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ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」




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46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/23(金) 21:39:49.71


んじゃ、さくっと
<プロローグ>
 この仕事で最初に貰ったテキストに書いてあったこと
「時空管理者が恋をした場合の選択肢は、記憶を失うか心を殺すことである」
 
 高校卒業の後、元の時間にもどったわたしはがむしゃらに努力してそれ相応の権限を手に入れました。
そしてあの時代に干渉した結果、規定事項はすべて遵守、今の未来も確定してわたしの仕事は終わりました。
わたしに残ったのは、過去の記憶と現在の管理局トップとしての地位。

 ここは広大な敷地にある図書館の館長室。

「機関の提案に対して、情報統合思念体は同調することにした。あなた達の結論を聞きたい」
「わたしたちも賛同します。今回の提案は、こちらにも利あるものですから」

 話し相手は長門さん。アカシックレコードとすら評されるこの図書館の館長をしている彼女の正体を知るひとは少なく、知る人にとってはこの建物の二つ名は皮肉ですらあります。
配属前の研修生として一度だけお会いしたときには、その後文芸部室で再会するなんて考えてもいませんでした。
今は、私の交渉相手であり今でも苦手だけれども親友のひとりです。

「あなたは・・・・・・、朝比奈局長は後悔しない?」
 彼女はわたしの顔色を伺うようにして問いかけてきました。だから、あたしは表情を変えることなく
「今回の件は、規定事項・禁則事項双方にも該当しませんのでわたしが後悔する理由はありません」
と答えることにしました。そして
「そう」

 それは感情のこもった返事でした。
 帰宅途中、わたしと彼女は入れ替わってしまったのかもしれないとふと感じました。


47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/23(金) 21:49:12.31


<その1>
 昨日からキョン君の、いえ長門さん以外のみんなの様子がおかしい気がします。
涼宮さんはやたら古泉くんを持ち上げるし、普段なら言い返す場面でもキョン君はそっけない態度です。
古泉くんもやけにキョン君に絡んでいる気がします。
「キョン君、どうぞ」
「ありがとうございます、朝比奈さん」
 いつもと変わらない受け答えだけれども、キョン君の表情はなにか硬くて心配です。
「なにか困ったことがあるなら、あたしでよければ力になりますよ」
「いえ、何でもないですよ」
 どうみてもいつものキョン君じゃないけど、あたしじゃやっぱり力になれないのかなぁ。
「みくるちゃん、おかわり」
「は、はい」
「みくるちゃん、キョンを甘やかしたらだめよ」
「で、でも・・・・・・」
 涼宮さんの態度は普段と変わらない、でもやっぱりなにか違和感を感じました。
3人が帰った後、長門さんに聞いてみることにしました。そして聞いたのは予想しなかった事実。
「つまり、涼宮さんはキョン君に嫉妬させるために古泉くんと付き合っているふりをしているということですか」
「そう」
「なんでそんなにキョン君に冷たくあたるのでしょうか」
「涼宮ハルヒは、古泉一樹と付き合う事により彼の意識を向けさそうとしている」
「だが。彼は行動を起こさずにいる」
「涼宮ハルヒは、本心では彼に関係を否定してもらいたいから」
「・・・・・・」
「だから今、わたしは二人の監視を続けている」 
 長門さんは読んでいた本から目を離し、あたしをじっと見て言った。
「あなたは事実を知ったとして、なにができるの」
 あたしはなにができるのだろうか。






48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/23(金) 21:58:47.42


<その2>
 次の日の放課後。
「おまたせ!」「ハルヒ、ドアがそのうち壊れるぞ」「いちいちうるさい!」
 最後に涼宮さんとキョン君がきました。あたしもさっき着たばかりでまだ着替えていません。
「あれ?みくるちゃん、まだ着替えてないの?じゃあ、キョンと古泉くんはそとでまっていなさい」
 昨日の長門さんの話をきいたので、涼宮さんを直視できないです。二人の問題であたしが干渉することじゃないんだけど。
 長門さんが本を閉じ、先に帰ってしまいました。みんなも帰宅準備をしているときに古泉くんが涼宮さんに話しかけます。
「涼宮さん、このあと少しお時間いただけますでしょうか」
「どうしたの、古泉くん」
「いえ、お話ししていたお店で夕食をご一緒にいかがかと」
 涼宮さんはキョン君をちらりと見ました。やっぱり止めて欲しいんだろうなぁ。
「ん?どうしたんだ、ハルヒ」
 キョン君は鈍感です。視線をはずし
「そうね、じゃあ古泉くん。お願いするわ」
 そう答える涼宮さんの声は、あたしには嬉しそうには聞こえないなぁ。
「涼宮さんと古泉くんどうしてますかね?」
 二人がいなくなった後、ちらっと呟いてみました。
「あの二人だから・・・・・・うまくやってるんじゃないですか?」
「キョン君はそれでもいいの?」


49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/23(金) 22:00:04.76


彼があたしをじっと見て言葉をつなぐ。
「朝比奈さん。あいつがそれでいいなら俺は何も言わないです」
「じゃあ・・・・・・、なんでそんなに悲しそうな顔をしているの」
「・・・・・・」
「朝比奈さん、それがあいつの望みなら俺は何も言えないですよ。」
 あたしにできることって。
「キョン君。あたし、今までキョン君に迷惑をかけたりしました・・・・・・」
「朝比奈さん?」
「あたしじゃ力になれないかもしれませんが、あたしキョン君の事が心配なんですぅ」
 彼はあたしの言葉を聞いて少し寂しそうにした。その後、彼は決心を固めたのかあたしを見つめて・・・・・・
「俺、朝比奈さんを頼ってもいいですか」
「はい。よろしくお願いします」

 そのときからあたし達は付き合い始めました。最初は支えあうというほうが適切だったかもしれないけど。

 あらかじめ予約しているレストランで食事を取り彼女を自宅まで送りました。
 涼宮さんとの食事はなかなかに楽しいものでしたが、やはり彼女の目には僕は映ってないように思えました。
 やはり僕には彼の代わりは無理みたいですね。
「今回の件なのですが・・・・・・」
「わかっています、新川さん。涼宮さんとの距離はほどほどにしておきます」
「最初の計画とは方針が変わりましたが。」
「上の方にスパイでもいるのでしょう、やっかいですね。他の組織との約束をこなしつつも機関の計画は思い道りに勧めることは厳しいです」
「情報操作で偽造の関係ですか・・・・・・暴走しなければいいのですが・・・・・・」
「涼宮さんと4回程度交際を繰り返す・・・・・・計画を考えた人は感情を無視して書き換えたのでしょう」
「精神的にやばいと感じたら私か森に言って下さい」
「心遣いありがとうございます」
 どうやら、新川さんにまで心配をかけてしまっています。
 
「彼と朝比奈みくるのほうは問題は無い」


79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 08:12:49.82


緊急脱出プログラム設置の真相

 朝比奈みくると長門有希は、顔をつきあわせながら、ある計画の検討作業にあたっていた。
 過去の長門有希のあの12月18日の暴走から端を発する一連の世界改変を正常化するために、朝比奈みくるが立案した時間工作計画であった。

「大枠はこれでよいと思う。ただし、一点だけ問題がある」
「何でしょうか?」
「あのときの私が実行しようとしていた世界改変内容と、実際に行なわれたそれとの間には差異がある」
 情報通信デバイスを通じて、長門有希から朝比奈みくるに情報が送信された。
「これは……」
 朝比奈みくるは、絶句した。

 涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、鶴屋、佐々木の存在そのものの消去。キョンの記憶改変。そして、規定事項に反して、緊急脱出プログラムは設置しない。
 あのとき長門有希がやろうとしていた世界改変は、そういうものだった。

「あのときの私は、エラーに見舞われていたとはいえ、目的を遂行するための手段を判断する能力には支障はなかった。そして、目的は、彼の恋人、そして将来的には配偶者としての立場の確保。そのために支障となりうる要素を徹底的に排除しようとしていた」
「でも、実際にはそうはなりませんでしたよね?」
「何者かの介入で、世界改変の内容が修正されたと考えるのが妥当」
「長門さんに対抗できる存在は限られてます。喜緑さんのようなTFEIか、あるいは情報統合思念体か」
「そのどちらでもない。あのときの私は、その両者を真っ先に消去している」
「じゃあ、あれからちょっと未来の長門さんですか? お宮参りのあとで、いっしょに12月18日に遡行しましたよね?」
「それも違う。お宮参りのあとの私が、12月18日に遡行したときには、所定の修正は既に終わっていた。それは、あのときに、STCデータを全量走査して確認している」
「では、いったい誰ですか?」
「修正作業にかけられる時間は、0.153秒。自分自身をも改変するために最後のその時間だけ自動実行プログラムにしていたから。介入の機会はそこしかない」
「それだけで既に人間技ではないですね」
「そして、あのときの私が行おうとしていた改変内容と、それに対して修正すべき内容を完璧に把握し、かつ、あのときの私と同等以上に涼宮ハルヒの力を借用する能力をもつ者でなくてはならない」
「ならば、私が思い当たる存在はただ一人です。私の目の前にいる長門さん以外にはありえません」
「正解。今回は、私が直接介入を行なう」
「でも大丈夫ですか? 長門さんが動けば、それだけで目立ちますよ」
「あのときの三年前の7月7日からあなたと彼が時間移動してくる、それと同時に私も当該時間平面に遡行する。あなたがたの時間移動による時間平面破砕震動にまぎれて、私の時間移動は気づかれないはず。少なくても、あのときの私と、あそこで待機中の朝倉涼子には」


80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 08:14:31.16


「でも、時間移動やTFEIとしての情報操作能力の行使は、どうしてもSTCデータ上にその痕跡が残ります。それが組織にばれるのはまずいのではありませんか?」
 組織内で、長門有希の正体を知る者は朝比奈みくるしかいない。それは二人だけの秘密なのだ。
「その痕跡を観測しても、認識さえしなければ、それは観測しなかったことと同じ。組織の人間の認識能力にそのような制限をかけることは容易。私がこの組織内で情報操作能力を用いるときは、常にそうしている」
「なるほど。それなら問題ありませんね」
「そう」

「でも、いいんですか? あれはあのときの長門さんが心の底から望んでいたことなのに。それを阻止してしまうなんて」
「あれは、いわゆる若気の至りというもの。そのために生じた被害を最小限に食い止めるのが、大人の役目であろう」
「達観していらっしゃるのですね」
「二百年も生きていれば自然とそうなる」
「二百年ですか……。想像もつきませんね」

終わり


92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 13:46:14.22


さて、夜は忙しいので今のうちに投下。

<第二話序章>
 この建物には、色々な時間の書物がある。紙というものが発明されてから・・・・・・いや、文字というものが存在をしたときからのものか。
『文章にはその執筆者の内面がわずかでも含まれるものですからね』
 あの懐かしい思い出の時間で、古泉一樹が言った言葉はわたしの考えと同じであった。
わたしと同じ情報統合思念体の作った観察者の報告書、時間を観察する者たちの報告書も存在する。
あと、これはわたしとそして現在の朝比奈みくると同じ立場にいる者しか知らないこと。

「平行世界の歴史書」「存在していた時間の書物」

そう、今の時間平面には存在してはいけない書物もある。

 あのとき、わたしは彼女に嘘を教えるべきだったかもしれない。


93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 13:47:00.92


<その3>
 あれから一夜過ぎて。朝、定期通信の内容を確認しています。

「1」
「システム更新のために通信が数日間不通になります。その間は各管理者の判断で対応してください」
「先に連絡していたとおり、各自転居をお願いします。住居確定後、速やかに連絡ください」

 ああそうか、昨日通信しても返答がなかったのはそういう理由だったのかぁ。でも『1』ってなんだろう。
 転居かぁ・・・・・・今住んでいる所が契約更新の時期だからちょうどよかったかも。そういえばこのまえ鶴屋さんに相談したときに
 「それなら、あたしにまかせるさ~」と言われたけどそのあとどうなったのかなぁ。今朝にでも確認してみるかなぁ。
 うん、できれば・・・・・・キョン君と一緒に帰れる範囲が良いなぁ。

 あたしには、何より気になる一文があって、「現状維持で観察を続けてください」とのこと。
 禁則事項だと聞いてはいなかったけど本当に良いのかなぁ、とつい首を傾げてしまうのでした。


「鶴屋さん、おはようございます」
「みくる、おはよう。きょうもかわいいねぇ~」
 ハイキングコース(キョン君命名)の入り口付近で、鶴屋さんと鉢合わせです。やっぱり朝から明るいオーラがあふれています。
 昨日のことはお昼に話そうかなと思っていたら、鶴屋さんから話を切り出してきました。
「そうだ、みくる。この前の話、転居のことだけど、どうせだからあたしんちに住むというのはどうだいっ。」
 鶴屋さんのご自宅はすごく広い屋敷で以前(みちるとして)お世話になってたこともあります。
「以前泊まってた、あれちがったか、うちの離れだったらみくるが住むには十分だと思うさっ。食事はせっかくなんでみんなで一緒に食べよう」
「じゃあ、お願いしようかなぁ・・・・・・」
 使用人の方々も一緒に住んでいた彼女の屋敷ですが、そういえば食事はみんなで集まって頂いていました。「ごはんはやっぱりみんなで一緒に食べたほうがおいしいから」という理由だと当時聞いたような気もします。
「それならさっそく明日にでも引越ししようか。うちまでキョン君なら自転車で来れる距離だから」
 鶴屋さんの勘のよさにすこし驚いたり。まだ何も話していないのにキョン君の名前が出るのだから。
「どうせだし、全部あたしにまかせるにょろ。みくるの悪いようにはしないさぁ~」
「お、お願いします」
 ま、まああたしは自覚したくないけどみんなからどじっ子と言われているのでやはり任せたほうが安全ですね・・・・・・書いてて悲しくなってきた、しくしく・・・・・・。






94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 13:47:31.81


お昼休み。重要な話なので他のお友達のお誘いは辞退して、鶴屋さんと中庭でお弁当を突きながら話すことにしました。
 たまには二人だけでお弁当もいいと思いませんか。「デートのお誘いかいっ(by 鶴屋さん)」

「へっ?ハルにゃんじゃなくてみくるがキョン君と交際?しかもみくるから告白???」
 昨日の話をしているのですが、鶴屋さんが話を聞いている間ずっと呆然としてるのはなんででしょうか。
「え、う、うん・・・・・・」
 まるで探偵が被疑者を問い詰めるようにして確認してきます。
「キョン君は確かにああ見えて結構ポイント高いと思うし、みくるに好意があったのは知ってるけど・・・・・・まじかい、お嬢さん?」
「う、うん」
 そう聞かれるとうなずくしかできないです。

「ところで、ハルにゃんはそれ知ってるのかなぁ?」
「放課後に話そうと思っているのですが、どう切り出そうかなぁと」
 そう、それが放課後の一番の心配事なんです。不思議探しで二人きりになった時ですら、あれだけ騒ぐあの涼宮さんがあっさり納得してくれるとは思えない。
 鶴屋さんはお嬢様で立場上いろいろと会話技術もあるだろうし、なにかアドバイスをもらえたらいいなぁと。
「いいかい、その話は絶対にみくるからするんだ。キョン君にさせては駄目だよ」
 鶴屋さんはさっきまでおちゃらけな雰囲気をがらりと変えて真剣な表情で言いました。
「は、はい」
 たしかに、キョン君が話したら以前のように閉鎖空間で二人きりとか。そんなのはいやだ。
「強気で話す、そうしないとハルにゃんにはぐらかされてしまうからねぇ」
「はい」
「じゃあ、放課後はキョン君をあたしが引き止めるからがんばるにょろ」
 話は終わりとばかりに弁当からを片付けながら、態度をさっきのおちゃらけな雰囲気に変える彼女。同じ年齢のはずだけどあたしにはまねできないです。
「そうだ、これからはキョン君の家で夕飯食べてうちに送ってもらいなよ~」
「そ、そうですね」
 からからと笑う彼女をみるとなんだかうまくいく気がしてきました。
「自転車に二人乗りかぁ。青春だな、すこし妬けるねぇ。あはははは」
 その光景を思い浮かべたあたしを指差して笑う彼女。顔が真っ赤になってるのかなぁ。
 悩んでいたあたしに元気と勇気をくれる鶴屋さんは、大切な親友です。


95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 13:48:17.56


<その4>
 放課後。SOS団の部室に入ると、キョン君以外みんながそろってました。
「キョンは鶴屋さんが用事があるって連れて行ったわ」
 パソコンの画面を眺めながら不機嫌そうなオーラを出しつつ涼宮さんはそういいました。

「えっと、涼宮さん。話があるのですが」
 ここに来る前に考えてたとおりに話を切り出します。
「どうしたの、みくるちゃん。そんなまじめな顔をして」
「あたしの彼氏が見つかったら、涼宮さんが面談するって言ってたので報告します」
 面白いことを見つけたとばかりに満面の笑みを浮かべて、涼宮さんが席から立ち上がってあたしに抱きついてきました。
「みくるちゃん、いい人がみつかったの?ねぇ、だれ?だれ?」
 どうみてもおもちゃをねだる子供みたいだなぁと一瞬思いました。あたしはこの子供をおもちゃから引き剥がすのに。
「キョン君です」
 予想はしていたけど、涼宮さんはぴたっと硬直し部室の空気が凍りました。
 
「へ?キョン?何の冗談?」
 涼宮さんは少し離れてあたしの顔をじっと見つめています。
 最初は冗談と思ってたのかきょとんという雰囲気が、にらみつける感じに変わり、かわいそうな人を見る目で話し始めました。
「みくるちゃん、そういうのは冷静にならなきゃだめよ」
 その後に続くのは普段のキョン君への愚痴を並べたような内容。
「キョンのどこが良いわけ?気が利かないし、使えないし、ぱっとしないし、いろいろ鈍い。容姿も悪くはないけど普通だわ。優柔不断なところもあるし、キョンにみくるちゃんはもったいなさ過ぎるわ。それに・・・・・・」
 今までは涼宮さんとキョン君の口げんかと半分流していた内容、でも今は聞いてて不快にしかならない。
 そもそも、涼宮さん自身そうは感じていないのになんで素直にならなかったのだろうか。
「やめてください!」
 気が付けば、叫んでいました。
「好きなんです。キョン君がOKしてくれたんです。あたしの彼を悪く言わないでください」
 鶴屋さんは強気でと言ったけど、あたしは自分の感情を泣かずに言うのが精一杯。この程度で泣いたらキョン君の力になれない。
「そ、そう。ま、まあみくるちゃんがそういうなら・・・・・・。あたしとしても交際を応援するわ」
 続いた沈黙のあと、涼宮さんはしばらくして声を搾り出すようにして、そうつぶやきました。


96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 13:48:53.07


きまずい空気が悪いまま長門さんが本のページをめくる音だけが聞こえてきます。
「きょうは調子が悪いから帰るわ。最後の人は鍵よろしくね」
 涼宮さんは空気に耐えられないのか逃げるようにドアを飛び出して、その直後キョン君と鉢合わせたみたいで
「遅れてすまん、鶴屋さんに雑用を頼まれて・・・・・・ってハルヒどうした?泣いているのか?」
 (ドンッ)←なにか壁に当たる音
「いってえ。なんで突き飛ばされないといけないんだ。わけがわからん」
 入れ替わりキョン君が入ってきました。

「いったいどうしたんだ?なにかあったのか?」
 キョン君の問いにいつものスマイルで古泉君が答えました。
「別に。朝比奈さんがあなたとの交際のことを涼宮さんに伝えただけですよ」
「・・・・・・そうかい」
 憮然とするキョン君。
「詳しいお話は明日にでも聞かせてください。僕はこれからバイトですから」
 閉鎖空間の発生。今回は間違いなくあたしが原因。
「ごめんなさい、古泉くん」
「気にしないで下さい、朝比奈さん。涼宮さんはあなたのことを嫌いにはならないでしょうから」
 そうだったらいいのだけど。あたしとしてもSOS団は居心地のいい場所、涼宮さんは納得してくれるだろうか。


97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 13:51:10.91


キョン君と一緒に帰っているとき今日の出来事を伝えました。
「だから鶴屋さんはそういう理由で俺を呼んだのですか。朝比奈さんありがとうございます。ハルヒには俺から本来伝えるべきだったけど、放課後まで切り出すことができなくて」
 せっかく一緒なのになんか空気が悪いので、引越しの話あたりで話題を変えよう。
「明日、鶴屋さんの家に引っ越すんですよ。前お世話になった離れを使っても良いって」
 キョン君は2月のことを思い出しているのかすこしぼんやり考えて
「あそこならうちから散歩できる距離ですから、帰りに送って行くこともできます」
「じゃあ、引越ししたらお願いしようかなぁ~」
 よかったぁ~、いつもの感じに戻った。内心ほっとしながら微笑むあたし。

 それから、これからの事を話していると駅に着いてしまいました。
 もう少しキョン君とお話したかったなぁ~・・・・・・そう思っていると
「明日からはもっと一緒に居れますよ」とキョン君が言ってくれました。
 あたしも、明日を楽しみにしながらキョン君と別れて改札に入りました。


次の3話で終わり。

夜は余裕あれば一行保守くらいは協力したいものです


101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 15:02:49.63


                            _,`,ヽヽ, '.., ' '´ヾ:::::::::::::::``ヽ、ヾ、, 'ソ,゙==二',」
                         , ',´`,'ミ,','シ:::,'....,',丶:::::ヽ::::::::..........'i:::ヽゞ、丶
                        く、,' ,' }`、,':::,'::::,',´ヾ、,::::::::,ヽ:::::::::::,',...ヽ,'>` ',
   勝負は今夜                 ,',' 7, ',:::::l |:l \ヾ、、ヽヽ`,ゝ、,:::::::::}` 、_; _
    全団員戦闘配置につくように!    ,',' ´,´ |::::::|::::::',`,==ミ ``ヾ`イ゚:::::リレ|::::::ト...`丶 _ 、ゝ
                         ´//::::/ |::::ト::::::::',ヾ゚::::i    ヾ=〃|::::::l ',::::::l |
                          `,:::::|..:::l:::::|ヽ:::::ゝ` ´ r`ー ヘ  /::::::/ |::::|..|
  , 、          ' `i            ヽ'ヽ、ソ::::ヾ `ヽ、 ゝ、 / ,/:::::/:::::::|:l.:.|/
  ヽ  \、_  , ' ,'  i``ゝヽー―  、    ヽヘ ヾ:::::::ヽ::::::::`> 二, ' !/::::::::/| /,ソ
   ヽ、    ̄ヽ/´` l´ヽ  ヽヽ    `ヽー--ヾゝ, ´ `r l ト、!}` i i r」|i::::::/ リ
     `/`ー  `'  /  |   l l       ヽヽ、\` ,'|´// l´`` lr´ ̄'``y「l` l l`ヽ
    ,/,丿,'゙ ; ´ フ'´ー-'/   | |         ヽ、  `゚'゚'`゚   ,',     l、,|、| l  ',_ _ , 、
  r' ´  / , ,_ _ノ\  /    | |    ,、      ヽ, '''r`' ゙'  ,','  ┌_ _┐ `/  /S \
  `─ー´i  |´l  ヽ、 ̄    //'ー- ' ``-´`ヽ、_ ,','´     ;;    ´  ` 〈'  / 0  人ゝ
      ,l/ ハ ヽ   `ー ―'´'´            ,',;        ;;.        ,´/ S  , '  ` ヽ、
      〈/ ヽ'                      ;;',      ,' ;;:        / ヘ、  /      ヽ,



110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 18:24:11.03


ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」
キョン「食ってない」
ハルヒ「うそ」
キョン「何を根拠に」
ハルヒ「部室にはあんたとあたしだけしかいないんだから犯人はあんた意外に考えられないじゃない」
キョン「そんなこと言われても本当に食ってないんだから食ってないとしか答えられん」
ハルヒ「むっ…。じゃあ、あんたが犯人じゃないっていう証拠を示しなさいよ」
キョン(こういう場合普通はお前が俺が犯人である証拠を示すものじゃないのか?)
キョン「…しょーがないな」スッ
ハルヒ「…んっ」

ハルヒ「……ぷはっ」
キョン「プリンの味しなかったろ?」
ハルヒ「…………うん」
キョン「これで俺が犯人じゃないってわかってくれたよな?」
ハルヒ「…………うん」
キョン「やれやれ」
キョン(しかし一体誰がプリンを食ったんだ?)


111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 18:48:01.89


ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」
キョン(またか)
キョン「食ってないぞ」
ハルヒ「本当でしょうね?」
キョン「ああ」
キョン(…というかハルヒの奴今日はプリンを持ってきてなかった気がするだが…)
ハルヒ「じゃ、じゃあ、昨日みたいに証拠を示しなさい」
キョン(…気のせいか?)
ハルヒ「…は、早く…しなさいよ…」
キョン「…わかったよ」スッ
ハルヒ「…んっ」

ハルヒ「……ぷはっ」
キョン「これでいいか?」
ハルヒ「…………うん」
キョン(まあ、いいか)






113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 19:17:27.59


ハルヒ「ちょっとky…」
キョン「はいはい、プリンなんか食ってねーぞ」
ハルヒ「だったr…」
キョン「証拠だろ…ほら」スッ
ハルヒ「…んっ」

ハルヒ「……ぷはっ」
キョン「これでいいよな?」
ハルヒ「…………うん」


115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 19:45:58.82


ハルヒ「……んっ」
キョン(これで本日の証拠提示も終了か…)
ハルヒ「………」ぽけー
キョン(…あれ以来すっかりこれが日課になっちまったな…)
ハルヒ「………」ぽけー
キョン(しかし、あれから結構な日数が経ってるのに未だにハルヒのプリンを食べた犯人は
謎のままだ。宇宙人、未来人、超能力者にばれずにそんなことできる犯人って一体…)
キョン「なあ、ハルヒ」
ハルヒ「な、何?」ビクッ
キョン(何で慌てるんだ?)
キョン「誰なんだろうな?プリン食った犯人」
ハルヒ「あ、ああ、犯人ね。確かに気になるわね。一体誰なのかしら?」


117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 20:19:35.47


長門「………」もぐもぐ
古泉「何を食べてるんですか?」
長門「…これ」スッ
古泉「あの…それってもしかして…」
長門「…涼宮ハルヒのプリン」もぐもぐ
古泉「やはりそうですか。ということはあなたが一連の事件の犯人ですね。どうしてこんなことを?」
長門「…それは」もぐもぐ
古泉「それは?」
長門「…禁則事項」もぐもぐ
古泉「はぁ…」


118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 20:41:51.20


ハルヒ「ね、ねぇ、キョン」
キョン「何だ?」
ハルヒ「さっきの証拠なんだけどね」
キョン「証拠がどうかしたのか?」
ハルヒ「考え事してて、味をよく確かめられなかったのよね。……だ、だから…その…も、もう一度…しなさい!!」
キョン「はい?」
ハルヒ「………」
キョン(もう一度?た、確かにさっきのハルヒはどこかボケーとしてたが、それでも味がわからなくなるものかな……)
ハルヒ「………」
キョン(…それとも、ひょっとして、俺とその…なんだ……キスしたいってことなのか?)
ハルヒ「……早くしなさいよ」
キョン(…なんてな。深読みしすぎか)
キョン「…はいはい」スッ
ハルヒ「……んっ」


120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 21:13:39.33


古泉「…成る程、そういうことだったんですか」
長門「…そう」
古泉「涼宮さんのプリンを何者かが食べていたと言うのは伺っていましたが、
それに託けて二人がこのようなことをしていたとは知りませんでしたね」
長門「………」
みくる「部室を覗き見なんかしてどうしたんですか?」
古泉「少々事情がありましてね。まあ、見てください」
みくる「?」
長門「………」
みくる「わぁ」
古泉「おわかりいただけましたか?」
みくる「はい」


123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/24(土) 22:08:30.65


ガチャ
キョン「誰もいない」
キョン(確かハルヒは朝のHR前にプリンを部室に持っていったはず…)
キョン「冷蔵庫を覗くのもすっかり習慣化しちまったな」
ガチャ
キョン「冷蔵庫の中にプリン発見できず」
キョン(…ということは、すっかり日常と化してしまったいつものアレがおこなわれるのか)

バンッ
ハルヒ「やっほー!」
キョン「遅かったな」
ハルヒ「ちょっと掃除に手間取っちゃってね。それよりプリンはどうだった?」
キョン「他人からの伝聞情報はあてにしないんだろ?自分の目で確かめろよ」
ハルヒ「ケチ」

ハルヒ「今日もプリンがなくなってるわ…」
キョン(だろうな)
ハルヒ「ふふん」クルッ
キョン(何で言葉とは裏腹に嬉しそうなんだろうね、こいつは?)
ハルヒ「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」

おわり


143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 01:10:48.98


「すぐ戻ってくるから、ちょっと座って待っててくれる」
そう言い残して、ハルヒは先ほど俺たちが登ってきた階段を降りて行った。一人部屋の中に残された俺は動揺している心を落ち着かせるために小さく深呼吸をする。
胸の鼓動が速くなっているのが分かる。別に今日何かをしようという気があるわけではないし、ハルヒに自分の家に来るように誘われた、ただそれだけなのだが、妙に緊張する。何せ妹以外の女の子の部屋に入るのは初めてだからな。
おそらく谷口あたりも最初はそうだったんじゃないだろうか。いや、あいつは今でもそうかも知れない。それ以前に女の子の部屋に招かれたことが無いかもな。国木田は……なんだかんだで要領良さそうだから大丈夫なのかも知れないが……
目をつむって心を落ち着かせるように自分に言い聞かせる。しばらくそうしていると、胸の鼓動も通常に戻り、若干落ち着きを取り戻したように思えた。少し安堵の感がわいてくる。これでハルヒに邪な下心を持っていると勘繰られることもなかろう。
そんなことを考えながら部屋の中を見回すと、どこにでもある、とはいっても妹の部屋と今日初めて入るハルヒの部屋以外は知らないのだが、少女の部屋。
俺の部屋とは違い小奇麗に整理されている。本棚には参考書の他に少女漫画などが整然と並べられていて、ほんの少しだけ意外に思った。
普段は突拍子もないことを口走るハルヒも、案外可愛らしい一面を持っているんだな。などと微笑ましい気持ちになりながらキョロキョロと部屋の中を物色していると、ふと本棚の一番上を見て視線を止めた。そのまま大きく息を呑みこむ。
そこには黒い箱の上にちょこんと座ったテディベアのぬいぐるみがあり、傍らには白い布を被ったオルゴールが添えられていた。その光景を見て、俺はそれまでの動揺も忘れるほど本棚の上を凝視する。
別段、取り立てて驚くことのない光景。だが、それを見た瞬間、胸に熱いものがこみ上げてくるのが分かった。古泉や長門、朝比奈さんの顔が脳裏に思い浮かび、高校時代の淡い過去の記憶がよみがえる。
やがてそれは鮮明になりながら、俺を過去の想い出の世界へといざなった。誘われるままにあの日のあの出来事へと思いを馳せる。確かあれは卒業式を間近に迎えた2月の出来事だったと記憶している。



それは、ハルヒとつきあい始めて間もない日のことだった。いつもと同じようにSOS団の本拠地となった文芸部室へとやって来る。ハルヒとつきあい始めたからといって、別段いつもとなんら変わらない日常。まるでここに来ることが生活習慣の一部になっているかのようだ。
そんな自分の行動を疑問に思うことなく文芸部室の扉を開けると、部屋の中には隅で本を読んでいる寡黙な少女の姿もメイド服を着てお茶を淹れる可憐な少女の姿もなく、ただニヤけた顔をした超能力者の姿だけがあった。
「お前……だけか……」
一瞬、時間が静止したかのような錯覚に思わず立ち竦む。
「はい」
キョロキョロと部屋の中を見回しながら机の上にかばんを置く俺に、古泉はいつもと同じ笑顔で答えた。
部屋の中はいつもと変わらぬ日常、在るべきものが在るべき場所にあり、疑問に思うことは何ひとつない。ただ、長門と朝比奈さんだけがいないだけだ(ハルヒは掃除当番でまだ文芸部室には来ていない)
文芸部室に古泉が一人でいるシチュエーションにはいままでに何度も遭遇しているし、部屋の中を見回しても日常を揺るがすほどのものは何も無い。

だが、文芸部室の扉を開けた瞬間、そのときが来たのだと直感した。

「みなさん、まだ来られていないようですし、ひと勝負しませんか?」
動揺し立ち竦む俺に、普段となんら変わらぬ様子で声をかけてくる古泉。机の上にはオセロのボードが用意されていた。確かそのオセロは古泉と一番最初に勝負したゲームだったはずだ。


144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 01:11:37.19


古泉を一瞥してから、いつもの指定席へと腰を下ろす。古泉は、ニコッと俺に微笑みかけた後、手馴れた手つきで盤面に駒を並べた。しばらくの間、俺達は一言も会話を交わすことなくゲームに興じた。部屋の中は静寂が支配し、窓の外から野球部の掛け声がときおり聞こえてくる。
「どうやら、あなたも薄々は感づいているようですね」
ゲームが中盤に差し掛かった頃、ずっと盤面だけを見つめていた古泉が顔を上げて、俺の顔をじっと見つめた。古泉につられて、俺も顔を上げる。
「長門と朝比奈さんはどうしたんだ?」
古泉は無言のまま両手を広げ、首を左右に振る。
「……朝比奈さんは未来に帰ったのか? だが、長門がいるべき世界はここだろう。お前と同じで、俺やハルヒと別れる必要はないはずじゃないか?」
じっと自分を見つめる俺を一瞥した後、古泉は何も答えることなく盤面に視線を戻し、何事もなかったかのように駒を置いた。その様子を見て、俺も古泉から目を逸らして盤面の勝負に意識を戻す。
また、そのまましばらくの間、お互い言葉を交えることなくオセロの駒を盤面に置いていく。時間がゆっくりと流れているような錯覚に陥る。
ふと、周りを見回すと、いままで見慣れたはずの文芸部室の風景、たくさんの本が並べられた本棚やメイド服をはじめとする朝比奈さんのコスチューム、団長と書かれた三角錐の置かれた机がとても懐かしく感じる。
SOS団設立が三年ほど前で、俺のさほど長くない人生と比較してもそれほど時は経っていないというのに、それらはまるで俺が生まれる前からそこにそうして在ったかのように思えてしまう。
開け放たれた窓から春の訪れを感じさせる暖かな風が吹き込み、カーテンをたなびかせる。窓の外に視線を向けると、季節外れの桜の花びらが舞っていた。
この時の俺は、現実の世界ではなく、まるでおとぎ話のような非現実的な世界にいるかと錯覚するぐらい、周囲の風景が幻想的に思えたのを覚えている。
「正直……」
不意に古泉が盤面を見詰めたまま沈黙を破る。同時に幻想的な感傷の世界から現実の世界に引き戻されて、俺は古泉へと視線を移す。
「僕は今、彼女達、長門さんや朝比奈さんが、宇宙人や未来人といった存在であったのかも疑っています。それどころか、自分が何者であるかすらも見出せない状態です」
「…………」
普段の俺であればなんと反論しただろうか。目の前で実際に長門や朝比奈さんが宇宙人、未来人である証拠を見ているのだから、俺にとって古泉のこの言葉は看過できない暴言のようなものだ。
もちろん、それらもすべてハルヒの力のなせる業だと言われてしまえばそれまでなのだが、それでも俺は古泉のこの言葉には賛同することができなかった。
だが、この時の俺は古泉に反論することなく黙っていた。古泉は俺には理解できない次元で、長門や朝比奈さんが宇宙人や未来人であるということに疑問を呈しているのだ。そしてそんな古泉の気持ちが、なぜかよくわかったからだ。
「寂しくなるな……」
口にして少し驚きを覚えた。もっと別れを惜しんでもいいはずなのに、なぜかこの時はありのままを受け入れようとしている自分がいたのだ。なにか見えない力に導かれるように、別れの言葉を口にする自分がいる。
もう長門と朝比奈さんには会えないのだろう。この部屋に入った瞬間、俺の中にあったそんな予感が古泉と言葉を交えることで確信へと変わった。そして、古泉と会うのもこれが最後なのだとわかった。
「そうですね。思えば色々ありましたから……」
顔を上げ、宙を見上げる古泉の表情からは、あくまでポーカーフェイスを崩すことなかったが、別れを惜しんでいるような寂しさのような感情が読み取れた。
長門も表情の変化に乏しく感情を読み取るのに苦労したが、古泉の感情をその表情から読み取れたのはこれが初めてだったかもしれない。いつもニヤケ面で何を考えているかわからない奴だったからな。
そんな古泉でも別れのときは愁傷な気持ちになるのだと知って、少し意外な感じがした。呆けたように古泉の姿を見つめていると、古泉は俺の視線に気づき、少し首をかしげて微笑む。
「どうかしましたか」
「い、いや……」






145:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 01:12:28.00


思えば、高校入学の日、ハルヒと出会って以来、俺達は、もちろん古泉だけでなく長門と朝比奈さんもなのだが、同じ目的を持って、常に行動をともにしていたように思える。
そう、俺達はただの高校のクラスメートという枠には納まりきらないくらいたくさんの思い出を共有した友人、いや、もはや同志とと言ってもよいくらいの関係を築いていたことにあらためて気づかされた。
そんな大切な仲間三人との別れが唐突に訪れたのだ。ただの平凡な一般人である俺に、この状況で冷静でいろというのは無理というものだ。
言葉にできない感情がこみ上げてくるのがわかった。話したいことはたくさんあるはずなのに、あまりにたくさんありすぎて何を話してよいかわからず沈黙したまま時間だけが過ぎてゆく。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、古泉は俺から盤面の勝負へと視線を移した。お互い言葉を交わすことなく、淡々と目の前の盤面に駒が置かれていく。やがて、古泉が盤面に最後の駒を置いて勝敗は決した。
「ようやくあなたに勝つことができましたね」
微笑みながら古泉は顔をあげて俺の顔を見る。盤面を見つめ、駒の数を何度か数えた後、俺も顔を上げて古泉を見た。
「……そうだな」
そう言うと、古泉は椅子の背にもたれかかり、宙を仰ぎ見た。
「嬉しい……とても嬉しいです。僕は今、言葉にできないほどの喜びで胸がいっぱいです」
突然、大仰に自分の気持ちを吐露し始めた古泉に、俺は奇異の視線を向ける。普段は何を言われてもポーカーフェイスで何を考えているのかわからない奴なのに。
「な、大げさだな、そんなに俺に勝ったことが嬉しいのか?」
古泉は俺を一瞥してにやりと笑いながら立ち上がると、何かに誘われるかのようにふらふらと窓際へ近づいて行った。あたたかい春の風が吹き込み俺と古泉の間を通り抜けた。
「僕はあの日からずっとこの時が来るのを待っていました。そしてようやくこの時が訪れたのです」
まるで演劇でも演じているかのように、古泉は俺の存在を無視して語り始める。
「あの日、涼宮さんはベッドの上で僕を抱きしめて泣いていました。彼女の胸の内にあった鬱屈した思いを僕に語ってくれました。日常の不満。周囲の無理解。たくさんの物事が彼女を苦しめていたのです」
窓の外を眺めながら、昔を思い返すように語る古泉。俺は唖然としたまま演劇の観客のように、ただ黙って古泉を見ていた。
「そして彼女は僕に自分の抱いている夢を語ってくれました。宇宙人や未来人、超能力者といった未知との遭遇を経験し、この世界の誰よりも退屈の無い面白い日々を送りたいと。夢を語る彼女の表情は、僕にはとても寂しく思えました。
なぜなら、賢明な彼女はそれが現実にはあり得ないことだとはっきりと理解できていたからです。だからこそ、彼女はその夢を僕たちに語ってくれたのです。僕はこの時ほど自分の無力さを呪ったことはありません」
普通に考えれば、古泉の語る内容は、俺との信頼関係を壊すに十分なものだった。いま俺とつきあっているハルヒが過去に自分と寝床を共にしていたと語っているのだから。だが、この時の俺はなぜかそんなことを心の片隅にも思いはしなかった。
「暗雲を取り払う風のように、彼女の心を曇らせるすべての憂鬱を取り除いてあげたかった。夏の太陽のような彼女の笑顔を取り戻したかった。でも、その時の僕には、眠る彼女の涙を拭ってあげることすらできなかったのです」
太陽が山際へと差しかかり、部屋の中は窓から射し込む黄昏で真っ赤に染まる。夕日を背にした古泉は、どこか人外の存在のように思えた。いや、いまいる部室そのものが現実世界から乖離しているよな感覚を覚える。
「でも、そんな僕の憂鬱も、どうやら終わりを迎えたようです。僕の代わりにあなたが、涼宮さんの心を覆う暗雲を取り除いてくれるようですから」
古泉はこちらに顔を向ける。その目はじっと俺の目を見つめ、俺の覚悟を問うているように思えた。
「ああ、約束する。お前に言われるまでもない。ハルヒは俺が守る」
じっと古泉を見つめ返し、力強く返答する。逆光でシルエットとなった古泉の表情をはっきりと伺うことはできなかったが、確かにその時の古泉は微笑んだように見えた。それも普段のポーカーフェイスのニヤケ面ではなく、もっと感情のこもった微笑みで。
「お別れの時間です。短い間でしたけど楽しかった。あなたと過ごしたこの三年間を、僕はずっと忘れることはないでしょう。涼宮さんをよろしくお願いします。では……」
そう言った古泉のシルエットが薄くなり、夕日が段々と透けて見えるようになった。その体は段々と小さくなり、最後は小さなクマの形になって、団長席の向こうに消えた。
「ぬいぐるみ?」


146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 01:13:15.35


俺は席を立って、団長席の向こうを覗く。一瞬だけテディベアのぬいぐるみが見えたような気がしたが、そこには何もなかった。何もない床の上を、ただ茫然と見つめる。SOS団での想い出が走馬灯のように頭によみがえり、じっとその場に立ち竦む。
一筋の涙が頬を伝うのが分かった。悲しみの涙ではない。もちろん喜びの涙でもない。あえて言うならば、別れの涙。静寂が支配する部屋の中で、床を見つめたままずっと立ち竦んでいた。
やがて日が沈み、夜の闇が窓の外を塗りつくした。窓から射し込む月明かりに照らされた文芸部室には俺以外誰もいない。今日はどうやらハルヒも来なかったようだ。ただ机の上に置かれたボードゲームだけが、確かにいままで古泉がそこにいた証のように思えた。
そのボードゲームを片付けようと机に近づく。が、そのまま片付けることなく、俺は帰り支度を始めた。このボードゲームを片付けてしまえば、あいつ等がいた証が失われてしまう。そんな感じがしたからだ。
おそらく、明日になればSOS団の痕跡は跡形もなく消えているだろう。そしてあいつ等がいたという痕跡も……根拠はなくとも、確信をもってそう思えた。だから、今夜だけはこの証を残していくことにしよう。
そんなことを考えながら、俺は帰り支度を済ませる。部屋を出る間際、誰かに呼ばれたような気がして振り返る。だが、そこにはもう誰もいない。
「じゃあな」
誰もいない文芸部室に別れの言葉を残して、俺は帰宅の途についた。



階段を登ってくる足音が聞こえ、俺は想い出の世界から現実へと引き戻される。
「お待たせ~」
ハルヒの手にはお盆の上に乗せられたティーポットとティーカップが二つあった。満面の笑顔で俺を見るハルヒの姿は、入学した頃には想像できないほどだ。おそらくこれが古泉の取り戻したかったハルヒの笑顔だろう。
そんなことを考えながら、手際よくティーカップに紅茶を注ぐハルヒの姿を見つめていた。俺の視線に気づいたのか、ハルヒは少し怪訝な表情でこちらに視線を向ける。
「どうしたの?」
「いや、なんでも」
「ふーん」
ハルヒは何かに感づいたように俺の顔を見てにやりと笑った。
「もしかして緊張してる。女の子の部屋に入るのなんて初めてなんじゃない」
勝ち誇ったように俺を見つめるハルヒから目をそらし、ハルヒの持ってきた紅茶に口をつける。アールグレイか。なかなかいい趣味をしてるな。
「ハルヒ……」
一口紅茶をすすった後、再びハルヒを見つめる。ハルヒもいったんは紅茶に落とした視線を再び俺に向け、じっと俺の目を見つめた。
「愛してるぞ、ハルヒ」
「は!? バ、バカじゃないの」
一瞬驚いたような表情を見せた後、顔を真っ赤にして照れながら、怒ったように顔をそむけるハルヒ。そんな俺たちのやり取りを見て、本棚の上のテディベアが微笑んだような気がした。


~終わり~


147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 01:17:53.99


以上です。
長編を書きたいのですが、断片的にしか話が思い浮かばないからなかなか書けないorz
なので、まずは短編をということで…
短いですが読んでいただけると嬉しいです。
では、失礼します。


148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 01:21:00.80


乙です。キョンと古泉のまじめな語り合いというのはいいもんだ(144のところ)



151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/25(日) 02:00:33.09


乙!





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