1930年代に臨床死した犬を蘇生させる実験を行った人物として知られている、ロバート・E・コーニッシュ博士。だが彼は人間に対しても同様の実験を試したいと望んでいた。そして、ある死刑囚が志願してきたため、カリフォルニア州に蘇生実験の許可を求めて掛け合った。
ロバート・E・コーニッシュ(1903年12月21日- 1963年3月6日)は、18歳で米カリフォルニア大学バークレー校を卒業、20歳で博士号を取得した、かつて神童と呼ばれた人物である。
コーニッシュ博士の犬を実験台としたその内容を聞けば、愛犬家は思わずすくみ上がるだろう。犬を窒息させて臨床死させ、その屍体をシーソーの上に置く。このシーソーは血流を保つために繰り返し揺らされている。博士は、1934年と35年に、臨床死した犬の蘇生に2回成功させたと博士は報告してている。
さらに35年には処刑された死刑囚の蘇生を試したい旨の発表をした。これに対して、カリフォルニア州にあるサン・クエンティン州立刑務所に収監されていたトーマス・マクモニグルが名乗り出た。
サン・クエンティン刑務所に収監されている死刑囚トーマス・H・マクモニグル(右)の蘇生実験を提案していた、カリフォルニア州バークレーのロバート・コーニッシュ博士(左)
マクモニグルは本物の怪物だったのかもしれない。フランケンシュタイン博士に自らを差し出したからではない。彼は当時14歳のソラ・チェンバレンを誘拐し、殺害したのだ(少女の遺体はいまだに発見されていない)。また、別の殺人についても自白したと言われている。1947年、コーニッシュ博士はカリフォルニア州更正課に赴き、この囚人がガス室送りになった後、蘇生実験を実施させて欲しいと請願した。
当時、サン・クエンティンの刑務所長であったクリントン・ダフィーは、処刑後にガス室の換気が済むまで30分かかるうえ、安全のために遺体は最低1時間はガス室に放置されることを理由に、コーニッシュ博士の要請を却下した。しかし、これで引き下がる博士ではなかった。彼はダフィーの決定を控訴し、自らの理論を証明するためにサン・クエンティン刑務所のものを模したガス室で羊を殺し、これの蘇生にも成功していると述べた。それでも、ダフィーの決定が覆ることはなく、カリフォルニアの裁判所も同様であった。1948年2月20日、マクモニグルは蘇生の望みを断たれたまま、ガス室へと足を踏み入れた。
だが、仮にこれにコーニッシュ博士が立ち会って、マクモニグルの蘇生に成功したとすれば、どうなるのだろうか? 彼はガス室で処刑され、自らに科された刑を全うしたのだから、州には釈放する義務が生じたのだろうか?
コーニッシュ博士の要請が最終的に却下された理由は、実験が成功してしまうとマクモニグルを釈放しなければならなくなると、カリフォルニア州が恐れたからではないかと推測する向きもある。これについてはまだ確認がとれていないが、一部始終が書かれた新聞記事が発見されている。1947年3月14日付のサンマテオ・タイムズ紙によれば、マクモニグルはまだ公判が行われていない2件目の殺人について自白しているのだから、実験後に自由になることはないとコーニッシュ博士は主張していた。しかし、その数ヶ月後、タスカルーズ・ニューズ紙に対して、「弁護士から囚人が蘇生すれば、法的には自由になると言われた」と語っている。
フランク・スウェインは『ゾンビの作り方(How to Make a Zombie)』という著作の中で、死刑囚の蘇生実験の許可を求めた科学者はコーニッシュが最初ではないと指摘している。ガス室の発明者デロス・A・ターナー少佐が、1924年にガス室送りとなった最初の死刑囚ジー・ジョンの蘇生実験の許可をネバダ州に求めていた。もちろん、ターナーの動機はかなり異なる。彼はガス室で処刑された囚人が生き返らないことを公表したかったのだ。だが、ネバダ州はこの申請を却下している。
VIDEO
Robert Cornish e gli esperimenti per riportare in vita i morti
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コメント
1. 匿名処理班
ソ連の首だけ犬みたいにするのかと思ったがシーソーって・・・
2. 匿名処理班
リ・アニメーターという映画があってだな
3. 匿名処理班
死刑囚じゃなくて普通に病死した人や事故死した人で試したら良かったのに
4.
5. 匿名処理班
SCP財団職員か何か?
6. 匿名処理班
死刑囚はwktkしながら志願したんだろうなぁ
7. 匿名処理班
ハーバート・ウェストか
8. 匿名処理班
公のところではやってなくても
どうせ世界のどっかではその方法は人間に試されてるわ
9. 匿名処理班
結局どうなったんだってばよ
10. 匿名処理班
※3 実験台扱いだから遺族が快く思わないはず、悲惨な結果になるかもしれないし
11. 匿名処理班
マッドサイエンティストの見本みたいだな
自分の実験を完遂し成功させることしか目に入らなくて
道徳倫理や遺族感情その他をことごとくないがしろにしてる
科学は人間を幸福にするためにあるんじゃないのか
先へ進みたいからって人間の幸福を踏みつけにしちゃいかんだろ
12. 名無しよん
「蘇生させた」ではなく「蘇生してしまった」前例としては、日本では「石鐵県死刑囚蘇生事件」があってこれは放免になった。アメリカでは、蘇生ではなく電気椅子が作動しなかったせいで二度処刑されたという例がある。
マクモニガルは「名乗り出た」とあるが、本人も含めて話し合いはされたんだろうか。例えば「仮に蘇生した場合、再度処刑するという条件でもいいからやって(経験して)みたい」と考えたとしても、それほど不思議ではないと思うんだが。
13. 匿名処理班
どこのドクターミンチだよ あの人は電撃で蘇らせてたけどww
14.
15. 匿名処理班
フランケン・シュタイン博士じゃなかったのか……
16. 匿名処理班
結果は目に見えていても「実験した結果やはり失敗した」
というデータは貴重。予測通り失敗だったけど意外な結果を
生み出して貴重なデータを残した実験も多い。
実験失敗のデータが現代科学の基礎になっていたりする。
最初に確認や提唱した人は笑い者になる一方で緯人でもある。
暗中模索の時代の失敗は仕方のない事にも思える。
ダーウィンも当時は狂人扱い。人体解剖をした人も狂人扱い。
17. ぐわんげ
※12
流石に生き返ったらまた殺せばいいというわけにはいかないのでは
単純に刑が倍になるわけだし
生の冒涜ともとれる
18. 匿名処理班
※3
絞首後に生き返った例も多くあるが普通は気絶しても
そのまま送り返された
ギロチンやガスでは再復活した例は資料にはないが
中東でよくやる首切りで再復活した人はいる
19. 匿名処理班
蘇生できても脳に酸素いかずにやられてるだろうからゾンビ化するだろうな
20. 匿名処理班
※10
というか、死因は特定のもので、しかも死亡直後でなくてはならなかったのです。というのも、蘇生実験はあくまで実験であり、特定の条件下で再現性が取ることが必要だったのです。死亡してから長時間かかったものは腐敗が始まってしまい、蘇生が困難になってしまいますし、突然の事故で死にそうな人を蘇生しても、事故の傷ですぐに死んでしまうかもしれない、ということも理由でした。
彼の行った、心停止直後の患者には血流を促してやるというアイデアは、現代の心臓マッサージに生きていますし、昇圧剤としてアドレナリンを用いた心肺蘇生法は理にかなっています。結局のところ、現代の医者よりも心停止後の時間が長い場合にも通用する心肺蘇生法を試みた、というのが適切な評価だと思います。
21. 空缶
芸人の江頭某の父親は、
川で溺れた子を助け蘇生を試みたがうまくいかず
「頭に血流を!」とひらめいて
死にかけの子にジャイアントスイングをかけたらしい。
子供は見事蘇生。
過激思想で有名な奥崎某も、獄中で健康に思いを巡らし
手を小刻みに動かし、心臓をサポートする血流ポンプとする方法を編み出している。
これは結局ただの健康体操だが。
血が流れないなら流せばいい! というのは確かに一理あり
可能性を感じるものではある。
22. 匿名処理班
死刑囚の蘇生を拒んだのは宗教上の理由もあるんじゃないかなあ。
ほら、あちらさんの神様
処刑されて復活してるじゃない。
23. 匿名処理班
電力が足りなかった
1.21ジゴワットくらいあれば蘇生出来てたかも