mobamasu


高峯のあ「……」佐城雪美「……」モバP「……」


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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:00:51.73


ちひろ「(こんにちは。私、CGプロダクションで事務員をしている千川ちひろです)」

P「……」

雪美「……」

のあ「……」

ちひろ「(なんでこの人たち、全然しゃべらないんでしょうか)」


5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:03:58.59


P「……」カタカタ

のあ「……」ペラ……ペラ……

雪美「……」ナデナデ ←猫を撫でている

ちひろ「あ、あの、みなさん喉渇いたりしてませんか? 今からちょっとお茶でも……」

P「いえ……」カタカタ

のあ「……結構よ」

雪美「……いい」

ちひろ「あ、さいですか……」

ちひろ「(……い、居づらい)」


6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:09:12.27


ちひろ「(まぁ、もともと無口なキャラで売ってるのあさんと雪美ちゃんはともかく)」

ちひろ「Pさん、最近お二人の調子はどうですか? 結構忙しくなってきてるみたいですけど」

P「……ええ、もうすぐ二人ともロケです」

ちひろ「そ、そうですか。確か、秋に向けた旅行雑誌の撮影でしたっけ?」

P「えぇ……」カタカタ

ちひろ「素敵ですね~。雑誌ができたら私にもくださいね」

P「えぇ……」カタカタ

ちひろ「……」

ちひろ「(会話が続かない! というか会話する気がないのこの人!?)」


8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:15:04.08


ちひろ「(まぁ、はじめて社長がこの人連れてきたのも完全にあの二人のプロデュースが目的だったみたいなんだけど……)」

―――

社長『千川くん! 新しいプロデューサーを見つけてきたぞ!』

P『……初めまして』

ちひろ『……は、初めまして』

社長『彼には高峯くんと佐城くんのプロデュースを頼もうと思っている! なぜだか知らないが、他のプロデューサーではあの二人と上手く意志疎通ができないようでね……』

ちひろ『(そりゃほとんどしゃべりませんからね……)』

社長『だが、彼ならそれができる! ティンとキタのだよ!』

―――

P「……」

ちひろ「(……単にこの人も無口なだけじゃないのかしら……)」


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:18:40.08


P「……」ガタッ

のあ「……」パタン

雪美「……」スッ

ちひろ「?」

P「……では、いってきます」

のあ「……またね」

雪美「……」フリフリ

ちひろ「あ、い、いってらっしゃ~い」

パタン……

ちひろ「(なんなの!? 何にも合図してないのになんで三人とも同時に立ち上がって、しかも仕事に行くってことが互いにわかってるの!?)」


10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:25:31.28


――某ロケ地

P「……着いたぞ」

のあ「……ふ、悪くない」

雪美「ペロも……気に入ったって」

ディレクター「あ、CGプロの方ですか?」

P「はい……よろしくお願いします」

のあ「……仕事を始めましょう」スタスタ

雪美「……P?」

P「……猫を同伴させても?」

ディレクター「え? うーん……まぁ絵になるかもしれないから、別にかまいませんよ!」

P「では……」チラ

のあ「……」コクン

雪美「……」ブイ

ディレクター「?」


11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:28:47.52


P「二人の撮影はもう始めてください。我々は少し打ち合わせを……」

ディレクター「え? あ、はい(なんだ今の相槌……?)」

――数時間後

アーイ オッケーデース

ディレクター「いやぁ、なかなかいい感じですよ。この後しばらく休憩なんで、自由にしてくださって結構ですよ!」

P「わかりました……」チラ

のあ「……」コクン

雪美「……!」パァァ

ディレクター「??」

P「では、少し失礼します……」スタスタ

ディレクター「え? えぇ、はい(だからなんなんだこの人らの謎の相槌は!?)」


16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:37:15.58


看板『歴史の街、○○へようこそ』

のあ「……歴史の匂い……感じるわ」

P「……あれを?」

のあ「……ええ。それが許されるならば」

P「雪美は……?」

雪美「……」コクコク

P「……すみません」

おばちゃん「はいいらっしゃい、うちの味噌田楽は美味しいよぉ!」

P「三つで」

おばちゃん「はい毎度! 今日は家族で観光かい?」

のあ「……家族……そうね、そんな響きも一つの在り方かもしれないわ」

おばちゃん「?」

雪美「のあママ……と……Pパパ……」ギュッ

P「……やめなさい」

おばちゃん「家族みんな仲がいいのねェ。はい味噌田楽三つ!」


17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:41:04.92


P「……」モグモグ

のあ「……いいわね」モグモグ

雪美「……」モグモグ

P「……雪美」

雪美「?」モグモグ

P「……そうか」ナデナデ

雪美「……♪」

のあ「……P?」

P「……貴女はダメです」

のあ「ケチね……でも本当は?」

P「……」プイ

のあ「ふ……かわいい子ね」

雪美「?」モグモグ


18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:45:37.37


――とある日、事務所

ザァァァァ……ゴロゴロ……!

P「……ふむ」

のあ「……」

雪美「……」

ちひろ「き、今日は天気が悪いですね」

P「……えぇ……」

ちひろ「なんでも台風が来てるそうで……」

雪美「台風も……遅刻……?」

のあ「……自然とはそういうものよ」

ちひろ「(ダメだ、会話についていけない……)」

prrrr

ちひろ「おっと……はい、CGプロです。はい、これはどうも……ええ? はい、はい」

P「……?」





20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:51:36.60


ちひろ「はい、では伝えておきます。失礼いたします……Pさん?」

P「……今日の撮影は無理だ、と?」

ちひろ「え? あ、はい、その通りです。どうも交通機関も止まってるところがあるらしくて……」

P「ふむ……のあ?」

のあ「……任せるわ」

ちひろ「(何をです?)」

P「……」チャ prrrr……

ちひろ「(おもむろに電話をかけ始めましたよこの人……)」

P「……こんにちは、Pですが……ええ、今日は…………そうですか、では」ピッ

ちひろ「(短っ!)」

P「……そういうわけだ。二人とも、今日は……」

のあ「……ええ」

雪美「……わかった」

ちひろ「(え、何が? 何がわかったんです!?)」


21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 19:55:17.83


雪美「……P?」トテトテ

P「……あれか?」

雪美「ダメ……?」

P「……まぁ、これも仕事だ」

ちひろ「(『あれ』ってなんだろう……気になる……)」チラ

P「……」ヨッコイセ

のあ「白と黒……光と闇の争いは、どちらかの終焉を見るまで終わらない……皮肉なものね」

雪美「……今日は、勝つ……!」

ちひろ「(え? あ、オセロだ!!!!)」


23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 20:00:19.14


P「……」パチ

雪美「……」パチ

ちひろ「(オセロしててもしゃべらないわね……)」

のあ「……ちひろもしたいの?」

ちひろ「ふぇ? い、いえ私は別に……」

のあ「大丈夫……彼らは知恵者だから、選べるゲームは一つではないわ……」ヨッコイセ

ちひろ「(こっちは将棋!? なんでこんな地味な……)」

のあ「……嫌いかしら?」ショボン

ちひろ「あ、いえ、じゃあせっかくですし私も……」

のあ「……ふ」ファサッ

ちひろ「(あ、ちょっとご機嫌になった……のかな?)」


24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 20:07:36.93


のあ「……」パチ

ちひろ「……うーん、じゃあ桂馬をこっちに」パチ

のあ「……」ムッ

ちひろ「(あ、ちょっと悩んでる)」

P「……まいった」

雪美「ふふっ……♪」ブイv

ちひろ「あ、雪美ちゃんが勝ったんですか?」

雪美「これで……121勝120敗……2引き分け……」

ちひろ「(いつの間にそんな回数やってたの!?)」

P「……強くなったな」ナデナデ

雪美「……ふふ」

のあ「……闘いの最中に余所見とは……余裕の表れかしら……?」

ちひろ「え? いやそんなつもりは……」


26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 20:12:07.12


ゴロゴロ…… ドガアアアアァァン!!!!

ブツン!

雪美「ひっ……!?」ビクッ

ちひろ「きゃあ!? ……て、停電ですか?」

のあ「……これは一時休戦のようね」ファサッ

ちひろ「(負けかかってたからってこの人は……)」

P「……ブレーカーを見てみます」スッ

のあ「私も行くわ……」

雪美「く、暗い……」

ちひろ「雪美ちゃん、おいで? 大丈夫ですからね」

ゴロゴロ……


36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 20:46:26.63


――廊下

P「……懐中電灯があってよかった」

のあ「……私のよ、それ」

P「……そうですか」

のあ「……」

P「む……ブレーカーの位置が高い……脚立は……ないか」

のあ「……しゃがみなさい」

P「……仕方ない」スッ

のあ「……重くないかしら?」

P「……肩車は……流石に」グググ……

のあ「……後で覚悟なさい」

P「……のあは理不尽ですね。さぁ早く……」


37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 20:51:31.15


――事務所内

ちひろ「それにしても、びっくりしましたねぇ……」

雪美「……ペロ? どこ?」

ちひろ「? ペロちゃんがいないんですか?」

雪美「びっくり……したのかも……ペロ~……」

ギラン

ちひろ「うひゃ!? 何か光って……あれ?」

ペロ「ンナ~」

雪美「ペロ……!」ギュウ

ちひろ「(雪美ちゃんはホントに猫好きなんですねぇ)」

雪美「よかった……」トテトテ ポフッ

ちひろ「ふぇ?(なぜ私の膝に……)」


38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 20:54:58.05


雪美「……ちひろの膝は…………落ち着く……」

ちひろ「そ、そうですか? そうなのかな……」

雪美「……」

ちひろ「……」

雪美「……」

ちひろ「遅いですね、二人」

雪美「うん……」

ちひろ「大丈夫ですよ、ただの停電ですから」

雪美「……」

ちひろ「(返事はないけど……安心してくれてる……のかな?)」


40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 21:02:29.29


パチッ

ちひろ「あ。点いた」

ガチャ

P「……治った」

のあ「……問題なし」

ちひろ「よかった……あれ? Pさんなんだか頬っぺたが」

のあ「……お仕置き」

P「……」

雪美「あや~……」

ちひろ「(な、何があったんでしょうか……)」

P「……とりあえず、今日はもう危ない」

のあ「そうね……雪美も一緒に送っていくわ」

P「すまない……」

雪美「Pは……?」

P「……すまない」


42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 21:10:40.73


ちひろ「(なにやら不服そうな雪美ちゃんを抱え、相も変わらず無言の相槌一つでのあさんは帰っちゃいました)」

P「……」

ちひろ「私たちも動きづらいですねぇ……Pさんはほかに外回りのお仕事はあるんですか?」

P「……いえ、今日は」

ちひろ「そうですか。じゃあ、雨の事務所で雑務デートと行きましょうか!」

P「……っ」グッ

ちひろ「? Pさん? どこか具合でも」

P「いえ……」

ちひろ「調子悪くなったら、いつでも差し入れたドリンク飲んでくださいね。すっごく効くんですから!」

P「……えぇ」

ちひろ「……」

P「……では、仕事に戻りましょうか」





43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 21:19:01.42


P「……」カタカタ

ちひろ「(無言タイム突入……なんと話しかければよいのやら)」

P「……ちひろさん」カタカタ

ちひろ「あ、はいなんです?」

P「…………」

ちひろ「……? はい?」

P「いえ……お茶を淹れます」

ちひろ「へ? あ、あぁ、ありがとうございます……?」

P「……」

ちひろ「(……なんだろう。いつもより妙にソワソワしてらっしゃるような)」

P「……あ」

カシャーン!!

ちひろ「あっ、大丈夫ですか?」

P「……すみません、お茶の葉を」


44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 21:26:17.58


ちひろ「気にしないでください。なんならコーヒーがありますから……あ、Pさん飲めます?」

P「……えぇ」

ちひろ「じゃあ私が淹れちゃいますね。きっとPさんもお疲れなんでしょう」

P「いえ……」

ちひろ「ちょっと向こうで待っててくださいね」

P「……すみません」トボ……

ちひろ「(……何か、まずいこと言っちゃったかしら。ずいぶん落ち込んじゃったわね)」

………

ちひろ「はい、どうぞ」コトッ

P「……すみません」

ちひろ「いえいえ。……なんか落ち込んでます?」

P「……いえ、特には」

ちひろ「そうですか? それならいいですけど……」

ザァァァァァ……

ちひろ「雨、止みませんねぇ……」


45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 21:30:58.56


P「……雨は……嫌いじゃない」

ちひろ「え?」

P「雨音の滴る場所なら、黙っていてもまずい空気になったりすることがない。ほかに何も音がしないと、僕が何も話さないでいることが不自然に見えてしまう」

ちひろ「えっと……雨の音は、私も結構好きですよ?」

P「……そうですか」

ちひろ「えぇ……」

P「……」

ちひろ「(急に饒舌になったと思ったらまたダンマリ……うーん、この人だけはなんだかよく理解できないわ)」

P「……あ、あの」

ちひろ「はい?」

P「……ボクは、あまりその、みんなのような……あまりしゃべったりするのは苦手で……」

ちひろ「……ふふふ、見てればわかりますよ」

P「……そうですよね」

ちひろ「ああもう、悪い意味で言ったんじゃないですよ? あんまり積極的に話すのは苦手そうに見えるだけで……」


46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 21:37:32.14


P「……それは、つまり、付き合いにくいという意味では」

ちひろ「うーん……ちょっと、私が皆さんの会話に後れを取ることはありますけど。最近なんとなくわかってきたんですよ、言葉なしでの意思疎通というか……相手の気持ちが言われなくてもわかるというか」

P「……わかりますか?」

ちひろ「ちょっとだけですけどね? もう少し……まぁ茜ちゃんやきらりちゃんみたいにまでとは言いませんけど、いろいろお話してくれてもいいのに、って思うことはあります」

P「……話すのは怖いです。相手を不用意に傷つけたり不快にしないか。だから、僕はあまりしゃべれない」

ちひろ「それも、一つのやさしさですよ? と、最近になって思えるようになってきました。あはは……」

P「……で、では……言いたいことを言っても構わないんですか」

ちひろ「どーぞどーぞ。仕事仲間なんですから、多少は割り切ってもらわないと」

P「で、では……」

ちひろ「はい?」

P「……ちひろさん、好きです」

ちひろ「………………………………はい?」

P「……すみません、やはり言わない方が」

ちひろ「え、や、ああの、えっと、ちょ、ちょっと待ってくださいね」スーハ―スーハ―……


52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 21:45:22.84


ちひろ「ゴホン……えーと……今、なにかすごくデリケートなことを口になさいました?」

P「……すみません。やはり、黙っています」

ちひろ「え……」

P「……」ズズ-

ちひろ「……Pさん」

P「……なんですか」

ちひろ「世の中には、一言だけで相手を大きく揺るがすような言葉が存在するんです。貴女は一度それを口にした以上、最後まで発言に責任を取るべきかと」

P「……わかりました」

ちひろ「(私は何を必死になってここまで……だ、だって気になるじゃないですか突然あんなこと言われたら!!)」

P「……私は貴女が好きです。ちひろさん」

ちひろ「(普段無口な人に限って、こういう時ばっかり恥ずかしげもなくド直球になるんだからもうっ……!!)」カーッ

ちひろ「……えー、それは、なぜです?」


55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 21:53:27.77


P「無口で無愛想な俺や雪美にも、嫌がらず接してくれる優しさが好きです。話さずに意思疎通を図ろうとするわがままを『優しさ』だと言ってくれる優しさが好きです。疲れていても何も言わない僕に、何も言わずにドリンクを差し入れてくれる優しさが」

ちひろ「すとっぴ!」

P「……?」

ちひろ「違う、ストップ! それ以上言われると恥ずかしいからやめてください!」

P「……わかりました」

ちひろ「ハァハァ……心臓に良い意味で悪い……」

P「……今日は久しぶりに二人きりになってしまったので、張り切ってお茶を汲もうとしたところ、失敗しました。それを笑って許してくれるちひろさんの」

ちひろ「やめて! 顔から火が出る!」

P「……それは健康状態に問題が?」

ちひろ「比喩表現です! 恥ずかしいんです! Pさんがッ、私のことずっと見てくれていたのはわかりましたから!」

P「……なにかまずいことを言ってしまってますか、僕……」

ちひろ「いえ、いえ。落ち込まないでください。ただ少しだけ落ち着かせてください……」カーッ


57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:02:54.81


ちひろ「ふぅ……その、実はなんですけど。てっきり私は、Pさんはのあさんの方に気があるんじゃないかと……」

P「のあは……雪美と同じ良き相方です。無口でどうにも口下手な俺とでも、同じように言葉少ななまま会話してくれる」

ちひろ「それは相性がいい証拠なんじゃ……」

P「……もちろん、そうでないと相方は務まりません。ただ、特にこれというような関係があるわけでも。同じような性質をもった良い、友人たちです」

ちひろ「つまり、恋愛対象ではないと……まぁそであっても困るんですけど」

P「あの二人については、別段そこまでのものでは……」

ちひろ「そ、そうだったんですか……」

P「えぇ……」

ちひろ「……じゃ、じゃあ私には……?」

P「……恋愛感情があります。貴女はその、とても腹黒い、笑顔の綺麗な優しい女性で」

ちひろ「……なんか今さらっと本音混じってませんでした?」

P「しゃべりだすと思っていることはすべて言ってしまうので……貴女が腹黒いというのはあくまで個人の感想でして」

ちひろ「余計質が悪いじゃないですか! そりゃあ多少強引に経営回したり、ドリンク販売の副業に手ェ出したりもしてますけど……」


59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:12:15.23


P「腹黒い……は、ダメですか」

ちひろ「あまり聞かされて良い気分になる言葉ではありませんが……まぁ、私がそういう噂をされても仕方ないですから」

P「……そういう謙虚さと素直さも好きです」

ちひろ「褒め殺しますねー……口説いてるって自覚在ります?」

P「いえ……話せというので。嫌ならば撤回します……」

ちひろ「……そりゃ雪美ちゃんが無言でなついていくわけですよ。そんだけ優しかったら」

P「……?」

ちひろ「その……貴方のそれは、一応愛の告白であると。『お付き合いしてください』って言葉だと捉えていいんですね?」

P「……お嫌でなければ」

ちひろ「……正直言うと、私はまだまだPさんのこと知らないんです、そもそもあんまり話しかけてくれないんでね! なんでなんです?」

P「……照れるので」

ちひろ「……そ、そうですか。まぁ、じゃあ、少しは私に話しかけてきてください。私も、ちょっとずつ無言で会話ができるようになりますから」

P「無理してこちらに合わせなくても……」

ちひろ「こっちの身が持たないんですよ、あのビッミョーな空気は!」


61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:17:13.53


P「……すみません」

ちひろ「いえ、三人にとってはあの空気が居心地のよい空間になっているみたいですから……私がそっちに歩み寄ります」

P「……優しい人だ」

ちひろ「それ以上褒めたらエナドリセット無理やり買わせますよ」

P「結構です。差し入れてもらった分がまだあるので……」

ちひろ「ぐぬぬ……」

P「……」チラ

ちひろ「? ……あ、雨上がりました?」

P「……仕事に、もどりましょうか」

ちひろ「え? あぁ……はい」

P「……」カタカタ

ちひろ「…………」カキカキ


62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:25:10.04


――翌日

paP「グゥッドモーニーン! みんな元気ッ!?」

茜「今日もフルバーストで頑張ろー!!!!」

きらり「うきゃー☆朝からテンションあげあげだにぃ」

P「……おはようございます」

ちひろ「みなさん元気ですねー」

paP「元気が一番! そう、トップアイドルになるって言ったよな!?」

茜「オオッス! 毎日が本気のフルスロットルでっす!」

きらり「今日のお仕事はぁ~、きらりの大好きなお菓子の宣伝なんだにぃ☆」

paP「フハハハハハ良いぞ二人とも!! その調子で、いってきまぁーっす!!」

茜・きらり「「いってきまぁ~す!!!!」」ドカーン

ちひろ「あぁ……毎朝よくあのテンションでいられますね」

P「……そうですね」

ちひろ「PさんもPさんで、それだけ静かでいられるのはすごいですけどね」

P「……そうですか」





63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:29:52.10


のあ「……おはよう」

雪美「……」コッソリ

P「……おはよう」

ちひろ「あ、二人ともおはようございます」

のあ「……」

雪美「……」

P「……今日はアレだ」

のあ「……わかったわ」

雪美「……♪」

ちひろ「(……おや、雪美ちゃんがご機嫌ですね。ということは……)」

ちひろ「今日は動物園にでも? それとも……」

P「……猫カフェの取材です」

ちひろ「おお……それは楽しみね雪美ちゃん」

雪美「うん……♪」


67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:40:31.68


ちひろ「のあさんは猫とか好きなんですか?」

のあ「……すべての猫が同じわけではない。けど、概ね彼らのもつ性質には同調するものがある」

ちひろ「……つまり、割と好きなんですね」

のあ「フッ……」ファサッ

ちひろ「(あ、相当好きだなこれは)」

ちひろ「……話さなくても、相手をよく見ていれば、なんとなくわかってくるんですね。相手の気持ちって」

P「……」

ちひろ「……Pさんはそうすると、無口だけどちゃんと相手のこと考えていて、甲斐性焼きで、ちょっとコミュニケーションに難がある人なんですね」

P「……ちひろさんは素でもばっさりと言いますね」

ちひろ「相手を選んでますから。……私のことをわかってるPさんになら言ってもいいかなと」

雪美「……二人、仲良し……? いつの間に……?」

のあ「……大人というのはちょっとしたことで大きな変化をもたらすの……口にしても、しなくてもね」


69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:43:38.98


P「……」ガタッ

のあ「……行きましょうか」

雪美「……」コクン

ちひろ「(相変わらず以心伝心ね……ちょっとうらやましいかも)」

ちひろ「……」

P「それでは……」

ちひろ「あの、Pさん、ちょっといいですか?」

P「……?」

ちひろ「……」チラ

のあ「……! ……雪美、先に下へ降りましょう」

雪美「?」

のあ「大人の世界、よ」

パタン

P「……なんでしょう?」

ちひろ「いえその……昨日の返事なんですが……はい」


70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:49:27.90


P「……」

ちひろ「……」ジーッ

P「……あの」

ちひろ「……わかりません?」

P「……状況が状況ゆえに、判断に困ります。できれば口にしていただけると……」

ちひろ「言葉にする以外にも、気持ちを伝える方法はあるんですよ? こんな風にでも」

チュッ

P「……!」パッ

ちひろ「……ほ、頬っぺたは嫌でしたか?」

P「……すみません、驚いたので。これは、あの、どう受け止めれば……」

ちひろ「さぁ。好意無しでこんなことはしませんから、それを踏まえてお好きに解釈してください」

P「……では、今晩……食事でも」

ちひろ「はい、空けておきます」

P「……それでは、いってきます」


73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 22:57:53.49


――駐車場

のあ「……どうだったの?」

P「……」プイ

のあ「……そう」

雪美「嬉しい……こと……あった……?」

のあ「そのようね……私たちはそのおこぼれに預かりましょう」

P「……ランチが限界だぞ」

のあ「……安い代金だと思ってほしいわね」

P「……?」

のあ「なんでもないわ。行きましょうか」



――事務所内

ちひろ「(な、なにやってんだ私は! 人生で男性経験がないわけではありませんけど、あんなにピュアピュアしたマネ、生涯で初めてですよ!)」

ちひろ「ちょろい女だと思われてたりしたらやだなー……実際ちょろいところありますけど……あーうー」

ちひっろ「(……ま、いいか。Pさんのことだから、私が腹黒い性格だってこと承知の上でしょうし。って、なんだか自分で嫌な気分になってきたわ……)」


76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:04:27.09


――後日

P「……」カタカタ

ちひろ「……あ、Pさん」

P「フェスのまとめはやってあります」

ちひろ「そうですか。じゃあ経費だけやってしまいますね」

P「はい……」

ちひろ「……あれ? これ昨日終わってました」

P「では……」

ちひろ「はい、先に行ってます」

P「……」コクン

雪美「……どこ……行くのかな……?」

のあ「昼餉を共にするのよ……これから少し、寂しくなるかもしれないわね」

雪美「むー……」


79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:11:16.49


――屋上

P「――お待たせしました」

ちひろ「いえいえ。はいどうぞ」

P「どうも……」ズズズ

ちひろ「ようやく風が涼しくなってきましたね」

P「ええ……」

ちひろ「……じゃん。手作りお弁当ですよ!」

P「……いいですね」

ちひろ「はい、どうぞ」

P「いや……」

ちひろ「もう……じゃあ半分こでいいでしょう? いつもコンビニ弁当じゃないですか」

P「わかりました……」

ガチャ

のあ「……へぇ、思ったより落ち着いてるのね二人とも」


80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:19:02.96


ちひろ「のあさんもこちらで?」

雪美「……」ウルウル

ちひろ「……みんなで食べましょうか」

P「……雪美」

雪美「……♪ これ……手作り?」

ちひろ「あんまり期待はしないでね」

のあ「ふ……悪くはないわ」モグモグ

ちひろ「……もう突っ込みませんよ」

P「いいよ。好きなものとりなさい」

雪美「……ふふっ」

………


81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:23:06.92


のあ「――ところで、貴方達はどこまで行っているのかしら? 月? それともアンドロメダ?」

P「……たぶん、月くらいか」

ちひろ「今のたとえで何が分かったんです!?」

P「いや……なんとなく」

のあ「そう……もうそこまでいってしまったのね」

ちひろ「あの……勘違いされてるかもしれませんけど、私たちはまだお付き合いもですね……といかPさん話したんですか?」

P「……悟られるんだ、我々は……」

のあ「そういうこと……たとえ望まなくてもわかってしまうのよ」

ちひろ「……さいですか」

のあ「というか、なぜ? 気持ちは通じ合っている……少なくとも私にはそう見える」

P「……社会人だからな」

ちひろ「あんまりがつがつ行き過ぎると、自分で調子に乗ってしまいますしね」

のあ「そう……じゃあ、私が先にPと既成事実を作ってしまえば可能性は」

ちひろ「ダメですっ!!」

雪美「!?」


83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:28:36.11


ちひろ「あ、ごめんね雪美ちゃん……と、とにかく、この人はもう私がキープしてますからっ」

のあ「それ以前に、私は曲がりなりにもアイドルなのだけれど」

ちひろ「……」

のあ「ええ、言わなくてもわかる……ちょっとからかっただけよ」

ちひろ「……ごめんなさいなんて、言いませんからね」

のあ「何のお話しかしら……」

雪美「難しいお話……」

P「……僕はちひろさんが大好きだから、それさえはっきりしてればいいんだよ」

ちひろ「……Pさんはちょっと黙っててください、恥ずかしいので」

P「……」

ちひろ「……慣れると、悪くないですね。あまちしゃべらないコミュニケーションというのも」

雪美「ちひろは……よくしゃべる……」

ちひろ「私はもともとそういう人間ですから……」





84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:36:03.60


雪美「……ふふ」

P「……?」

ちひろ「雪美ちゃん、嬉しそうね」

雪美「うん……なんだか……家族……みたい……みんな、仲良し……」

のあ「……女の喧嘩も仲良しに入れば、ね」

ちひろ「……結構のあさんも粘着質ですね」

のあ「楽しいのよ、あなたたちをからかうと」

P「……家族な。いい言葉だ」

ちひろ「そうですね」

P「ちひろさん、結婚しましょう」

ちひろ「……」

のあ「……」

雪美「結婚……するの……?」

P「……いや、その……今のは観測的希望です」

ちひろ「よろしい。順序は必要ですからね」


86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:44:07.23


ちひろ「さぁ、もうそろそろアイドルのみなさんはお仕事の時間ですよ」

雪美「……」イソイソ

のあ「……仕方ないわね」

ちひろ「はい、Pさんも」

P「わかっます……」

ちひろ「……予約は、一応受け付けておきます」

P「……」

ちひろ「ほ、ほら遅刻しますよ!」

パタン……

ちひろ「全くもう……」

ちひろ「(完全にこっちがやられちゃってるわね……無口なくせに、変なところばっかりズバズバ言うんだから)」


87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:49:57.45


――某ロケ地

ディレクター「いやーいい調子で進んでるよ撮影! 今日はラストだから、びしっと頼むよ!」

P「はい……」チラ

のあ「……」コクン

雪美「……」ブイ

ディレクター「(やっぱりあの相槌はわからん……)」

のあ「……P」

P「……なんです?」

のあ「もう、この際だから今のうちに言っておく……」

P「何をです?」

のあ「好きよ」

P「……」

のあ「返事は結構……わかっちゃうのよね、これが……」

P「……ありがとう、のあ。君は僕の自慢のアイドルだ」

のあ「…………わかってる」


89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/04(水) 23:56:39.26


――楽屋テント

P「……」

~~♪

P「……?」ピッ

from:千川ちひろ
件名:
本文:お付き合いしましょう

P「……」

P「……フゥ……」

to:千川ちひろ
件名:わかりました
本文:のあさんは大丈夫

P「……」

雪美「……」

P「……いたのか。撮影は?」

雪美「終わった……P、笑ってるのか……泣いてるのか……よく……わからない……」


91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/05(木) 00:01:16.43


P「……大人って、面倒だろ」

雪美「……かもしれない」

P「……だから、無口になっちゃうんだよ……余計なこと言うと、相手を傷つけてしまうかもしれないから」

雪美「P……は……やさしい……から、それで……いいと思う」

P「……のあがちょっと元気ないかもしれないから、そばに行ってくれ」

雪美「……」コクン



――事務所

ちひろ「(まさかこんなことになるとは……人生わからないものです)」

ガチャ

P「……戻りました」

ちひろ「アイドル達は……先に?」

P「えぇ……」


94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/05(木) 00:09:16.24


ちひろ「……こんな腹黒事務員でいいんですか?」

P「……」

ちひろ「はいはい愚問でしたね……でも、これだけはちゃんと口に出して言わせてくださいね」

P「……えぇ」

ちひろ「私もPさんのこと、好きです。というかもう完全に好きになったので……お付き合い、始めましょう」

P「……よろしくお願いします」

ちひろ「こちらこそ」

P「……」グッ

ちひろ「なにガッツポーズ決めてんですか」

P「嬉しいので……」

ちひろ「もう……とりあえず、今日ちょっと車でこれなかったので」

P「じゃあ、先に下へ」

ちひろ「はい……ちゃんと待ってますからね」

P「……はい」


97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/05(木) 00:16:30.50


――車内

ブロロロロロ……

P「……」

ちひろ「……」

P「……沈黙が苦痛になる相手とは、結婚するな……と、聞いたことが?」

ちひろ「いえ。どういう意味です?」

P「いちいち相手に気を遣いながら生活していても、いつか破綻する。だから、無言でやり取りできるくらいの相手を選べ……ってことだそうです」

ちひろ「……それなら、私よりのあさんの方がよかったんじゃないですか? ……若いし」

P「……沈黙をうちやぶれる者と結婚せよ……という言葉も」

ちひろ「それはまた、どういう?」

P「無口な人間でも受け入れてくれる、器の大きな人と結婚しなさい、という意味です」

ちひろ「……私、そんなに器の大きい人間では」

P「……僕一人くらいは」

ちひろ「……それならまぁ、いいかな」


99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/05(木) 00:22:49.66


ちひろ「正直、貴方を最初に見たときは『なんだこの陰気な人……』って思いました。すみません」

P「……事実ですから」

ちひろ「陰気というより、不器用なだけだったんですよ。のあさんや雪美ちゃんも、不器用すぎてみんなとうまく話せないだけの、とってもいい子達ですから」

P「そうですね……」

ちひろ「ですから、Pさんもそんな感じなんです」

P「……」

ちひろ「疑ってますね? 伊達に何年もアイドル事務所に勤めてませんから、プロデューサーを見る目には自信がありますよ」

P「その目が、僕は良い子だと?」

ちひろ「無口なだけで、ね」

P「……すみません」

ちひろ「いいじゃないですか。別に無理してしゃべらなくても」


100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/05(木) 00:29:55.24


P「……」

ちひろ「……」

P「……ありがとう」

ちひろ「……やっぱり、そういうのは普段から少しくらい言った方がいいですね」

P「……なぜ?」

ちひろ「そりゃあ……好きな人に何かを言ってもらえるのは、嬉しいですからね」

P「……わかった。じゃあちひろさんにはもっと話しかける。傷つけるようなこと言ったら、ごめんなさい」

ちひろ「いいですよ。私だって他人から憎まれるようなことしてますから」

P「僕が守るよ」

ちひろ「(……だから、なんでそういうのばっかり)」

P「?」

ちひろ「やっぱり恥ずかしいのでしばらく黙っててください」

P「……ちひろさんもなかなか理不尽だ」

ちひろ「うるさい!」カーッ

おわる


106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/09/05(木) 00:35:18.25


おつ









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