
P「三船さん!」
トレーナー「あれ? どうしたんですか、プロデューサーさん」
P「あ、レッスン中失礼します。ちょっと用事がありまして」
美優「私、ですか……?」
P「はい! 大きなお仕事が入ったんですよ!」
美優「お仕事……ですか」
P「そうです。動物園ですよ、動物園!」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 17:42:18.30
美優「動物園……?」
P「えぇ、そうです。ゲリラライブイベントとアイドルとの触れ合いをメインに据えたアイドルサバイバル」
P「その中でも、ゲスト枠として優遇してもらえるそうなんですよ!」
美優「それって……美由紀ちゃんが前回遊園地でやった……」
P「そう、それです! どうでしょう?」
美優「……私に、できるでしょうか」
P「できると思ったから、貰って来たんです!」
真剣な瞳で見つめられると、嫌と言えなくなってしまうのは私の弱さからなのか、
それとも、彼に見つめられているからなのか。私にはわかりませんでした。
美優「……わかり、ました」
P「いよっし! じゃあ、先方には連絡を入れておきますね」
美優「は、はい……」
P「三船さん、レッスン頑張ってくださいね!」
トレーナー「……嵐のようにやってきて、疾風のように去って行きましたね」
美優「え、えぇ……」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 17:49:14.27
トレーナー「まぁ、プロデューサーさんらしいといえばらしいですけれど」
美優「トレーナーさんも、悩まされることがあったりとかするんですか……?」
トレーナー「えぇ、まぁ……なんというか、その」
美優「……?」
トレーナー「まぁ、私はトレーナーですからね! はい!」
美優「は、はぁ……」
何かを考えるようなそぶりをした後、少し顔を赤くしてあわてるようなしぐさ。
きっと何かがあるんだろうとは思いましたが、深くは追及しませんでした。
トレーナー「さて、それじゃあ大きなお仕事に向けてレッスンメニューも考えていきましょうか!」
美優「は、はい」
トレーナー「ハードすぎない程度には、厳しくいきますから覚悟してくださいね?」
美優「お手柔らかにお願いします……」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 17:59:37.14
―――
――
美優「……あの」
P「なんでしょう?」
美優「今回の、衣装合わせ……ですよね……?」
P「はい、そうです」
美優「……」
P「どうしました?」
美優「どうしました、って……こんな……」
そこにあったのは、かなり露出の多い虎柄の服でした。
おへそも丸出しでスカートもミニ、網タイツ付き。
おまけとばかりに、虎耳のついたヘッドホン……
私の、これまでのイメージとはかなり離れていると、そう思ってしまいました。
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 18:45:20.16
P「ダメでしょうか?」
美優「い、いえ……わかってます……プロデューサーさんが、ちゃんと私のことを考えてくださっているのは」
美優「分かってはいるんですけど……どうしてもやるんですか?」
P「はい! スポンサーさんの意向もありますけれど、こういうのもきっと似合うと思うんですよ!」
美優「う、うぅ……わかりました……着替えてきます……」
P「はい、待ってますね!」
美優「……こんな……私に……」
プロデューサーさんの眼は、純粋に期待している。
こんな……露出の多い服なんて似合いっこないと、思うけれど……でも……」
美優「プロデューサーさんの、ためだから……」
意を決して、着替えました。
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 18:54:19.67
美優「……ど、どうですか……?」
P「……」
美優「や、やっぱり変じゃないでしょうか……そ、それに、恥ずかしくって……」
P「いい……すごくいいです!」
美優「そ、そうでしょうか……」
P「あたりまえですよ! もう、素晴らしいです!」
美優「でもこんな姿知り合いに見られたら……」
P「見せつけてやりましょうよ!」
美優「え、えぇっ……!? あっ、アイドル……でしたね……」
P「そうですとも! 見られて美しくなるんですよ!」
美優「……でもこれは……その」
P「大丈夫です! 可愛いですよ、がおーっといきましょうがおーっと!」
美優「が、がおー?」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 19:00:08.32
P「はい、虎になるんです!」
美優「と、虎ですか……」
P「そうです!」
美優「が、がおー……うぅ」
P「うん、いい! 素晴らしい! 最高ですよ!」
美優「あ、あぁプロデュサーさん……鼻血が……」
P「おっと、ちょっとテンションあがりすぎました。でもすごくいいですよ!」
美優「プロデューサーさんが、そこまでいってくれるなら……」
P「えぇ、保証します! このイベントは成功間違いなしです!」
美優「人とのお話は……苦手ですけど……」
P「いざとなったらがおーっといけば平気ですよ!」
美優「は、はい……」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 19:12:55.32
P「それじゃあ、俺は別のお仕事の打ち合わせがあるので……本番まであと少し。がんばりましょうね!」
美優「はい……精一杯、頑張ります」
P「では、また!」
プロデューサーさんが、部屋から出ていって一息。
こんな派手な服を着ることなんて考えたことも無かったのに……
美優「……人と話すの……少し慣れたかな……」
アイドルとしての、私。
まだまだ苦手だけれど、ファンの人に触れる機会も増えてきて……
今回のイベントは、他のアイドルの人達やファンの人達と触れ合う機会がたくさんあるのがわかっているから、
それに応えられるようにがんばらないと……
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 19:19:31.13
―――
――
P「三船さん、お待たせしました」
美優「いえ、大丈夫ですよ……今来たところですから」
P「そうですか? しかし……」
美優「なんでしょう……?」
P「いえ。やっぱり三船さんは私服も綺麗ですね」
美優「……あ、ありがとうございます」
P「さて、下見がてら動物園ですよ!」
美優「私も、久しぶりなので楽しみです……」
P「俺もです。いやぁ……でも、俺とで良かったんですか?」
美優「……いいんです。私は、プロデューサーさんと来てみたかったんですから」
P「……光栄ですね、なんだか」
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 19:26:45.16
美優「プロデューサーさん、あっちにクジャクがいるらしいですけれど……」
P「クジャクですか……」
美優「どうしたんですか……? 苦手、だったりとか……」
P「いえ、俺……クジャクを見に行くと毎回羽根を広げられるんですよ」
美優「……え?」
P「それで、やたら派手に動き回って……ようするに、クジャクに求婚されるんです」
美優「……ふふっ」
P「わ、笑わないでくださいよ……クジャクにモテても仕方ないと思いはしますけど、こっちにとっては深刻なんですよ?」
美優「すみません、つい……」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 19:31:07.83
美優「でも……動物に好かれるのって、きっといいことですよ」
P「そうですかね……」
美優「そうです。優しい人かどうかって動物にはわかるらしいですから……」
P「……ありがとうございます」
美優「いえ……ただ思ったことを言っただけで……」
P「でも、三船さん」
美優「なんでしょう……?」
P「羽を広げて求婚するのって雄だけなんですよ……」
美優「……」
P「……」
美優「お猿さんがいるらしいですから、向こうにいってみませんか……?」
P「そうですね……」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 19:38:45.15
P「――結構まわりましたね」
美優「えぇ、ぐるりと一周しちゃいました……もう、夕方です」
P「あっという間でしたね……どうでした?」
美優「いつ以来かな、なんて思ってしまうぐらい久しぶりでしたけれど……楽しかったです。プロデューサーさんは?」
P「俺もすごく楽しかったですよ。イベントも成功させたいですね」
美優「えぇ、きっと……うまく、いきますよね?」
P「もちろんですとも!」
美優「動物といえば、アニマルテラピーというものもあるくらい、昔から癒しを与えるものとして見られてきましたし……」
P「癒し、ですか……アイドルとしての三船さんみたいですね」
美優「な、なにを……」
P「本心ですよ。美優さんにはいつも癒されています……この前もらったお香も使わせてもらってますし」
美優「あれは……趣味の延長みたいなものですから……」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 19:44:46.98
P「でも、やっぱり三船さんからもらったっていうのは大きいと思うんですよ。よく知っているから身体に合う気がしますし」
美優「……そんな風に言ってもらえると、嬉しいです……あっ」
P「どうしま……あぁ」
美優「トラさん起きちゃいますね。……しーっ、ね?」
P「……」
プロデューサーさんが、小さくうなづいたのを見て少し笑う。
こんな些細な時間が、とても大切なものとして感じられました。
美優「……ふふっ、寝ていると……猫みたいで」
P「……そうですね、可愛いです」
美優「小さいころ飼ってた、トラ猫……思い出しました」
P「猫、飼ってたんですか?」
美優「えぇ……とっても、可愛かったの」
P「……そう、なんですか」
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 19:57:17.75
美優「……動物飼おうかな」
P「え?」
美優「あ、いえ……」
昔、飼っていた猫が死んでしまった時。
大切な何かが欠けてしまった感覚で、胸にぽっかり穴が開いたようで。
あの時は、こんなに悲しいのなら二度と動物なんて飼わないほうがいいんじゃないか、と思ったのですけれど。
なんだか今日は、もう一度……そばに何かに、誰かにいてもらえる温かさを思い出せたようで。
美優「……虎は無理ですね」
P「流石に、無理じゃないでしょうか……どうして、急に?」
美優「いえ、少し思うことがあっただけです……帰りましょうか」
P「は、はぁ……」
少し、キョトンとした風のプロデューサーさん。
やっぱり、この人といると自分が柔らかく、温かい何かに満たされるような感覚を味わえるんだな、なんて
そんなことを思いながら、帰路につきました。
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 20:14:17.33
―――
――
美優「……はぁ、ふぅ」
トレーナー「はい、今日はこれで終わりです! いいですね、最近キレも良くなってきてますし何かいいことでも?」
美優「次の、アイドルサバイバルに向けて……もうすぐですから、がんばらなきゃと思っただけです……」
トレーナー「ほほーう……?」
美優「な、なんですか……?」
トレーナー「いえいえ、何も……そうですね。がんばってください!」
トレーナーさんがニヤニヤと笑いながら、背中を叩きました。
……なんだか、少しからかうような口調で。
別に、他意はありません……ない、はずなんですけれど……
P「お疲れさまでした。調子はどうですか?」
美優「プ、プロデューサーさん……?」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 20:43:32.93
P「差し入れです。無理はしないでくださいね?」
美優「は、はい……大丈夫です。ありがとうございます」
P「トレーナーさんにも聞きましたけれど、最近調子がいいみたいですね。やっぱり主役は燃えますか?」
美優「……ふふっ、そうですね」
P「俺もできる限りのサポートはしますから、困ったことがあったら相談してくださいね?」
美優「はい、大丈夫です……ありがとうございます」
もう、サバイバルの本番は目の前に迫っているのだけれど。
あんなに恥ずかしい衣装も、ファンの人との触れあいも、
今なら大丈夫だって思えるんです。なんて……
口には出せないけれど、あの日のおかげなんですよ、プロデューサーさん。
P「……どうかしましたか?」
美優「いいえ、なんでもありませんから……きっと、うまくいきますよ」
P「はい、楽しみです!」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 20:46:57.46
―――
――
あっという間に時間は経ってしまって、今はもうアイドルサバイバルの最中。
他のアイドルの人達も、ファンを沸かせて楽しませているのが伝わってきました。
美優「す、すごい歓声……でも」
負けられない、負けたくない。
プロデューサーさんのためだけじゃなく、私のためにも、今は……
この場にいる人達を、楽しませたい。
美優「……見ててください」
他の子のお仕事があるから、ここにはプロデューサーさんは来れなかったけれど、
きっと、見に来てくれると信じて。ステージへと足を踏み出す。
美優「み、みなさん……!」
トークは相変わらず苦手だけれど、でもせめて……
私にできることは、できる精一杯は……
考えた末に、私がしたのは――
美優「が、がおー……」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 20:52:47.01
会場には、一瞬の静寂。
プロデューサーさんが教えてくれた、いざっていう時の勇気は……
「うおおおおお! 三船さん素敵だぁぁああああああ!」
「がおおおおぉぉ!」「俺が美優の寅さんになるぞぉぉおおおお!」
どうやら、成功、だったみたいです。
美優「わ、私も……精一杯歌います。楽しんで、ください……!」
会場を包む大歓声。
どうにかそのあとの曲も歌いあげて、イベントは成功させることができました。
95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 20:59:30.36
美優「ありがとうございました……!」
アンコールも終わり、大きく礼をしてLIVE会場を後にすると、
控室にはプロデューサーさんがいました。
美優「プロデューサーさん……」
P「みてましたよ! 三船さん、すごく可愛かったです!」
美優「あ……どこから……?」
P「がおーからです! ギリギリで間に合いましたね」
美優「っ~~~!?」
P「いやぁ、まさかあの場面で出るとは……俺も思わずスタンディングオベーションしちゃいましたよ!」
美優「わ、忘れてください……は、はずかしいです……」
P「いいじゃないですか! 会場も盛り上がりましたしもうあれは永久保存決定ですね」
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 21:05:29.80
美優「も、もう……プロデューサーさん」
P「なんですか?」
ニコニコと楽しそうに笑うプロデューサーさん。
美優「あ、あんまりひどいと……噛みついちゃいますよ」
P「え……?」
軽く冗談じみて、手を構えて言うと、プロデューサーさんは困惑した様子。
少しの間が空いた後、おずおずとこちらに手を出して……
P「……ど、どうぞ?」
美優「え、えぇっ……?」
思わず、こちらが困ってしまいました。
101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 21:19:04.71
美優「じょ、冗談ですよ……?」
P「え、はい……そうですよね、えぇ! わかってましたよ?」
それなら、どうしてあんなに困った顔をしたんだろう……
そう突っ込むのは、やめておきました。私も、恥ずかしかったから。
美優「……でも、よかった」
P「え?」
美優「プロデューサーさんは、お仕事を楽しんでますよね……」
P「は、はい。そうですね! やっぱりアイドルが輝くところを見るのが一番好きです!」
美優「素敵だと思います……私がお仕事を頑張れるのも、そのおかげです」
P「……それって、どういう……」
美優「こんな格好になるなんて……プロデューサーさんに出会わなければあり得ませんでした……」
P「は、はは……すみません」
美優「いえ、恥ずかしいど……少し……楽しかったです」
P「本当ですか? よかった……」
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 21:26:27.72
美優「……だから、私は……」
P「み、三船さん……?」
勇気を出して、もう少し……その時、ドアの前に人の気配。
スタッフ「すみません、三船美優さん。少しお話があるそうなのですが」
美優「え? あ、はい……今開けます」
P「あ、話だったら俺が……」
スタッフ「いえ、個人的な話になるそうなので……あ、プロデューサーさんにも次回以降のお話が別でしたいそうです。よろしいですか?」
P「え? あぁ、はい……わかりました」
私と、プロデューサーさんが別でそれぞれ個人的な話……?
なんだか、少しだけ違和感を感じながらもそこでプロデューサーさんとは別れました。
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 21:43:36.74
美優「それで、お話って何でしょうか?」
スタッフ「いえ、今回のイベント内容についての参加者目線でのご意見と――」
参加してみての感想、参加者目線での改善点。
イベント会場の設備について……簡単なアンケートに答えることになりました。
これなら、プロデューサーさんも一緒でもよかったような……?
スタッフ「……」
ちらりとスタッフのかたを見ると、向こうはずっとこちらを見ていたようでした。
……この服、やっぱり露出が多いから……?
会場の大勢の人達の前でこの格好のまま歌っていたことを思い出すと、顔が熱くなってくるのを感じました。
スタッフ「どうしました?」
美優「あ、いえ……なんでもありません……」
そそくさと、簡単に用紙に記入を終えると楽屋に逃げるように戻りました。
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 21:47:56.14
男「うん、ご苦労さま」
スタッフ「あ、用紙回収しました。……わざわざ呼び出してまでここで書いてもらう必要、あったんですか?」
男「うん? あったとも……いいよねぇ、彼女」
スタッフ「いやぁ、今売れてるだけありますよね……適度に熟れた感じがまた、ね」
男「ん? いやぁ、そうじゃなくて……」
スタッフ「はい?」
男「ま、いいや。キミに言っても仕方ないからねぇ……ふっふっふっ……」
スタッフ「は、はぁ……それじゃあ、失礼します」
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 21:58:15.38
美優「……プロデューサーさん、まだ帰って来てないのかしら?」
楽屋に戻ると、まだ荷物は置きっぱなし。
プロデューサーさんはさっきの呼び出しから帰ってきていないようでした。
美優「少し、待とう……?」
ドアが、ガチャリと音を立てて開く。
プロデューサーさんが帰って来たのかと思ったけれど、違いました。
男「……」
そこに立っていたのは、少し太めの男性。
高そうなスーツに身を包んでいて、見るからに偉い人を地でいくような人でした。
美優「ど、どちらさまでしょうか……?」
男「ん? んー、まぁまぁ、少し話をしようよ」
こちらの疑問には耳を貸さず、近くにどかりと座るその人。
煙草の嫌な臭いが鼻につきました。
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 22:05:07.92
美優「あの……」
男「あのさ、お宅の事務所……アイドルいっぱいいるよねぇ」
美優「は、はぁ……そうですね、でもそういったお話はプロデューサーさんに……」
男「仕事、減ると困るよねぇ……」
美優「……え?」
男「いやねぇ、最近は不景気だからね……仕事が減れば、困っちゃうよねぇ……」
美優「それって、どういう……」
男「さぁ、どういう意味だろうね。でも……キミが頑張ればどうにかなるかもしれないなぁ」
美優「……」
ニヤニヤと、嫌な笑いでこちらを見つめてくる男の人。
その視線がねちっこく身体を這っているようで、鳥肌が立ちました。
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 22:12:46.37
美優「……私に、何をしろというんですか?」
男「ん? ……そうだなぁ、いろいろとしてもらいたいかな」
美優「お断りします……そんなめちゃくちゃは通りません」
男「そうかい? まぁ、気が変わったらこの番号に連絡してくれよ」
美優「きゃっ……!?」
胸元に無理やり紙を押しこむと、男の人は楽屋の出口へと向かって……
男「あ、そうそう。ひとつだけ忠告しとこうか」
美優「……なんですか?」
男「別にキミが僕に連絡をくれなくても構わないけど、他の人にその件を相談するのはオススメしないよ」
美優「どういう、ことでしょうか……?」
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 22:23:06.82
男「なに、その時はキミ達も困ることになるかもしれないってことさ……それじゃあ」
美優「っ……」
ゾクリと悪寒が走るほどに嫌な笑み。
それだけをいうとその男の人は楽屋を出て行きました。
美優「……あんな脅しなんかに……」
ねじ込まれた紙を取り出すも、捨てることはできず。
そのあと帰ってきたプロデューサーさんに相談することもできないで、
今回のイベントは少々のしこりを残す形で終了しました。
きっと、ただの脅しだと思いながらも私の中には恐ろしい予感が渦巻いていたのです。
119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 22:30:02.87
―――
――
P「は? ですから……ちょっと!?」
美優「おはようございま……ど、どうしたんですか?」
P「え? あ、美優さん……おはよう、ございます」
美優「あの……何か、あったんですか……?」
P「あ、いえ……な、なんでもありませんよ」
美優「……本当ですか?」
P「え、えぇ……今日は、レッスンですね!」
美優「はい……」
P「……頑張りましょうね、いきましょうか」
美優「はい、わかりました……」
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 22:38:55.30
明らかに、事務所に入ってきた時の様子はただ事ではありませんでした。
でも、プロデューサーさんが話せないというのなら……私は待つしかないと、思ったのです。
美優「……」
トレーナー「はい、ストップ……どうしたんですか? 上の空ですよ」
美優「す、すみません……」
トレーナー「プロデューサーさんとうまくいってない、とかですか?」
美優「そういうのじゃ、ありません……それに、ただの嫌な予感というか……」
トレーナー「……女の勘ってあたりますからね。何か真剣な悩みなら私でも力になれる範囲で……」
美優「だ、大丈夫です。大丈夫ですから……きっと」
そう、きっと大丈夫。
朝の電話だって、よくあるちょっとしたもめ事なだけ……
そう、私は信じたかったんです。
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 22:47:21.74
―――
――
凛「……プロデューサー、今日の予定は?」
P「レッスン、だな」
凛「また? おかしいよね、ここのところずっとレッスン。お仕事、無くなるにしたって急過ぎるし」
P「……すまん、まるでわからないんだ。でもきっとすぐに仕事をとってくるから」
凛「……うん、わかった。でもプロデューサーも無理しないでね。ひどい顔してる」
P「そうかな……すまん。ありがとうな」
凛「プロデューサーが身体壊してたら仕方ないでしょ? 気をつけてよ。私達には散々言うくせに」
P「おう……」
美優「……」
そんな話を聞いてしまったのは、数日たってからのことでした。
凛ちゃんはうちの事務所の中でも一番の売れっ子で、テレビのお仕事だって最近は増えてきていたのに……
『キミが頑張ればどうにかなるかもしれないなぁ』
あの時の、あの男の人の嫌な笑顔を思い出してまた鳥肌が立つのを抑えられませんでした。
126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 22:58:59.31
それから、日に日にプロデューサーさんの顔色は悪くなっていくばかりで。
私も含めたみんなが、ここ数日まともなお仕事につけていないのが現状でした。
レッスン、レッスン、レッスン……不満を漏らす子も、少なくなく。
いったいどうしてこうなっているのかもわからずプロデューサーさんはお手上げの様子でした。
美優「……私が……いけば……」
手元には、あの時捨てられなかった紙。
あの男の人の連絡先の書かれた、それ。
現状で、こんなことになっているのだから……他の人に相談したらどうなるか。
それを考えると、誰かに言うこともできず、ただ悩んでいました。
もし掛ければどうなるかは想像に難くないけれど……でも。
皆が、事務所が、プロデューサーさんが……このままだと、壊れてしまいそうで。
私にできることがあるのなら……私一人で、みんなが助かるのなら……
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 23:15:00.76
そのまま、会う時間を決めて。
最初からわかっていたかのように飄々と話すその人に悔しさがこみ上げて来て……
少しだけ、泣いてしまいそうになったりして。
アイドルとして、人に笑顔を届けたいと……プロデューサーさんと一緒に頑張りたいと思ったのに、
こんな人に屈さないといけないと思うとたまらなく悔しかったのです。
美優「……みんな……プロデューサー、さん……」
ちひろ「きゃっ……!? おっとっと……あれ? 美優さん。どうしたんですか?」
美優「え? あ……すみません、少しぼーっとしてて……なんでもありませんから。出かけてきますね」
ちひろ「……?」
ふらふらと、でかける最中にちひろさんにぶつかりそうになってしまいました。
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 23:34:15.46
美優「……ここ、かしら」
立派なホテル。普段の私には、手も出せなさそうな……
ここの最上階で待つと、言われたのです。
美優「……」
決めたはずの覚悟が、どんどんと揺らいでいるのを感じても。
これしかないんだ、と……エレベーターに、乗りこみました。
高級感のあるその雰囲気は、かえって今の私にとっては重圧で。
今すぐにでも逃げ出したいという気持ちがどんどんと大きくなっていくばかりです。
美優「ごめんなさい、プロデューサーさん……」
それに耐えきれずに口から出たのは、プロデューサーさんへの謝罪の言葉でした。
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 23:45:32.64
私がいなければ。
私がいなければ、事務所は目をつけられなかったかもしれない。
私がいなければ、プロデューサーさんは困らなかったかもしれない。
だから、仕方ないんです……私が、原因なのだから、
私が、できることなら、しなければいけないんです。
そんな言い訳を心の中でしながらも、指定された部屋へは少しずつ向かっていました。
そして、指定された部屋の前――
美優「……」
コンコンコン、とノックを3回。
中で人が動く気配。
ガチャリ、とドアが開くと中からは……
男「やぁ、よく来てくれたね」
ニヤニヤと、厭らしい笑みを浮かべた男の人。
バスローブ姿の彼がそこにいました。
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 23:52:34.47
美優「……約束、してください」
男「うん? なにがかな」
美優「私に、何をしてもいいです……でも、もう、事務所の皆に手を出すのをやめてください」
男「ほうほう、そういえば最近はお仕事が減って大変なんだってねぇ」
しらじらしい嘘。咥えていた煙草を大きく吸うと、煙をこちらに吐き出してきました。
美優「けほっ……な、なにを……」
男「いやぁ、キミが頑張るならきっとお仕事も増えるんじゃあないかなぁ……これまでよりも、もっとね」
それでも、私はこの人に。
こんな人に、身体を捧げないと、いけないんです。
美優「そう……ですか……」
男「あぁ、キミの事務所の他の女の子たちはこれまで通りのお仕事が戻ってくると思うよ。たぶんね」
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/28(日) 23:58:53.79
美優「他の子達に、なにかをさせようとはしないでください」
男「うんうん、わかってるとも……さぁ、入りなよ。わざわざ立ち話もなんだろう?」
美優「……」
ほんの些細な抵抗。ドアの中に入らないでいたけれど、
半分引き寄せられるようにして部屋の中へと連れ込まれてしまいました。
男「若い子もいいけどねぇ、やっぱりある程度熟れていたほうが好みなんだよ」
美優「……」
男「キミなんかは、実に良いね。実に好みだよ」
美優「……」
少しも嬉しくなんてない。
こんな人に褒められたって、ほんの少しも……
男「やれやれ、だんまりかい……そうだなぁ」
男「まぁ、そこまでがっついても仕方ないしねぇ……どうだい、少し飲むかい?」
美優「……少しだけ、なら」
いっそ、こんな悪夢。
酔って忘れてしまいたいと、その誘いにはのることにしました。
141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:04:17.09
男「んー、それなりにいいお酒だよ。どうだい?」
美優「……」
男「もう少しおしゃべりを楽しもうじゃないか……これから愛しあうんだから、もっと深く知りあうべきだ」
どの口が、そんなしらじらしいことを……
睨みつけても、少しも堪えた様子はありませんでした。
男「ちょっと押したら折れそうなのに、一生懸命踏ん張ってるのもわかるけど……」
男「キミも勇気を出してきたんだろう? いまさら無理ですなんてのは聞かないさ」
美優「わかって、ます……それでも……」
それでも。心までは持っていかれはしないと決めたから。
プロデューサーさんのことを好きだと言えなくても、心は他の人になんて捧げないと。
愛しあう、なんて言い方はされたくなかったんです。
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:10:07.35
男「まぁいいや……それでね、キミたちの事務所のアイドルは皆可愛いけれど……」
美優「み、皆には……!」
男「あぁ、わかっているとも……大丈夫だよ、手は出さないさ……」
美優「それだけは、絶対に、破らないでください……私は、そのために……」
男「僕はフェアだよ。約束を反故にしたりしないさ」
フェアだなんて、とんでもない。
一方的にこちらを辱めようとしている癖に……
美優「……ありがとうございます」
男「いいさ、ほら……もう一杯」
美優「……」
もう、ダメなんでしょうね。
心から笑えると思った、あの時……私は、幸せでした。
また、動物園に行きたかった。
プロデューサーさんと、一緒に……夢を……
145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:17:04.59
美優「んぅ……」
男「だいぶ酔いもまわってきたみたいだねぇ、そろそろどうかな?」
美優「……」
ごめんなさい、プロデューサーさん。
私はもう、あなたの隣にいる資格はなくなってしまうでしょう。
でも、私はあなたのことが……
男「……ん?」
美優「……?」
ガンガンと何かを叩くような音。
男「な、なんだ?」
続いて、扉が開く音。
そこに立っていたのは――
P「おいこらオッサン……うちのアイドルに……」
P「俺の美優に、何しやがったああぁぁぁぁッ!」
美優「ぷろ、でゅーさ、さん……?」
149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:24:28.22
男「な、なんでドアがっ……あぐっ!?」
P「はぁ……はぁ……三船さん! 大丈夫ですか!?」
美優「ど、どうして……ここに……」
プロデューサーさんは、男の人を思いっきり殴りつけるとこちらに駆け寄ってきてくれました。
あぁ、これはきっと酔いからきた夢なんでしょう。
でも、たまらなく嬉しかったんです。私のせいで、みんなが困ってしまったのに。
P「その話は……」
男「な、何をするんだお前! いいのか!? お前のところのアイドルが、どうなっても!」
P「……やっぱりあんたが黒幕か。アイドルの皆の邪魔をした上に三船さんに手を出そうなんていい度胸してるな」
男「お前の事務所がつぶれれば、何人ものアイドルが路頭に迷うぞ!? それに暴力事件だ! は、ははっ! 大問題だぞ!」
P「うるせぇ! もう一発ぐらい……」
美優「や、やめてください……!」
P「……三船さん?」
151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:29:06.43
美優「私が……身体を差し出せば、まるく収まるんです……助けにきてくれたのは嬉しいですけれど、でも」
P「……三船さん」
男「そ、そうだ! 今なら許してやる! お、お前は逮捕だろうが……」
ちひろ「さて、それはどうでしょう?」
男「な、なんだ……お前は……」
美優「ちひろ、さん……?」
ちひろ「美優さん、ご無事で何よりです♪ ……本当に、まったく。無茶はやめてくださいね」
美優「でも、私が……」
ちひろ「大丈夫ですよ。ご安心ください……」
男「な、なんだと? 言っておくがな、本気になればあんな事務所……」
ちひろ「……さっきのくだりの録音は、当然とってありますが」
男「むっ……!?」
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:32:14.85
男「そ、そんなもの……どうにでも……」
ちひろ「えぇ、できてしまうでしょうね。お金の力って本当に恐ろしいです」
男「じゃあ、なぜ……」
ちひろ「じゃあ、何故? さて問題です。どうしてこの部屋のドアが開いたのでしょう?」
男「な……なにを……」
ちひろ「じゃじゃーん、マスターキーです♪」
男「なっ……!?」
ちひろ「お金があれば、なんとでもなるんですよねぇ。例えば……」
ちひろ「人一人が、消えてしまったとしても。すげかえるぐらいできてしまうんですよ?」
美優「ち、ちひろさん……?
男「ひ、ひぃっ……ち、ちひろ……まさか、千川、ちひろ……!?」
ちひろ「今の私はしがない事務員さんを楽しんでるんですよ。こんな素敵な業界に……」
ちひろ「汚いものは、いらないですよね?」
158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:36:46.46
ちひろ「それじゃあ、私はこの人と『お話』してきますから。どうぞお二人はごゆっくり」
男「ち、ちがうんだ! これは、その……」
言い訳をしながら引きずられていく男の人。
さっきまでの厭らしい笑みはなりを潜めて、親に怒られそうな子供のように怯えていました。
美優「……すごいですね」
P「えぇ、本当に……昔取った杵柄って言ってましたが、なんでしょうね」
美優「知りたいような、知りたくないような……複雑です」
P「そうですね……三船さん」
美優「あ……は、はい」
P「どうしてこんなことをしたんですか?」
美優「……すみません」
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:43:51.12
P「俺は、頼りなかったですか?」
美優「……他の人に、迷惑をかけるわけにはいかないと思って……」
P「迷惑ぐらい、かけてください。一緒に歩いていくのがプロデューサーとアイドルじゃないですか」
美優「でも……私は……」
酔いで、頭が働かない。
美優「プロデューサーさんが、困っていたから……私に、できることを……」
どうして、相談しなかったのか。それは――
P「困ってたって、そんなの……」
美優「プロデューサーさんが、優しいからです」
P「え?」
162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:50:22.81
美優「だって……ちひろさんが、あんな風に助けてくれなかったら……」
プロデューサーさんは、無茶をして、捕まってしまって。
他のアイドルの皆の夢まで破れてしまっていただろうから。
P「その時は、俺に出来ることならなんだってやって助けてみせましたよ! あんな奴なんかに屈したりなんかしません!」
美優「やっぱり、優しいですね……」
P「あたりまえでしょう。だって俺はプロデューサーで……」
話をしているうちに、少しずつ近づいて。
プロデューサーさんの顔を、間近で見つめていました。
P「あ、あの……三船さん?」
美優「私にとっては……それ以上に、失いたくない存在だったんです」
P「なに、をっ……!?」
ぐいっと引き寄せて、キス。
プロデューサーさん、驚いて目を見開いていました。
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:53:49.83
美優「私、あなたのことが……プロデューサーとアイドルとして以上に……必要だと、思ってしまったんです……」
P「三船、さん……」
美優「助けに来てくれた時、名前で呼んでくれましたよね……嬉しかった」
P「あ、あれは……その……」
美優「わかっています、それでも私、は――」
ぐらり、ぐらり。視界が揺れて、眠気が襲ってきました。
酔いは自分が思っていたよりもまわっていたみたいで、
緊張の糸が解けた今、意識を繋ぐのも辛いぐらいで――
P「三船、さん?」
美優「……すぅ……すぅ……」
P「……寝てる……?」
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 00:56:36.58
P「……は、はは。参ったなぁ」
P「思わず、本音が出ちゃったもんな……」
P「でも……まだ。俺は、この人を……」
どんどんまどろんでいく意識の中で。
プロデューサーさんの声だけが、遠くに聞こえていました。
―――――
―――
―
170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:01:31.79
美優「ん……ぅ……?」
P「あ、おはようございます。三船さん」
美優「え? あ、あれ……?」
目が覚めるとそこには知らない天井。
覚えのないベッド、そしてプロデューサーさん。
P「昨日、そのまま寝てしまったので……お金は大丈夫とのことなのでそのまま泊まりました」
美優「そう、ですか……」
昨日……昨日、そう私は……」
美優「あっ」
P「どうしました?」
美優「あの……昨日は、ありがとうございました」
P「いえ、当然ですよ! ……プロデューサー、ですから」
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:06:24.46
美優「……」
少しの、間。
昨日告白のようなことをしてしまったのは、夢ではないみたいでした。
美優「プロデューサーさん……その……」
P「は、はい?」
美優「私、酔っていて……」
P「……ちひろさんがいろいろとしてくれたんです。三船さんは、無事でしたよ」
美優「そうじゃなくて、その……」
P「……あれは、酔ったせい。ですか?」
美優「……いいえ、違います」
ここで、そうだと答えれば、きっと。
明日からも、プロデューサーさんは今までのように触れてくれるのでしょう。
プロデューサーさんは、優しいから。
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:12:19.07
P「……」
美優「私は、アイドルとして……それまでの自分とは違う自分を、プロデューサーさんに見つけてもらいました」
あの日、プロデューサーさんに見つけてもらえたから。
美優「誰かと出かけるのが楽しいなんて、あんなに恥ずかしい恰好をしてみる勇気が沸いてくるなんて」
あの日、私の人生をくれといと言ったあなたがいたから。
美優「私にとっては、初めてだったんです……そう、まるで……」
美優「プロデューサーさんの熱で凍っていた心が、溶かされたみたいで……隣にいれば、きっと」
美優「雪の舞い散る夜でも……心は温かいままでいられそうだと、思ったんです……」
P「……そう、ですか」
困ったように、頭を掻くプロデューサーさん。
もう、きっと。これまでと同じ関係では、なくなってしまうでしょう。
それでも、伝えたかったんです。
174:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:16:21.08
P「俺は、プロデューサーです」
美優「……はい」
P「アイドルとは、ある程度以上は……親しくなりすぎないよう、気をつけてます」
知っています。
プロデューサーさんと、一番長い付き合いの凛ちゃんはプロデューサーさんのことを「お父さんみたい」と言いました。
他の皆も、家族だったり、友人だったり。対等な関係を築いて、必要以上にまで干渉はしないということを。
P「でも」
美優「……?」
P「あの日、あの時。あなたを見つけた時」
P「俺は、プロデューサーとして声をかけるべきか男として声をかけるべきか、悩んだんです」
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:21:31.17
美優「それって……」
P「人生をください、って……まぁ、我ながら最低な第一声ですけれど」
P「迷った末に、どっちにもとれる言葉を投げたんです。もったいない! って」
美優「……あの時は、本当に驚きました」
P「えぇ……三船さん。俺はまだまだプロデューサーとしてもあなたを見ていたい」
美優「そう、ですか……」
P「だけど、それ以外でも、あなたのことが見ていたい」
美優「え?」
P「俺は、あなたを一生かけてプロデュースしたいです」
美優「……私の、一生を。プロデュース……」
P「えぇ、そうです。アイドルとしても、その先も」
美優「……私で、いいんですか……?」
P「あなたが、いいんです」
179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:28:20.11
P「……当然、男女の付き合いとしてみるのはまだ先です。売り出し中のアイドルですから」
美優「はい……」
P「でも俺は。あなたを独占したいんです……他に魅力的な男が出たとしてもとられたくない」
美優「……プロデューサーさん」
P「予約させてもらえませんか?」
美優「はい……」
P「って、み、三船さん!? 泣かないでくださいよ……」
美優「い、いえ……大丈夫、嬉しくても涙は出るんです。だから心配しないでください」
P「俺、きっと……三船さんをトップにしてみせますから!」
美優「はい……あの、ひとつだけいいでしょうか」
P「なんですか?」
美優「2人きりの時は、名前で呼んでください……」
180:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:32:11.42
P「わ、わかりました……美優さん」
美優「はい……それじゃあ、帰りましょうか……」
P「そうですね……えっと時間は……!?」
美優「あ……」
P「ち、遅刻ギリギリ!? まずいかも……美優さん、着替え大丈夫ですか?」
美優「は、はい……たぶん……ここに、着替えもありますし……」
着替えが入ってるはずのバッグを開けると、そこには動物園の時の衣装。
美優「……!?」
P「どうしたんです、か……?」
美優「ち、違うんです……! これは、その……」
P「ち、ちひろさんがすり替えたのかな!? うん、そうだな、はい!」
181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:36:17.73
美優「ど、どうしましょうか……流石にこの衣装で移動するのは……」
P「だ、大丈夫です似合いますから!」
美優「そ、そうじゃなくてですね……」
P「わ、わかってますよ、えーっと、そうだな……」
美優「……ふふっ」
P「な、なんですか?」
美優「いえ、なんでも……でも」
P「……?」
美優「私……心から笑える、今。とても、幸せです」
P「それは、なによりです……これからも笑顔で、いきましょうね?」
美優「はい……」
おわり
P「それはそうとして、どうしよう!? 何故か俺の予備の着替えがワイシャツしか入ってないのもちひろさんの仕業か!?」
美優「えぇっ!?」
本当におわり
183:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:38:49.68
乙
めっちゃかわいかったで
めっちゃかわいかったで
184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/29(月) 01:40:23.51
おっ
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