Apple Watchは時計としてイケているのか!? 某モノ系マガジンの編集長に聞いてみた
いろんな観点から書くことを考えていたんです。
Apple Watchがもたらすイノベーションとは何か? Internet Of Things時代の幕開けだ! いやいやむしろ決済システムやモータリゼーションの変革へと繋がるアップル社会戦略への序章だ...など。
実際にお目にかかるまでは。
でも腕にはめた瞬間にすべて吹き飛んでしまいました。
思ったことはひとつ。「こりゃいい時計だわ...」。テクノロジーとイノベーションを追いかける、ギズモードのエディターとしての感想が「純粋に時計としてのクオリティーが高い。他のスマートウォッチとは大違いだ」は何なのですが。しかし、この分野における知見がないので、雑誌『GoodsPress』の編集長、長谷部 敦氏に聞いてみました。GoodsPressは頻繁に時計特集をやっており、彼はプライベートでも時計購入のアドバイスをしてもらっている頼りになる友人です。
バンドに一番感心してしまった
尾田(以下O)「今回なぜ長谷部さんに話を聞こうと思ったかというと、体験会に行ったとき……あ、行った?」
長谷部(以下H)「僕は行けなくて、時計担当の編集者が行った」
O「あ、やっぱり。時計担当が行ったのは正解だな。なんで正解かというと、スマートウォッチという前に、これはよく出来た時計だと思ったのですよ。なにせ30分触った中で一番印象に残ったのがベルトだったんで...」
H「マグネットでくっつくやつ?」
O「それもそうだし、リンクブレスレットも。コマのひとつひとつに取り外しのボタンがついていて、工具がなくても長さの調節ができる。本当によくできてる。アップルの説明によると、ヘルスウォッチとして機能するには、ボディー裏のLEDを使ったセンサーを腕に密着させる必要がある、そのためにはバンドのフィット感が大事なんだと。マグネットも、普通は時計には使わないよね?」
H「メカニカルに悪影響を与えるから、普通マグネットはNGなんですよ」
O「ですよね。そういったところが今までの時計の常識とは違うなって。バックルの形状からして、バンドそのものを再定義して、一から作りなおしている。これは、他にまねできないなと思った」
H「僕も、2014年の9月に発表された段階では機能のこともまだ分からないし、一番ぐっときたのはミラネーゼっていうメッシュのバンドだった。結構伝統的なディテールで、近年また人気が上がってきているんだけど、金属の質感がすごく問われる形。アップルがこれを出してきたかと」
O「金属でメッシュだから着け心地がかなりよくないとだめだよね」
H「あと、ウチの雑誌で書いてもらっている時計ジャーナリストの話ではケースのクオリティがすごく高いと。へたすると、ちょっとした高級な機械式の時計よりもいいんじゃないかって。エレクトロニクスのメーカーがやるレベルじゃない感じがするね」
O「時計においてケースのクオリティが値段を左右するのは、機能というよりも装飾的な意味合いで?」
H「もちろんそれもある。高級品だから、触ったときの質感とか、見たときのきれいさは大事。肌触りや手に着けたときのバランスもね。ひとことでいうと磨きや精度といった仕上げ工程の差かな。さっきの時計ジャーナリストの人によると、アップルがクオリティの底上げをしてしまったので今後は高級時計メーカーも相当頑張りを求められるんじゃないかと。本当にそうかもね」
テクノロジー的な期待感
O「テクノロジー的な側面での感想は?」
H「今はまだ魅力が十分に見えてきていないかな。今後出てくるアプリが重要だよね。iPhoneが出てきたときも、今みたいな使い方はあまり想像していなかったでしょ? 今ほどソーシャルは盛んじゃなかったし。今後、俺らが想像もしないようなApple Watch用のアプリが出てきてビッグヒットしたりすれば全然違う世界が開けると思う。サードパーティにしても、ビジネスになりそうな期待感があるでしょう。そういう期待感って、これまでのスマートウォッチには感じなかったけどApple Watchにはあるね」
O「スマートニュースやグノシーに代表されるニュースアグリゲーション系はこぞって参入するだろうね※。こんなにちっちゃいスペースで陣取りゲームみたいなことが始まったらメディアの人は大変だな……って俺もメディアか(笑)。これから記事の見出しは5文字までにしてください、とかね」
H「Apple Watchとは関係ないんだけど、スマートウォッチを作っている人に取材する機会があって、その人が言うには『スマートウォッチは情報を断捨離するツールだ』と。今、ちょっとした時間があったらみんなスマホの画面を見てるでしょ? それをスマートウォッチで最低限の情報だけ通知するようにして、できるだけ情報に縛られないようにするという」
O「指で画面に絵を描くと相手の画面にそれが表示されるスケッチ機能や、トントンってたたくと相手の手首にその振動が伝わったりするタップ機能はアップルらしいなと思った。スケッチ機能も、描ける領域が狭いから描いたそばから消えるという。よく考えられてるなって。UIが原始コミュニケーション化してるよね。文字よりも絵が主体になりそう。元上司の小林(弘人)さんと話をしているときに『顔文字がこれ以上流通するようになったら象形文字文化になっちゃうんじゃないか』という話題が出て、確かにそうだなと思った。文章を生業にしている人はどうなるんだろう!?」
H「でもコミュニケーションの形としては可能性あるよね」
200万円超えは市場で戦えるか?
O「一番高いモデルは200万円を超えるんだけど、何年も使える高級腕時計とは違うわけで、そことどう戦っていくんだろうという疑問はある。高級腕時計は1〜2年で陳腐化することはないよね?」
H「もちろん流行はあるけどね。三桁万円の時計になるとリセールマーケットも充実しているし、親子三代にわたって使うようなことも珍しくない。スマートウォッチの場合、電池やCPUの性能が年々よくなるから、どうしても古くなっちゃうよね」
O「そこは、自動車のテスラみたいにソフトウェアのアップデートである程度長持ちさせられるように考えているんじゃないかと思ってる」
H「今ちょうど時計の見本市『バーゼルワールド2015』が開催されているけど、そこに出てくるような製品とテクノロジー製品の両方を取り扱う雑誌としてはApple Watchに盛り上がってほしいけどね〜」
O「そういう時計見本市にはApple Watch出てこなかったね」
H「『バーゼル』は業界向けだからね。CESにも出ていなかったし」
O「確かに自分たち主催しかやらないからねえ」
H「尾田さんApple Watch買うの?」
O「買うつもり。黒のリンクブレスレットのやつ。ラグジュアリーな方向ではないけど高級感があって、渋くて良いなと思った。4月24日が楽しみ。長谷部さんも買いに行くんだったら伊勢丹に並ばない? Apple Watchの帽子作っときますよ(笑)」
source: Apple Watch
(尾田和実)