オリジナル背面カバーを作ったらインパクト大きすぎ! 池澤あやかのWeb的日曜大工-Fx0開発講座 第2回
こんな背面カバー見たことない!
世界にただひとつの、Firefox OS搭載スマートフォン「Fx0」。このFx0を使って、いろいろ作ってみようというコンセプトで始まった「池澤あやかのWeb的日曜大工」。第1回目はFx0にインストールされている、簡易プログラミングアプリ「Framin」を使ってオリジナルのロックスクリーンを作りました。
そして第2回。お題は「オリジナルの背面カバーを作ろう」です。
Fx0は、背面カバーが簡単に外れるようになっています。そして、この背面カバーの3D CADデータは、Fx0のサイトで公開されています。
ということは、そのデータを元にオリジナルの背面カバーが作れちゃうということなんです!
Fx0の初回出荷分に台数限定で付属したクリアの背面カバーもかっこいいですし、通常のカバーも持ちやすさの面でしっくりくるものになっています。
しかし、せっかく背面カバーの3D CADデータが公開されているのなら、それを使ってオリジナルの背面カバーを作ってみたくなるのが人情というもの。
ということで、さっそくどんなカバーにするのか、話し合いからスタートです!
今まで見たことがないような背面カバーを作りたい!
今回の助っ人は、建築家の谷尻誠さんです。谷尻さんは、さまざまな住宅やオフィスなどの設計を手がける一方、家具のDIYキットストア「MaKeT(マケット)」の発案者でもあります。
さて、どんな背面カバーにしていきましょうか?
ギズモード編集部(以下ギズ):池澤さんはどんな背面カバーにしたいと思っていますか?
池澤あやかさん(以下池澤さん):カメラ用のフィルターとかレンズとかを切り替えられるようになっているカバーはどうでしょうか。
谷尻誠さん(以下谷尻さん):背面カバーに円盤状の回転するものを付けて、切り替えるようにすればできそうですね。
ギズ:スマートフォンのケースは、実用重視なものが多いですよね。壊れないようにとか傷つけないようにとか。そういうのではない自由な発想のケースもおもしろそうですね。
池澤さん:どんどん壊れていく背面カバーとかどうですかね(笑)。3Dプリンタで線と線が組み合わさったような繊細なカバーにして、落としたりぶつけたりしたらどんどん壊れていくという。
ギズ:日本的な儚さがありますねそれ(笑)。
谷尻さん:背面カバーを変えることで、より使いたくなるようになるといいのではないでしょうか。スマートフォンはもともと電話じゃないですか。でも今は、カメラやテレビや財布の機能も付いていて、いろいろな機能がコンバインされていますよね。それがまさに現代だなと感じるんです。だから、スマートフォンが何かと一緒になるという方向性もいいかなと思っているんですが。
池澤さん:たとえばどんなものと一緒になったらおもしろいですかね。
谷尻さん:くだらないんですが、スマートフォンを持って電話をしているのは当たり前じゃないですか。それがバナナとかパイナップルとか食パンとか耳に当ててたらおもしろくないですか? この人、大丈夫かなって思われますよね(笑)。
池澤さん:すごい発想ですね(笑)。そういう発想をよくされているんですか?
谷尻さん:馬鹿になるようにしてるんですよ。自分の知識がクリエイションを邪魔することがあるじゃないですか。たとえば、知識があるとできるかできないかで判断してしまうことが多いですよね。おもしろいことを思いついても、やったことがない、コストがかかるという理由でやめようってなりがちになるんですよ。
ギズ:カバーに厚みをつけて立体的にするというのもありですよね。
谷尻さん:カメラのフラッシュ部分に傘をつけて、ベッドサイドライトとして使えるようにする背面カバーなんてどうですかね。
池澤さん:おしゃれですねー。
谷尻さん:Fx0が家具になるというイメージですね。
ギズ:この2つから選びましょうか。
池澤さん:インパクト的にはパイナップルがおもしろいですよね。
谷尻さん:パカっと開いて、中にFx0が入っているというのもいいかもしれませんね。
池澤さん:形状的にはハードルが上がりましたね(笑)。でも、バッグからパイナップルを出して、開けてみたらFx0が入っていたらインパクトありますよね。
ギズ:まさに「馬鹿になる」を実践した背面カバーになりそうですね。じゃあ、これで進めましょう!
パイナップルと背面カバーのマリアージュ
ということで、走り出したパイナップル背面カバー製作。背面カバーのデータと、市販のパイナップルの3D CADデータ(そういうものがあるのです)を組み合わせて、モデリングしてみました。
どうです。蝶番(ちょうつがい)も付けて開くようにしました。
カメラ用の穴もありますよ。
Fx0を入れたとき、音量ボタンや電源ボタンの操作ができるように空間も設けています。
どうです! こんなFx0の背面カバー、誰も作りませんよね? でも、3Dプリンティングをアイジェットさんにご協力いただき、作っちゃったんです。実物がこちら!!
実物は…思ったよりもパイナップルだった!!
パイナップル! どこからどう見てもパイナップルです!! これには池澤さん、谷尻さんも大興奮。
開いてFx0を装着。サイドに空間があるのでボタン操作もしやすくなっています。
電話をするとこんな感じに。顔が隠れちゃいます。
カメラも使えますよ。ただし、画面は丸く切り取られます。パイナップルのなかから撮影しているみたいで意外と楽しい!?
とまあ、予想以上にパイナップルな背面カバーが出来上がりました。こんなFx0の背面カバー、どこにもありませんね!
“名前のないもの”が出来上がる瞬間に立ち会えるものづくり
予想以上の出来栄えのパイナップル背面カバーを手にして、お二人に感想などをお聞きしました。
ギズ:製作前の打ち合わせでは、谷尻さんが「馬鹿になるようにしている」とおっしゃっていました。そしてその結果がこちらなんですが(笑)。
谷尻さん:誰もやらないことをやるのは大事だと思うんです。無知であるほうが、大きなハードルを超える瞬間に立ち会える可能性が高いんです。昔の人は、まったくのゼロからものを作っていた。だから、トライアンドエラーの連続だったわけです。僕らはトライする社会に生きていないので、どうやってトライを増やすかということが、新しいものを作る上では大事だと思っています。わざと変に考えるとか、逆に考えるとか、便利よりも不便を考えたり、軽くするより重くすることを考えたり。
池澤さん:実際にお仕事でもそういう風にやってらっしゃるんですか?
谷尻さん:“名前を取る”ということはいつもやっていますね。これなんか、パイナップルだと思ったらパイナップルにしか見えないんですけど、もし歴史のなかで、この形状がFx0の背面カバーとして初めて具現化されたものだったら、これは“パイナップル”という名称ではなく、背面カバーという無名の存在なんです。あらゆるものには、名前がない時代があったわけです。そこにどうやって立ち会うのかということを考えていて。自分たちが新しく名前が付くものを作り出せたとしたら、それはもっと歴史に残るものを作っていけるという可能性があるということなんですよ。名前があるものを作るということは、すでに世の中にあるものを作るとも言えるので、それは長い歴史に残らないかもしれない。そういう意味で、発明領域は名前がないところに立ち会わないといけない。だから、名前を一度取り除いてものと向き合うようにしています。
池澤さん:これが何千年か後に発掘されたら、パイナップルではなく背面カバーだと思う可能性があるわけですよね。昔の人はこういうカバーにFx0を入れて使っていたんだと認識しますよね。
谷尻さん:現代の土器ですね。土器はまさにそうですからね。
池澤さん:現代でも、これなんだろうって思いますからね(笑)。
ギズ:僕たちは、新しいものが生まれた瞬間に立ち会えのたかもしれないですね。他人から見たら「それは……」ということでも、突き抜けてしまえばおもしろくなりますよね。
谷尻さん:よく建築では、“テーブル理論”というんです。自分のテーブルが小さい人は小さい出来事しか起こらない。しかし、大きなテーブルを手に入れることで、それに見合うプロジェクトが動き始めるというもの。そういう意味では、このパイナップルのFx0背面カバーを手に入れることで、人間としての器が大きくなるのではないでしょうか。こんなものに、時間とお金をかける人はどういう人なんだろうという感じで、いろいろ広がるかもしれません。もしかしたら、これをアート市場に持っていくとすごいことになるかもしれないですね。
ギズ:アートって実用性とはちょっと違いますよね。
谷尻さん:アートには実用的な機能よりも、美しいという機能があるんです。実用的なものは、実用性がなくなったら機能しなくなりますよね。でもアートは破綻しないわけですから、アートであり続ける限りは機能し続けるとも言えるわけです。
池澤さん:確かにそうですね。谷尻さんは変わった住宅をいっぱい作られていますよね。
谷尻さん:ずっと僕みたいなのが作りつづけて、こっちのほうがいいと社会が言い始めたら、今まで普通だった家が変な家になるわけですよね。マイノリティーがマジョリティーになるわけで。
池澤さん:そのとき谷尻さんはどうするんですか?
谷尻さん:僕はすごく性格がいいので、みんなと違うことがしたいんです(笑)。みんなと同じことが正しいと思っていることに、価値を見いだせていません。いつも言っているのは、すごい未来はひとりぼっちになりそうで怖いから嫌いなんですけど、ちょっと未来だとみんながそこに走りたくなるじゃないですか。そういうところを目指そうと思っています。
池澤さん:かっこいいですね。
谷尻さん:と言いながらこれですから(笑)。
池澤さん:ちょっと未来(笑)。今谷尻さんが感じているちょっと未来がこれだったら、新しすぎますよね。でも、名前のないもの、今までにないものを作り出すというのは、Fx0のコンセプトと通じているかもしれませんね。思わず手に取りたくなるというか。
谷尻さん:こうやって開いて立てて、Fx0でスライドショーを流しておけば、インテリアになりますね。
池澤さん:玄関に置いてあってもいいですね。
谷尻さん:クマの木彫人形の次はこれですかね(笑)。一家に一台。孫の写真とか表示させれば、おじいちゃんおばあちゃんが喜びますね。
自分だけの背面カバーを作ってみては?
パイナップルとFx0の融合は、このような結果になりました。正直、パイナップル背面カバーが届いたときには、なんだこれ!と思ったのですが、最終的に池澤さんが常に抱くように持っていて、インタビューの最後のほうはすっかり馴染んでおりました。
おそるべしパイナップル。
Fx0は、背面カバーを自作できるように3D CADデータが公開されています。このデータを使えば、オリジナル背面カバーをデザインできます。また、今ではKDDIの「3D PRINT LAB.」をはじめ、3Dプリンタで出力できるサービスが増えているので、作ったデータを持ち込んで実物にすることも簡単です。
スマートフォンのケースは、巷にあふれています。家電量販店の店先に、色とりどりのケースが並んでいます。
それらを買うのもいいのですが、自分だけの背面カバーなら、さらに愛着が湧くこと間違いありません。
パイナップル背面カバーは、実用面では他のスマホケースなどに一歩劣るかもしれません。しかし、こんなものを作りたいと思わせてくれるのが「Fx0」なのです。
どうです? みなさんもFx0の背面カバー、作ってみてはいかがですか? パイナップルよりもインパクトのある背面カバー、期待してますよ!!
source: Fx0 , Firefox OS , Fx0 3D CADデータ(KDDI)
Special Thanks: 谷尻誠(SUPPOSE DESIGN OFFICE)
衣装協力:シンゾーン ルミネ 新宿、VINCA TOKYO
(執筆:三浦一紀、スタイリスト:武久真理江、ヘアメイク:井村曜子・外山裕子)