錬金術師「経営難に立ち向かう事になった」銃士「その4!」【後半】
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――――【 2日後(3月4日) お店 】
銃士「…」
銃士「も、戻ってきたら大変なことになってたみたいだね…」
錬金術師「…非常に不味い。」
女店員「うん…」
新人鉱夫「仕事が増えるのはいいですが、店長さんの手が回らないですね…」
銃士「…しかし倒れたとは。」
銃士「大丈夫だったのか?」
錬金術師「少しは回復したが、大量生産が出来るほど余裕はねぇ…。」
錬金術師「……不味いんだよな」
女店員「私たちじゃ、その錬金術を手伝えるわけじゃないし…」
新人鉱夫「そうですね…。小さいことならお手伝いできるのですが…」
銃士「うーん…」
錬金術師「…」
錬金術師「…」
錬金術師「……頼りたくなかったが、最終的に頼ることにはなりそうだな」ハァァ
女店員「え?」
錬金術師「……俺らで何とかできないかと思っていたが、ここまでまとまらないんじゃ仕方がない。」
錬金術師「前々から少しだけ、最終的な案として考えてたが……それを実行しないといけなそうだ」ハァァ
銃士「…なんだ、考えがあったのか?」
錬金術師「いや、だけど頼りたくないっつーか……」
女店員「でも、ここまで追い込まれてたら頼らざるを得ないんじゃ…」
錬金術師「それはそうなんだが…」
新人鉱夫「えっと…その頼るっていう、最終的な案の詳細は何なんですか?」
錬金術師「…ほら。」
錬金術師「錬金術で、俺の指示のもとなら変わらない出来を造れる人間ならいるだろう…?」
女店員「えっ、そんな人が…?」
錬金術師「正直、仕事としてはあまり巻き込みたくないんだが…ココまで来たら仕方ないというか…。」
銃士「…知り合いか?」
錬金術師「いや本気で、頼りたくはないんだが……」
新人鉱夫「…誰ですか?」
錬金術師「……忘れてるだろ。」
錬金術師「隣町、錬金術機関。機関長と、術士先生だよ…」
3人「……あぁっ!」
錬金術師「…こんなカタチでは尋ねたくなかったが、さすがに俺だけじゃパンクしちまう。」
錬金術師「自分を見極められないなんて、情けな過ぎてな……。」
銃士「…で、でもそれならいいんじゃないか!」
新人鉱夫「そうですよ、あの二人なら力強い味方になります!」
女店員「…しのご言ってられないね」
錬金術師「…」
錬金術師「……はぁ、仕方ないよな。」
錬金術師「明日中には契約書出さないといけないし、今日、高速馬車でサクッと行ってくるわ…」
女店員「うん…。アクセショップの人にだよね。」
銃士「はは…気を付けて。」
新人鉱夫「お留守番は任せて下さいね」
錬金術師「あぁ…。」
錬金術師「こんなこと話したら、どうせ機関長に怒られるんだろうな…」
錬金術師「"己の力も分からないなんて、それでもマスターの称号を持った男かっ!!"」
錬金術師「なーんて……」
……………
………
…
…
………
……………
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――――【 隣町 錬金術機関 機関長の部屋 】
機関長「…己の力も分からないなんて、それでもマスターの称号を持った男かッ!!」
錬金術師「」キーン
機関長「……ったく情けない!」
機関長「相変わらずの開発技量、その知識と腕には感服するが…」
機関長「最も必要な、自分の体力管理を怠ってどうするんだっ!!」ビリビリッ…
錬金術師「わ、分かってるっつーの!」
錬金術師「今回のは久々に失敗しちまったし、反省もしてるって…!」
機関長「はぁぁ…。マスターの称号が泣くぞ…」
錬金術師「ほら、俺ってば既にマスターの称号は返還したし?」キャピッ
…ゴツッ!!
機関長「殴るぞ」プルプル
錬金術師「い、痛いっ!既に殴ってる!」プシュウッ…!
機関長「……しかしまぁ、事情は分かった。」
機関長「今後の対応が、自分じゃ出来かねるということだな」
錬金術師「生成魔石、マジエアコン、パワーアップユニット、超回復瓶を適宜制作。」
錬金術師「それに加えて、鉄クズの精製が100個。」
錬金術師「ついでに、毎週のハンティングで採ったカルキノスをある程度イジらなくちゃいけない」
機関長「…一人の人間の限界量を超え過ぎだ。」
機関長「普通なら倒れてるぞ」
錬金術師「だから倒れたんだって♪」キャピッ
…ゴチィンッ!
機関長「殴るぞ」プルプル
錬金術師「…」プシュー
機関長「…仕方ない。手伝えることは手伝おう」
錬金術師「お…いいのかっ?」
機関長「お前の頼みだ、断れるわけがないだろう」
錬金術師「…恩に着るよ」
機関長「だが、その前に…」ゴソゴソ
錬金術師「ん…」
機関長「…ほれ、うちとの契約書だ」ペラッ
錬金術師「……へいへい」
機関長「今回のことは、俺と術士先生、場合によっては白学士と錬成師を契約社員として扱ってもらう。」
機関長「各生成、製錬時に費やした時間による、時間給。それでいいな?」
錬金術師「へっ、それでいいのか?」
機関長「うちとしては、儲けが出るならいい」
錬金術師「…総売り上げから、割での計算のほうが高いぜ?」
機関長「そりゃそうだろうが、そこまでうちは貧乏じゃないから気にするな」
錬金術師「…それじゃお言葉に甘えるが。1時間辺りの金額はいくらにする?」トントン
機関長「800ゴールドでいい」
錬金術師「…やっす。錬金学生の特待学校でやるアルバイト以下だぞそりゃ」
機関長「もし5人が出る機会があれば、1時間で4500ゴールドになる。充分だ」
錬金術師「せめて1000ないとキツくないか?合計5000はいくぜ」
機関長「うちの機関は、研究が本分で…費用は国から貰っているからな。それ以上はいらんよ」
錬金術師「…言葉に甘えるぜ?」
機関長「よろしい」
錬金術師「…代わりに、何らかの理由で生成が出来なかった場合の損失は削除しておく」カキカキ
機関長「人災を含む、怪我による保険の部分もいらん」
錬金術師「おいおい、それは……」
機関長「俺らの腕で、そうそう事故が起きるものか…。」
機関長「それともなんだ、うちの機関は事故でも起こすと思うか?」
錬金術師「…起こすわけねえわな」カキカキ…
機関長「そういうことだ。よし、書いたか?」
錬金術師「こんな簡素で、いい契約したのは初めてだぜ」フゥ
機関長「あとで、3人には契約社員になったことを伝えておくぞ」
錬金術師「全くなんてオッサンだ。勝手に契約していいのかよ」
機関長「あいつらが話を受けたら、確実にお前にもっと有利な話で動くかもしれんからな。」
機関長「俺よりお前の方が慕われているくらいだ…。」
機関長「下手をすれば研究を疎かに、機関が潰れかねんし…勝手に契約させて貰う」フンッ
錬金術師「はっはっは、どーも」
機関長「…全く、これからは自分の体力を知ったうえできちんと仕事をするんだぞ」
錬金術師「わかってますよ~っと」ヒラヒラ
機関長「…はぁ。それじゃ、まずは何から手伝えばいいのか」
錬金術師「…とりあえず、製錬鉄クズを準備してほしい。」
錬金術師「オッサンの腕なら、恐らく俺のとそこまで相違ないモンが出来るはずだし…」
錬金術師「来週の頭までに100個。それ以後、常にストックがあれば嬉しいが…」
機関長「100個程度なら、1時間かからんな」
錬金術師「そりゃ集中製錬した場合だろうが…。」
錬金術師「休み休み…せめて1時間に20個ペースでやらんと、俺みたく倒れちまうぞ」
機関長「…1時間かからん。かかるわけがない。かかりませんっ」フンッ
錬金術師「子供かよっ!」
機関長「で、それだけでは他の者に仕事がないぞ?」
錬金術師「…あんたな、マジで1時間に100個ペースは倒れても責任はもたんぞ」
錬金術師「せめて、人数で割って100個を……」
機関長「早く、次の仕事内容は。来週までにやること、はよ」クイクイ
錬金術師「…」
錬金術師「……あと、ココに設計図を書いておくから。」
錬金術師「それにあわせて、さっきの3つの道具を造ってほしい…が……」
機関長「マジエアコン、パワーアップユニット、超回復瓶だな」
錬金術師「素材費用はそれぞれこっちが負担する。」
錬金術師「楽な順序は、超回復瓶、パワーアップユニット、マジエアコンの順だ。」
機関長「了解した。今後手紙で、1週間のうちにどれくらいのペースで制作してほしいか寄越してくれ。」
機関長「それに合わせ、こちら側で時間を割く。」
錬金術師「…おう、ありがとうさん」
機関長「うむ。では、今はそれだけか?」
錬金術師「まぁそれだけだな…。」フム
機関長「承知した。お前のものと完璧なオリジナルとはいかんだろうが、不満のない道具にはなるはずだ」
錬金術師「…おうっ、頼むぜ!」
錬金術師「だけど、マジで時間給で気にしてアンタが倒れることないようにな。」
錬金術師「それじゃ…時間もないし、失礼する。有難うな」
機関長「うむ、俺は1時間に余裕なんだっての」
錬金術師「そ、そうか。じゃあな…」
トコトコ……
ガチャッ…バタンッ……!!
機関長「…」
機関長「…はぁ」
機関長「……馬鹿モンが。」
機関長「見えていたぞ、両手にあった真っ赤な湿疹と、ペンを動かす時の手の震え……。」
機関長「とっくに限界を超えた証ではないか…。」
機関長「その努力を知ってる俺が、少しでも楽をさせてやらないでどうしようといおうか…って