多毛症1「ご主人様……決着の時がきたようです……」
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1：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:04:36.08
男「あと少しで渋谷のセンター交差点か……」
男「渋谷は、10年前は人が行き交う賑やかな場所だったのに……」
男「今や……瓦礫が積み重なる、悪魔の土地だ……」
男「それもこれも、10年前に現れた魔物のせいで……！」
男「俺が……こいつでその魔物を焼き払って、世界を救ってやるんだ！」
男は、抱えている火炎放射器をさすった。
3：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:06:28.42
男「……！！あそこに何かいる！！」
旧渋谷センター交差点のど真ん中に、物影がゆらめいた。
男「子供でも抱えられるようなぬいぐるみ状の物体……！！」
男「間違いない！！あれが……世界を滅ぼそうとしている魔物……！！」
男「まだこちらには気が付いていないみたいだ……今がチャンス！！」
男「死ね！！化け物が！！」
シュゴオオオオオオオ！！
火炎放射器が、火を吹いた。
5：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:08:23.39
ゴオオオオオオオオ！！
？？？「ふぅ……また馬鹿がやってきたか……」
男「馬鹿な！！ま、まるで効いてないだと！？」
？？？「ふふふ……そんなモノ我には効かぬ……」
？？？「死ね……人間……」
魔物から破壊光線が発せられた。
男「うわああああ！！」
ドゴオオオオオオオン！！
6：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:10:26.38
男「……うう」
男「生き……てる……？」
？？？「直撃してたら死んでたぜ、アンタ。俺らが助けてないとな……」
男「！！ま、魔物！？」
？？？「落ち着いて下さい！我達はあなたに何もしません！」
男「お、お前達は……魔物じゃないのか……？」
男の前には、2体の動くぬいぐるみが立っていた。
多毛症1「俺は多毛症1だ」
多毛症2「私は多毛症2よ」
8：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:12:23.72
男「ま、魔物ではないのか！？」
多毛症1「そうだっつってんだろ」
男「で、でもお前達はぬいぐるみのくせに、魔物と同じ様に動き」
男「魔物と同じように喋るではないか！！」
多毛症1「俺らをあんな殺人鬼と一緒にするんじゃねえよ……」
多毛症2「似ているのも当たり前です……」
多毛症2「あれは……私達の兄弟みたいなものですから……」
9：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:14:21.96
男「きょ、兄弟！？」
多毛症1「ああ……正確に言えば、俺らは兄弟でもあり」
多毛症1「あれを作りだした者でもあるんだ」
男「つ、作りだした……？」
男「や、やはり魔物はどこかの国が生み出した兵器なのか！？」
10：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:16:32.00
多毛症2「あれを作り出したのは私達の罪よ……」
多毛症2「あれは10年の間に世界中を破壊し、この国に戻ってきた」
多毛症2「そして今も、きまぐれで世界を破壊し続けている……」
多毛症1「だから……俺らであれを破壊するんだ……」
多毛症1「それが俺らの、せめてのもの罪滅ぼしだからな……」
11：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:18:28.30
男「し、質問に答えてないぞ……！！」
男「あの魔物を生み出したのは何者だ！？」
男「米軍か！？北朝鮮か！？中国か！？」
多毛症1「あっはっはっはっはっ！」
男「な、何がおかしい！！」
多毛症1「いやはや……」
多毛症1「あれを生み出したのは……日本のとある女芸人さ……」
13：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:20:28.96
男「お、女芸人……！？」
多毛症1「しかも、国のために生み出したわけじゃあないんだ……」
多毛症2「たった1人の人間を……彼女の夫を……殺すためよ……」
多毛症1「それが世界を滅ぼす事になろうとは……思っていなかったよ」
多毛症1「ご主人様も、俺らもな……」
多毛症2「彼女は、私達を生み出した者でもあるのよ……」
多毛症1「俺達は……呪い人形なんだよ」
14：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:22:31.63
男「呪い……人形……？」
多毛症1「禁忌呪術だよ、古来から伝わるね……」
多毛症2「生き物である限り、必然的に怨みをもつ」
多毛症2「怨みは念となり、凝縮された念は強い力をもつ事になる……」
多毛症2「生命を与える程にね……」
15：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:24:28.49
多毛症1「まず、密閉された容器を用意する」
多毛症1「次に、たくさんの虫をそこに入れる」
多毛症1「入れた虫の数が多ければ多い程、強力なものが作れるんだ」
多毛症1「そして、エサも水も与えずに放っておく……」
多毛症1「殺し合いと共食いで、最後の1匹になるまでね……」
多毛症1「最後に、その虫自体も殺し、人形の中に縫い込めば完成だ」
多毛症1「そうしてできたのが……俺だ」
16：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:26:26.99
多毛症1「でも、俺ではご主人様の願いは叶えられなかった……」
多毛症1「自分の夫を殺すという願いはね……」
多毛症2「だからご主人様はより強力な呪い人形を作ったの」
多毛症2「虫をネズミに置き換えて、殺し合いと共食いをさせてね……」
多毛症2「そうしてできたのが、私よ……」
17：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:28:34.15
多毛症2「でも、私でもご主人様の夫を殺す事はできなかった……」
多毛症1「だからご主人様は、最強の呪い人形を作る事にしたんだ……」
多毛症2「舞台となったのは都市部のとある小学校……」
男「ま、まさか……」
多毛症2「……そう、ご主人様が呪い人形の題材に選んだのは……」
多毛症2「人間の子供よ」
18：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:30:25.44
多毛症1「そして、最強最悪の呪い人形は完成した……」
多毛症1「やつはご主人様の夫をあっという間に殺したよ」
多毛症1「でも、やつは強力すぎた。呪いの念が強すぎたんだ……」
多毛症1「やつは、俺らのように良心を持ちあわせていなかったんだ」
多毛症2「そして……災厄は始まったの……」
多毛症2「その結果が……今のこの世界よ……」
19：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:32:41.86
多毛症1「俺らは何度もやつを殺そうとした」
多毛症1「だけどやつは俺らとは格が違う。俺は虫ケラ扱いだ……」
多毛症1「今度こそやつを倒そうと渋谷に来たんだ……」
多毛症1「例え……刺し違えても……俺らはやつを倒してみせる……！」
多毛症2「あなたは……？」
多毛症2「あなたは何故……やつを倒そうと？」
21：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:35:26.04
男「俺は……」
男「俺は……世界がこんな風になる前は、どうしようもないクズだった」
男「いい歳して働きもせず、エロゲとネットばかりしていたんだ……」
男「ずっと勇者になりたいと思っていたんだ、ゲームの主人公のように」
男「俺は魔物を倒して……勇者になりたい……だからここに来たんだ！」
多毛症1「勇者……か……」
多毛症2「きっとなれるわ、勇者にね」
22：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:37:23.29
多毛症1「……お前の協力があれば、やつを倒せるかもしれん……」
多毛症1「お前……死ぬ覚悟はあるか……？」
男「……あるさ」
男「何故なら俺は……勇者だからな！」
23：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:39:26.32
多毛症1「俺らでやつを押さえ込む」
多毛症1「その間に、その火炎放射器で俺らごとやつを焼き払ってくれ」
男「い、いいのか……？お前らは……」
多毛症2「それが……私達の役割だから……」
多毛症2「やつを倒し、世界を救う事が、私達にできる罪ほろぼし……」
多毛症2「私達も……勇者になりたいのよ……？」
24：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:41:48.46
多毛症3「……ほう、懐かしい顔だな」
多毛症1「ご主人様……決着の時がきたようです……」
多毛症2「多毛症3！あなたを……倒します！！」
男「……！！(ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ)」
多毛症3「我を倒すだと……？」
多毛症3「なめたクチを……きくな……！！」
ピカッ！！
多毛症1「多毛症2！！バリアーを！！」
多毛症2「まかせて！！」
ピキン！！
ガガガガガ！！
26：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:43:33.22
しゅわああああ……
多毛症3「！これは煙幕！」
ばばっ！がしっ！
多毛症3「……む！！」
多毛症1「捕まえたぜ……多毛症3……！！」
多毛症2「今よ！！我達でやつの力を弱めている間に！！」
多毛症2「我達ごとやつを焼き払って！！」
男「あ……あ……(ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ)」
多毛症1「……！！」
27：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:45:26.18
男「あ、足が震えて……(ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ)」
多毛症2「……男さん！！」
多毛症1「……くそ！」
多毛症3「ははははは！この腰抜けが！」
多毛症3「やはり人間はクズだ！クズはクズのまんま、死ぬまでクズなんだよ！」
28：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:47:30.69
男「……違う」
男「違う……俺は……変わるんだ……」
男「俺はもうクズじゃない……！俺は勇者になるんだ！！」
多毛症3「……！！」
男「ラスボス戦は苦戦するって……ゲームで決まってんだよおおおお！！」
男「わあああああああ！！！」
シュゴオオオオオオオオ！！！
30：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:49:24.15
多毛症1「…………」
多毛症1「やった……か……？」
男「ああ……やつは、ケシズミだ……」
多毛症1「……多毛症2は？」
男「…………」
多毛症1「……そうか」
多毛症1「俺も……もう駄目だ……」
多毛症1「楽に……してくれ……勇者さん……」
男「…………」
男「ああ……わかった……」
チャキ！
31：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:51:31.34
多毛症1「……てた」
男「？」
多毛症1「わかってたんだ……ご主人様は夫の事を愛していた……」
多毛症1「殺したい程憎んでいたけど、愛してもいたんだ……」
多毛症1「だから……俺らは殺せなかったんだよ……どうしても……」
多毛症1「……勇者さんよお」
多毛症1「ゲームじゃあ、魔王を倒した後の勇者がどうなったのかは語られねえ……」
多毛症1「でも……勇者の真の価値は……そこで決まると思うぜ……俺は……」
32：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 00:53:28.71
多毛症1「世界を頼むぜ……勇者さん……」
男「……ああ、任せろ」
多毛症1「……やってくれ」
男「…………」
シュゴオオオオオオオオ
その男は、どこへ向かうともなく歩きはじめた。
彼がどうなったのか、知る者はいない……
おしまい
36：以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします：2009/11/03(火) 01:00:31.78
乙
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